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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
296.事なかれ主義者は心に決めた
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ドライアドたちとフェンリルにお客様が来る事を伝え、ジュリウスを後ろに従えながら世界樹トネリコの根元に転移すると、褐色肌のドライアドたちが元気よく世界樹の周りを駆け回っていた。
世界樹の周りを囲っている森も『嫌な感じ』が抜けたらしい。森の中へ入って行ったり出て来たりするドライアドがそこそこいる。
その様子を周りのドライアドたちよりも大きな青バラちゃんと、白い花を咲かせた褐色肌のドライアドが見守っていたけど、僕に気が付くと二人とも近くに寄ってきた。
その様子に気付いたのか、近くにいた小さいドライアドたちも寄ってくる。
青バラちゃんがぺこりと僕たちのようにお辞儀をして挨拶をしてきた。
「人間さんこんにちは~」
「こんちは~~~」
それを真似て他のドライアドたちもガバッとお辞儀をする。
挨拶を返してトネリコのお世話のために世界樹の幹に向かって歩くと、その後ろをドライアドたちがぞろぞろとついて来る。もう慣れた。
世界樹トネリコの幹に触れて、そのまま生育の加護を使うと、半分ぐらいの魔力を持っていかれた。
トネリコを見上げると、青々とした葉っぱがたくさん枝から生えている。だいぶ元通りになったらしい。
ただ、世界樹の周りにある木々よりも外側は、依然として『嫌な感じ』が残っているらしい。
エルフたちに直接的な影響はないけれど、不作が今後もしばらくの間続くだろう。
その間どうするのか、また話し合う事になりそうだ。
そんな事を考えながらボケーッとトネリコを見上げていると、クイクイッと袖を引っ張られた。
視線を下に向けると、青バラちゃんが僕を見上げている。
「人間さん、リコちゃんだいぶ元気になったから、ユグちゃんやファマちゃんと順番でも大丈夫だよ」
「そうなの?」
「うん。もうちょっとの間、魔力がたくさん必要だけど、それも落ち着いたらユグちゃんと同じくらいの頻度でも大丈夫」
僕は知っている。彼女たちの「ちょっとの間」は結構長いという事を。
まあどのくらい後なのか聞いてもこちらの尺度での答えは返って来ないと思うので、話を変える。
「分かった。教えてくれてありがと。青バラちゃんは明日もここにいるの?」
「いないよー。明日からはあるばいと再開するの!」
「そうなんだ。頑張ってね」
「たくさんご褒美貰えるように頑張る!」
フンス、とやる気満々な青バラちゃん。
やる気満々なのはありがたいけど、ご褒美という言葉に反応して、ここの大きい方のドライアドが興味を持ってしまったようだ。
これ以上他の子たちが興味を惹く事を言わないように、青バラちゃんを抱っこして転移陣に乗って急いでファマリーへ戻った。
ファマリーの根元に転移した時にはまだ誰も訪れていない様子だった。
であれば、リヴァイさんたちが来るのを青バラちゃんと一緒に日向ぼっこをしながら待とうかな。
別に接待とかする必要はないけど、時間に余裕があるのに顔も見せないのはどうかと思うし。
小さいドライアドたちからの贈り物攻撃は、抱えている青バラちゃんが指示を出して落ち着いた。
「みんな仲間だから大丈夫だよー」
「なかま?」
「なかま!」
「な~か~ま~」
集まっていた小さいドライアドたちが四方八方に散らばって「なかまだって~」と伝言ゲームのように他のドライアドたちに伝えていく。
「ドライアド同士でも敵とか味方とかあるの?」
「んー、分かんない。私たち以外の子たちと遭遇するの初めてだったから、混乱しちゃったのかも。一度会えば大丈夫だと思う」
ドライアドたちは基本的には世界樹の周囲で生活をしているから他のドライアドたちと会う可能性は限りなくゼロに近い。時折人間の馬車に紛れ込んで遠出をするらしいけど、それでもトネリコの方までは行った事がないんだとか。
転移陣の影響で今後も他のドライアドたちと遭遇する機会は増えるだろうし、その時は青バラちゃんを連れ歩くようにすれば今回みたいな事は防げそうだ。
のんびりと青バラちゃんと一緒に日向ぼっこをしていると、何やら転移陣の方が騒がしくなった。
そちらを見ると、小さいドライアドたちに囲まれたモニカと、リヴァイさんたちがいた。ガントさんが緊張した面持ちでドライアドたちを見ている。そんな気を張る必要なんてないんだけど。
ドライアドたちはじろじろとモニカとリヴァイさんたちを見ていたけど、満足したのかそれぞれいた場所に戻っていく。ガントさんはホッとした様子で剣から手を離した。
何やらガントさんが彼の両親に言われているが、近づいでも大丈夫だろうか。
モニカが僕に気付いて、リヴァイさんに何か言うと、彼らも僕に気が付いたようだ。
僕が起き上がると、上に乗っかっていた青バラちゃんがコロンと地面に転がった。ぐっすり寝ている様で起きない。
変な姿勢になっちゃったから仰向けに戻していると、ずんずんとリヴァイさんが近づいてきた。
「久しぶりだな、シズト殿。孫はできたか?」
「まだ結婚もしてないんですけど!?」
エッチな事はオッケーだとしても、出来ちゃった婚って前世だったらあんまりいい印象持たれないと思う。
避妊具とかなさそうだし、そういう魔道具もありそうなのに生命に関する事だからか分からないけど思いつかないし……等とうだうだ考えていると、リヴァイさんの後を追ってきたパールさんが不思議そうに首を傾げて話に入ってきた。
