【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

282.事なかれ主義者は魔道具の影響を知る

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 昼食を終えてモニカと一緒に自室に戻る。
 ラオさんもジュリウスも同席するつもりはないらしく、ついて来なかった。ジュリウスはきっと今頃屋根の上だろう。
 ベッドの近くに置いてある作業机の椅子に腰かける。モニカは身分が違うから、と立って話すつもりのようだ。

「それでは、まずはお手紙の内容を拝見させていただきます」
「書き直した方が良い所があったら教えて」

 数枚の便箋を受け取ると、モニカはササッと目を通していく。
 本当に読んでいるのか疑問に思うくらいぺらぺらと便箋をめくっていき、元に戻した。

「何も問題はありませんでした。後は私がしましょうか?」
「自分でするからいいよ」
「かしこまりました」

 便箋をモニカから受け取ると、用意しておいたシンプルな封筒の中に入れて、封蝋を押してガレオールにある速達箱と繋がっている箱の中に入れる。
 ペンなどを片付けている間、モニカは静かに待っていてくれた。

「お待たせ。それで、話って何?」
「結論から先にお話させていただきますが、私を奴隷から解放してほしいのです」
「いいよ」

 即答したらモニカは盛大にため息を吐いた。
 それから呆れた様子の彼女は、半目で僕を睨む。

「……そう仰ると思っていましたが、理由も聞かずに承諾するのはいかがなものかと」
「仕事は変わらず続けてくれるんだよね?」
「はい、もちろんです」
「じゃあいいよ。今更代わりを見つけるのは大変だろうし。誓文を交わしてくれれば問題ないでしょ、きっと」

 そもそも、モニカ達をいつ奴隷から解放しようかと考えていたところだったし。
 向こうから切り出してくれて丁度良かった。

「理由はお聞きにならないのですか?」
「んー……知っておいた方が良い事だったら聞くけど、あんまり興味ないかなぁ」
「左様ですか……。念のためお伝えさせていただきますが、来客対応のためです。ほとんどの方は問題ないのですが、一部の貴族の関係者や商人の相手をする時に、奴隷だと少々侮られるようなので、解放して頂こうと考えました」
「そうなんだ。もっと早く言ってくれればすぐにそうしたのに……」
「向こうで屋敷の警備をしてくださっている方々がよく仲裁に入ってくださったので特に支障がなく、報告をしませんでした」

 まあ、それならいいんだけど……。
 モニカの顔を見ても、彼女は基本的に仕事中はポーカーフェイスなので、本心か判断がつかない。
 彼女が言う通り、そこまで問題になっていないのかもしれない。
 で、あれば話題を変えるか。

「今後住む場所ってどうするの?」
「本館で引き続き住まわせて頂こうかと考えておりましたが……何か問題でもありましたか?」
「いや、二階は部屋が余ってるから別にいいけど……」

 一つ屋根の下に雇っているだけの女の子がいるのってどうなんだろう。
 うーん……マンションとかアパートだと捉えれば問題ない……かな?

「シズト様とドラゴニアとのパイプ役である事を考えると、できる限りシズト様のお傍にいて、いつでも動けるようにした方が良いのではないかと思います」
「まあ……そうかも?」
「はい。そういう訳ですので、奴隷から解放された後もこの屋敷で生活させていただきます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく……あ、そうだ。ついでなんだけどさ。本館にいる他の奴隷たちもいつか解放したいなぁ、と思うんだけどどう思う?」
「シズト様が望まれるのであればそうされてもよろしいかと。ただ、本館に住んでいる者たちは別館ではなくここで生活をする事を希望して残っている者たちです。ですので、解放した後も私同様、今のままこの屋敷で仕事をしたいと希望するでしょうね」
「んー……そっか~」

 まあ、モニカが残るのに他の子を残さないと角が立つかもしれないし、それでいいか。
 一応他の子たちの希望も聞いて、どうしても奴隷のままでいたい子以外は誓文を交わして奴隷から解放しよう。
 コツコツと頑張っていたら解放されると分かれば、町に住んでいる子たちもより一層頑張って仕事をするだろうし、勉強もするでしょ、きっと。

「もうよろしいでしょうか? ドランで店を構えている公認奴隷商のブライアン様に連絡を取りに行きたいのですが……」
「あ、ごめん。最後に一つだけ。屋敷で働く使用人ってもっといる? エミリーだけに部下というか、同僚を増やすのもあれだし、必要ならそっちも募集しようかなって思うんだけど……」
「そうですね。まず、清掃に関しては魔道具がありますのでほぼほぼ必要ないですね。皿洗いなどの雑務も魔道具が肩代わりしているので、エミリーの部下も現在検討している人数だけで事足りるでしょう。多数のお客様が来られる場合はその時また考えればいいと思いますが、現時点でお越しになるのはドラゴニアの王家の方々くらいですし、問題ないでしょう。洗濯も魔道具ですぐに終わってしまいますし、ドランの屋敷は私の手伝いをしてくれる方は既にホムラ様が用意してくださいましたので……業務的には十分今の人数で回せますね」

 おっと、思わぬところで魔道具の影響があるようだ。
 雇用を奪う物になってしまっているけど、前世もロボットが発達して少しずつそうなっていたし技術の発展には必要な犠牲なのかもしれない。ただ、魔道具が広まった際に恨まれないように気を付けないとだけど……今更か。
 仕事を奪っちゃうデメリットもあるけど、その分生きやすくなるだろうし、とりあえず作りたい物を作って行こう。
 何か問題がある物を作ったらきっとラオさんが止めてくれるでしょ…………たぶん。
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