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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう
247.事なかれ主義者はとりあえず笑った
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ミニスカメイド服を着たガレオールのメイドさんに案内された部屋の扉が開くと、机に座ってのんびりと紅茶を飲んでいる女性がいた。
女王様だと聞いていたから結構年上だと勝手に想像していたけど、健康的に焼けた小麦色の肌には皺ひとつなく、綺麗な女性だった。
その女性は露出度の高いドレスを着ている。ドレスには袖がなく、襟元も大きく開いていてレヴィさんと負けず劣らずな豊満な胸が零れ落ちそうだ。
ちょっと視線が一部分に行かないように気を付けないと。
そう思った時には時すでに遅かったのかもしれない。黒い瞳が僕を捉えると眉間に皺が寄った。美人さんが顔を顰めるとそのギャップからかとても怖いっす。
「女王陛下、眼鏡を」
お付きの人らしき男性が耳打ちをすると、ハッとした様子で首から下げていた丸眼鏡をかけた。そうすると、彼女の眉間の皺が和らぐ。それでも変わらない切れ長な目が厳しい雰囲気を感じさせるけど。
女性が立ち上がると、高いヒールでコツコツと音を鳴らしながら近づいてきた。
ヒールで背が高く見えるけど、それでもレヴィさんよりも少し小さい。
「よくいらっしゃいました。わたくしがこのガレオールの女王ランチェッタ・ディ・ガレオールですわ」
「二人目のですわ……?」
「何か仰いました?」
「いえ、何でもないです」
不思議そうに首を傾げているランチェッタ女王陛下。宝石がたくさん使われている煌びやかな王冠が落ちる前に話を戻そう。
「世界樹の使徒の音無静人です。この度はお時間を頂きありがとうございます」
「婚約者のぉ、ジューンですぅ。シズト様のサポートをさせていただいておりますぅ」
「同じく婚約者のレヴィア・フォン・ドラゴニアですわ。ドラゴニア王国第一王女で、主にシズトの代わりに魔道具を求める貴族の相手をしているのですわ~」
「あら、そうなの。それならば、わたくしはあなたとお話をすればよろしいのかしら?」
「もしも魔道具をお求めであれば、商談は私が承っているのですわ」
「そう」
「女王陛下、お茶の準備が終わりました」
「あら、じゃあ立ち話も何ですし、座りましょうか」
……ですわは幻聴だったかも?
なんて、くだらない事を考えていたらレヴィさんが咳払いしてきた。
慌ててランチェッタ女王陛下の後を追い、クーを下ろしてその隣に腰かける。
ジューンさんがクーの隣に座り、レヴィさんが僕の隣に座る。
全員が座ったタイミングで、扇を開いて自身を仰いでいたランチェッタさんが口を開く。
「シズト殿、今回は非公式の会談とさせていただいたのですが、よろしかったでしょうか」
「あ、はい。大丈夫です」
「そう。それじゃ、普通に話すわ。あなたも、そんな気を張らずに話してくれればいいのよ。転移者なのでしょう? いままでの国々で散々言われたと思うけど、あなたたち転移者の不作法は多少は目を瞑るって言う暗黙の了解があるのよ」
「ありがとうございます」
「……まあいいわ。それで、そちらの用件は何かしら?」
「僕に加護を授けてくれた神様たちの教会の建設の許可と、王都で開く予定の魔道具店に僕の家の近くとつながる転移陣の設置をしてもいいかの確認をしに来ました」
「教会に関しては問題ないわ。場所は拘らなければ、費用もそこまでかからないでしょう」
「ありがとうございます!」
場所はこっちで用意すればいいのか。
今までは向こうが用意してくれたからそれに合わせてたけど、本当にどうでもいい感じなようだ。
