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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう
283.事なかれ主義者は気に入った
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朝目が覚めると、体をがっちりと拘束されていた。柔らかく温かい感触の物が僕に巻きついている。
僕を抱き枕代わりにしているのはラオさんだ。スヤスヤと寝息を立てて眠っている。
だけど、僕が身じろぎをすると起きたようだ。
ギュッと抱きしめられて胸に顔をうずめる形になっている僕に気付いて、すぐに手を離してくれた。
慌ててゴロゴロと布団を巻き込みつつ転がって離れると、ラオさんに掛けられていた布団がなくなり、黒の下着に袖なしの着丈が短い黒の肌着が露になる。おへそが丸見えだ。
ラオさんは恥じらう様子もなく胡坐をかくと、頭をかきながら大きく欠伸をした。
「わりぃ。苦しくなかったか?」
「苦しくは、無かったと思うけど……」
正直柔らかさや匂いに意識が持っていかれてそれどころではなかったから分からない。
けどラオさんは「そうか」とだけ呟き、ベッドから出て立ち上がると大きく伸びをした。
引き締まって綺麗な形の大きなお尻が丸見えなんですけど……。
なんて、抗議しても気にする事はないだろうから、そっと視線を外す。
「ふぅ。それじゃ、アタシは部屋から出てくけど、シズトも早めに着替えた方が良いぞ。ルウがもう部屋の外で準備してるからな」
「ほんとに!?」
慌てる僕を他所に、ラオさんは去っていった。
見ている人が誰もいないので、僕の体の一部分が元気になっていようがお構いなしに着る物だけ取ってベッドの上に戻る。
再び掛布団に包まって慌てて着替えていると、ルウさんが入ってくる音が聞こえた。
「シズトくん、入ってもいいかしら?」
「着替えてる最中だからダメ!」
「それならお姉ちゃんが手伝ってあげる!」
「もう後は上を着るだけだからけっこーです!」
ルウさんはパーテーションの向こう側からひょこっと顔を出した。
そうする事が分かっていたので、布団を羽織ったまま着替えていたのだ。
ルウさんは残念そうにため息を吐くと、普通にパーテーションに区切られた寝室もどきに入ってきた。
僕は今日も特に出かける予定はないので、護衛役のルウさんはお休みだ。
だからルウさんは普段履かないふんわりと裾が広がっているロングスカートに、上は白のブラウスを着ていて、赤くて長い髪の毛を真っすぐに下ろしているのだろう。
「今日は新しく町にできたお店を回ろうかなって思うんだけど、シズトくんもどう?」
「んー、ちょっと考えとく」
特に予定はないからありと言えばありだけど……ついでに町を見るのもありかも?
でもとりあえず皆の予定を聞いてからかなぁ。
回答を保留にして、自室を出て食堂に向かう。
転移陣を設置してしまえば一瞬で移動できるのに、と思いながら長い廊下と階段を歩く。
食堂に着くと、着替え終わったラオさんが魔力マシマシ飴を舐めながら既に席に座っていた。
ラオさんはいつもの普段着で、どこかに出かける様子はなさそうだ。
僕とルウさんが席に着くと、食事の前の挨拶を唱和した。
こんがり焼かれたパンにレモンのマーマレードを塗っている間に、ラオさんとルウさんは既に食事を終えていた。いつもながら二人とも早食いだ。
冒険者なら、食事を短時間で済ませるスキルは必須だ、とかなんとか言ってたけど、単純に二人が食べるの早いだけな気がする。
塗り終わって食器を置いたところで、レヴィさんが話しかけてきた。今日はレヴィさんもどこかに出かけるのか、彼女の目の色と同色の鮮やかな青色のドレスを着ていた。胸の谷間など結構露出が多くて、目のやり場に困る。
「ランチェッタ女王陛下から連絡があって、ガレオールに行く事になったのですわ」
「ランチェッタ様から? 何かあったの?」
「魔道具に関して話し合いたい事があるらしいのですわ。後個人的にシズトの話を聞きたいらしいから話してくるのですわ!」
僕の話って……何を聞かれるんだろう? と内心首を傾げていると、指輪を外していたレヴィさんが優しく微笑んだ。
「大丈夫ですわ。ただ文通相手のシズトの事をもっと知りたいだけだと思うのですわ。でも、念には念を入れて、真意を見定めるために万全の状態で行くのですわ」
「僕にはそういう話が来てないから行かなくていいよね?」
「そうですわね。むしろ、女性だけでそういう話をしたがっていると思うのですわ。私と一緒に婚約者になったセシリアからも話を聞きたいと手紙には書かれていたのですわ」
レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんを見ると、彼女はぺこりと何も言わずに一礼した。
……まあ、僕に不都合な事があったら教えてくれるだろうからいいか。
「もちろんですわー」
レヴィさんは言いたい事は言い終わったのか、新鮮な野菜サラダをもりもりと食べる。
好き嫌いなく食べるレヴィさんを見ていると僕も見習わないとなぁ、と思いつつパンをかじる。うん、美味しい。
もぐもぐと食べていると、今度はルウさんが口に含んでいた魔力マシマシ飴を取り出して、話しかけてきた。
「シズトくんは今日どうするの?」
「んー、とりあえずトネリコのお世話かなぁ。青バラちゃんが言うには、世界樹を取り囲んでいる森を元気にするためにはあとちょっと時間がかかって、それより遠い場所はもっと時間が必要みたい。ただ、トネリコのドライアドたちとしては、森の中が元気になれば問題ないらしいから、あとちょっとがどれくらいか分からないけど、森の中から嫌な感じがなくなったらローテーションでお世話する方向に切り替えても大丈夫かなぁって感じ」
「そうなの。じゃあ、今日のお世話をした後は暇になるのよね? お姉ちゃんと一緒に町に行く?」
「そうだねぇ、魔力も九割くらい持っていかれちゃうから神様の像も作れないし、そうなるかなぁ」
「シズト様の魔力量で九割って相当っすね」
ノエルが珍しく会話に入ってきた。驚いた様子で目を丸くしている。
まあ、毎日魔力量を増やすために魔力を使い切ってるからそこそこ魔力量は増えたと思ってたけど、やっぱり驚くくらい吸ってるんだね、あの木。
「流石世界樹って感じだねぇ。ユグドラシルの時はここまでじゃなかった気がするんだけど、ユグドラシルに余裕があったから加減してくれたのかな」
「いや、そこも驚きではあるんすけど……まあいいっす。ごちそーさまでしたっす!!」
何とも言えない様子のノエルは既に食事を終えていて、勢いよく立ち上がると競歩のような感じでサッと室内から出て行った。
……この世界にも競歩ってあるのかな。
そんなくだらない事を考えながら、レモンのマーマレードを追加で塗りたくった。
僕を抱き枕代わりにしているのはラオさんだ。スヤスヤと寝息を立てて眠っている。
だけど、僕が身じろぎをすると起きたようだ。
ギュッと抱きしめられて胸に顔をうずめる形になっている僕に気付いて、すぐに手を離してくれた。
慌ててゴロゴロと布団を巻き込みつつ転がって離れると、ラオさんに掛けられていた布団がなくなり、黒の下着に袖なしの着丈が短い黒の肌着が露になる。おへそが丸見えだ。
ラオさんは恥じらう様子もなく胡坐をかくと、頭をかきながら大きく欠伸をした。
「わりぃ。苦しくなかったか?」
「苦しくは、無かったと思うけど……」
正直柔らかさや匂いに意識が持っていかれてそれどころではなかったから分からない。
けどラオさんは「そうか」とだけ呟き、ベッドから出て立ち上がると大きく伸びをした。
引き締まって綺麗な形の大きなお尻が丸見えなんですけど……。
なんて、抗議しても気にする事はないだろうから、そっと視線を外す。
「ふぅ。それじゃ、アタシは部屋から出てくけど、シズトも早めに着替えた方が良いぞ。ルウがもう部屋の外で準備してるからな」
「ほんとに!?」
慌てる僕を他所に、ラオさんは去っていった。
見ている人が誰もいないので、僕の体の一部分が元気になっていようがお構いなしに着る物だけ取ってベッドの上に戻る。
再び掛布団に包まって慌てて着替えていると、ルウさんが入ってくる音が聞こえた。
「シズトくん、入ってもいいかしら?」
「着替えてる最中だからダメ!」
「それならお姉ちゃんが手伝ってあげる!」
「もう後は上を着るだけだからけっこーです!」
ルウさんはパーテーションの向こう側からひょこっと顔を出した。
そうする事が分かっていたので、布団を羽織ったまま着替えていたのだ。
ルウさんは残念そうにため息を吐くと、普通にパーテーションに区切られた寝室もどきに入ってきた。
僕は今日も特に出かける予定はないので、護衛役のルウさんはお休みだ。
だからルウさんは普段履かないふんわりと裾が広がっているロングスカートに、上は白のブラウスを着ていて、赤くて長い髪の毛を真っすぐに下ろしているのだろう。
「今日は新しく町にできたお店を回ろうかなって思うんだけど、シズトくんもどう?」
「んー、ちょっと考えとく」
特に予定はないからありと言えばありだけど……ついでに町を見るのもありかも?
