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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
285.事なかれ主義者は目を逸らした
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ルウさんと一緒にファマリアの町をぶらぶらと歩いた。
歩き疲れる前に、ルウさんがお店を見つけてくれたので、その度にカフェのようなお店に入ってはゆっくり過ごす。
入ったお店はどこもお客さんの大多数が首輪をつけた人たちだった。
お店に入る度に時が止まったかのような感覚を味わう。
申し訳ない気持ちになりながらも、三十分くらい滞在して、飲み物と甘いスイーツを堪能した。
普通に高かったけど、周りのお客さんたちは数人でお金を出し合ってスイーツを頼み、それぞれ個別で頼んだ飲み物と一緒に楽しんでいる様だった。
散策を続けていると、食べ歩きをしている通行人とよくすれ違う。
やっぱり殆どが奴隷の首輪をつけている。
魔物の肉を串焼きにした物や、揚げた物を美味しそうに食べている子たちもいれば、焼きそばやたこ焼きもどきを仲良く分け合っている子たちもいた。
魔道具を売ったり、世界樹の素材の売却費などの貯まりに貯まったお金をお小遣いとして奴隷たちに配ってみたけど、良い感じに経済が回っているようだ。一人じゃ使いきれない金額な気がするし今後も問題なければ続けよう。
「でも分け合って食べているって事は、個人で楽しむには足りないって事だよね」
「そうだと思うけど、あまり奴隷にお金を上げ過ぎない方が良いんじゃないかしら? ここじゃほとんど起きないけど、無理矢理奪おうとする人が出てくるかもしれないわ。奴隷が持っている物なら奪ってもいい、って考える人も一定数いるんだから」
「んー、なるほど。……冒険者に警備依頼を出すか、戦闘奴隷を集めて自警団みたいな組織を作るとか? お金を持たせるにしても持たせないにしても、治安は良くしたいし」
雇うためにもお金が使えるし、奴隷たちも安心して過ごせるし、ありかも?
「戦闘奴隷の中には気性が荒い人もいるから、もしも買うならしっかりと事前に調査はしなきゃだめよ? ……今は、冒険者を引退した人たちが、魔石拾いをしない時は町の通りとかで見守ってくれているけど、現役の人が暴れるんだから現役の人がいた方が良いわよね。冒険者の心当たりはあるから、そっちはお姉ちゃんに任せてくれてもいいわ」
「んー、考えとく」
治安維持だけであればジュリウスに頼めばそれ相応の数のエルフが町に放たれる事になるけど……どんどん貯まってるだろうしな、お金。
富が一カ所に集中するのは良くないって何かで聞いた気がするし、できるだけお金を町に落とそう。
ルウさんとのお散歩を終えて屋敷に戻る頃には日が暮れ始めていた。
疲れる度にお店に入ってのんびり過ごしていたからだろう。
ちょっとお腹がまだ空いていないので先にお風呂に入ろうかな。
「かしこまりました、その様に伝えておきます」
出迎えてくれた黒髪の女の子モニカがぺこりと頭を下げた。
それから踵を返して食堂の方へと向かって行く。
途中までは同じ道なので彼女の後について歩きながらルウさんの方を見る。
「……ルウさんも一緒に入るの?」
「当然よ? 今日はお姉ちゃんがシズトくんのお世話係なんだから」
ルウさんは、ニコニコしながら答えた。
脱衣所に入ると、アイテムバッグから布面積が極端に少ない水着を取り出したルウさんに見えない所で着替えてもらって、僕はササッと服を脱いでタオルを腰に巻く。
先に行ったルウさんの後を追って浴室へと向かうと、広い空間に出た。多種多様のお風呂が並んでいる。
時間はそこそこあるし、いろんなお風呂を試そうかな、なんて事を考えていると、脱衣所の方の扉を誰かがガラガラッと開けた。
現れたのは先程皆に「先にお風呂入る」と伝えに行ってくれたモニカだった。
