401 / 971
第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう
270.事なかれ主義者は思わず叫ぶ
しおりを挟む
世界樹トネリコに対してやる事は終わったけど、ちょっと厄介そうな事になり、クーに転移してもらって屋敷に戻ってきてからしばらく経った。
僕の足でだいぶ時間がかかった道のりだけど、ジュリウスたちならあっという間に森を抜けてレヴィさんたちに合流したはずだ。
ただ、誰もなかなか帰って来ない。
転移陣の周りをウロウロしていると、ドライアドたちが僕の真似をして近くでウロウロし始める。
変な儀式でもしているのでは、なんて思われても嫌だったので座ると、ドライアドたちが集まってきて一緒に座った。
「ん? 来たみたいだよー」
座っている僕の背中にもたれかかっていたクーが言った通り、転移陣が光り輝く。
そうして現れたのは、ラオさんだった。
黒い何かの魔物の素材を用いて作られた防具を身に纏った彼女は、眉間に皺を寄せていて何やら不機嫌そうだ。
「面倒な事になった」
「そのまま転移してこっちに戻ったの、まずかった?」
「いや、そっちに関しては問題ねぇよ。エルフたちは人間と比べたら魔力を感知する事に長けているから、お前がアホほど魔力を使って何かしたのは感じ取っている奴もいたし、何より世界樹が一瞬光ったしな」
「じゃあ何があったの?」
「……『神の怒りを鎮めるために』とか言って、一部のエルフが生贄としてエルフの女を差し出そうとしてんだよ」
「お断りしますー」
そういうのはもう間に合ってます!
ラオさんも、「そう言うだろうと思ったよ」と苦笑した。
「ただなぁ、ちょっとそうなると面倒な事になりそうでな。……レヴィが隠し事は無しでって言ってたから伝えるけどよ。どうやらその生贄ってのが、前任の世界樹の使徒の関係者だったらしい」
「なるほど?」
「身内の不始末だからって言う理由で目を付けられたんだろうけどな。シズトが生贄を拒否したら、多分あれは殺されるだろうな」
「……めんどくさぁ」
ゴロンと仰向けになると、ドライアドたちが寝転がってコロコロ転がってくる。
生贄を受け入れたらそれはそれで面倒な事になる。
ただ、受け入れなかったら目覚めが悪い事になるだろう。
知らない方が良い事も世の中にはあるんだなぁ、なんて思っていたら、ラオさんが最後に付け足すようにぼやく。
「その生贄ってのには会ってねぇけどよ、一回シズトに会ってもらった方が良いってレヴィが言うから伝えたんだが……どうする?」
「えー。…………まあ、レヴィさんがそういうなら、きっとそうした方が良い事があるんだろうね」
面倒だけど、もう一度行くしかないようだ。
ただ、そうなると一つ気になる事がある。
「ドライアドたちが言っていた事はもう解決したの?」
「それはまだだけどよ……トネリコの街の中には主犯格はいねぇだろうな。怪しい奴はジュリウスやトネリコ側の番人共が許さねぇだろ」
「ふーん。じゃあ、面倒だけど行くかぁ。……って事だから、皆退いてくれる?」
お腹の上に乗っかってきたドライアドたちにお願いしてみたけれど、皆お昼寝をしていたのでとりあえずそっと起こさないようにラオさんに下ろしてもらった。
すやすやとお昼寝をしていたドライアドたちを尻目に転移すると、僕を待っていたようでエルフの一団とレヴィさんがこちらを一斉に見た。
転移した直後に無数の視線がこちらに向くのはちょっとビビるのでやめて欲しいっす。
迫ってきそうだったエルフ数人をジュリウスたちが押さえつけ、レヴィさんから話を聞いた。
彼らの願いはただ一つ。神罰を止めさせて欲しいという事だそうだ。
まあ、神罰なんてあの三柱の事を多少知ってるからないと思うんだけど、それをいくら説明しても実際不作で大変な事になっている状況なので信じられないだろう。
放っておいたら残された前任の世界樹の使徒の関係者……というか後継者候補? だった者を神々への生贄として捧げようと考えているらしい。
「ファマ様たちにはそんな物よりも海産物を捧げればいいと思う」
「まったくですわ。ただ、今まで贅沢をしていた古株のエルフたちの中にいた過激派が、今までの生活を守ろうとしてそういう動きをしようとしているみたいですわ」
「他国だったため、干渉ができませんでした。申し訳ございません、シズト様」
押さえつける事を他の番人に任せたジュリウスが僕の近くまできて謝罪をしたけど、どう干渉しようとしていたのか気になる。
けどその追及は今じゃなくてもいい。
とりあえず、今問題なのは、その生贄のエルフの女性をどうするか考える事だろう。
ひとまず会う事になって連れてきてもらったエルフを見て、思わず叫ぶ。
「アウトーーー!!」
これは普通に手を出したらアウトなロリ!
絶対手を出す事は考えられないけど、この子が生贄のために殺されたらいやな気持ちになるわ!!
