423 / 1,094
第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
284.事なかれ主義者は流れる景色をあまり見れなかった
しおりを挟む
世界樹トネリコのお世話はサクッと終わらせた。
褐色の肌のドライアドちゃんたちと青バラちゃんに見送られ、ファマリーの根元に戻ってくると、目の前にルウさんがニコニコしながら待っていた。
大きなつばの帽子を被ったルウさんが手を差し出してくる。
「さ、シズトくん。行きましょ?」
「護衛はどうするの?」
「ジュリウスと世界樹の番人たちが少し離れたところでするみたいよ」
ルウさんの視線を追って屋敷の屋根を見上げると、ジュリウスが僕の方を見ていた。視線が合うと軽く会釈された。
手を挙げて返事をしてから、ルウさんに視線を戻す。
「なら大丈夫そうだね。それで、どこに行くの?」
「特に決めてないわ。シズトくん、最近お出かけしてなかったでしょう? たくさんお店が出来てるみたいだから、散歩しながら見て回ろうかなって思って」
なるほど。
不毛の大地は一応僕の土地だけど、そこの土地を貸す形でお店が開かれている。
ただ、そこら辺はホムラに全部任せているので正直どんなお店があるのか知らない。
変なお店がないか抜き打ちチェックするのもおもし……大事な気がする。
じゃあまずは町へ向かうか、と思って歩き出すとルウさんが横に並んで手を繋がれた。
……身長差どうにかした方が良い気がする。
隣でルウさんが歩く度に揺れる大きな物を意識から何とか外そうとしながら歩いていると、ドライアドたちが僕に興味を持って寄ってきた。
「にんげんさんだー」
「どこいくの~」
「町に散歩しに行くんだよ」
「レモン!」
「レモンはまた今度マーマレードとかにするね」
レモンちゃんが差し出してきたレモンを有難く受け取って、鞄の中に入れる。
レモンちゃんは満足した様子で畑の方に戻っていった。
他の子たちは気になるのかぞろぞろとついて来て、それを見たドライアドがさらに加わる。
畑の中に入らないように間の道を歩くため、縦に長く伸びた列が出来上がった。
後ろを振り返るとドライアドたちの頭に生えた色とりどりの花がゆらゆらと揺れている。
こんな感じで花が咲いた変な生き物が並んでついて来るゲームあったな。
見た目が幼女だからドライアドたちを投げる事はできそうにないけど。
「順調に育ってるわね」
「え?」
「ほら、ここら辺。私たちの畑でしょう?」
「そうだったっけ?」
時々、魔力が余っている時は生育の加護を使っていたけど、基本的に魔動散水機任せにしていたからあんまり覚えてないや。
流石に場所だけでも覚えといた方が良いような気もする。
ルウさんの視線を追うと、エルフのジュリーンとダーリアがせっせと雑草を抜いている様だった。
「掃除や洗濯が簡単に終わってしまうから、その分余った時間はああして過ごしているそうよ」
「なるほど。………草が生えなくなる魔道具は作ろうと思えば作れそうだけど、雑草をピンポイントで生えなくするのは無理そうだから、今後も頑張ってもらうしかないかな。ていうか、僕雑草を抜くのサボってたんだけど大丈夫かな」
「わたしたちぬいてる!」
「そうなの?」
「そうなのー」
「たくさんぬいて、おいしいつちにするの!」
「にんげんさんたちのはたけ、あんまりくさのこってないの」
「にんげんさんのところたくさんのこってるからうれしいのー」
ドライアドたちはドライアドたちの都合で僕の畑を管理してくれていたみたいだけど、普通にありがたい。今度堆肥をプレゼントする事を約束したら、他の皆に伝えるために嬉しそうに散っていった。
ちょっと草集めしなきゃいけないかも……あ、自分で雑草を育てればいいのか。
……雑草を抜いてもらうために雑草を育てるってどうなんだろう。
畑地帯を抜けて町に足を踏み入れると、視線が僕に集まる。
奴隷たちはチラチラと僕を見ているし、商人たちは僕を見て何かひそひそ話をしている。中にはぎらついた目で僕を見ている人もいたけど、ちょっと視線を外した隙にどこかに消えてしまった。
「ここら辺は古い区画だから、もっと外に行きましょ」
そう言ってルウさんに連れて来られたのは、簡易的な駅だった。
屋根だけがある建物の下で待っていると、歩く速度よりも少し早いくらいのスピードで線路の上をトロッコが走り、こっちに向かってきた。
決められた場所からだいぶずれたが、トロッコは無事に停まって乗っていた子どもたちがわらわらと下りていく。
トロッコに唯一残った先頭の車両に乗っていた女の子が待っている僕たちの方を見て叫ぶ。
「ほらほらアンタたち! ボケッとしてないでさっさと乗りな、って、シズト様!? す、すみません。逆走できないので、歩いていただいてお乗り頂いてもよろしいでしょうか!!」
元気な茶髪の女の子が目をまん丸にして驚くと、アタフタとしている。
降りる素振りを何度か見せたが迷っている様子だ。降りないようにと言われているのかもしれない。
全然他の人が乗り込まないのはなんでだろう、と思って同じく駅で待っていた周囲の人たちを見ると、サッと視線を下に向けられた。全員奴隷だったわ。
「ほら、皆も一緒に乗るよ」
って、ちゃんと伝えないと乗ってくれないかもしれないので、きちんと伝えてからトロッコに向かう。
ルウさんにひょいっと持ち上げられてトロッコに乗せられ、ルウさんも一緒の車両に乗り込むとそれだけでいっぱいになった。
座ったルウさんが僕のお腹に手を回してギュッと抱きしめてくるので、ルウさんを背もたれにするような形で座る事になったんだけど……背中というか、後頭部に柔らかい物が当たっている気がして周囲を気にする余裕なんてなかった。
