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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう
241.事なかれ主義者は声が出なかった
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皆の水着の選定を終えた後、いろいろ疲れたので自室でのんびりと過ごしている。
いくつかのパーテーションもどきを作って、めちゃくちゃ広かった部屋を、向かい合わせにある扉同士を真っすぐつなぐ廊下と、いくつかの個室に分けた。
その中でも一際狭いスペースがお気に入りの場所だ。
部屋の角にあたるその個室には、ニホン連合国から何とか仕入れてもらった畳を敷いた。数が少なく四畳しかなかったけど、寝転がってのんびりする分には問題ない。
窓から入ってくる風が風鈴を揺らして良い音を奏でている。畳と一緒に仕入れてもらってよかった。
寝転がりながら書斎にあった本を読んでいると、パーテーションを誰かがノックした。音のした方を見ると、ジュリウスがいた。
「シズト様、今日は夕食を先に済ませますか? それともお風呂でしょうか?」
「……ご飯で」
まだ気持ちの準備ができていないので。
ジュリウスは「承知しました」と答えると個室に入ってくる事なく、パーテーションの向こう側に消えた。
気を取り直して本を読む。
ガレオールの商人から買い取った本で、民話が書かれている物だ。
以前、ジュリウスが話していた加護を失った勇者の話らしい。
数百年以上前の出来事であるのに関わらず、今もなお歌や本となって伝わっているようだ。
その昔、凶悪な海の魔物がいて、ガレオールの島々を荒らし回っていたらしい。
討伐しようとした冒険者や、軍隊など数多の人間が死んでいき、諦めかけたその時に、一人の勇者が現われた。
その勇者の力はすさまじく、勇者が振るった斬撃は海ごと魔物を両断し、魔物の亡骸は海の底に消えていったのだとか。
ジュリウスは「彼にそんな力はなかったはずですが……」と不思議そうに首を傾げていた。
魔物を討伐後は、人々は幸せに暮らしました、と締めくくられていた。
勇者のその後については本や歌によって違って、その場で亡くなったという話もあれば、どこかへと去っていったというものもあって、不確かだ。
ただ、少なくともジュリウスと別れてここに来た当時は加護を持っていたのは間違いない。
果たしてその後の彼に何があったのか。
いつどんな事をして加護を失ってしまったのか。
加護を失ったら今の生活も大きく変わるだろうし、変な事で加護を失いたくはないから、今後もガレオールの本を集めよう。
神様に直接聞いてみてもいいかもだけど、それで機嫌を損ねられても困るし。……行動を見られてる時点で今更かな?
アイテムバッグの中に本をしまって、起き上がる。
僕の動く気配を察知したのか、ジュリウスがパーテーションの陰から姿を現した。
「まだ少し早いですが、向かわれますか?」
「そうだね、いつもみんなが待ってるし、たまには待つのもいいかもね」
夜ご飯をのんびりと食べていたけれど、時は来てしまった。
「シズト、お風呂の時間なのですわ!」
「先に行っていた方がよろしいでしょうか? それとも、服を脱ぐお手伝いをご所望でしょうか?」
「いつも通り先に行っててください……」
クスッと笑ったセシリアさんが、元気なレヴィさんと一緒に食堂を出て行く。
他の皆も、食事を終えると自室へと戻っていく。
ノエルは相も変わらず自室に引き籠っているらしい。
食事を部屋に運んでもあまり食べていないらしいけど、大丈夫かな。
時間を潰すために魔力マシマシ飴を舐めながらボーっとしている間も、エミリーとジューンさんがせっせと片づけをしている。
手伝おうとしてもいつも「私たちの仕事ですから」とにっこり笑って手伝わせてくれない。
ただ、僕の近くを通るたびに体のどこかに尻尾がモフッと当たる。
その度にエミリーを見るけど、彼女は仕事に集中していて、わざとではない……と思う。
「シズト様、レヴィア様たちの準備は整ったようです」
「ありがと、モニカ」
食堂に戻ってきたモニカが、いつものように準備ができた事を報せてくれた。
モニカの後をついて歩き、脱衣所へと向かう。
脱衣所の前でモニカと別れて、一人で中に入るんだけど……。
「いかがなさいましたか、シズト様?」
「いや、ちょっと……」
「……私のお手伝いをご所望でしょうか?」
「いえ、大丈夫です!」
いつまでもここで立ち止まっていると本当にモニカが手伝ってきそうなので、慌てて脱衣所の中に入る。
脱衣所は普段と変わらない。無駄に広い。
本来であれば、王族やその婚約者である僕の入浴の際にお手伝いをする人がたくさんいるからこういう作りになったらしい。
一人で服を脱いでタオルを腰に巻き、浴室へと向かう。
浴室の扉の前で立ち止まり、深呼吸を数回。……落ち着かない。
この向こうではレヴィさんとセシリアさんが水着姿で待っているはずだ。
しかも二人とも結構際どい水着を着るとか言っていた気がする……おっと、やばい。
余計な妄想をしたからちょっと元気になってしまったので、深呼吸して落ち着いてから行こう。そう思っていたのに扉が内側から開かれた。
「シズト様ですか? どうかされ…………あら。……鎮めるのに手をお貸し致しましょうか?」
「………」
「そうですか、ご不要ですか」
「どうしたのですわ~? 入って来ないのですわ~?」
「シズト様は緊張なされているようです。もう少々お時間が必要なようですから、のんびりお待ちしましょう」
セシリアさんが扉を閉じた。
僕は前屈みの状態からそのままストンと座り、しばらく蹲って収まるのを待つ。
……見られた……めっちゃ恥ずかしいんだけど!!!