レヴィさんもそうですわね、とでも言いたそうにゆっくりと頷いていた。
僕の足でだいぶ時間がかかった道のりだけど、ジュリウスたちならあっという間に森を抜けてレヴィさんたちに合流したはずだ。
ただ、誰もなかなか帰って来ない。
転移陣の周りをウロウロしていると、ドライアドたちが僕の真似をして近くでウロウロし始める。
変な儀式でもしているのでは、なんて思われても嫌だったので座ると、ドライアドたちが集まってきて一緒に座った。
「ん? 来たみたいだよー」
座っている僕の背中にもたれかかっていたクーが言った通り、転移陣が光り輝く。
そうして現れたのは、ラオさんだった。
黒い何かの魔物の素材を用いて作られた防具を身に纏った彼女は、眉間に皺を寄せていて何やら不機嫌そうだ。
「面倒な事になった」
「そのまま転移してこっちに戻ったの、まずかった?」
「いや、そっちに関しては問題ねぇよ。エルフたちは人間と比べたら魔力を感知する事に長けているから、お前がアホほど魔力を使って何かしたのは感じ取っている奴もいたし、何より世界樹が一瞬光ったしな」
「じゃあ何があったの?」
「……『神の怒りを鎮めるために』とか言って、一部のエルフが生贄としてエルフの女を差し出そうとしてんだよ」
「お断りしますー」
そういうのはもう間に合ってます!
ラオさんも、「そう言うだろうと思ったよ」と苦笑した。
「ただなぁ、ちょっとそうなると面倒な事になりそうでな。……レヴィが隠し事は無しでって言ってたから伝えるけどよ。どうやらその生贄ってのが、前任の世界樹の使徒の関係者だったらしい」
「なるほど?」
「身内の不始末だからって言う理由で目を付けられたんだろうけどな。シズトが生贄を拒否したら、多分あれは殺されるだろうな」
「……めんどくさぁ」
ゴロンと仰向けになると、ドライアドたちが寝転がってコロコロ転がってくる。
生贄を受け入れたらそれはそれで面倒な事になる。
ただ、受け入れなかったら目覚めが悪い事になるだろう。
知らない方が良い事も世の中にはあるんだなぁ、なんて思っていたら、ラオさんが最後に付け足すようにぼやく。
「その生贄ってのには会ってねぇけどよ、一回シズトに会ってもらった方が良いってレヴィが言うから伝えたんだが……どうする?」
「えー。…………まあ、レヴィさんがそういうなら、きっとそうした方が良い事があるんだろうね」
面倒だけど、もう一度行くしかないようだ。
ただ、そうなると一つ気になる事がある。
「ドライアドたちが言っていた事はもう解決したの?」
「それはまだだけどよ……トネリコの街の中には主犯格はいねぇだろうな。怪しい奴はジュリウスやトネリコ側の番人共が許さねぇだろ」
「ふーん。じゃあ、面倒だけど行くかぁ。……って事だから、皆退いてくれる?」
お腹の上に乗っかってきたドライアドたちにお願いしてみたけれど、皆お昼寝をしていたのでとりあえずそっと起こさないようにラオさんに下ろしてもらった。
すやすやとお昼寝をしていたドライアドたちを尻目に転移すると、僕を待っていたようでエルフの一団とレヴィさんがこちらを一斉に見た。
転移した直後に無数の視線がこちらに向くのはちょっとビビるのでやめて欲しいっす。
迫ってきそうだったエルフ数人をジュリウスたちが押さえつけ、レヴィさんから話を聞いた。
彼らの願いはただ一つ。神罰を止めさせて欲しいという事だそうだ。
まあ、神罰なんてあの三柱の事を多少知ってるからないと思うんだけど、それをいくら説明しても実際不作で大変な事になっている状況なので信じられないだろう。
放っておいたら残された前任の世界樹の使徒の関係者……というか後継者候補? だった者を神々への生贄として捧げようと考えているらしい。
「ファマ様たちにはそんな物よりも海産物を捧げればいいと思う」
「まったくですわ。ただ、今まで贅沢をしていた古株のエルフたちの中にいた過激派が、今までの生活を守ろうとしてそういう動きをしようとしているみたいですわ」
「他国だったため、干渉ができませんでした。申し訳ございません、シズト様」
押さえつける事を他の番人に任せたジュリウスが僕の近くまできて謝罪をしたけど、どう干渉しようとしていたのか気になる。
けどその追及は今じゃなくてもいい。
とりあえず、今問題なのは、その生贄のエルフの女性をどうするか考える事だろう。
ひとまず会う事になって連れてきてもらったエルフを見て、思わず叫ぶ。
「アウトーーー!!」
これは普通に手を出したらアウトなロリ!
絶対手を出す事は考えられないけど、この子が生贄のために殺されたらいやな気持ちになるわ!!
レヴィさんもそうですわね、とでも言いたそうにゆっくりと頷いていた。
41
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる