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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

293.事なかれ主義者は慌てて弁解した

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 町の子たちが住んでいる住宅街にあるマーケットの露天商店を一通り見終わると、ぐるりと回りこむように南にある円形闘技場へと向かう。
 会場となるその建物は町の反対側にあるから、ぶっちゃけ畑を突っ切った方が早いんだけど、今はドライアドたちが待ち構えている気がするから……。
 通りを歩いていると、浮遊台車と何度もすれ違ったり追い越されたりする。
 比較的幼い子も台車を押しているからちょっと大変そうだ。今度小さい子用の台車でも作ろうかな。
 そんな事を考えていると、また一台浮遊台車が僕たちを追い越した。
 ただ、載せているものが先程までと違って目を疑った。

「……僕以外で台車に載せられて運ばれる人初めて見たかもしれない」
「そうなんですかぁ。最近、ああやって目的地まで運ぶ事もし始めたみたいですよぉ。魔動列車よりも融通が利いて結構評判が良いみたいですぅ」
「人力車じゃなくて人力台車だね。…………あれ? 人力ではないか……」

 うーん、それっぽい名前は思いつかないけど、まあ何でもいいか。
 お客さんを載せて、結構なスピードで去っていく浮遊台車を見送った。
 それからしばらく歩いていると、工業系の建物がたくさん集まった場所に入った。
 昼夜問わず研鑽を積んでいるドワーフもいれば、木工細工を極めてファマ様の像を作ろうとしつつ片手間で木工品を売っているエルフのお店もある。工房の大きさも大小様々で、とても大きな鍛冶屋もあれば、こぢんまりとしたテントの中で作業をしている者もいる。
 ただ、どの店にも共通するのは、『遮音結界』という魔道具に建物が囲まれている事だ。ただ、以前作った外部からの音を遮るタイプではなく、内部からの音を遮るタイプだ。
 だいぶ前に暇つぶしがてらに作ったコレをレヴィさん経由で工房ギルドに求められた時には何に使うんだろうかと疑問に思ったけど、周りに配慮する必要がなくて、昼も夜も関係なく修練に励むのであればこれは必須だろう。

「……ここら辺はお祭りに向けていろいろ作ってるのかな」
「どうなんでしょうねぇ。お店に入ってみないと分からないですぅ。入ってみますかぁ?」
「んー………やめとこうかな」

 押し売りに捕まっても面倒だし、特に欲しいものがあるわけじゃないから先に進む。
 ここら辺にはマーケットがないけど、その代わりお店の前に荷馬車が停まっていて、材料などを受け渡しているのをよく見かける。
 忙しなく材料を運び込む台車を押した子たちをそれとなく見ながら歩いていたけど、ちょっと疲れたのでどこかで休憩したい。

「ここらへんはぁ、飲み物が基本お酒のお店が多いのでぇ、やめた方が良いと思いますぅ」
「なるほど、無理矢理飲まされると危ないもんね」
「そうではなくてぇ、お酒が飲めないって言うとぉ、バカにされるんですぅ。ドワーフたちにとっては飲める事が当たり前ですからぁ、それができない者は半人前扱いされちゃうんですぅ」
「まあ、まだ一人前とは胸を張って言いきれないからそれでもいいんじゃない?」

 分かんないけど。
 ただ、正直僕が馬鹿にされたらジュリウスが何をするのか不安なのでお店には寄らずに工業区を抜けた。
 円形闘技場が近くなってきた。その近くには駐屯兵たちの宿舎や町の子たち用の公衆浴場がある。
 ここら辺のお店は駐屯兵たち向けの商品が多いらしい。
 店舗型のお店はお酒や安くて量が多い大衆食堂が多い。ラオさんやルウさんが時々ここら辺に来てご飯を食べているって言ってたっけ。
 店の店主は厳つい人が多いけど、店員は綺麗系や可愛い系の若い女性たちが多い。兵士の殆どが男性だから、若い女の子に接客させた方が客集まりやすそうだもんね。

「……女の子たちが気になるんですかぁ?」
「え?」
「じっと見てましたからぁ、てっきりああいう格好の子たちが好みなのかと思いましてぇ。あ、それともタイプな女の子がいたのんですかぁ?」
「そういう訳じゃないけど……」

 接客している子たちはスカート丈が際どい短さだった。胸元も大きく開いている。
 僕も健全な男の子だし、そういうのに目が引かれてしまうけど、別に入りたいわけじゃない。
 メイド服を着た子が路上で宣伝していたらついつい見ちゃうけど、入りたいわけじゃないのとなんか似てる。
 入ったら絶対挙動不審になるし。
 なんか店主さんが残念そうにしているのが見えたけど、無視して足早に進む。

「町の子たちとかに悪影響ないかな?」
「むしろああいう所でそういう欲を発散させてるんじゃないですかねぇ」

 なるほど、一理ある気がする。
 通りを台車に乗って疾走していく子たちはお店の様子なんて気にしていないようだった。
 むしろ変に魔道具で見えないようにした方が気にしちゃうかも?
 首をひねって考えてみたけど、答えは出なかった。

「とりあえずぅ、どこかで休憩しましょうかぁ」
「そうだね」

 ……できるだけ服が普通な所を探していたら結構時間がかかってしまった。
 けれど紅茶にこだわっているお店だったらしく、とても美味しかったから良し!

「シズトくんはぁ、こういう子たちが好きなんですねぇ」
「違うよ!? 服装が普通だったからだよ!? ほんとだよ!!」
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