いくつかのパーテーションもどきを作って、めちゃくちゃ広かった部屋を、向かい合わせにある扉同士を真っすぐつなぐ廊下と、いくつかの個室に分けた。
その中でも一際狭いスペースがお気に入りの場所だ。
部屋の角にあたるその個室には、ニホン連合国から何とか仕入れてもらった畳を敷いた。数が少なく四畳しかなかったけど、寝転がってのんびりする分には問題ない。
窓から入ってくる風が風鈴を揺らして良い音を奏でている。畳と一緒に仕入れてもらってよかった。
寝転がりながら書斎にあった本を読んでいると、パーテーションを誰かがノックした。音のした方を見ると、ジュリウスがいた。
「シズト様、今日は夕食を先に済ませますか? それともお風呂でしょうか?」
「……ご飯で」
まだ気持ちの準備ができていないので。
ジュリウスは「承知しました」と答えると個室に入ってくる事なく、パーテーションの向こう側に消えた。
気を取り直して本を読む。
ガレオールの商人から買い取った本で、民話が書かれている物だ。
以前、ジュリウスが話していた加護を失った勇者の話らしい。
数百年以上前の出来事であるのに関わらず、今もなお歌や本となって伝わっているようだ。
その昔、凶悪な海の魔物がいて、ガレオールの島々を荒らし回っていたらしい。
討伐しようとした冒険者や、軍隊など数多の人間が死んでいき、諦めかけたその時に、一人の勇者が現われた。
その勇者の力はすさまじく、勇者が振るった斬撃は海ごと魔物を両断し、魔物の亡骸は海の底に消えていったのだとか。
ジュリウスは「彼にそんな力はなかったはずですが……」と不思議そうに首を傾げていた。
魔物を討伐後は、人々は幸せに暮らしました、と締めくくられていた。
勇者のその後については本や歌によって違って、その場で亡くなったという話もあれば、どこかへと去っていったというものもあって、不確かだ。
ただ、少なくともジュリウスと別れてここに来た当時は加護を持っていたのは間違いない。
果たしてその後の彼に何があったのか。
いつどんな事をして加護を失ってしまったのか。
加護を失ったら今の生活も大きく変わるだろうし、変な事で加護を失いたくはないから、今後もガレオールの本を集めよう。
神様に直接聞いてみてもいいかもだけど、それで機嫌を損ねられても困るし。……行動を見られてる時点で今更かな?
アイテムバッグの中に本をしまって、起き上がる。
僕の動く気配を察知したのか、ジュリウスがパーテーションの陰から姿を現した。
「まだ少し早いですが、向かわれますか?」
「そうだね、いつもみんなが待ってるし、たまには待つのもいいかもね」
夜ご飯をのんびりと食べていたけれど、時は来てしまった。
「シズト、お風呂の時間なのですわ!」
「先に行っていた方がよろしいでしょうか? それとも、服を脱ぐお手伝いをご所望でしょうか?」
「いつも通り先に行っててください……」
クスッと笑ったセシリアさんが、元気なレヴィさんと一緒に食堂を出て行く。
他の皆も、食事を終えると自室へと戻っていく。
ノエルは相も変わらず自室に引き籠っているらしい。
食事を部屋に運んでもあまり食べていないらしいけど、大丈夫かな。
時間を潰すために魔力マシマシ飴を舐めながらボーっとしている間も、エミリーとジューンさんがせっせと片づけをしている。
手伝おうとしてもいつも「私たちの仕事ですから」とにっこり笑って手伝わせてくれない。
ただ、僕の近くを通るたびに体のどこかに尻尾がモフッと当たる。
その度にエミリーを見るけど、彼女は仕事に集中していて、わざとではない……と思う。
「シズト様、レヴィア様たちの準備は整ったようです」
「ありがと、モニカ」
食堂に戻ってきたモニカが、いつものように準備ができた事を報せてくれた。
モニカの後をついて歩き、脱衣所へと向かう。
脱衣所の前でモニカと別れて、一人で中に入るんだけど……。
「いかがなさいましたか、シズト様?」
「いや、ちょっと……」
「……私のお手伝いをご所望でしょうか?」
「いえ、大丈夫です!」
いつまでもここで立ち止まっていると本当にモニカが手伝ってきそうなので、慌てて脱衣所の中に入る。
脱衣所は普段と変わらない。無駄に広い。
本来であれば、王族やその婚約者である僕の入浴の際にお手伝いをする人がたくさんいるからこういう作りになったらしい。
一人で服を脱いでタオルを腰に巻き、浴室へと向かう。
浴室の扉の前で立ち止まり、深呼吸を数回。……落ち着かない。
この向こうではレヴィさんとセシリアさんが水着姿で待っているはずだ。
しかも二人とも結構際どい水着を着るとか言っていた気がする……おっと、やばい。
余計な妄想をしたからちょっと元気になってしまったので、深呼吸して落ち着いてから行こう。そう思っていたのに扉が内側から開かれた。
「シズト様ですか? どうかされ…………あら。……鎮めるのに手をお貸し致しましょうか?」
「………」
「そうですか、ご不要ですか」
「どうしたのですわ~? 入って来ないのですわ~?」
「シズト様は緊張なされているようです。もう少々お時間が必要なようですから、のんびりお待ちしましょう」
セシリアさんが扉を閉じた。
僕は前屈みの状態からそのままストンと座り、しばらく蹲って収まるのを待つ。
……見られた……めっちゃ恥ずかしいんだけど!!!
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