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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう
236.事なかれ主義者は日傘を作った
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皆へのプレゼントで悩みに悩んだ翌日、クーを乗せた馬車はガレリアの街を出発した。
しばらくの間は暇なので、ファマリーのお世話を済ませた後、ノエルの部屋にお邪魔する。
部屋にはノエルと、その弟子のエイロンとエルヴィスがいる。
エイロンは僕が入って来た時、チラッと僕の方を見たんだけどすぐさま視線を戻して一生懸命カリカリと魔法陣を描き始めた。
「ユキ、エイロンに何かしたの?」
「私は何もしてないわよ、ご主人様」
「そうなの?」
じゃあいい所でも見せようとしてるのかな。なんか鬼気迫るような雰囲気あるけど。
エイロンの隣に座っていたエルヴィスは、真剣な面持ちで魔法陣をなぞっている。
ノエルも相変わらず自分の机で作業をしていた。
僕も三人を見習って自分のすべき事をやろう。
今日はとりあえず日傘を作ろうと思う。魔力が余っているからある程度満足できる日傘ができたら他の物も作ろっと。
ガレオールで観光を続けるなら日焼け防止用の何かを作った方が良いと思う。
食べ歩きを一緒にしたルウさんとラオさんが少し日に焼けていたし。
二人とも「日焼けくらい冒険者をしていたら日常茶飯事」と言っていたし、別に色白じゃないと嫌だとも思わないからいいんだけどさ。
だけど選択肢としてあった方が良いでしょ。
そう思ってとりあえず、特注した大きな雨傘を開いて思案する。
これは布の部分に魔法陣を刻むべきか、取っ手の部分に刻むべきか。
遮光カーテンみたいな感じで、光を吸収する魔法を付与すればいい感じになると思うんだけど……うん、できそう。
「【付与】! ……本当にこれで効果があるのかなぁ。っていうか、普通に日傘でもいいような気がしなくもないんだけど……とりあえず実験かなぁ。ノエル~」
「何すか」
「ちょっと実験に付き合ってよー」
「ノルマが多すぎて無理っす。ノルマが終わったらシズト様が持ってきた魔道具の解析をする必要があるっすから猶更暇がないっす」
露天商で買ったガラクタのほとんどは魔法陣の様な物を後から書き足した偽物だったけど、中には本当に魔道具があったようだ。それは今ノエルの作業机の脇に置かれている。
ノエルのしたい事も分かるけど、僕じゃダメだし、魔道具の扱いに一番慣れているのノエルだし……。
隣で控えていたユキの方を見ると、彼女は弟子たちの様子を見ていた。
「ユキ、ちょっとノエルの手を借りたいからノルマ減らしてあげてよ」
「そうねぇ、わかったわ、ご主人様」
「その代わり明日のノルマを倍とかは無しっすよ? ノルマ免除っすよ? 先送りじゃ嫌っすよ?」
「分かってるよー。ほらほら、実験するから付き合ってよ!」
「ちょっと待つっす。ノルマはどのくらい減るんすか?」
「今日一日分でいいんじゃない? その代わり、今日作った魔道具のテストは付き合ってよ」
「しょうがないっすね、シズト様は。それで、今日はどんな魔道具を試すんすか?」
ノエルは、やれやれ、といった感じで作業の手を止めて椅子から立ち上がり、僕が座っている所まで近づいてきた。
「いや、ただの日傘だよ? ほら、ラオさんたち日焼けしたでしょ? それを防ぎたいなぁって。傘の布地部分は無地で真っ黒なのと、白をメインとした花柄の物の二つを用意したんだ~。ノエルの好きな方使っていいよ~」
「……日焼けを防ぐってどうやるつもりなんすか?」
花柄の傘を受け取った後、傘の内側に付与された魔法陣を食い入るように見ていたノエルがぽつりと呟くように聞いてきた。
「降り注ぐ太陽光をこう……傘で吸収しちゃう感じ。反射させたら周囲の人に迷惑かかるだろうから、吸収しちゃえばいいかなって。でも反射と違って、本当に光が吸収されているのかパッと見て分かんないじゃん?」