「勇者が相手だったら式の前に身籠る事なんてよくある事よ? むしろ、積極的に既成事実を作ろうとする輩もいるわ。それが嫌なら、近づいてくる女性には気を付けた方が良いわね」
……単独行動はしないようにしよう。
世界樹の周りを囲っている森も『嫌な感じ』が抜けたらしい。森の中へ入って行ったり出て来たりするドライアドがそこそこいる。
その様子を周りのドライアドたちよりも大きな青バラちゃんと、白い花を咲かせた褐色肌のドライアドが見守っていたけど、僕に気が付くと二人とも近くに寄ってきた。
その様子に気付いたのか、近くにいた小さいドライアドたちも寄ってくる。
青バラちゃんがぺこりと僕たちのようにお辞儀をして挨拶をしてきた。
「人間さんこんにちは~」
「こんちは~~~」
それを真似て他のドライアドたちもガバッとお辞儀をする。
挨拶を返してトネリコのお世話のために世界樹の幹に向かって歩くと、その後ろをドライアドたちがぞろぞろとついて来る。もう慣れた。
世界樹トネリコの幹に触れて、そのまま生育の加護を使うと、半分ぐらいの魔力を持っていかれた。
トネリコを見上げると、青々とした葉っぱがたくさん枝から生えている。だいぶ元通りになったらしい。
ただ、世界樹の周りにある木々よりも外側は、依然として『嫌な感じ』が残っているらしい。
エルフたちに直接的な影響はないけれど、不作が今後もしばらくの間続くだろう。
その間どうするのか、また話し合う事になりそうだ。
そんな事を考えながらボケーッとトネリコを見上げていると、クイクイッと袖を引っ張られた。
視線を下に向けると、青バラちゃんが僕を見上げている。
「人間さん、リコちゃんだいぶ元気になったから、ユグちゃんやファマちゃんと順番でも大丈夫だよ」
「そうなの?」
「うん。もうちょっとの間、魔力がたくさん必要だけど、それも落ち着いたらユグちゃんと同じくらいの頻度でも大丈夫」
僕は知っている。彼女たちの「ちょっとの間」は結構長いという事を。
まあどのくらい後なのか聞いてもこちらの尺度での答えは返って来ないと思うので、話を変える。
「分かった。教えてくれてありがと。青バラちゃんは明日もここにいるの?」
「いないよー。明日からはあるばいと再開するの!」
「そうなんだ。頑張ってね」
「たくさんご褒美貰えるように頑張る!」
フンス、とやる気満々な青バラちゃん。
やる気満々なのはありがたいけど、ご褒美という言葉に反応して、ここの大きい方のドライアドが興味を持ってしまったようだ。
これ以上他の子たちが興味を惹く事を言わないように、青バラちゃんを抱っこして転移陣に乗って急いでファマリーへ戻った。
ファマリーの根元に転移した時にはまだ誰も訪れていない様子だった。
であれば、リヴァイさんたちが来るのを青バラちゃんと一緒に日向ぼっこをしながら待とうかな。
別に接待とかする必要はないけど、時間に余裕があるのに顔も見せないのはどうかと思うし。
小さいドライアドたちからの贈り物攻撃は、抱えている青バラちゃんが指示を出して落ち着いた。
「みんな仲間だから大丈夫だよー」
「なかま?」
「なかま!」
「な~か~ま~」
集まっていた小さいドライアドたちが四方八方に散らばって「なかまだって~」と伝言ゲームのように他のドライアドたちに伝えていく。
「ドライアド同士でも敵とか味方とかあるの?」
「んー、分かんない。私たち以外の子たちと遭遇するの初めてだったから、混乱しちゃったのかも。一度会えば大丈夫だと思う」
ドライアドたちは基本的には世界樹の周囲で生活をしているから他のドライアドたちと会う可能性は限りなくゼロに近い。時折人間の馬車に紛れ込んで遠出をするらしいけど、それでもトネリコの方までは行った事がないんだとか。
転移陣の影響で今後も他のドライアドたちと遭遇する機会は増えるだろうし、その時は青バラちゃんを連れ歩くようにすれば今回みたいな事は防げそうだ。
のんびりと青バラちゃんと一緒に日向ぼっこをしていると、何やら転移陣の方が騒がしくなった。
そちらを見ると、小さいドライアドたちに囲まれたモニカと、リヴァイさんたちがいた。ガントさんが緊張した面持ちでドライアドたちを見ている。そんな気を張る必要なんてないんだけど。
ドライアドたちはじろじろとモニカとリヴァイさんたちを見ていたけど、満足したのかそれぞれいた場所に戻っていく。ガントさんはホッとした様子で剣から手を離した。
何やらガントさんが彼の両親に言われているが、近づいでも大丈夫だろうか。
モニカが僕に気付いて、リヴァイさんに何か言うと、彼らも僕に気が付いたようだ。
僕が起き上がると、上に乗っかっていた青バラちゃんがコロンと地面に転がった。ぐっすり寝ている様で起きない。
変な姿勢になっちゃったから仰向けに戻していると、ずんずんとリヴァイさんが近づいてきた。
「久しぶりだな、シズト殿。孫はできたか?」
「まだ結婚もしてないんですけど!?」
エッチな事はオッケーだとしても、出来ちゃった婚って前世だったらあんまりいい印象持たれないと思う。
避妊具とかなさそうだし、そういう魔道具もありそうなのに生命に関する事だからか分からないけど思いつかないし……等とうだうだ考えていると、リヴァイさんの後を追ってきたパールさんが不思議そうに首を傾げて話に入ってきた。
「勇者が相手だったら式の前に身籠る事なんてよくある事よ? むしろ、積極的に既成事実を作ろうとする輩もいるわ。それが嫌なら、近づいてくる女性には気を付けた方が良いわね」
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