最低限達成したい事は達成できたのでホッとしていると、ランチェッタ女王陛下は眉間に皺を寄せて腕を組み、何か考えている様子だった。とてもご立派な胸がさらに強調されて目のやり場に困ります……。
「……移動式の転移陣でやって来たと言っていたけど、それを置いていくの?」
「いえ、新しく作ろうかと」
「作れるの!?」
そういうと、ランチェッタ女王陛下はとても驚いた様子でガタっと立ち上がった。とっても揺れた。何がとは言わないけど。視線を横に逸らすとジト目のレヴィさんと目が合った。
「はい。馬車に転移陣をくっつけたの僕ですし……聞いてなかったんですか?」
「聞いてたわよ、あなたが魔道具を作れる加護を持っている事は。でも、転移陣よ? てっきりダンジョンが山ほどあるドラゴニアの秘蔵の馬車だと思っていたわ!」
ランチェッタ女王陛下はハァッと深く息を吐くと、ドスンと結構な勢いのまま椅子に腰かけた。めちゃくちゃ揺らしてるけどわざとなのだろうか。
レヴィさんの方に視線を逸らすとまたジト目で見られそうなので、ジューンさんの方を見ると、彼女は熟睡しているクーの口から垂れたよだれを拭いていた。なんかうちの子がごめんなさい。
「……家と店を繋ぐって言ったわよね? ドラゴニアってだいぶ遠いけどできるの?」
「んー……できそうですね、特に問題なく」
「そう……」
一言呟くと、また腕を組んで難しい顔で考え込むランチェッタ女王陛下。
壁際に控えていた侍女に視線を向けると、彼女は静かに首を横に振った。
用意された紅茶や南国の果物をふんだんに使って作られたケーキを黙々と食べていると、やっとランチェッタ女王陛下が顔をあげた。
「転移陣の件、条件付きで認めましょう」
「……その条件とは、なんでしょうか?」
「わたくしが求める数だけ転移陣を譲って頂けるなら、ドラゴニア側が攻めてくるかも、なんていう貴族を黙らせるには十分よ。条件を認めてくれるなら、転移陣の設置だけじゃなく、教会もお店も全力で協力するわ。どうかしら?」
どうといわれても……どうしましょう?
女王様だと聞いていたから結構年上だと勝手に想像していたけど、健康的に焼けた小麦色の肌には皺ひとつなく、綺麗な女性だった。
その女性は露出度の高いドレスを着ている。ドレスには袖がなく、襟元も大きく開いていてレヴィさんと負けず劣らずな豊満な胸が零れ落ちそうだ。
ちょっと視線が一部分に行かないように気を付けないと。
そう思った時には時すでに遅かったのかもしれない。黒い瞳が僕を捉えると眉間に皺が寄った。美人さんが顔を顰めるとそのギャップからかとても怖いっす。
「女王陛下、眼鏡を」
お付きの人らしき男性が耳打ちをすると、ハッとした様子で首から下げていた丸眼鏡をかけた。そうすると、彼女の眉間の皺が和らぐ。それでも変わらない切れ長な目が厳しい雰囲気を感じさせるけど。
女性が立ち上がると、高いヒールでコツコツと音を鳴らしながら近づいてきた。
ヒールで背が高く見えるけど、それでもレヴィさんよりも少し小さい。
「よくいらっしゃいました。わたくしがこのガレオールの女王ランチェッタ・ディ・ガレオールですわ」
「二人目のですわ……?」
「何か仰いました?」
「いえ、何でもないです」
不思議そうに首を傾げているランチェッタ女王陛下。宝石がたくさん使われている煌びやかな王冠が落ちる前に話を戻そう。
「世界樹の使徒の音無静人です。この度はお時間を頂きありがとうございます」
「婚約者のぉ、ジューンですぅ。シズト様のサポートをさせていただいておりますぅ」
「同じく婚約者のレヴィア・フォン・ドラゴニアですわ。ドラゴニア王国第一王女で、主にシズトの代わりに魔道具を求める貴族の相手をしているのですわ~」
「あら、そうなの。それならば、わたくしはあなたとお話をすればよろしいのかしら?」
「もしも魔道具をお求めであれば、商談は私が承っているのですわ」
「そう」
「女王陛下、お茶の準備が終わりました」
「あら、じゃあ立ち話も何ですし、座りましょうか」
……ですわは幻聴だったかも?