「……なんだか嫌な予感がするんすけど、ジュリウスはどう思うっすか?」
「私は特に何も思いません。ただ、光の精霊とも多少交流があるので、それなりの光魔法は使えます」
「あ、逃げた」
三階の窓から飛び出して逃亡を図ったノエルだったけど、すぐさまユキに確保されていた。
カタカタと震えているエイロンと、全く周囲を気にした様子もなく魔法陣をなぞり書きしているエルヴィスに別れを告げて庭へと向かう。
外に出ると、馬乗りになったユキの下敷きになっているノエルが観念したのかじっとしていた。
「ジュリウスの光魔法とか嫌な予感しかしないっす! 魔石を使うタイプにすればボク要らないと思うっす!」
「いや、そうしたいのは山々なんだけどね? 維持をするってなると結構必要魔力が多そうなんだよね」
「……長い時間使えないって、日傘としてどうなんすか」
「僕もそう思う」
ちょっと面積が大きすぎたのが問題かな。吸収した光を魔力に変換する魔法とかないかなぁ……流石にないか。それともイメージの問題か。どちらにせよ残念だ。
ソーラーパネル的な感じの物ができたらエント様の教会の屋根にくっつけて、魔力の自給自足できるようにしたかったのに。
「まあ、それはそれとして置いといて、とりあえず作ったやつが本当に機能してるのか試したいから協力してよノエル~。僕だとジュリウスがさせてくれないんだよ~」
「まあ、シズト様に何かあったら大問題っすもんね」
「魔力消費を減らすというか、少ない魔力を増幅させる方法は高圧洗浄機で既に経験してるから、後はコレが使い物になるかどうかだけなんだよ~。無駄にいろいろ作ったらラオさんに怒られるんだよ~」
「もうこれの時点で怒られる気がするっす」
その後もいろいろとノエルは言い返してきたけど、今日のノルマだけではなく、明日と明後日のノルマもチャラにする事と引き換えに、しっかりやる事はやってくれた。
無事にジュリウスの精霊魔法を吸収しきって効果を証明したから改良案の日傘を作ろう。
なんかジュリウスとノエルがひそひそと話をしていたけど、ラオさんとルウさんとセシリアさんが真っ黒になる前に作らねば!
しばらくの間は暇なので、ファマリーのお世話を済ませた後、ノエルの部屋にお邪魔する。
部屋にはノエルと、その弟子のエイロンとエルヴィスがいる。
エイロンは僕が入って来た時、チラッと僕の方を見たんだけどすぐさま視線を戻して一生懸命カリカリと魔法陣を描き始めた。
「ユキ、エイロンに何かしたの?」
「私は何もしてないわよ、ご主人様」
「そうなの?」
じゃあいい所でも見せようとしてるのかな。なんか鬼気迫るような雰囲気あるけど。
エイロンの隣に座っていたエルヴィスは、真剣な面持ちで魔法陣をなぞっている。
ノエルも相変わらず自分の机で作業をしていた。
僕も三人を見習って自分のすべき事をやろう。
今日はとりあえず日傘を作ろうと思う。魔力が余っているからある程度満足できる日傘ができたら他の物も作ろっと。
ガレオールで観光を続けるなら日焼け防止用の何かを作った方が良いと思う。
食べ歩きを一緒にしたルウさんとラオさんが少し日に焼けていたし。
二人とも「日焼けくらい冒険者をしていたら日常茶飯事」と言っていたし、別に色白じゃないと嫌だとも思わないからいいんだけどさ。
だけど選択肢としてあった方が良いでしょ。
そう思ってとりあえず、特注した大きな雨傘を開いて思案する。
これは布の部分に魔法陣を刻むべきか、取っ手の部分に刻むべきか。
遮光カーテンみたいな感じで、光を吸収する魔法を付与すればいい感じになると思うんだけど……うん、できそう。
「【付与】! ……本当にこれで効果があるのかなぁ。っていうか、普通に日傘でもいいような気がしなくもないんだけど……とりあえず実験かなぁ。ノエル~」
「何すか」
「ちょっと実験に付き合ってよー」
「ノルマが多すぎて無理っす。ノルマが終わったらシズト様が持ってきた魔道具の解析をする必要があるっすから猶更暇がないっす」
