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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
289.事なかれ主義者はキープした
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ジューンさんと森の中を歩いていると、褐色肌のドライアドたちが草むらの中からひょこっと顔を出したり、木の上からするーっと降りて来たりして挨拶と共に育てていた植物由来の物を渡してくる。
ニコニコしながら受け取ってくれるだろうと確信しているドライアドたちの好意を無下にする訳にもいかず、お礼を言って受け取っては「今はお腹がいっぱいだから、後で食べるね」と伝えてアイテムバッグの中にズボっと入れる。
どれか一口でも食べると、ドライアドたちは自分のも食べて! ってなるのはファマリアとユグドラシルの子たちで経験済みだ。
「それにしても、果物系が多いね。大陸の南の方だからとかそんな感じかな? 季節関係なく育ててるイメージだったけど」
「そうですねぇ。彼女たちの魔法である程度自由に育てられるはずですからぁ、単純にここの子たちの好みなのかもしれませんねぇ」
今日からしばらくデザートに困る事はなさそうだな、と思いながらまたドライアドから果物を受け取ってアイテムバッグの中にしまう。
森の小道から外れて様子を見て回るけど、植物はどれも元気に育っているみたい。
ただ、青バラちゃんが言っていた嫌な感じの影響があるかもしれないから、念のためアイテムバッグの中から『魔動測定器』を取り出す。
世界樹の記録係がレヴィさんに移ってから僕が使う事はほとんどなかった魔道具だ。
見た目虫眼鏡のそれを気になる植物にかざすだけ……なんだけど、ちょっと今は魔力が心許ないのでジューンさんに使ってもらった。
大体植物の健康状態は良好なようだ。
季節や気候を無視して育てられていた植物はちょっと危ない所だったけど、小さなドライアドたちが一生懸命お世話をしていたからきっと大丈夫だろう。それに、本当にやばい時はきっとドライアドたちから加護を使ってほしいとお願いされるだろうし、今は放置でいいや。
「……動物たちも戻ってきているみたいですねぇ」
ジューンさんが見上げていたのでそちらを見ると、木の上に色鮮やかな鳥が数羽こちらを見ていた。
耳をすませばそこら中から動物たちの鳴き声や、草が揺れる音がする。
「このまま続ければ、問題なさそうだね」
「そうですねぇ。頑張ってくださぁい」
頭を撫でてくるジューンさんから逃げて先に行く。
世界樹トネリコの周りをぐるりと一周する程度で散策は止めたけど、ファマリーの根元に戻る頃にはお昼の時間になっていた。
昼食は人数が少なくて静かだな、と少し寂しく感じていたらその様子を見て給仕を終えたエミリーたちが同席してくれた。
「今回だけですからね」
「ありがと」
「別にシズト様が礼を言う事じゃないじゃん。むしろ、私たちが礼を言う方じゃん」
いつもホムラとユキが座っている一番近い席には獣人コンビが座った。
エミリーたちはジューンさんに譲ろうとしたみたいだけど「今日はずっと一緒にいますからぁ」と、ジューンさんは二人に譲っていた。
プロポーズ的な事を意図せずしてしまっていた事を知ってからちょっと気まずかったけど、二人の様子を窺って見るといつも通りだった。
エミリーはすました顔でユキが座っている場所に座っている。その隣左隣にはジューンさんが座っていて、ニコニコとエミリーの横顔を見ていた。
「なによ」
「なんでもないよぉ」
……同じ場所で働いているからか、二人とも敬語を使っていない。
エミリーは時々他の人と話をしている時に聞いた事があったけど、ジューンさんは基本的に敬語を使っていたから意外だ。
エミリーの向かい側に座っているシンシーラに視線を向けると、彼女は僕の横顔をじっと見ていたようで、視線が合うと、ニィッと笑った。
その隣には珍しくノエルが昼食の席に着いている。僕の視線に気づいたのか、彼女は持ってきていた魔道具から目を離して、僕の方をジトッとした目で見てきた。
「何すか? 何か言いたい事でもあるんすか?」
「いや、別に。ただ珍しいなぁ、って思っただけ」
「モニカに言われたから仕方なく来ただけっす。他意はないっす」
「ほんとじゃん?」
「ほんとっすよ」
「確かにお呼びしましたが、今日が特別という訳ではなく、いつもお呼びしてますよ」
ノエルの隣に座っていたモニカが淡々とそう言うと、ノエルは「今日はノルマが少なくて余裕があっただけっすよ!」と僕の方を見て主張してきた。
いや、たぶんそうだろうなって思ってたから疑ってないんだけど。
「っていうか、埃が立つから二人とも尻尾を振るのやめるっす!」
「嬉しいと勝手に動くんだから仕方ないじゃん」
「いつも食後に走って部屋から出て行くあなたには言われたくないわよ」
「どうでもいいから早く食べるデス! 食べて食後のデザート貰うデスよ!」
口げんかに発展しそうなところを、ジューンさんの隣に座ってパタパタと羽と足を動かしていたパメラが机をバンバンと叩く。
デザートはともかく、せっかく作ってくれたご飯が冷めたら申し訳ないのでさっさと頂こう。
皆で食事前の挨拶を唱和して、のんびりと食べた。
パメラが楽しみにしていた食後のデザートは、褐色肌のドライアドちゃんたちから貰ったいろいろなフルーツだった。