なんて、くだらない事を考えていたらレヴィさんが咳払いしてきた。
慌ててランチェッタ女王陛下の後を追い、クーを下ろしてその隣に腰かける。
ジューンさんがクーの隣に座り、レヴィさんが僕の隣に座る。
全員が座ったタイミングで、扇を開いて自身を仰いでいたランチェッタさんが口を開く。
「シズト殿、今回は非公式の会談とさせていただいたのですが、よろしかったでしょうか」
「あ、はい。大丈夫です」
「そう。それじゃ、普通に話すわ。あなたも、そんな気を張らずに話してくれればいいのよ。転移者なのでしょう? いままでの国々で散々言われたと思うけど、あなたたち転移者の不作法は多少は目を瞑るって言う暗黙の了解があるのよ」
「ありがとうございます」
「……まあいいわ。それで、そちらの用件は何かしら?」
「僕に加護を授けてくれた神様たちの教会の建設の許可と、王都で開く予定の魔道具店に僕の家の近くとつながる転移陣の設置をしてもいいかの確認をしに来ました」
「教会に関しては問題ないわ。場所は拘らなければ、費用もそこまでかからないでしょう」
「ありがとうございます!」
場所はこっちで用意すればいいのか。
今までは向こうが用意してくれたからそれに合わせてたけど、本当にどうでもいい感じなようだ。
最低限達成したい事は達成できたのでホッとしていると、ランチェッタ女王陛下は眉間に皺を寄せて腕を組み、何か考えている様子だった。とてもご立派な胸がさらに強調されて目のやり場に困ります……。
「……移動式の転移陣でやって来たと言っていたけど、それを置いていくの?」
「いえ、新しく作ろうかと」
「作れるの!?」
そういうと、ランチェッタ女王陛下はとても驚いた様子でガタっと立ち上がった。とっても揺れた。何がとは言わないけど。視線を横に逸らすとジト目のレヴィさんと目が合った。
「はい。馬車に転移陣をくっつけたの僕ですし……聞いてなかったんですか?」
「聞いてたわよ、あなたが魔道具を作れる加護を持っている事は。でも、転移陣よ? てっきりダンジョンが山ほどあるドラゴニアの秘蔵の馬車だと思っていたわ!」
ランチェッタ女王陛下はハァッと深く息を吐くと、ドスンと結構な勢いのまま椅子に腰かけた。めちゃくちゃ揺らしてるけどわざとなのだろうか。
レヴィさんの方に視線を逸らすとまたジト目で見られそうなので、ジューンさんの方を見ると、彼女は熟睡しているクーの口から垂れたよだれを拭いていた。なんかうちの子がごめんなさい。
「……家と店を繋ぐって言ったわよね? ドラゴニアってだいぶ遠いけどできるの?」
「んー……できそうですね、特に問題なく」
「そう……」
一言呟くと、また腕を組んで難しい顔で考え込むランチェッタ女王陛下。
壁際に控えていた侍女に視線を向けると、彼女は静かに首を横に振った。
用意された紅茶や南国の果物をふんだんに使って作られたケーキを黙々と食べていると、やっとランチェッタ女王陛下が顔をあげた。
「転移陣の件、条件付きで認めましょう」
「……その条件とは、なんでしょうか?」
「わたくしが求める数だけ転移陣を譲って頂けるなら、ドラゴニア側が攻めてくるかも、なんていう貴族を黙らせるには十分よ。条件を認めてくれるなら、転移陣の設置だけじゃなく、教会もお店も全力で協力するわ。どうかしら?」
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