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第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

271.事なかれ主義者はノープラン

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 ひとまず生贄にされた幼いエルフの女の子を連れ、転移陣を使って屋敷に戻った。
 戻ろうとしたら、抑え込まれているエルフが「泊まる場所を用意しましたので、その娘と一緒にゆっくりされてはどうですか?」と尋ねてきたので笑顔で「疲れたから家に帰ります」と答えた。
 転移陣でサクッと帰る事ができるのに、わざわざ向こうが準備した場所で寝る必要性ってないよね。
 レヴィさんも特に止めて来なかったし、後は良い感じに向こうに残ったジュリーニたちが何とかしてくれるでしょう。
 こっちはこっちで、幼いエルフの女の子と関係を構築していきましょう。
 屋敷の一階にある応接室に彼女を連れてきた。
 ジューンさんにおんぶされて運ばれてきた女の子は、ふかふかのソファーに縮こまって座っている。
 緑色の瞳が不安そうに揺れていて、僕たちの様子を窺っている様だった。
 隣に腰かけたジューンさんが優しく頭を撫でようとすると、ビクッと反応して目を瞑る。小さい方のドライアドたちくらいの体がさらにキュッと小さくなったように見える。
 ジューンさんはその事を気にした様子もなく、そのまま頭を優しく撫で始めた。
 ソファーに座っている女の子の前に行き、目線を彼女に合わせると、彼女はおずおずと僕を見てきた。

「はじめまして。僕はシズトです。あなたのお名前はなんですか?」
「……………リーヴィア」

 蚊の鳴くような声で女の子――リーヴィアが答えた。
 子役タレントのように整った可愛らしい顔立ちの彼女から何を聞こうか悩んでいると、開けられていた窓からバサバサと翼人のパメラが飛んで入ってきた。
 それが楽なんだろうけど、窓を出入口代わりにするのやめさせた方がいいよね。

「新しい子デスか?」
「こんにちは!」
「……………」

 パメラがリーヴィアに駆け寄り、パメラに抱えられたアンジェラがリーヴィアに挨拶をしたが、彼女は黙って返事をしなかった。視線を合わせようとはせず、下を向いてしまった。
 アンジェラは何かを察したのか、ポンポンと自身を抱えているパメラの腕を叩き「おやつもらってこよ」と言った。
 おやつと聞いてピクリとリーヴィアの耳が反応した。……獣人以外もそんな風に動くんすね。今度ジューンさんにも同じ事ができるか聞いてみよう。
 そんな事を考えていると、パメラはアンジェラを抱えて窓の外から出て行った。

「とりあえず、アタシらも解散するか」
「そうね。お姉ちゃんたちがぞろぞろいても、リーヴィアちゃんが緊張しちゃうものね」
「私はこのままシズト様の護衛を続けます」
「私はいてもいいですけれど……やめておくのですわ」

 加護無しの指輪を嵌めているレヴィさんが悩んだ末にそう答えた。
 セシリアさんとドーラさんもレヴィさんについて外に出て行く。
 他の皆も外に出て行って、残されたのは壁際に気配を消して立っているジュリウスと、ソファーに座っているリーヴィアとジューンさんと僕の四人になった。
 ジューンさんがリーヴィアを安心させようと優しく撫でているので、僕はソファーの正面に置いてあった一人用の椅子に座る。
 ……改めて考えるけど、この子どうすればいいんだろう?
 あそこに残しておくと碌な事にならないのは分かり切っていたので連れてきちゃったけど……。
 リーヴィアを安心させるためにボケーッと座った状態のまま思考を巡らせていると、足音が聞こえてきた。

「シズトさま~、おかしもってきたよー」
「皆で食べるデース!」

 窓からではなく、扉から入ってきたアンジェラが大きな平皿を大事そうに持って入ってきた。パメラはもうつまみ食いをしている様子で口元が汚れている。後で掃除担当のダーリアやジュリーンに怒られそうだ。
 ピクッとリーヴィアがお菓子に反応した。甘い物が好きなようだ。
 なるほど、まずは餌付けからすればよかったのか、と感心していると、パメラがローテーブルをジューンさんと僕の間に置き、その上にアンジェラがお皿を置いた。
 ジャムもあればよかったんだけど……と考えていると、何やら視線を感じる。

「うわ!?」
「人間さん、果物持ってきたよー」
「レモーン!」
「イチゴおいしーよ」
「ブルーベリ~もっ」

 小さい方のドライアドたちがわさわさと窓の外から入ってくる。
 髪の毛を器用に使って登ってきたようだ。
 両手にたくさんの果物を抱えて後から後からわらわらと入ってくるドライアドたち。
 っていうか、ドライアドが持っているブルーベリーは青い苺の方のブルーベリーだった。やっぱり紛らわしいので名前を変えさせたい。
 ローテーブルの上が一気に賑やかになる。
 ジュリウスがサッと現れて並べられた食器の上にどんどんといろんな種類の果物が置かれていった。
 こんなに食べきれるかなぁ、と思っていたら前から可愛らしい音が聞こえた。
 そちらに視線を向けると、ドライアドたちも含めてみんなに見られているからか、恥ずかしそうに顔を赤く染めるリーヴィア。

「生きてたらお腹空いちゃうよねー。仕方ない、仕方ない。ほら、せっかく用意してもらったからとりあえず食べちゃお」
「レモン!」
「レモンちゃん、ごめんだけどマジで丸かじりは無理っす」

 しょんぼりとするレモンちゃんを膝に乗っけて頭を撫でていたら他のドライアドも乗っかってきたけど、それを見てリーヴィアの口元が緩んでいたので良し!!
 パメラとアンジェラの分の椅子を【加工】でササッと作って、皆で机を囲んでおやつタイムを楽しんだ。
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