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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
299.事なかれ主義者はじっと見た
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トネリコの世話をした後、溜まっている依頼を少しでも減らそうとせっせと魔道具を作った翌朝。
今日はトネリコのお世話をサクッと済ませたらすぐにガレオールに転移して、ランチェッタ女王陛下の元に向かう事になっている。
着替えを手伝おうとしてくるホムラを追い出してから一人でササッと着替えて、今日のお世話係のユキが入ってくる前に準備を全て整えた。
朝食をいつもより少し早めに食べて皆の予定を確認してから外に出る。
今日は雲一つない晴天だった。絶好の観光日和となりそうだ。
念のために近くに集まって纏わりついて来ていたドライアドたちに確認をしてみたけど、雨の気配もないそうだ。
護衛としてついてくるジュリウスと共に世界樹トネリコの根元に転移して、お世話をすると魔力が半分ほど持っていかれた。
これなら何かしら話に困ったら加護で遊び道具を作れる。
走る事はしないけど、相手を待たせてしまったら申し訳ないので褐色肌のドライアドたちと別れを告げてファマリアを経由し、ガレオールの魔道具店に転移した。
まだ営業開始前のようだ。奴隷の証明であるごつい首輪を着けた褐色肌の子たちが三階から下りてきた僕に気付くと慌てた様子で頭を下げてきた。
開店準備中に申し訳ないと思いつつ、店外へと出ると既に通りは賑やかだった。
店の前には長蛇の列ができていた。魔道具って結構お高めの値段だったはずなのでちょっと意外だ。
歩いて王城まで行こうと思っていたら、店の前に止まっていた豪華な馬車の御者さんが御者台から下りてきて、王城からの使いだと自己紹介した。
ジュリウスに目配せをすると、こくりと頷かれたので、言われるがまま馬車に乗り込む。
珍しくジュリウスも一緒に乗り込んできた。
「万が一の事があった場合、すぐに対応できるようにと思いまして」
「なるほど」
馬車内に誰かが潜んでいたり、魔法がかけられていたりして拉致される事もあるんだとか。
今回は王家の紋章が堂々と車体に描かれていたので間違いはないだろうという事だったが、念には念を入れて、という事らしい。
しばらくの間馬車に揺られていると、お城に着いたらしい。
馬車が停車して外から扉が開かれる。
先にジュリウスが降りて、その後に続く。
それから視線を足元から前へと向けると、小柄な女性が僕を出迎えた。
灰色の髪と同じ色の目を持つこの国の女王ランチェッタ様だ。
彼女は今日は露出がほとんどないが体のラインがはっきりと分かるタイトなドレスを着ていた。
驚異の大きさの胸の膨らみは隠す事ができず、苦しそうに思えてしまう。
ただ、そこばかりじろじろ見るのは失礼なのでスッと視線を戻してランチェッタ様の前まで歩いて行くと、彼女は両腕を広げて僕を歓迎した。
ギュッと抱きしめられると柔らかな感触がですね……?
っていうか、こんなに背が小さかったっけ?
疑問に思いつつハグされていると背伸びをしたランチェッタ様がボソッと耳元でささやく。
「会いたかったわ、シズト様。今か今かと首を長くして待っていたのよ?」
「それならそうと言ってくださればもっと早く来たんですけど」
「ふふっ、冗談よ。わたくしも今外に出てきたばかりだわ。それと、今日は非公式の訪問だから敬語じゃなくて大丈夫よ」
「……分かった」
「よろしい。では、降りて早々申し訳ないけれど、また馬車に乗って行きましょう」
やっと解放された、と思ったら今度は手を握られて馬車まで引っ張られた。
引っ張られるがまま馬車に乗り込むと、ランチェッタ様の隣に腰かける事になった。
ランチェッタ様の方を見ると、窓の外を景色を見ていた。
眉間に皺が寄っているけど上機嫌なのか鼻歌も歌っている。
僕の視線に気づくと、ふっと笑って首を傾げた。
「なにかしら?」
「いや……この手はいつ離してもらえるのかなって」
「案内してくれるんでしょう? だったらこのままでいいと思うんだけど」
「……そっすか」
まあ、ドライアドたちに認識してもらうには都合がいいか。
それからしばらくして馬車が魔道具店サイレンスに着いた。
褐色肌のメイドさんが馬車の扉を外から開けてくれた。先にランチェッタ様が馬車から下りてその後に続く。
サイレンスはまだ開店時間ではないようで、列が続いている。
列を無視して店の扉を開けるのちょっと勇気がいるなぁ、と思っていたら扉が内側から開いた。
「お帰りなさいませ、ご主人様!!」
エプロンを付けた肌が白い女の子が開けてくれた。首輪を嵌めている事から考えて、ファマリアから派遣されてきた町の子だろう。
列の前の方の人から何やら熱い視線を感じたけど、ランチェッタ様がそわそわしていたのでとりあえず店の中に入った。その後をメイドさんがついてきた。
僕と目が合うとメイドさんにスカートの裾を持って礼をされた。これ、カーテシーとか言うやつだっけ?
