【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

284.事なかれ主義者は流れる景色をあまり見れなかった

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 世界樹トネリコのお世話はサクッと終わらせた。
 褐色の肌のドライアドちゃんたちと青バラちゃんに見送られ、ファマリーの根元に戻ってくると、目の前にルウさんがニコニコしながら待っていた。
 大きなつばの帽子を被ったルウさんが手を差し出してくる。

「さ、シズトくん。行きましょ?」
「護衛はどうするの?」
「ジュリウスと世界樹の番人たちが少し離れたところでするみたいよ」

 ルウさんの視線を追って屋敷の屋根を見上げると、ジュリウスが僕の方を見ていた。視線が合うと軽く会釈された。
 手を挙げて返事をしてから、ルウさんに視線を戻す。

「なら大丈夫そうだね。それで、どこに行くの?」
「特に決めてないわ。シズトくん、最近お出かけしてなかったでしょう? たくさんお店が出来てるみたいだから、散歩しながら見て回ろうかなって思って」

 なるほど。
 不毛の大地は一応僕の土地だけど、そこの土地を貸す形でお店が開かれている。
 ただ、そこら辺はホムラに全部任せているので正直どんなお店があるのか知らない。
 変なお店がないか抜き打ちチェックするのもおもし……大事な気がする。
 じゃあまずは町へ向かうか、と思って歩き出すとルウさんが横に並んで手を繋がれた。
 ……身長差どうにかした方が良い気がする。
 隣でルウさんが歩く度に揺れる大きな物を意識から何とか外そうとしながら歩いていると、ドライアドたちが僕に興味を持って寄ってきた。

「にんげんさんだー」
「どこいくの~」
「町に散歩しに行くんだよ」
「レモン!」
「レモンはまた今度マーマレードとかにするね」

 レモンちゃんが差し出してきたレモンを有難く受け取って、鞄の中に入れる。
 レモンちゃんは満足した様子で畑の方に戻っていった。
 他の子たちは気になるのかぞろぞろとついて来て、それを見たドライアドがさらに加わる。
 畑の中に入らないように間の道を歩くため、縦に長く伸びた列が出来上がった。
 後ろを振り返るとドライアドたちの頭に生えた色とりどりの花がゆらゆらと揺れている。
 こんな感じで花が咲いた変な生き物が並んでついて来るゲームあったな。
 見た目が幼女だからドライアドたちを投げる事はできそうにないけど。

「順調に育ってるわね」
「え?」
「ほら、ここら辺。私たちの畑でしょう?」
「そうだったっけ?」

 時々、魔力が余っている時は生育の加護を使っていたけど、基本的に魔動散水機任せにしていたからあんまり覚えてないや。
 流石に場所だけでも覚えといた方が良いような気もする。
 ルウさんの視線を追うと、エルフのジュリーンとダーリアがせっせと雑草を抜いている様だった。

「掃除や洗濯が簡単に終わってしまうから、その分余った時間はああして過ごしているそうよ」
「なるほど。………草が生えなくなる魔道具は作ろうと思えば作れそうだけど、雑草をピンポイントで生えなくするのは無理そうだから、今後も頑張ってもらうしかないかな。ていうか、僕雑草を抜くのサボってたんだけど大丈夫かな」
「わたしたちぬいてる!」
「そうなの?」
「そうなのー」
「たくさんぬいて、おいしいつちにするの!」
「にんげんさんたちのはたけ、あんまりくさのこってないの」
「にんげんさんのところたくさんのこってるからうれしいのー」

 ドライアドたちはドライアドたちの都合で僕の畑を管理してくれていたみたいだけど、普通にありがたい。今度堆肥をプレゼントする事を約束したら、他の皆に伝えるために嬉しそうに散っていった。
 ちょっと草集めしなきゃいけないかも……あ、自分で雑草を育てればいいのか。
 ……雑草を抜いてもらうために雑草を育てるってどうなんだろう。



 畑地帯を抜けて町に足を踏み入れると、視線が僕に集まる。
 奴隷たちはチラチラと僕を見ているし、商人たちは僕を見て何かひそひそ話をしている。中にはぎらついた目で僕を見ている人もいたけど、ちょっと視線を外した隙にどこかに消えてしまった。

「ここら辺は古い区画だから、もっと外に行きましょ」

 そう言ってルウさんに連れて来られたのは、簡易的な駅だった。
 屋根だけがある建物の下で待っていると、歩く速度よりも少し早いくらいのスピードで線路の上をトロッコが走り、こっちに向かってきた。
 決められた場所からだいぶずれたが、トロッコは無事に停まって乗っていた子どもたちがわらわらと下りていく。
 トロッコに唯一残った先頭の車両に乗っていた女の子が待っている僕たちの方を見て叫ぶ。

「ほらほらアンタたち! ボケッとしてないでさっさと乗りな、って、シズト様!? す、すみません。逆走できないので、歩いていただいてお乗り頂いてもよろしいでしょうか!!」

 元気な茶髪の女の子が目をまん丸にして驚くと、アタフタとしている。
 降りる素振りを何度か見せたが迷っている様子だ。降りないようにと言われているのかもしれない。
 全然他の人が乗り込まないのはなんでだろう、と思って同じく駅で待っていた周囲の人たちを見ると、サッと視線を下に向けられた。全員奴隷だったわ。

「ほら、皆も一緒に乗るよ」

 って、ちゃんと伝えないと乗ってくれないかもしれないので、きちんと伝えてからトロッコに向かう。
 ルウさんにひょいっと持ち上げられてトロッコに乗せられ、ルウさんも一緒の車両に乗り込むとそれだけでいっぱいになった。
 座ったルウさんが僕のお腹に手を回してギュッと抱きしめてくるので、ルウさんを背もたれにするような形で座る事になったんだけど……背中というか、後頭部に柔らかい物が当たっている気がして周囲を気にする余裕なんてなかった。
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