「シズト様。公認奴隷商人のブライアン様がいらっしゃいました」
「え、もう!?」
「いかがなさいますか?」
え、連絡入れたの昨日だよね。
めっちゃ急いでやってきたのかな。それにしても早すぎる気がするんだけど……。
まあ、ホムラ経由でたくさんの奴隷を買っているからお得意様ではあるのか。それなら商機を逃さないためにめちゃくちゃ急いでやってきてくれたのかもしれない。
「とりあえず、応接に通しておいて」
「かしこまりました」
「という事で、のんびりゆっくりお風呂に入る事はまた後でだね。とりあえずささっと洗いたいから頭と背中早く洗って」
「分かったわ」
……結局、ニコニコしたルウさんにいつも通り体を洗われて、そのままお風呂に入ったり水風呂に入れられたりしていたら時間がかかってしまった。
来客対応するという事で、待っていたジューンさんが僕の髪の毛をすぐに乾かしてくれたので、すぐに着替えて応接室に向かう。
緊張しつつ扉を開くと、中では見覚えのある人が待っていた。奴隷商人のブライアンさんだ。他にも、今回奴隷から解放する予定の本館に住む奴隷たちが集まっていた。
魔道具狂いのノエルでさえ、きちんといた。暇そうに足をぶらぶらさせている。
「早くしてほしいっすー」
「はいはい。ブライアンさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです、シズト様。お元気にされていましたか?」
「毎日魔力切れで寝てるけど、普通に元気です」
「それは良かったです。本日お持ちしたのは奴隷契約の解消と伺っておりましたが、間違いなかったでしょうか?」
「はい、大丈夫です。お願いします」
では早速、とはならずに奴隷たちを断って待たせたまま、奴隷解放のための書類にサインなどをした。
その後、一人ずつ奴隷解放のための儀式を行って、晴れて自由の身となっていく。
ただ、儀式を行う前にノエルが僕の前にやってきて、首を傾げて問いかけてくる。
「貴族の相手しなくていいんすよね!」
「……コメントは差し控えさせていただきます」
そう言ったらノエルが「しっかり答えて欲しいっす!」等と煩かったけど、騒ぎを聞きつけて部屋に入ってきたホムラに確保され、そのまま奴隷から解放された。
他に適任者が見つかったらその人に任せるから、早く見つかる事を祈ってて。
歩き疲れる前に、ルウさんがお店を見つけてくれたので、その度にカフェのようなお店に入ってはゆっくり過ごす。
入ったお店はどこもお客さんの大多数が首輪をつけた人たちだった。
お店に入る度に時が止まったかのような感覚を味わう。
申し訳ない気持ちになりながらも、三十分くらい滞在して、飲み物と甘いスイーツを堪能した。
普通に高かったけど、周りのお客さんたちは数人でお金を出し合ってスイーツを頼み、それぞれ個別で頼んだ飲み物と一緒に楽しんでいる様だった。
散策を続けていると、食べ歩きをしている通行人とよくすれ違う。
やっぱり殆どが奴隷の首輪をつけている。
魔物の肉を串焼きにした物や、揚げた物を美味しそうに食べている子たちもいれば、焼きそばやたこ焼きもどきを仲良く分け合っている子たちもいた。
魔道具を売ったり、世界樹の素材の売却費などの貯まりに貯まったお金をお小遣いとして奴隷たちに配ってみたけど、良い感じに経済が回っているようだ。一人じゃ使いきれない金額な気がするし今後も問題なければ続けよう。
「でも分け合って食べているって事は、個人で楽しむには足りないって事だよね」
「そうだと思うけど、あまり奴隷にお金を上げ過ぎない方が良いんじゃないかしら? ここじゃほとんど起きないけど、無理矢理奪おうとする人が出てくるかもしれないわ。奴隷が持っている物なら奪ってもいい、って考える人も一定数いるんだから」
「んー、なるほど。……冒険者に警備依頼を出すか、戦闘奴隷を集めて自警団みたいな組織を作るとか? お金を持たせるにしても持たせないにしても、治安は良くしたいし」
雇うためにもお金が使えるし、奴隷たちも安心して過ごせるし、ありかも?
