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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

246.事なかれ主義者は得意な事をやって欲しい

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 皆と海水浴を楽しんでから一週間が経った。
 世界樹の世話をしながら魔道具を作ったり、ジューロさんとドフリックさんの三人で実用的なボートの開発について検討したりしていたらあっという間だった。
 クーを乗せた馬車は、ガレオールの首都ルズウィックに着いた。
 大きな港街だけど、この国特有の白い壁は変わらない。
 城まで真っ白で統一されている。
 光をよく反射するから熱を持ち辛く、家の中を快適に保つ事に役立っている……らしい。魔道具の需要はそこら辺にあるのかも?
 そんな事を考えながら馬車に揺られながら王城へ向かっている。
 同乗者はレヴィさん、ジューンさんの婚約者コンビと、レヴィさんの侍女のセシリアさんとこの馬車の主となりつつあるクー。
 ジューンさんと僕はユグドラシルからの使者という事で、純白の布地に金の刺繍がされた服を着ている。もうこの服を着るのにもだいぶ慣れてきたような気がする。
 レヴィさんはノースリーブの紺色のドレスを着ていた。胸元が大きくV字に開いていてちょっと目のやり場に困る。チラッと見ると、僕があげた魔道具『加護無しの指輪』が紐を通されて首から提げられていた。
 長いスカートが気になるのか、細くてきれいな指で弄っている。

「動き辛いのですわ~~~」
「我慢してください」

 いつもの長袖長ズボン姿に慣れてしまったレヴィさんを窘めるのはセシリアさんだ。
 彼女はトレードマークと化してている長袖のメイド服を着ている。スカートの丈も長くて暑そうだけど、暑さ対策は【付与】で万全だ。
 魔力切れさえしなければ汗一つかかないだろう。
 適温シリーズを作っておいてよかった、なんて事を考えていたら目的地に到着したらしい
 馬車が停まったらクーを背負って、ジューンさんと一緒に降りる。レヴィさんは後から下りてきた。
 馬車の外で護衛をしていたジュリウスが音もなくいつの間にか僕の近くにいた。
 少し驚いたけど、いつもの事だし、と思って気にせず案内係の後をついて歩くと、広い部屋に通された。
 どうやら待合室のようだ。
 見た事もない美術品が飾られている部屋だった。下手な事をすると物を壊してしまいそうだから大人しくじっとしよう。
 ソファーに腰かけるために、クーをソファーの上に座らせて、僕もその隣にお邪魔する。ふっかふかだな、このソファー、ちょっと苦手かも?
 そんな事を考えていたらジューンさんが僕の隣に腰かけた。

「少し早く着きすぎたかな?」
「遅れるよりかはぁ、良いと思いますぅ」

 僕の隣に腰かけているジューンさんが、僕の頭をゆっくりと撫でる。
 されるがままになっていると、目の前に座っていたレヴィさんの目が据わっている気がする。

「……どうしたの?」
「今度私もやるのですわ」
「まあ、頭を撫でるくらいなら別にいいよ?」

 お風呂を一緒に入った際に散々頭を洗われているし、頭を触られるのが嫌とかもないし。
 レヴィさんはほっぺを膨らませてそっぽを向いてしまった。
 ジューンさんはそんなレヴィさんの様子を目を細めて見ていて「あらあらぁ」と言って口を押える。
 何とも言えない空気になったので話を切り替えよう。

「ガレオールでも教会の建設の許可、下りるかなぁ」
「この街であれば問題なく下りるかと。港街という事もあり、様々な人種が集まっています。その影響か、教会が他の街と比較すると多いです。そこに三つ教会が増えようと特に気にしないだろうと愚考します」
「なるほど。じゃあとりあえず教会とお店の建設許可をもらうか。後は転移陣の設置許可も。来る方法を確立できれば、いつでも慰安旅行できるし」

 先日、エミリーに一緒に海で遊びたいと言われた時は驚いたけど、よくよく考えたら彼女たちは働き詰めだし、ちょっとは羽を休める時も必要だろう。
 まだ具体的な日時を決めてないけど、転移陣を設置出来ればいつでも来る事ができる。

「転移陣に関しては条件などを詰めておくのですわ! そこら辺は任せるのですわ~」
「いつもありがと」
「どうって事ないのですわ! 王侯貴族への魔道具の宣伝や商談はこれからも私が頑張るのですわ!」
「私もご協力しますぅ」
「これは私の仕事なのですわ~。ジューンにはジューンの仕事があるのですわ。私、料理は全くできないですわ。役割分担ですわ!」
「適材適所だね」

 心が読めるっていうアドバンテージがレヴィさんにはあるもんね。
 読心の魔道具を使えば他の人でも使えるけど、やっぱり経験の差ってあると思うし。

「ジューンさんはこの国の料理の研究してもらおうかな。家でもお刺身食べたい」
「わかりましたぁ。頑張りますぅ」

 話が一段落したタイミングで扉がノックされた。
 入ってきたのはガレオールの侍女だった。みんなお揃いのミニスカメイド服を着ている。
 勇者の余計な伝承が影響してそう。

「お待たせ致しました。女王陛下の元へご案内致します」

 さて、何事もなく許可を貰えるといいんだけど。
 すやすやと眠っていたクーを背負い、両隣を婚約者に挟まれながら部屋を後にした。
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