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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう
258.事なかれ主義者は遊んですごした
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転移陣をササッと作った後、護衛としてついて来ていた近衛兵の方々にもご協力していただいて大量の屋台料理を確保し、三柱の教会の像の前にそれぞれ供物として置いた翌日。
世界樹ファマリーへの【生育】も使った後、神様の像の前でお祈りをしたけど、特に何も変化はなかったので問題はなかったようだ。
ゆっくり立ち上がって背後への警戒を解くと、一緒にお祈りをしていたレヴィさんがこちらを見た。今日もドレス姿だったけど、昨日とは異なり細かな装飾はされておらず、シンプルな物だった。
「私も終わったのですわ! 今日から島を回って転移陣を設置していくのですわー」
「できるだけ早く終わるといいんだけどね」
レヴィさんの護衛のための近衛兵とドーラさん、僕の護衛についてくるジュリウスとラオさん、ルウさんは全員武装している。
彼らに加えて、今日はユグドラシルから世界樹の番人が護衛に加わっていた。その中に知り合いを見つけたので手を振ってみたら、しばらくアタフタした後に近くのエルフに何か言われたようで、僕の前にやってきた。
「久しぶりだね、ジュリエッタさん。元気にしてた?」
「ハッ! シズト様も、お元気そうで何よりです!」
凛々しい顔つきのエルフの女性は、以前僕の婚約者候補になったジュリエッタさんだ。
婚約者の候補から辞退した後、世界樹の番人として修業をしていたと聞いていたけど、元気そうで良かった。
「そういえば、Sランクの魔石見つけてくれたのジュリエッタさんだったんだよね? ありがと! おかげでライデンを作れたよー。お礼を直接言おうと思ったんだけど、ジュリウスに忙しいからって断られちゃってねー」
「大したことはしておりません。シズト様のためならばいくらでもご用意してみせましょう!」
「…………用意? 宝物庫に元々あったんじゃなかったの?」
「………」
ジュリエッタさんが笑顔のまま固まった。
ジュリウスに視線を向けるとジュリウスもニコニコしながらジュリエッタさんを見ていた。
「たまたまタイミングよく他国から手に入り、宝物庫に入れるタイミングでジュリエッタが気づいたのです。そうだろう? ジュリエッタ」
「ハッ!! その通りであります!!」
「レヴィさん……この二人本当の事言ってる?」
「今、指輪を付けてるから分からないのですわ。それに、どちらでもいいのですわー。ほらほら、早くルズウィックに向かうのですわ~」
レヴィさんに引っ張られながらガレオールの首都ルズウィックに転移する。
そうして護衛に囲まれながらエンター号が停泊している港まで移動したけど、その間ジュリエッタさんとジュリウスは護衛に集中している様だった。
……まあ、もう起こってしまった事だし、次がないように釘を刺す程度にしとこ。
エンター号に全員乗り込む事は大きさ的に無理だったので、ガレオールの軍艦に分かれて乗り込んだ。
ガレオールの軍艦はどれも帆船だから、島を回るルートが決まっているらしい。
今は軍艦に囲まれながら航行中だ。
軍艦の人たちはエンター号が珍しいのか雁首揃えて見物中のようだけど、僕たちはその相手をせずにとりあえず甲板の上でのんびり話をしながら過ごしていた。
「全部回るのにどのくらい時間がかかるの?」
「一週間ですね。風魔法使いをフル動員して最速で移動するようです」
「ただ、それでも安全優先で交易ルートを活用するみたいですわ。強力な魔物は出ないとは思いますけれど、低ランクの魔物の襲撃はあると思うのですわ」
「……もう転移陣設置したし、着くまで向こうで過ごそうかな」
「そうしてくれるとアタシらは楽でいいけどな」
「海の上での戦いは正直苦手なのよね。足場の確保はベラちゃんに任せっきりだったし」
「ん、船が壊れたらどうしようもない」
「いざとなったら私が何とかするので問題ありません」
ジュリウスが言うと本当に何とでもなりそうだから不思議。
ただ、わざわざ大所帯で来たし、一週間の船旅の間に何か便利な魔道具を思いつくかもしれないから極力こっちにいよう。
……ただ、やる事がないんだよなぁ。
暇つぶしになるような遊びでも考えるか。
エンター号の乗組員たちや、レヴィさんたちとオセロをしたりトランプをしたり自作の人生ゲームをしたりして遊んですごしている間に、魔道具もせっせと作った。
特に喜ばれたのは『濾過サーバー』だ。
真水を節約して使わなくちゃいけないのが面倒だったから、除塩杭の応用で真水を作る魔道具ができないかと考えたら出来ちゃった魔道具だ。
海水を樽の中に入れて魔力を込めながらレバーを引くだけで真水が飲める優れものだ。時々底に溜まった不純物を取り除かないといけないのは面倒だけど、それでもキャプテン・バーナンドさんに喜ばれた。
島に着けば、エント様の像の近くに転移陣を設置して、特に観光はせずにまた船に戻る。
世界樹ファマリーのお世話があるので時々転移陣を使って屋敷に戻ったけど、お世話が終わればすぐに船に戻ってみんなとのんびりゲームをして過ごした。
魔物の襲撃は時々あったけど、海の中から現れた魚人や、周囲の軍艦に乗っていた人たちが対応したので僕は船室の中で大人しくするだけでよかった。
それを繰り返しているとあっという間に一週間が過ぎた。
最後の転移陣を設置すると、船はルズウィックに戻る。
ただ、僕たちはキャプテン・バーナンドとは別れ、一足先に島に設置した転移陣で帰らせてもらった。
流石に一週間船の上で過ごしたら飽きる。
ルズウィックでは神様への供物を買い漁ろう、と思っていたんだけど、転移先で待ち構えていた人がそうさせてくれなさそうだ。
立派な衣装に身を包んだ人が片膝をついて両手で僕に手紙を差し出しながら話し始める。
「世界樹の使徒様。女王陛下が、魔道具について話がしたいと仰せです。お忙しいようであれば女王陛下自ら世界樹の使徒様の元に赴くそうですが、いかがいたしましょうか?」
世界樹ファマリーへの【生育】も使った後、神様の像の前でお祈りをしたけど、特に何も変化はなかったので問題はなかったようだ。
ゆっくり立ち上がって背後への警戒を解くと、一緒にお祈りをしていたレヴィさんがこちらを見た。今日もドレス姿だったけど、昨日とは異なり細かな装飾はされておらず、シンプルな物だった。
「私も終わったのですわ! 今日から島を回って転移陣を設置していくのですわー」
「できるだけ早く終わるといいんだけどね」
レヴィさんの護衛のための近衛兵とドーラさん、僕の護衛についてくるジュリウスとラオさん、ルウさんは全員武装している。
彼らに加えて、今日はユグドラシルから世界樹の番人が護衛に加わっていた。その中に知り合いを見つけたので手を振ってみたら、しばらくアタフタした後に近くのエルフに何か言われたようで、僕の前にやってきた。
「久しぶりだね、ジュリエッタさん。元気にしてた?」
「ハッ! シズト様も、お元気そうで何よりです!」
凛々しい顔つきのエルフの女性は、以前僕の婚約者候補になったジュリエッタさんだ。
婚約者の候補から辞退した後、世界樹の番人として修業をしていたと聞いていたけど、元気そうで良かった。
「そういえば、Sランクの魔石見つけてくれたのジュリエッタさんだったんだよね? ありがと! おかげでライデンを作れたよー。お礼を直接言おうと思ったんだけど、ジュリウスに忙しいからって断られちゃってねー」
「大したことはしておりません。シズト様のためならばいくらでもご用意してみせましょう!」
「…………用意? 宝物庫に元々あったんじゃなかったの?」
「………」
ジュリエッタさんが笑顔のまま固まった。
ジュリウスに視線を向けるとジュリウスもニコニコしながらジュリエッタさんを見ていた。
「たまたまタイミングよく他国から手に入り、宝物庫に入れるタイミングでジュリエッタが気づいたのです。そうだろう? ジュリエッタ」
「ハッ!! その通りであります!!」
「レヴィさん……この二人本当の事言ってる?」
「今、指輪を付けてるから分からないのですわ。それに、どちらでもいいのですわー。ほらほら、早くルズウィックに向かうのですわ~」
レヴィさんに引っ張られながらガレオールの首都ルズウィックに転移する。
そうして護衛に囲まれながらエンター号が停泊している港まで移動したけど、その間ジュリエッタさんとジュリウスは護衛に集中している様だった。
……まあ、もう起こってしまった事だし、次がないように釘を刺す程度にしとこ。
エンター号に全員乗り込む事は大きさ的に無理だったので、ガレオールの軍艦に分かれて乗り込んだ。
ガレオールの軍艦はどれも帆船だから、島を回るルートが決まっているらしい。
今は軍艦に囲まれながら航行中だ。
軍艦の人たちはエンター号が珍しいのか雁首揃えて見物中のようだけど、僕たちはその相手をせずにとりあえず甲板の上でのんびり話をしながら過ごしていた。
「全部回るのにどのくらい時間がかかるの?」
「一週間ですね。風魔法使いをフル動員して最速で移動するようです」
「ただ、それでも安全優先で交易ルートを活用するみたいですわ。強力な魔物は出ないとは思いますけれど、低ランクの魔物の襲撃はあると思うのですわ」
「……もう転移陣設置したし、着くまで向こうで過ごそうかな」
「そうしてくれるとアタシらは楽でいいけどな」
「海の上での戦いは正直苦手なのよね。足場の確保はベラちゃんに任せっきりだったし」
「ん、船が壊れたらどうしようもない」
「いざとなったら私が何とかするので問題ありません」
ジュリウスが言うと本当に何とでもなりそうだから不思議。
ただ、わざわざ大所帯で来たし、一週間の船旅の間に何か便利な魔道具を思いつくかもしれないから極力こっちにいよう。
……ただ、やる事がないんだよなぁ。
暇つぶしになるような遊びでも考えるか。
エンター号の乗組員たちや、レヴィさんたちとオセロをしたりトランプをしたり自作の人生ゲームをしたりして遊んですごしている間に、魔道具もせっせと作った。
特に喜ばれたのは『濾過サーバー』だ。
真水を節約して使わなくちゃいけないのが面倒だったから、除塩杭の応用で真水を作る魔道具ができないかと考えたら出来ちゃった魔道具だ。
海水を樽の中に入れて魔力を込めながらレバーを引くだけで真水が飲める優れものだ。時々底に溜まった不純物を取り除かないといけないのは面倒だけど、それでもキャプテン・バーナンドさんに喜ばれた。
島に着けば、エント様の像の近くに転移陣を設置して、特に観光はせずにまた船に戻る。
世界樹ファマリーのお世話があるので時々転移陣を使って屋敷に戻ったけど、お世話が終わればすぐに船に戻ってみんなとのんびりゲームをして過ごした。
魔物の襲撃は時々あったけど、海の中から現れた魚人や、周囲の軍艦に乗っていた人たちが対応したので僕は船室の中で大人しくするだけでよかった。
それを繰り返しているとあっという間に一週間が過ぎた。
最後の転移陣を設置すると、船はルズウィックに戻る。
ただ、僕たちはキャプテン・バーナンドとは別れ、一足先に島に設置した転移陣で帰らせてもらった。
流石に一週間船の上で過ごしたら飽きる。
ルズウィックでは神様への供物を買い漁ろう、と思っていたんだけど、転移先で待ち構えていた人がそうさせてくれなさそうだ。
立派な衣装に身を包んだ人が片膝をついて両手で僕に手紙を差し出しながら話し始める。
「世界樹の使徒様。女王陛下が、魔道具について話がしたいと仰せです。お忙しいようであれば女王陛下自ら世界樹の使徒様の元に赴くそうですが、いかがいたしましょうか?」
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