露天商で買ったガラクタのほとんどは魔法陣の様な物を後から書き足した偽物だったけど、中には本当に魔道具があったようだ。それは今ノエルの作業机の脇に置かれている。
ノエルのしたい事も分かるけど、僕じゃダメだし、魔道具の扱いに一番慣れているのノエルだし……。
隣で控えていたユキの方を見ると、彼女は弟子たちの様子を見ていた。
「ユキ、ちょっとノエルの手を借りたいからノルマ減らしてあげてよ」
「そうねぇ、わかったわ、ご主人様」
「その代わり明日のノルマを倍とかは無しっすよ? ノルマ免除っすよ? 先送りじゃ嫌っすよ?」
「分かってるよー。ほらほら、実験するから付き合ってよ!」
「ちょっと待つっす。ノルマはどのくらい減るんすか?」
「今日一日分でいいんじゃない? その代わり、今日作った魔道具のテストは付き合ってよ」
「しょうがないっすね、シズト様は。それで、今日はどんな魔道具を試すんすか?」
ノエルは、やれやれ、といった感じで作業の手を止めて椅子から立ち上がり、僕が座っている所まで近づいてきた。
「いや、ただの日傘だよ? ほら、ラオさんたち日焼けしたでしょ? それを防ぎたいなぁって。傘の布地部分は無地で真っ黒なのと、白をメインとした花柄の物の二つを用意したんだ~。ノエルの好きな方使っていいよ~」
「……日焼けを防ぐってどうやるつもりなんすか?」
花柄の傘を受け取った後、傘の内側に付与された魔法陣を食い入るように見ていたノエルがぽつりと呟くように聞いてきた。
「降り注ぐ太陽光をこう……傘で吸収しちゃう感じ。反射させたら周囲の人に迷惑かかるだろうから、吸収しちゃえばいいかなって。でも反射と違って、本当に光が吸収されているのかパッと見て分かんないじゃん?」
「……なんだか嫌な予感がするんすけど、ジュリウスはどう思うっすか?」
「私は特に何も思いません。ただ、光の精霊とも多少交流があるので、それなりの光魔法は使えます」
「あ、逃げた」
三階の窓から飛び出して逃亡を図ったノエルだったけど、すぐさまユキに確保されていた。
カタカタと震えているエイロンと、全く周囲を気にした様子もなく魔法陣をなぞり書きしているエルヴィスに別れを告げて庭へと向かう。
外に出ると、馬乗りになったユキの下敷きになっているノエルが観念したのかじっとしていた。
「ジュリウスの光魔法とか嫌な予感しかしないっす! 魔石を使うタイプにすればボク要らないと思うっす!」
「いや、そうしたいのは山々なんだけどね? 維持をするってなると結構必要魔力が多そうなんだよね」
「……長い時間使えないって、日傘としてどうなんすか」
「僕もそう思う」
ちょっと面積が大きすぎたのが問題かな。吸収した光を魔力に変換する魔法とかないかなぁ……流石にないか。それともイメージの問題か。どちらにせよ残念だ。
ソーラーパネル的な感じの物ができたらエント様の教会の屋根にくっつけて、魔力の自給自足できるようにしたかったのに。
「まあ、それはそれとして置いといて、とりあえず作ったやつが本当に機能してるのか試したいから協力してよノエル~。僕だとジュリウスがさせてくれないんだよ~」
「まあ、シズト様に何かあったら大問題っすもんね」
「魔力消費を減らすというか、少ない魔力を増幅させる方法は高圧洗浄機で既に経験してるから、後はコレが使い物になるかどうかだけなんだよ~。無駄にいろいろ作ったらラオさんに怒られるんだよ~」
「もうこれの時点で怒られる気がするっす」
その後もいろいろとノエルは言い返してきたけど、今日のノルマだけではなく、明日と明後日のノルマもチャラにする事と引き換えに、しっかりやる事はやってくれた。
無事にジュリウスの精霊魔法を吸収しきって効果を証明したから改良案の日傘を作ろう。
なんかジュリウスとノエルがひそひそと話をしていたけど、ラオさんとルウさんとセシリアさんが真っ黒になる前に作らねば!
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