「私はランチェッタ様の付き人のディアーヌです。本日は行動を共にさせていただきます」
「あ、これはご丁寧にどうも……。シズトです。よろしくお願いします」
「フフッ、存じておりますよ」
これされた時にどう対応するのが正しいのか分かんないからとりあえずぺこりと頭を下げた。
そうしている間、ランチェッタ様は興味深そうにキョロキョロと視線を彷徨わせていた。
「こういう風になっているのね。思っていたよりも安いわね」
「ここにある魔道具はちょっと性能が落ちる物なのでお値打ち価格にさせていただいてます」
褐色肌の女性がランチェッタ様の独り言に反応して説明していた。
貴族対応はこの人がするようだ。冷や汗やばそうだけど。
申し訳ないので「僕が話すから開店の準備して」と声をかけると優雅に微笑んで店の奥へと消えていった。
「シズト殿が作った物はないのかしら?」
「棚の中にしまってるから求められたら出す感じかな」
「なるほど。犯罪対策をしているという訳ね」
「いや、違うけど……あ、でも結果的にそうなるのかな」
んー、分からん。
今日は店の視察ではないので三階まで上がって転移陣で移動する。
転移の気配を察してか、周囲からわらわらとドライアドたちが集まってきた。
最初は見知らぬ二人に視線が向いていたけど、僕に気が付くと回れ右して畑の中に入って行き、戻ってきたと思ったら小さな手に収穫物を持っている。いつもの事だ。
「はいはい、順番にジュリウスの鞄に入れてってねー」
「は~い」
「あと、この二人は僕のお客様だから、よろしくね」
「は~~い」
返事だけは良いけど本当に分かっているんだろうか。
そんな僕の気持ちを気にした様子もなく、一列に並んでジュリウスの持つアイテムバッグの中に収穫物を入れていくドライアドたち。
それをランチェッタ様とディアーヌさんが目を丸くして見ていた。ランチェッタ様はいつの間にか丸眼鏡をかけていて、目がぱっちり開いていて眉間の皺がまったくなくなっていた。
「これは……何をしているのかしら?」
「何って、おすそ分けを貰ってる感じ、かな? ここの子たちだけじゃなくて、トネリコにいた子たちも同じ事をしてきたからドライアドたちの習性みたいなものかも?」
「これがドライアドですか。初めて見ました」
「わたくしもよ。本当に頭から植物の花が咲いているのね」
眼鏡かけると可愛らしい感じになるんだなぁ。
そんな事を思いながらランチェッタ様の横顔を見ながらドライアドたちに関する質問に分かる範囲で答えている間に、おすそ分けの列がなくなり、ドライアドたちは好きな所に去っていった。
今日はトネリコのお世話をサクッと済ませたらすぐにガレオールに転移して、ランチェッタ女王陛下の元に向かう事になっている。
着替えを手伝おうとしてくるホムラを追い出してから一人でササッと着替えて、今日のお世話係のユキが入ってくる前に準備を全て整えた。
朝食をいつもより少し早めに食べて皆の予定を確認してから外に出る。
今日は雲一つない晴天だった。絶好の観光日和となりそうだ。
念のために近くに集まって纏わりついて来ていたドライアドたちに確認をしてみたけど、雨の気配もないそうだ。
護衛としてついてくるジュリウスと共に世界樹トネリコの根元に転移して、お世話をすると魔力が半分ほど持っていかれた。
これなら何かしら話に困ったら加護で遊び道具を作れる。
走る事はしないけど、相手を待たせてしまったら申し訳ないので褐色肌のドライアドたちと別れを告げてファマリアを経由し、ガレオールの魔道具店に転移した。
まだ営業開始前のようだ。奴隷の証明であるごつい首輪を着けた褐色肌の子たちが三階から下りてきた僕に気付くと慌てた様子で頭を下げてきた。
開店準備中に申し訳ないと思いつつ、店外へと出ると既に通りは賑やかだった。
店の前には長蛇の列ができていた。魔道具って結構お高めの値段だったはずなのでちょっと意外だ。
歩いて王城まで行こうと思っていたら、店の前に止まっていた豪華な馬車の御者さんが御者台から下りてきて、王城からの使いだと自己紹介した。
ジュリウスに目配せをすると、こくりと頷かれたので、言われるがまま馬車に乗り込む。
珍しくジュリウスも一緒に乗り込んできた。
「万が一の事があった場合、すぐに対応できるようにと思いまして」
「なるほど」
馬車内に誰かが潜んでいたり、魔法がかけられていたりして拉致される事もあるんだとか。
今回は王家の紋章が堂々と車体に描かれていたので間違いはないだろうという事だったが、念には念を入れて、という事らしい。
しばらくの間馬車に揺られていると、お城に着いたらしい。
馬車が停車して外から扉が開かれる。
先にジュリウスが降りて、その後に続く。
それから視線を足元から前へと向けると、小柄な女性が僕を出迎えた。
灰色の髪と同じ色の目を持つこの国の女王ランチェッタ様だ。
彼女は今日は露出がほとんどないが体のラインがはっきりと分かるタイトなドレスを着ていた。
驚異の大きさの胸の膨らみは隠す事ができず、苦しそうに思えてしまう。
ただ、そこばかりじろじろ見るのは失礼なのでスッと視線を戻してランチェッタ様の前まで歩いて行くと、彼女は両腕を広げて僕を歓迎した。
ギュッと抱きしめられると柔らかな感触がですね……?