でもとりあえず皆の予定を聞いてからかなぁ。
回答を保留にして、自室を出て食堂に向かう。
転移陣を設置してしまえば一瞬で移動できるのに、と思いながら長い廊下と階段を歩く。
食堂に着くと、着替え終わったラオさんが魔力マシマシ飴を舐めながら既に席に座っていた。
ラオさんはいつもの普段着で、どこかに出かける様子はなさそうだ。
僕とルウさんが席に着くと、食事の前の挨拶を唱和した。
こんがり焼かれたパンにレモンのマーマレードを塗っている間に、ラオさんとルウさんは既に食事を終えていた。いつもながら二人とも早食いだ。
冒険者なら、食事を短時間で済ませるスキルは必須だ、とかなんとか言ってたけど、単純に二人が食べるの早いだけな気がする。
塗り終わって食器を置いたところで、レヴィさんが話しかけてきた。今日はレヴィさんもどこかに出かけるのか、彼女の目の色と同色の鮮やかな青色のドレスを着ていた。胸の谷間など結構露出が多くて、目のやり場に困る。
「ランチェッタ女王陛下から連絡があって、ガレオールに行く事になったのですわ」
「ランチェッタ様から? 何かあったの?」
「魔道具に関して話し合いたい事があるらしいのですわ。後個人的にシズトの話を聞きたいらしいから話してくるのですわ!」
僕の話って……何を聞かれるんだろう? と内心首を傾げていると、指輪を外していたレヴィさんが優しく微笑んだ。
「大丈夫ですわ。ただ文通相手のシズトの事をもっと知りたいだけだと思うのですわ。でも、念には念を入れて、真意を見定めるために万全の状態で行くのですわ」
「僕にはそういう話が来てないから行かなくていいよね?」
「そうですわね。むしろ、女性だけでそういう話をしたがっていると思うのですわ。私と一緒に婚約者になったセシリアからも話を聞きたいと手紙には書かれていたのですわ」
レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんを見ると、彼女はぺこりと何も言わずに一礼した。
……まあ、僕に不都合な事があったら教えてくれるだろうからいいか。
「もちろんですわー」
レヴィさんは言いたい事は言い終わったのか、新鮮な野菜サラダをもりもりと食べる。
好き嫌いなく食べるレヴィさんを見ていると僕も見習わないとなぁ、と思いつつパンをかじる。うん、美味しい。
もぐもぐと食べていると、今度はルウさんが口に含んでいた魔力マシマシ飴を取り出して、話しかけてきた。
「シズトくんは今日どうするの?」
「んー、とりあえずトネリコのお世話かなぁ。青バラちゃんが言うには、世界樹を取り囲んでいる森を元気にするためにはあとちょっと時間がかかって、それより遠い場所はもっと時間が必要みたい。ただ、トネリコのドライアドたちとしては、森の中が元気になれば問題ないらしいから、あとちょっとがどれくらいか分からないけど、森の中から嫌な感じがなくなったらローテーションでお世話する方向に切り替えても大丈夫かなぁって感じ」
「そうなの。じゃあ、今日のお世話をした後は暇になるのよね? お姉ちゃんと一緒に町に行く?」
「そうだねぇ、魔力も九割くらい持っていかれちゃうから神様の像も作れないし、そうなるかなぁ」
「シズト様の魔力量で九割って相当っすね」
ノエルが珍しく会話に入ってきた。驚いた様子で目を丸くしている。
まあ、毎日魔力量を増やすために魔力を使い切ってるからそこそこ魔力量は増えたと思ってたけど、やっぱり驚くくらい吸ってるんだね、あの木。
「流石世界樹って感じだねぇ。ユグドラシルの時はここまでじゃなかった気がするんだけど、ユグドラシルに余裕があったから加減してくれたのかな」
「いや、そこも驚きではあるんすけど……まあいいっす。ごちそーさまでしたっす!!」
何とも言えない様子のノエルは既に食事を終えていて、勢いよく立ち上がると競歩のような感じでサッと室内から出て行った。
……この世界にも競歩ってあるのかな。
そんなくだらない事を考えながら、レモンのマーマレードを追加で塗りたくった。
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