褐色の肌のドライアドちゃんたちと青バラちゃんに見送られ、ファマリーの根元に戻ってくると、目の前にルウさんがニコニコしながら待っていた。
大きなつばの帽子を被ったルウさんが手を差し出してくる。
「さ、シズトくん。行きましょ?」
「護衛はどうするの?」
「ジュリウスと世界樹の番人たちが少し離れたところでするみたいよ」
ルウさんの視線を追って屋敷の屋根を見上げると、ジュリウスが僕の方を見ていた。視線が合うと軽く会釈された。
手を挙げて返事をしてから、ルウさんに視線を戻す。
「なら大丈夫そうだね。それで、どこに行くの?」
「特に決めてないわ。シズトくん、最近お出かけしてなかったでしょう? たくさんお店が出来てるみたいだから、散歩しながら見て回ろうかなって思って」
なるほど。
不毛の大地は一応僕の土地だけど、そこの土地を貸す形でお店が開かれている。
ただ、そこら辺はホムラに全部任せているので正直どんなお店があるのか知らない。
変なお店がないか抜き打ちチェックするのもおもし……大事な気がする。
じゃあまずは町へ向かうか、と思って歩き出すとルウさんが横に並んで手を繋がれた。
……身長差どうにかした方が良い気がする。
隣でルウさんが歩く度に揺れる大きな物を意識から何とか外そうとしながら歩いていると、ドライアドたちが僕に興味を持って寄ってきた。
「にんげんさんだー」
「どこいくの~」
「町に散歩しに行くんだよ」
「レモン!」
「レモンはまた今度マーマレードとかにするね」
レモンちゃんが差し出してきたレモンを有難く受け取って、鞄の中に入れる。
レモンちゃんは満足した様子で畑の方に戻っていった。
他の子たちは気になるのかぞろぞろとついて来て、それを見たドライアドがさらに加わる。
畑の中に入らないように間の道を歩くため、縦に長く伸びた列が出来上がった。
後ろを振り返るとドライアドたちの頭に生えた色とりどりの花がゆらゆらと揺れている。
こんな感じで花が咲いた変な生き物が並んでついて来るゲームあったな。
見た目が幼女だからドライアドたちを投げる事はできそうにないけど。
「順調に育ってるわね」
「え?」
「ほら、ここら辺。私たちの畑でしょう?」
「そうだったっけ?」
時々、魔力が余っている時は生育の加護を使っていたけど、基本的に魔動散水機任せにしていたからあんまり覚えてないや。
流石に場所だけでも覚えといた方が良いような気もする。
ルウさんの視線を追うと、エルフのジュリーンとダーリアがせっせと雑草を抜いている様だった。
「掃除や洗濯が簡単に終わってしまうから、その分余った時間はああして過ごしているそうよ」
「なるほど。………草が生えなくなる魔道具は作ろうと思えば作れそうだけど、雑草をピンポイントで生えなくするのは無理そうだから、今後も頑張ってもらうしかないかな。ていうか、僕雑草を抜くのサボってたんだけど大丈夫かな」
「わたしたちぬいてる!」
「そうなの?」
「そうなのー」
「たくさんぬいて、おいしいつちにするの!」
「にんげんさんたちのはたけ、あんまりくさのこってないの」
「にんげんさんのところたくさんのこってるからうれしいのー」
ドライアドたちはドライアドたちの都合で僕の畑を管理してくれていたみたいだけど、普通にありがたい。今度堆肥をプレゼントする事を約束したら、他の皆に伝えるために嬉しそうに散っていった。
ちょっと草集めしなきゃいけないかも……あ、自分で雑草を育てればいいのか。
……雑草を抜いてもらうために雑草を育てるってどうなんだろう。
畑地帯を抜けて町に足を踏み入れると、視線が僕に集まる。
奴隷たちはチラチラと僕を見ているし、商人たちは僕を見て何かひそひそ話をしている。中にはぎらついた目で僕を見ている人もいたけど、ちょっと視線を外した隙にどこかに消えてしまった。
「ここら辺は古い区画だから、もっと外に行きましょ」
そう言ってルウさんに連れて来られたのは、簡易的な駅だった。
屋根だけがある建物の下で待っていると、歩く速度よりも少し早いくらいのスピードで線路の上をトロッコが走り、こっちに向かってきた。
決められた場所からだいぶずれたが、トロッコは無事に停まって乗っていた子どもたちがわらわらと下りていく。
トロッコに唯一残った先頭の車両に乗っていた女の子が待っている僕たちの方を見て叫ぶ。
「ほらほらアンタたち! ボケッとしてないでさっさと乗りな、って、シズト様!? す、すみません。逆走できないので、歩いていただいてお乗り頂いてもよろしいでしょうか!!」
元気な茶髪の女の子が目をまん丸にして驚くと、アタフタとしている。
降りる素振りを何度か見せたが迷っている様子だ。降りないようにと言われているのかもしれない。
全然他の人が乗り込まないのはなんでだろう、と思って同じく駅で待っていた周囲の人たちを見ると、サッと視線を下に向けられた。全員奴隷だったわ。
「ほら、皆も一緒に乗るよ」
って、ちゃんと伝えないと乗ってくれないかもしれないので、きちんと伝えてからトロッコに向かう。
ルウさんにひょいっと持ち上げられてトロッコに乗せられ、ルウさんも一緒の車両に乗り込むとそれだけでいっぱいになった。
座ったルウさんが僕のお腹に手を回してギュッと抱きしめてくるので、ルウさんを背もたれにするような形で座る事になったんだけど……背中というか、後頭部に柔らかい物が当たっている気がして周囲を気にする余裕なんてなかった。
69
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる