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第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

270.事なかれ主義者は思わず叫ぶ

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 世界樹トネリコに対してやる事は終わったけど、ちょっと厄介そうな事になり、クーに転移してもらって屋敷に戻ってきてからしばらく経った。
 僕の足でだいぶ時間がかかった道のりだけど、ジュリウスたちならあっという間に森を抜けてレヴィさんたちに合流したはずだ。
 ただ、誰もなかなか帰って来ない。
 転移陣の周りをウロウロしていると、ドライアドたちが僕の真似をして近くでウロウロし始める。
 変な儀式でもしているのでは、なんて思われても嫌だったので座ると、ドライアドたちが集まってきて一緒に座った。

「ん? 来たみたいだよー」

 座っている僕の背中にもたれかかっていたクーが言った通り、転移陣が光り輝く。
 そうして現れたのは、ラオさんだった。
 黒い何かの魔物の素材を用いて作られた防具を身に纏った彼女は、眉間に皺を寄せていて何やら不機嫌そうだ。

「面倒な事になった」
「そのまま転移してこっちに戻ったの、まずかった?」
「いや、そっちに関しては問題ねぇよ。エルフたちは人間と比べたら魔力を感知する事に長けているから、お前がアホほど魔力を使って何かしたのは感じ取っている奴もいたし、何より世界樹が一瞬光ったしな」
「じゃあ何があったの?」
「……『神の怒りを鎮めるために』とか言って、一部のエルフが生贄としてエルフの女を差し出そうとしてんだよ」
「お断りしますー」

 そういうのはもう間に合ってます!
 ラオさんも、「そう言うだろうと思ったよ」と苦笑した。

「ただなぁ、ちょっとそうなると面倒な事になりそうでな。……レヴィが隠し事は無しでって言ってたから伝えるけどよ。どうやらその生贄ってのが、前任の世界樹の使徒の関係者だったらしい」
「なるほど?」
「身内の不始末だからって言う理由で目を付けられたんだろうけどな。シズトが生贄を拒否したら、多分あれは殺されるだろうな」
「……めんどくさぁ」

 ゴロンと仰向けになると、ドライアドたちが寝転がってコロコロ転がってくる。
 生贄を受け入れたらそれはそれで面倒な事になる。
 ただ、受け入れなかったら目覚めが悪い事になるだろう。
 知らない方が良い事も世の中にはあるんだなぁ、なんて思っていたら、ラオさんが最後に付け足すようにぼやく。

「その生贄ってのには会ってねぇけどよ、一回シズトに会ってもらった方が良いってレヴィが言うから伝えたんだが……どうする?」
「えー。…………まあ、レヴィさんがそういうなら、きっとそうした方が良い事があるんだろうね」

 面倒だけど、もう一度行くしかないようだ。
 ただ、そうなると一つ気になる事がある。

「ドライアドたちが言っていた事はもう解決したの?」
「それはまだだけどよ……トネリコの街の中には主犯格はいねぇだろうな。怪しい奴はジュリウスやトネリコ側の番人共が許さねぇだろ」
「ふーん。じゃあ、面倒だけど行くかぁ。……って事だから、皆退いてくれる?」

 お腹の上に乗っかってきたドライアドたちにお願いしてみたけれど、皆お昼寝をしていたのでとりあえずそっと起こさないようにラオさんに下ろしてもらった。



 すやすやとお昼寝をしていたドライアドたちを尻目に転移すると、僕を待っていたようでエルフの一団とレヴィさんがこちらを一斉に見た。
 転移した直後に無数の視線がこちらに向くのはちょっとビビるのでやめて欲しいっす。
 迫ってきそうだったエルフ数人をジュリウスたちが押さえつけ、レヴィさんから話を聞いた。
 彼らの願いはただ一つ。神罰を止めさせて欲しいという事だそうだ。
 まあ、神罰なんてあの三柱の事を多少知ってるからないと思うんだけど、それをいくら説明しても実際不作で大変な事になっている状況なので信じられないだろう。
 放っておいたら残された前任の世界樹の使徒の関係者……というか後継者候補? だった者を神々への生贄として捧げようと考えているらしい。

「ファマ様たちにはそんな物よりも海産物を捧げればいいと思う」
「まったくですわ。ただ、今まで贅沢をしていた古株のエルフたちの中にいた過激派が、今までの生活を守ろうとしてそういう動きをしようとしているみたいですわ」
「他国だったため、干渉ができませんでした。申し訳ございません、シズト様」

 押さえつける事を他の番人に任せたジュリウスが僕の近くまできて謝罪をしたけど、どう干渉しようとしていたのか気になる。
 けどその追及は今じゃなくてもいい。
 とりあえず、今問題なのは、その生贄のエルフの女性をどうするか考える事だろう。
 ひとまず会う事になって連れてきてもらったエルフを見て、思わず叫ぶ。

「アウトーーー!!」

 これは普通に手を出したらアウトなロリ!
 絶対手を出す事は考えられないけど、この子が生贄のために殺されたらいやな気持ちになるわ!!
 レヴィさんもそうですわね、とでも言いたそうにゆっくりと頷いていた。
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