「戦闘奴隷の中には気性が荒い人もいるから、もしも買うならしっかりと事前に調査はしなきゃだめよ? ……今は、冒険者を引退した人たちが、魔石拾いをしない時は町の通りとかで見守ってくれているけど、現役の人が暴れるんだから現役の人がいた方が良いわよね。冒険者の心当たりはあるから、そっちはお姉ちゃんに任せてくれてもいいわ」
「んー、考えとく」
治安維持だけであればジュリウスに頼めばそれ相応の数のエルフが町に放たれる事になるけど……どんどん貯まってるだろうしな、お金。
富が一カ所に集中するのは良くないって何かで聞いた気がするし、できるだけお金を町に落とそう。
ルウさんとのお散歩を終えて屋敷に戻る頃には日が暮れ始めていた。
疲れる度にお店に入ってのんびり過ごしていたからだろう。
ちょっとお腹がまだ空いていないので先にお風呂に入ろうかな。
「かしこまりました、その様に伝えておきます」
出迎えてくれた黒髪の女の子モニカがぺこりと頭を下げた。
それから踵を返して食堂の方へと向かって行く。
途中までは同じ道なので彼女の後について歩きながらルウさんの方を見る。
「……ルウさんも一緒に入るの?」
「当然よ? 今日はお姉ちゃんがシズトくんのお世話係なんだから」
ルウさんは、ニコニコしながら答えた。
脱衣所に入ると、アイテムバッグから布面積が極端に少ない水着を取り出したルウさんに見えない所で着替えてもらって、僕はササッと服を脱いでタオルを腰に巻く。
先に行ったルウさんの後を追って浴室へと向かうと、広い空間に出た。多種多様のお風呂が並んでいる。
時間はそこそこあるし、いろんなお風呂を試そうかな、なんて事を考えていると、脱衣所の方の扉を誰かがガラガラッと開けた。
現れたのは先程皆に「先にお風呂入る」と伝えに行ってくれたモニカだった。
「シズト様。公認奴隷商人のブライアン様がいらっしゃいました」
「え、もう!?」
「いかがなさいますか?」
え、連絡入れたの昨日だよね。
めっちゃ急いでやってきたのかな。それにしても早すぎる気がするんだけど……。
まあ、ホムラ経由でたくさんの奴隷を買っているからお得意様ではあるのか。それなら商機を逃さないためにめちゃくちゃ急いでやってきてくれたのかもしれない。
「とりあえず、応接に通しておいて」
「かしこまりました」
「という事で、のんびりゆっくりお風呂に入る事はまた後でだね。とりあえずささっと洗いたいから頭と背中早く洗って」
「分かったわ」
……結局、ニコニコしたルウさんにいつも通り体を洗われて、そのままお風呂に入ったり水風呂に入れられたりしていたら時間がかかってしまった。
来客対応するという事で、待っていたジューンさんが僕の髪の毛をすぐに乾かしてくれたので、すぐに着替えて応接室に向かう。
緊張しつつ扉を開くと、中では見覚えのある人が待っていた。奴隷商人のブライアンさんだ。他にも、今回奴隷から解放する予定の本館に住む奴隷たちが集まっていた。
魔道具狂いのノエルでさえ、きちんといた。暇そうに足をぶらぶらさせている。
「早くしてほしいっすー」
「はいはい。ブライアンさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです、シズト様。お元気にされていましたか?」
「毎日魔力切れで寝てるけど、普通に元気です」
「それは良かったです。本日お持ちしたのは奴隷契約の解消と伺っておりましたが、間違いなかったでしょうか?」
「はい、大丈夫です。お願いします」
では早速、とはならずに奴隷たちを断って待たせたまま、奴隷解放のための書類にサインなどをした。
その後、一人ずつ奴隷解放のための儀式を行って、晴れて自由の身となっていく。
ただ、儀式を行う前にノエルが僕の前にやってきて、首を傾げて問いかけてくる。
「貴族の相手しなくていいんすよね!」
「……コメントは差し控えさせていただきます」
そう言ったらノエルが「しっかり答えて欲しいっす!」等と煩かったけど、騒ぎを聞きつけて部屋に入ってきたホムラに確保され、そのまま奴隷から解放された。
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