それをみんなで分け合ったけど、まだまだたくさんあるからまた夜も出してもらおう。
「ちょっとパメラ、アンタ食べすぎ! シズト様の分がなくなっちゃうでしょ!!」
「早い者勝ちデース!」
……美味しかったメロンもどきをそっと自分の近くに確保した。
ニコニコしながら受け取ってくれるだろうと確信しているドライアドたちの好意を無下にする訳にもいかず、お礼を言って受け取っては「今はお腹がいっぱいだから、後で食べるね」と伝えてアイテムバッグの中にズボっと入れる。
どれか一口でも食べると、ドライアドたちは自分のも食べて! ってなるのはファマリアとユグドラシルの子たちで経験済みだ。
「それにしても、果物系が多いね。大陸の南の方だからとかそんな感じかな? 季節関係なく育ててるイメージだったけど」
「そうですねぇ。彼女たちの魔法である程度自由に育てられるはずですからぁ、単純にここの子たちの好みなのかもしれませんねぇ」
今日からしばらくデザートに困る事はなさそうだな、と思いながらまたドライアドから果物を受け取ってアイテムバッグの中にしまう。
森の小道から外れて様子を見て回るけど、植物はどれも元気に育っているみたい。
ただ、青バラちゃんが言っていた嫌な感じの影響があるかもしれないから、念のためアイテムバッグの中から『魔動測定器』を取り出す。
世界樹の記録係がレヴィさんに移ってから僕が使う事はほとんどなかった魔道具だ。
見た目虫眼鏡のそれを気になる植物にかざすだけ……なんだけど、ちょっと今は魔力が心許ないのでジューンさんに使ってもらった。
大体植物の健康状態は良好なようだ。
季節や気候を無視して育てられていた植物はちょっと危ない所だったけど、小さなドライアドたちが一生懸命お世話をしていたからきっと大丈夫だろう。それに、本当にやばい時はきっとドライアドたちから加護を使ってほしいとお願いされるだろうし、今は放置でいいや。
「……動物たちも戻ってきているみたいですねぇ」
ジューンさんが見上げていたのでそちらを見ると、木の上に色鮮やかな鳥が数羽こちらを見ていた。
耳をすませばそこら中から動物たちの鳴き声や、草が揺れる音がする。
「このまま続ければ、問題なさそうだね」
「そうですねぇ。頑張ってくださぁい」
頭を撫でてくるジューンさんから逃げて先に行く。
世界樹トネリコの周りをぐるりと一周する程度で散策は止めたけど、ファマリーの根元に戻る頃にはお昼の時間になっていた。
昼食は人数が少なくて静かだな、と少し寂しく感じていたらその様子を見て給仕を終えたエミリーたちが同席してくれた。
「今回だけですからね」
「ありがと」
「別にシズト様が礼を言う事じゃないじゃん。むしろ、私たちが礼を言う方じゃん」
いつもホムラとユキが座っている一番近い席には獣人コンビが座った。
エミリーたちはジューンさんに譲ろうとしたみたいだけど「今日はずっと一緒にいますからぁ」と、ジューンさんは二人に譲っていた。
プロポーズ的な事を意図せずしてしまっていた事を知ってからちょっと気まずかったけど、二人の様子を窺って見るといつも通りだった。
エミリーはすました顔でユキが座っている場所に座っている。その隣左隣にはジューンさんが座っていて、ニコニコとエミリーの横顔を見ていた。
「なによ」
「なんでもないよぉ」
……同じ場所で働いているからか、二人とも敬語を使っていない。
エミリーは時々他の人と話をしている時に聞いた事があったけど、ジューンさんは基本的に敬語を使っていたから意外だ。
エミリーの向かい側に座っているシンシーラに視線を向けると、彼女は僕の横顔をじっと見ていたようで、視線が合うと、ニィッと笑った。
その隣には珍しくノエルが昼食の席に着いている。僕の視線に気づいたのか、彼女は持ってきていた魔道具から目を離して、僕の方をジトッとした目で見てきた。
「何すか? 何か言いたい事でもあるんすか?」
「いや、別に。ただ珍しいなぁ、って思っただけ」
「モニカに言われたから仕方なく来ただけっす。他意はないっす」
「ほんとじゃん?」
「ほんとっすよ」
「確かにお呼びしましたが、今日が特別という訳ではなく、いつもお呼びしてますよ」
ノエルの隣に座っていたモニカが淡々とそう言うと、ノエルは「今日はノルマが少なくて余裕があっただけっすよ!」と僕の方を見て主張してきた。
いや、たぶんそうだろうなって思ってたから疑ってないんだけど。
「っていうか、埃が立つから二人とも尻尾を振るのやめるっす!」
「嬉しいと勝手に動くんだから仕方ないじゃん」
「いつも食後に走って部屋から出て行くあなたには言われたくないわよ」
「どうでもいいから早く食べるデス! 食べて食後のデザート貰うデスよ!」
口げんかに発展しそうなところを、ジューンさんの隣に座ってパタパタと羽と足を動かしていたパメラが机をバンバンと叩く。
デザートはともかく、せっかく作ってくれたご飯が冷めたら申し訳ないのでさっさと頂こう。
皆で食事前の挨拶を唱和して、のんびりと食べた。
パメラが楽しみにしていた食後のデザートは、褐色肌のドライアドちゃんたちから貰ったいろいろなフルーツだった。
それをみんなで分け合ったけど、まだまだたくさんあるからまた夜も出してもらおう。
「ちょっとパメラ、アンタ食べすぎ! シズト様の分がなくなっちゃうでしょ!!」
「早い者勝ちデース!」
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