【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

幕間の物語141.元引きこもり王女はたくさん話した

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 ドラゴニア王国の最南端に新しくできたファマリアの町の中心には、世界樹ファマリーが聳え立っている。
 ファマリーの周囲には、畑が広がっていて『不毛の大地』という名前からかけ離れた印象を見る者に与えるだろう。
 その畑の中にぽつんと立っているのが、不毛の大地の所有者である異世界転移者シズトの屋敷だ。
 夜も更けて、ファマリアの町は静まり返っていたが、シズトの屋敷の窓から漏れ出る光があった。
 その部屋は、普段談話室として使われている部屋だったが、今は部屋の中央に設置された円卓を囲んで女性たちが黙って座っていた。
 その内の一人であるレヴィアは、眠たそうに目を擦っている。既に露出の少ない肌触りの良さそうな寝間着に着替えた彼女は、時計を見た。
 魔道具化されたそれは寸分の狂いなく時を刻んでいる。

「……まだ来ないですわね」
「ノエルが駄々を捏ねているのかもしれません」
「ん、私もそう思う」

 メイド服姿のセシリアが、珍しく主人の後ろには立たずに、主人と同じ円卓を囲んでいた。
 姿勢よく座った彼女と対照的に、ドーラはだらけた様子で椅子に座り、円卓にぴたっと頬を付けていた。
 ドーラの隣に座っているユキは退屈そうに欠伸をした。だが、突然何かに気付いたのか、魔法使い然としたローブではなく、薄手の寝間着を着た彼女は扉に視線を向けた。
 それからしばらくして、数人分の足音が近づいて来ている事に他の者たちも気づいた。
 扉が開くと、最初に中に入ってきたのはノエルを引き摺ってきたホムラだ。
 彼女は同じホムンクルスであるユキ同様、薄手の寝間着を着ていた。
 彼女は両手でノエルの両足首を持って引き摺ってきたようだ。ノエルはもう抵抗するだけ無駄だと悟ったのか、連行される前に何とか確保した魔道具をジッと見ていた。
 引き摺られて運ぶノエルを呆れた様子で見ながら入ってきたのは、いまだにメイド服姿のままのエミリーと、武装したシンシーラだ。
 背中が大きく開いた翼人用の寝間着を着たパメラはどうでもよさそうに追い越してすぐに席に着いた。
 モニカは最後に入ってきて扉を閉め、円卓の席に着く。

「ジューンは今日、シズトの当番ですわね。全員集まったようだから、話を始めようと思うのですわ」
「あのー、レヴィア様。だいたいお話の内容については察しがついているんですけど、私たちがいても大丈夫なんですか?」

 エミリーがそう尋ねると、レヴィアは鷹揚に頷く。

「問題ないのですわ。むしろ、あなたたちが今日の議題の中心なのですわ」
「どんな事を話すつもりじゃん?」
「遊びの話デスか?」
「違うのですわ。話というのはシズトのお世話係の当番の事ですわ。あなたたちが加わる意思があるのかの確認と、今後についての相談をしようと思うのですわ」
「加わるに決まってるじゃん」

 若干食い気味にシンシーラが答えた。勢いよく立ち上がった事で椅子が倒れる。
 それを気にした様子もなく手を挙げたエミリーも「私も加わりたいです」と答えた。真っ白でモフモフな尻尾はパタパタと振られている。

「分かったのですわ。……それで、残りの三人はどうするのですわ?」
「魔道具の研究で忙しいっすけど、まあ、そのくらいの務めくらい果たしてもいいっす」
「別に果たさなくてもいいですわ。やりたがる人はそれこそ山のようにいるのですわ」
「…………え?」
「はぁ。ノエル、照れ隠しで思ってもいない事を言うからそう返されるんですよ」
「て、照れ隠しじゃないっす!」

 頬を赤く染めて主張するノエルに、モニカが冷ややかな視線を向けた。淡々と彼女は確認をする。

「じゃあ、当番をさせていただかなくて大丈夫なんですね。シズト様との仲を深める最も効果的な物だと思いますが」
「そ、そうは言ってないっす! ボクはいつも夜になると無理やり眠らされてるから、そのくらいの時間なら作れなくもないと思うっす」
「そうですか。だ、そうですよ、レヴィア様」
「分かったのですわ。……そういうモニカはどうするのですわ?」
「私も、加わらせて頂けたらと思います」
「気にしていた事に関しては私の方で手を打っておくから気にしなくていいのですわ」
「ありがとうございます」
「……パメラはどうするのですわ?」

 レヴィアが視線を向けると、それまで魔力マシマシ飴をひたすら舐めていたパメラはハッと顔をあげた。

「楽しければ何でもやりたいデス!」
「……まあ、いいですわ。一人でも欠けていたらシズトがそれを理由に断るかもしれなかったですし、モニカとノエルが加わってくれて良かったですわ。それじゃあ今後の事についてですけれど、当面の問題は一週間に一度回ってくるか来ないかくらいの頻度だった世話係が、さらに頻度が下がってしまう事ですわね」
「私たちのように二人で行うという事も一つの方法ではありますが……」
「平民であれば、どうせならシズトを独り占めにしたい、と思うのは当然ですわね」
「普通に元貴族でもそう思いますよ」
「そうですわ? まあ、いいですわ。この件については、また全員がいる時に確認を取ってみるのですわ。とりあえず、明日以降に関してなのですけれど、モニカを主体に順番を決めておいて欲しいのですわ。一先ず一人ずつで構わないのですわ」
「かしこまりました」

 ぺこりと頭を下げるモニカを見て、レヴィアは満足した様子で頷いた。
 話し合う事は話し終えたのだが、その後も部屋の明かりはついたまま。
 中ではシズトについての話が延々とされ続けるのだった。
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