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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう
幕間の物語122.青バラちゃんは面接をした
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山に囲まれたドワーフの国ウェルズブラの首都ウェルランドは、山の斜面に作られた街だ。
山の頂上にはドワーフたちの技術を駆使して作られたとても立派な城がある。
城の近くには、最近建てられたばかりの建物があった。三階建てのその建物の外観はシンプルだが、一階の通りに面している所は壁ではなく、大きなガラスがあり、店内が丸見えだった。
店内では背丈の低いドワーフの女たちが集まっている。それをずんぐりむっくりとしたドワーフの男たちが外からのぞき込んでいた。
店内のドワーフの女たちは、店の外にいる男たちを気にした素振りもなく、店内で思い思いに過ごしていた。
赤い髪をおさげにした女ドワーフは不安そうにうろうろと同じところを行ったり来たりしている。
カウンターの外側に整然と並べられた椅子に座っている女の中には目を瞑って気持ちを落ち着かせている者もいれば、暢気に編み物をしている者もいた。
壁にもたれかかって持ってきていた紙を広げ、書かれている内容を確認していた女は「やっぱり長所は別の事にした方が良いかしら?」と心配そうに呟く。
その一方で、椅子を円形に並べてお喋りに興じている女たちもいた。
彼女たちは今集まっているドワーフたちの中でも年齢を重ねている集団だった。
「遅いねぇ。アタシの番になる頃には日が暮れているんじゃないかい?」
「普通にあり得そうね。夜は冷えるからちょっと心配だわ」
「あら、奥さん。ぬくぬくコートはまだ買ってないのかしら?」
「そうなの。お手伝いになったら、入荷情報がすぐ入るでしょう? そうしたらすぐに購入できるかなって思ったの」
「考える事はみーんな、おんなじね。アタイもそうさ」
「アンタ、もう持ってたじゃない。一人で何着も持っても意味ないじゃん」
「アタイはぬくぬくコート以外の魔道具について知りたいのさ。もちろん、青バラちゃんが心配ってのもあるけどね」
「そうねぇ。無防備だもの。馬鹿な男が手を出さないといいんだけどねぇ」
「この店で問題を起こしたら、それこそ外交問題に発展するんじゃないかい?」
「……バカ息子にもう一度釘を刺すべきかしら」
「私も人の事をとやかく言えないわ……あら、さっきのグループが終わったようね」
階段の方から数人が下りてくる足音が聞こえ、ざわめいていた店内が一斉に静かになる。
カウンターの向こう側にある扉が開くと、そこから数人のドワーフの女たちが出てきた。
言うべき事は全て言う事ができたのか、満足そうな女もいれば、上手くいかなかったのか猫背でとぼとぼと歩く者もいた。
先程まで二階にいたドワーフたちが外に出ると、カウンターの扉の向こう側から、ひょこっと青いバラを頭の上に咲かせた小柄な女の子が姿を現した。
彼女は、ウェルズブラでは見かけたという情報が今までなかった『ドライアド』という精霊と植物に近い存在だ。
小さな口から発せられる声を聞き洩らさないように静かにする店内のドワーフの女と、先程まで外で覗き込んで騒いでいたドワーフの男たち。
「次のドワーフさ~ん。三十一番から三十五番のドワーフさ~ん。二階の応接室にどうぞ~」
ドライアドが扉の向こう側に姿を消すと、五人の女ドワーフがカウンターの向こう側に行こうと歩き始めた。
獲物を狩るような鋭い視線でお互いを見て威圧している。この時点で既に戦いは始まっているようだ。
彼女たちは事前に青バラちゃんが言っていた通り、番号順に一列で並んで階段を上る。
階段を上り切ると目の前の扉は無視して左に曲がって進み、応接室と書かれた部屋の扉をノックした。
「どうぞ、お入りくださいっ!」
「失礼します!」
「失礼するよ」
「お邪魔します~」
「……あ! お、お邪魔します!」
「よろしくお願いします」
最後に部屋に入ってきた人物が扉を閉め、青バラちゃんが座っている方を向くように弧を描くように並べられた席にそれぞれが座る。
その様子を確認した青バラちゃんが、手元に置かれた紙をちらちらと見ながら、一生懸命話し始める。
「それでは、あるばいとの面接を始めさせていただきます! えっと……ばいとりーだー、の青バラちゃんです! 順番に自己紹介と、んっとね……特技を発表してください!」
現在行われているのは、魔道具店サイレンスウェルランド支店のバイトの採用面接だ。どうせなら現地人で、という話になり、青バラちゃんは言われた通り募集をかけた。
だが、シズトが提示した条件が良すぎたのか、はたまた魔道具店の店員としての立場が欲しいのか、魔道具店で働く事によっての恩恵を得たいのか、思惑はいろいろとあると思われるが、想定の十倍以上の人数が応募してきた。
採用方法など一任されていた青バラちゃんは書類面接をせず、直接会って決める事にしたため、早朝から始まったバイト面接は未だに終わりが見えない。
だが、青バラちゃんは焦った様子もなく、一生懸命シズトから任された仕事をこなそうとしていた。それぞれの自己紹介と特技を聞き終えた彼女は、一度手元に置いてあった紙に視線を落としてまた前を向いた。
「それでは、えっと……次は質問ですっ! そっちのドワーフさんから順番に答えてくださいっ! もし、ドワーフの男が物を買わずに長時間居座ったらどうしますかっ!」
「耳を引っ張って追い出すと思います」
「優しいねぇ。アタシなんか金的蹴り上げて蹲ったところを転がして動かすね」
「流石にそれは……可哀想かも。私はやんわりとお伝えすると思います」
「え、えっと……魔道具を紹介します!」
「アタシは顔が広いからねぇ。息子の醜態を広めるかもしれないねぇ」
フンフンッと大げさな程頷きつつ話を聞いている青バラちゃんの隣で、ペンが勝手に動いて文字が書かれていく。
話をした内容がそこにはしっかり書かれていた。
「ここで働きたい理由は何ですかっ!」
「お給金が良いからですね」
「バカな子たちが連日来て、表で喧嘩してるから何とかしてやろうと思ってね」
「お休みが多いからです~」
「適温コートを使った時の衝撃が忘れられなくて! もっといろんな魔道具を近くで見ていたくて志望しました!」
「ここならいろんな話が集まると思ってね。ああ、もちろん私ばかりが貰うのではなく、私からも噂話は教えるよ?」
首を上下に動かす事に集中しすぎて話をしっかり聞いているのか不安になるドワーフたちだったが、その後も青バラちゃんの質問は続く。
結局、集まった者の面接は日暮れ前に終わらず、数日続くのだった。
山の頂上にはドワーフたちの技術を駆使して作られたとても立派な城がある。
城の近くには、最近建てられたばかりの建物があった。三階建てのその建物の外観はシンプルだが、一階の通りに面している所は壁ではなく、大きなガラスがあり、店内が丸見えだった。
店内では背丈の低いドワーフの女たちが集まっている。それをずんぐりむっくりとしたドワーフの男たちが外からのぞき込んでいた。
店内のドワーフの女たちは、店の外にいる男たちを気にした素振りもなく、店内で思い思いに過ごしていた。
赤い髪をおさげにした女ドワーフは不安そうにうろうろと同じところを行ったり来たりしている。
カウンターの外側に整然と並べられた椅子に座っている女の中には目を瞑って気持ちを落ち着かせている者もいれば、暢気に編み物をしている者もいた。
壁にもたれかかって持ってきていた紙を広げ、書かれている内容を確認していた女は「やっぱり長所は別の事にした方が良いかしら?」と心配そうに呟く。
その一方で、椅子を円形に並べてお喋りに興じている女たちもいた。
彼女たちは今集まっているドワーフたちの中でも年齢を重ねている集団だった。
「遅いねぇ。アタシの番になる頃には日が暮れているんじゃないかい?」
「普通にあり得そうね。夜は冷えるからちょっと心配だわ」
「あら、奥さん。ぬくぬくコートはまだ買ってないのかしら?」
「そうなの。お手伝いになったら、入荷情報がすぐ入るでしょう? そうしたらすぐに購入できるかなって思ったの」
「考える事はみーんな、おんなじね。アタイもそうさ」
「アンタ、もう持ってたじゃない。一人で何着も持っても意味ないじゃん」
「アタイはぬくぬくコート以外の魔道具について知りたいのさ。もちろん、青バラちゃんが心配ってのもあるけどね」
「そうねぇ。無防備だもの。馬鹿な男が手を出さないといいんだけどねぇ」
「この店で問題を起こしたら、それこそ外交問題に発展するんじゃないかい?」
「……バカ息子にもう一度釘を刺すべきかしら」
「私も人の事をとやかく言えないわ……あら、さっきのグループが終わったようね」
階段の方から数人が下りてくる足音が聞こえ、ざわめいていた店内が一斉に静かになる。
カウンターの向こう側にある扉が開くと、そこから数人のドワーフの女たちが出てきた。
言うべき事は全て言う事ができたのか、満足そうな女もいれば、上手くいかなかったのか猫背でとぼとぼと歩く者もいた。
先程まで二階にいたドワーフたちが外に出ると、カウンターの扉の向こう側から、ひょこっと青いバラを頭の上に咲かせた小柄な女の子が姿を現した。
彼女は、ウェルズブラでは見かけたという情報が今までなかった『ドライアド』という精霊と植物に近い存在だ。
小さな口から発せられる声を聞き洩らさないように静かにする店内のドワーフの女と、先程まで外で覗き込んで騒いでいたドワーフの男たち。
「次のドワーフさ~ん。三十一番から三十五番のドワーフさ~ん。二階の応接室にどうぞ~」
ドライアドが扉の向こう側に姿を消すと、五人の女ドワーフがカウンターの向こう側に行こうと歩き始めた。
獲物を狩るような鋭い視線でお互いを見て威圧している。この時点で既に戦いは始まっているようだ。
彼女たちは事前に青バラちゃんが言っていた通り、番号順に一列で並んで階段を上る。
階段を上り切ると目の前の扉は無視して左に曲がって進み、応接室と書かれた部屋の扉をノックした。
「どうぞ、お入りくださいっ!」
「失礼します!」
「失礼するよ」
「お邪魔します~」
「……あ! お、お邪魔します!」
「よろしくお願いします」
最後に部屋に入ってきた人物が扉を閉め、青バラちゃんが座っている方を向くように弧を描くように並べられた席にそれぞれが座る。
その様子を確認した青バラちゃんが、手元に置かれた紙をちらちらと見ながら、一生懸命話し始める。
「それでは、あるばいとの面接を始めさせていただきます! えっと……ばいとりーだー、の青バラちゃんです! 順番に自己紹介と、んっとね……特技を発表してください!」
現在行われているのは、魔道具店サイレンスウェルランド支店のバイトの採用面接だ。どうせなら現地人で、という話になり、青バラちゃんは言われた通り募集をかけた。
だが、シズトが提示した条件が良すぎたのか、はたまた魔道具店の店員としての立場が欲しいのか、魔道具店で働く事によっての恩恵を得たいのか、思惑はいろいろとあると思われるが、想定の十倍以上の人数が応募してきた。
採用方法など一任されていた青バラちゃんは書類面接をせず、直接会って決める事にしたため、早朝から始まったバイト面接は未だに終わりが見えない。
だが、青バラちゃんは焦った様子もなく、一生懸命シズトから任された仕事をこなそうとしていた。それぞれの自己紹介と特技を聞き終えた彼女は、一度手元に置いてあった紙に視線を落としてまた前を向いた。
「それでは、えっと……次は質問ですっ! そっちのドワーフさんから順番に答えてくださいっ! もし、ドワーフの男が物を買わずに長時間居座ったらどうしますかっ!」
「耳を引っ張って追い出すと思います」
「優しいねぇ。アタシなんか金的蹴り上げて蹲ったところを転がして動かすね」
「流石にそれは……可哀想かも。私はやんわりとお伝えすると思います」
「え、えっと……魔道具を紹介します!」
「アタシは顔が広いからねぇ。息子の醜態を広めるかもしれないねぇ」
フンフンッと大げさな程頷きつつ話を聞いている青バラちゃんの隣で、ペンが勝手に動いて文字が書かれていく。
話をした内容がそこにはしっかり書かれていた。
「ここで働きたい理由は何ですかっ!」
「お給金が良いからですね」
「バカな子たちが連日来て、表で喧嘩してるから何とかしてやろうと思ってね」
「お休みが多いからです~」
「適温コートを使った時の衝撃が忘れられなくて! もっといろんな魔道具を近くで見ていたくて志望しました!」
「ここならいろんな話が集まると思ってね。ああ、もちろん私ばかりが貰うのではなく、私からも噂話は教えるよ?」
首を上下に動かす事に集中しすぎて話をしっかり聞いているのか不安になるドワーフたちだったが、その後も青バラちゃんの質問は続く。
結局、集まった者の面接は日暮れ前に終わらず、数日続くのだった。
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