【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

238.事なかれ主義者は阻止した

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 何度か深呼吸した後、ラオさんの部屋の扉を開いて――すぐに閉めた。思いっきり閉めたから結構大きな音が鳴ってしまった。
 ……なんか下着姿のラオさんがいたような気がする。え、気のせい?
 いや、でもお風呂の時くらい肌の露出が多かった気がするんだけど。
 扉の取っ手を握ったまま固まっていると、その様子を見ていたモニカが不思議そうに首を傾げた。

「シズト様、どうされましたか?」
「いや、どうって……ちょっと着替え中だったみたいだから出直そうかと」
「着替えは終わっているはずですよ? ほら、この後もシズト様のご意見をお待ちの方々がいるので、ササッと終わらせてきてください」

 モニカが扉を開け、僕はラオさんの部屋に押し込まれた。
 心なしかいい香りがする部屋は、僕の今の部屋よりも狭いが、十分な広さだ。
 っていうか、僕の部屋が広すぎるんだよ。戻ったらちょっと【加工】で部屋の中仕切って個室作ろ。
 押し込まれて躓き、四つん這いで現実逃避をしていると、視界にラオさんの両足が入ってきた。いつもはごつい靴を履いているのに、今は可愛らしいスリッパだ。

「どうした、シズト。怪我でもしたのかよ」
「いや、大丈夫なんだけど……ラオさん、着替え中じゃないよね?」
「あ? 着替えはもうとっくに終わってるぞ?」

 なるほど、じゃあ僕の見間違いか。
 安心して顔を上げると……うん、見間違いは見間違いだけど下着じゃなくて水着だわ、これ。

「……何で顔逸らすんだよ」
「ちょっと……」

 言葉を濁したのが気に障ったのか、正座をしている僕の脇に両手を差し込み、ラオさんがヒョイッと持ち上げた。

「視線逸らすなっての。似合ってないんだったらそう言えばいいじゃねぇか。他にもあっから、どれが好みか言えばいいだろ」

 ラオさんが振り返ってベッドの方に視線を向けた。
 そちらを見ると、確かに水着がいくつか並べられている。今着ている物とはちょっと違うタイプのようだ。
 ラオさんが僕を持ち上げたままベッドの方に歩いて行き、僕を下ろした。

「ほら、シズトの好みはどれだよ。水遊びの時に着てやるからさっさと教えろ」
「水遊びって……海で遊ぶ時の事?」
「それ以外ねぇだろ。あ、それとも風呂でも着ればいいのか?」

 ……湯浴み着と水着どっちがましなんだろう。
 僕が黙って真剣に悩んでいると、ラオさんは納得した様子で頷いた。

「じゃあ風呂場でも着てやっから、さっさと選べ」
「そういう訳じゃないんだけど……どれも似合うんじゃないかな?」
「似合う似合わないじゃなくて、お前の好きな物を聞いてんだよ」
「そんな事言ったって……ちょっと刺激が強いというか……」
「風呂場で同じような格好の奴らよく見てんだろうが」
「お風呂場はほら、基本的にされるがままになってれば問題ないから極力見ないようにしているし」
「チラチラ見てんの知ってっからな」
「それは男なんだから仕方ないでしょ!」

 ラオさんは呆れた様子で僕を見下ろし、深くため息をついた。
 頭をガリガリと掻いている姿をチラッと見る。いつもタンクトップだから見慣れてるはずなのについつい脇に視線が行くのはなぜだろうね。

「冒険者の野郎共のようにどっしり構えてじろじろ見ればいいじゃねぇか。一緒に風呂入ってる奴だったら嫌がる奴なんかいねぇんだし。むしろ見ないとジューンが勘違いしそうだから、ジューンの時はしっかり見てやれよ」

 ジューンさんは確かに体型でコンプレックスを抱えてるから、誤解されないように気を付けないといけないのは分かるんだけど、じろじろ見るのはやっぱり抵抗があるというか、恥ずかしいというか……。

「で? 結局アタシはどれを着ればいいんだよ」
「……それが一番好みです。ラオさんらしくて」

 ラオさんが今着ているビキニが一番いいと思います。間違ってもベッドの上に乗っている布が少ない奴はダメです……破壊力やばそうです。
 ラオさんが今着ている黒い水着は、湯浴み着と似たチューブトップタイプだけど、胸の谷間の部分にリボンがあり、ついついそこに視線が行ってしまう。
 魔法か何かかけられているのかと思うくらいリボンに視線が行ってしまって、その時に視界に胸の谷間が入るのは不可抗力です。
 下はホットパンツの様な形で、いつもと同じ感じがしてちょっと安心する。

「そうかよ。じゃあ、これにするわ。ほら、次の奴が待ってるだろうからさっさと行けよ。アタシはとっとと着替えっから、あんまりもたもたしてっと脱ぐぞ」
「お邪魔しました!!」

 慌てて外に飛び出すと、モニカとジュリウスが僕を見ていた。
 モニカは小さく息を吐くと、口を開いた。

「すぐに終わってしまったのですね。良かったのか、悪かったのか……。まだまだいらっしゃいますから、サクサク行きましょう」
「……僕の理性、持つかなぁ」
「持たなくてもよろしいのではないでしょうか」

 モニカがなんか言っていたけどスルーして、モニカの後をついて歩く。

「皆一斉にやった方が早く終わるのに……」
「それだとシズト様には刺激が強すぎるのでは、という意見がありましたので」
「……良くお分かりで……」

 着替え云々は置いといたとしても、一人ですら全然見る事ができなかったんだ。
 全員同時にとなると碌に見る事も出来ず、適当に答えると断言できる。
 モニカの後をとぼとぼと歩いていると、隣を歩いていたジュリウスがポンポンッと僕の肩を労うように叩いた。



 少し歩いただけでモニカはすぐに立ち止まった。それもそのはず、さっきの部屋から一部屋分しか歩いていない。

「次はお隣の部屋のドーラ様です」
「シズト様、頑張ってください」
「……やるしかないか」

 そう思って扉を開けた先には、真っ白な肌を惜しげもなく晒しているドーラさんがベッドに座っていた。眠たそうな青い目が僕を捉え、彼女は立ち上がった。
 起伏に乏しい体格のドーラさんの大事な所は、黒い布が最低限隠している。

「………どう?」
「……動いたら、ポロリ、しちゃいそうだね」
「大丈夫、練習した」
「そう……」

 じゃあ、良いんじゃないでしょうか。
 僕の表情を見てドーラさんは何か思う所があったのか、一度僕を部屋の外に出して、着替えた。
 ワンピースタイプの水着で、フリルがいっぱいだ。肌の露出がさっきと比べると圧倒的に少ない。
 こういう水着を小さな子が着ているところを海で見た事がある気がする。
 人形の様に整った顔立ちのドーラさんの可愛さをさらに引き立てていた。

「うん、似合ってる」
「これにする」

 よかった。何とか止める事ができたようだ。
 それにしても、やっぱりマイクロビキニの概念は転移者が持ち込んだんだろうか。
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