っていうか、こんなに背が小さかったっけ?
疑問に思いつつハグされていると背伸びをしたランチェッタ様がボソッと耳元でささやく。
「会いたかったわ、シズト様。今か今かと首を長くして待っていたのよ?」
「それならそうと言ってくださればもっと早く来たんですけど」
「ふふっ、冗談よ。わたくしも今外に出てきたばかりだわ。それと、今日は非公式の訪問だから敬語じゃなくて大丈夫よ」
「……分かった」
「よろしい。では、降りて早々申し訳ないけれど、また馬車に乗って行きましょう」
やっと解放された、と思ったら今度は手を握られて馬車まで引っ張られた。
引っ張られるがまま馬車に乗り込むと、ランチェッタ様の隣に腰かける事になった。
ランチェッタ様の方を見ると、窓の外を景色を見ていた。
眉間に皺が寄っているけど上機嫌なのか鼻歌も歌っている。
僕の視線に気づくと、ふっと笑って首を傾げた。
「なにかしら?」
「いや……この手はいつ離してもらえるのかなって」
「案内してくれるんでしょう? だったらこのままでいいと思うんだけど」
「……そっすか」
まあ、ドライアドたちに認識してもらうには都合がいいか。
それからしばらくして馬車が魔道具店サイレンスに着いた。
褐色肌のメイドさんが馬車の扉を外から開けてくれた。先にランチェッタ様が馬車から下りてその後に続く。
サイレンスはまだ開店時間ではないようで、列が続いている。
列を無視して店の扉を開けるのちょっと勇気がいるなぁ、と思っていたら扉が内側から開いた。
「お帰りなさいませ、ご主人様!!」
エプロンを付けた肌が白い女の子が開けてくれた。首輪を嵌めている事から考えて、ファマリアから派遣されてきた町の子だろう。
列の前の方の人から何やら熱い視線を感じたけど、ランチェッタ様がそわそわしていたのでとりあえず店の中に入った。その後をメイドさんがついてきた。
僕と目が合うとメイドさんにスカートの裾を持って礼をされた。これ、カーテシーとか言うやつだっけ?
「私はランチェッタ様の付き人のディアーヌです。本日は行動を共にさせていただきます」
「あ、これはご丁寧にどうも……。シズトです。よろしくお願いします」
「フフッ、存じておりますよ」
これされた時にどう対応するのが正しいのか分かんないからとりあえずぺこりと頭を下げた。
そうしている間、ランチェッタ様は興味深そうにキョロキョロと視線を彷徨わせていた。
「こういう風になっているのね。思っていたよりも安いわね」
「ここにある魔道具はちょっと性能が落ちる物なのでお値打ち価格にさせていただいてます」
褐色肌の女性がランチェッタ様の独り言に反応して説明していた。
貴族対応はこの人がするようだ。冷や汗やばそうだけど。
申し訳ないので「僕が話すから開店の準備して」と声をかけると優雅に微笑んで店の奥へと消えていった。
「シズト殿が作った物はないのかしら?」
「棚の中にしまってるから求められたら出す感じかな」
「なるほど。犯罪対策をしているという訳ね」
「いや、違うけど……あ、でも結果的にそうなるのかな」
んー、分からん。
今日は店の視察ではないので三階まで上がって転移陣で移動する。
転移の気配を察してか、周囲からわらわらとドライアドたちが集まってきた。
最初は見知らぬ二人に視線が向いていたけど、僕に気が付くと回れ右して畑の中に入って行き、戻ってきたと思ったら小さな手に収穫物を持っている。いつもの事だ。
「はいはい、順番にジュリウスの鞄に入れてってねー」
「は~い」
「あと、この二人は僕のお客様だから、よろしくね」
「は~~い」
返事だけは良いけど本当に分かっているんだろうか。
そんな僕の気持ちを気にした様子もなく、一列に並んでジュリウスの持つアイテムバッグの中に収穫物を入れていくドライアドたち。
それをランチェッタ様とディアーヌさんが目を丸くして見ていた。ランチェッタ様はいつの間にか丸眼鏡をかけていて、目がぱっちり開いていて眉間の皺がまったくなくなっていた。
「これは……何をしているのかしら?」
「何って、おすそ分けを貰ってる感じ、かな? ここの子たちだけじゃなくて、トネリコにいた子たちも同じ事をしてきたからドライアドたちの習性みたいなものかも?」
「これがドライアドですか。初めて見ました」
「わたくしもよ。本当に頭から植物の花が咲いているのね」
眼鏡かけると可愛らしい感じになるんだなぁ。
そんな事を思いながらランチェッタ様の横顔を見ながらドライアドたちに関する質問に分かる範囲で答えている間に、おすそ分けの列がなくなり、ドライアドたちは好きな所に去っていった。
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