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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

239.事なかれ主義者はチラチラ見ている

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 ドーラさんに似合うと思う水着を選んだ後、ノエルの部屋の前で左に曲がって、正面にあったユキの部屋でまた左に曲がる。
 そしてユキの部屋の隣にあったホムラの部屋も通り過ぎる。
 二人は水着を自分で選ぶ事ができるから、サイレンスの店番や商談をしに行っているらしい。
 ホムラの隣の部屋のルウさんの部屋に辿り着いた。
 もうすでに二人の女性の部屋に入ったけど、未だに緊張する。
 ただ、突っ立っているとまたモニカに押し込まれる事が分かっているので、自分で扉を開いて中に入った。
 部屋の中はやっぱりいい香りがするような気がする。
 ラオさんの部屋とは違って、ベッドの上にはぬいぐるみがたくさんある。
 家具も可愛い感じの物が多い。
 視線を意図的にルウさんから逸らして部屋を見ていると、ルウさんが僕の目の前に来ていた。
 彼女は両腕を拡げて僕を出迎えた。
 ラオさんと同じくらいの大きさの胸が肩紐がないタイプの水着で大事な所が隠されている。
 上はなぜか四角形の布が大事な所を最低限隠しているだけの物だった。二本の紐が胸を締め付けているように見える。これって泳げるのかな。

「シズトくん、いらっしゃい。待ってたわ!」
「ちょ、今抱き着くのはまずいからやめて!」

 ルウさんからのハグをサッと離れて逃げたけど、ルウさんは気にした様子もなく、僕の手を握って部屋の奥へと導く。
 後ろ姿をチラッと見て、すぐに視線を逸らす。
 ルウさんの形の良い大きなお尻が強調されるような布面積が少ない水着だった。っていうか、これ紐ビキニってやつでは?

「シズトくん、どれだったら喜んでくれるかなぁ、って考えてたんだけどお姉ちゃん分からなくなっちゃった」
「……どれも紐……」

 下はほとんど同じような物ばかりだった。っていうか、今着ているのが一番布の面積が多いような気がする。

「ほら、シズトくんってお風呂の時によくお姉ちゃんの足とかお尻を見ているでしょ? だから好きなのかなって思って」

 否定できない……!
 いや、胸派かお尻派かと問われれば悩みどころなんだけど、女性らしい体つきの所をついつい見ちゃうのは仕方ないと思うんですよ!
 ただ、普通に一緒に遊ぶんだったらしっかり相手を見る事ができるような見た目の方が良い訳で……。
 それを考えたら今の所ドーラさんの水着が一番安心して見る事ができる。

「これ以外はないの…?」
「急ぎで作ってもらったらしいから、これ以外はないわ。気に入らなかったかしら?」
「いや、気に入るとか気に入らないとかじゃなくて……海で遊ぶ時に、紐とかほどけない?」
「ああ、この紐の事かしら? 大丈夫よ? しっかり動ける物を作ってもらったから。蜘蛛系の魔物の上位種の糸を使って作られた物だから、普通の鉄の鋏でちょきんってされても大丈夫!」

 なるほど、ラッキースケベはファンタジー的な力で防がれる、と。
 じゃあ今のでいいんじゃないでしょうか……。まだ布が多い方だし……。
 ルウさんが他の水着を着たところも見てから判断してほしいと言われたけど、これ以上この場に留まると反応してしまいそうなのでそそくさとお暇した。



 ルウさんの次はその隣の部屋のジューンさんだった。
 ジューンさんの部屋の扉を開けて中に入ると、なんだかハーブの様な匂いがする。
 室内で植物を育てているようで、窓際には小さな植木鉢で育てられている名も知らない植物が花を咲かせている。
 ジューンさんはその植木鉢に水をあげていた。

「あらぁ、早かったですねぇ。もう少しで終わりますからぁ、ソファーに座ってぇ、待っていてくださぁい」
「あ、はい」

 ジューンさんはちょっと頬を赤らめながらそう言うと、ササッと僕が作った魔道具『魔法のじょうろ』で水やりをして回って、一通り水を上げ終えると僕の前に立った。

「お待たせしましたぁ。どぉですかぁ? 変な所はぁ、無いですかぁ?」

 両手を広げてその場でくるっと一回りするジューンさん。
 ジューンさんは大きめの白いシャツを着ていて、下は緑色のショートパンツを履いている。
 このくらいの格好なら街中でも普通に見かけそうな感じだ。

「良かったですぅ。他の人にぃお見苦しい姿を見せる訳には行きませんからぁ」

 そう言ってほっとした様子のジューンさん。
 やっぱり体型にコンプレックスを抱えていて、周りの目が気になるようだ。

「エルフの中ではあんまりだったかもしれないけど、自信持っていいと思うよ?」
「シズトちゃんと一緒にお風呂に入ってぇ、レヴィちゃんからシズトちゃんの反応の意味について聞いてますからぁ、シズトちゃんには見せてもいいかなぁとは思ってるんですよぉ? でもぉ、ガレオールの海で遊ぶならぁ、他の人の視線もあると思うんですぅ。そう思ったらぁ、ちょっと不安になっちゃいましてぇ」
「そっか……。他の人に見られたくないならやっぱりお留守番してる?」
「ちゃんとついて行きますぅ。同じ婚約者のレヴィちゃんが行くのにぃ、私が行かなかったらぁ、いろいろな人に迷惑がかかると思いますからぁ」
「そう、かな? まあ、そうかも?」

 よく分からないけど、不仲だとか思われて他の人も、とか言われるのは嫌なので一緒に行った方がよさそうだ。
 ジューンさんには申し訳ないけど、体型についてのコンプレックスは時間が解決してくれる事を祈るしかない。
 とりあえず選ぶ物は何もなかったので部屋を後にしようと思って立ち上がろうとすると、ジューンさんがそっと僕の両肩を抑えて引き留めた。

「ジューンさん……?」

 その表情はどこか不安そうで、何か逡巡しているようで……。
 そうしていたのも束の間、彼女はえいっと大きめのシャツを脱ぎ捨て、ズボンも下ろした。
 彼女は服の下に水着を着ていた。
 晒されたのは緑色のビキニだった。布の面積が少なすぎるとかはないけど、ラオさんたちと同じくらいのご立派な胸の主張が強い。
 キュッと引き締まったウエストに、ふっくらと柔らかそうに膨らんだお尻が、ジューンさんがその場でくるくる回転するたびに見える。

「ど、どうでしょうかぁ……」

 顔を真っ赤にさせながらか細い声でそう問いかけるジューンさんを、しっかり見る事ができなかった。
 こういう態度が彼女を傷つけるだろうと分かってるんだけど、これも時間が解決してくれる事を祈ろう。
 そんな事を考えていると、僕の様子を見て満足したのかジューンさんは嬉しそうにはにかんでいた。
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