上 下
341 / 1,014
第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

230.事なかれ主義者は普通に勝てない

しおりを挟む
 ボウリングが終わった。結果はお察しの通りだ。
 がたいがいいガントさんに勝てる訳ないんだよ。
 せめて前世のボウリングそのものを準備して!

「ふむ、今回は私の負けですね」
「ジュリウス殿も、もう少し筋肉をつけた方がよいぞ」

 うろ覚えのスコアの付け方で勝負をしていたけど、一位は筋力に物を言わせたガントさん。
 二位は一位のガントさんと僅差の得点でジュリウスさんさんだった。
 精霊魔法が使えれば負けない、と言っていたけど魔法アリは僕のいない所でやってください。

「身体強化に頼り切っていたのが今回の敗因ね。どのようなルールだとしても勝てるように練習する必要がありそうだわ」
「お母様に勝ったのですわ~~~」

 三位だったレヴィさんが勝利の雄叫びを上げている。
 レヴィさんも王妃様もどちらも身体強化に頼ってボウリングをしていたようだけど、ボウリング歴の長いレヴィさんに軍配が上がったようだ。
 四位は王妃様。最初、いつも通りボウリングの球を投げようとして、あまりピンを倒せなかったことが敗因だと思うっす。二投目以降はちゃんと転がしていたけど、ストライクは少なかった。

「最下位でしたけどぉ、楽しかったですぅ」
「それはよかった」

 のほほんとしているジューンさんには何とか勝ったので最下位は免れたけど、それもその内抜かされそうだ。パメラたちと一緒にボウリングの練習をするべきだろうか。
 でもパメラもアンジェラもボウリングで遊び過ぎたからなのか、だいたいストライクを取るんだよなぁ。心折れるわ。

「ジュリウス殿、魔法有りで再戦しないか?」
「シズト様の護衛がありますので」
「やってていいよ。僕はここで見てるから。屋敷の敷地内だったらだいたい安全でしょ。それに、このまま負けたままだとジュリウスも嫌でしょ?」
「……ありがとうございます」

 リベンジしたくてそわそわしてるんだから、ちょっとの間くらい護衛の事を忘れればいいのに。
 護衛だからそういう訳には行かないんだろうけど、僕たちの周囲には近衛兵たちが警護をしているし、ファマリーの根元には丸まっているけどフェンリルもいる。よっぽどの事がない限り大丈夫でしょ。
 魔法有りでボウリングをし始めようとしたジュリウスとガントさんの所に、どこからともなく飛んできたパメラが、運んできたアンジェラを地面に下ろした。

「パメラたちもやるデース!」
「パメラちゃん、こういうときは『いーれーて!』ていうんだよ?」
「いーれーテ!」

 魔法をがっつり使っている二人が勝つのか、パメラたちが勝つのか予測不能だ。できればアンジェラに勝って、魔法無しの人間でも勝てるんだと証明してほしい。
 レーンの修復係として残っていなきゃいけないし、即興で作ったベンチにジューンさんと一緒に座ってのんびり見ていると、王妃様がすぐ近くに座った。
 レヴィさんはどうしたんだろう、と視線を周囲に向けると、レヴィさんも「いーれーてですわー!」と言って超次元ボウリングに参戦していた。

「えっと……王妃様は参加しないんですか?」
「パールよ」
「はい?」
「私の名前はパールだと言ったの」
「はい、存じております」
「あの人の事はリヴァイと呼んでいるのに、私だけ王妃様呼びはどうしてなのかしら? しっかりと名乗ったのだけれど」
「あ、はい。すみません」
「別に謝るほどの事ではないけれど、壁を感じるから私も名前で呼びなさい。それか、お母様と呼びなさい」
「パール様と呼ばせていただきます」
「あら、夫はリヴァイ様なんて呼ばれてなかったわよね?」
「……パールさんと呼ばさせていただきます」
「それでいいわ。それで、先程の問いかけへの答えは、私は参加しないわ。貴方が参加しないのならばやる意味を感じないもの」

 そ、そうっすか。
 王妃様は扇で自身を仰ぎながら切れ長な目でレヴィさんたちの方を見ている。
 気まずい時間再び!
 そう思っていたけど、パールさんから話を振ってくれた。

「そういえば、ランクの高い魔石が欲しい、って話をしていたわよね?」
「あ、はい。そうなんです。Aランクの魔石か、それ以上の物を手に入れたくて」

 魔法生物は魔石に直接【付与】を行うタイプの魔道具だ。
 媒体となる魔石のランクが高ければ高いほどより良い魔法生物が出来上がる。
 力が物を言うアクスファースでお店を開くにはそれ相応の準備をする必要があると、農耕民族の首長であるオリーヴさんからも念押しされている。
 魔道具で店の防衛をしっかりするけど、働く人が強い方が安全はさらに高くなるはずだ。
 ただ、そのためには質の高い魔石が必要だ。
 Aランクの魔石ではもう作った事があるので、できればそれ以上の魔石だといいんだけど……。

「残念ながら、現時点でSランク以上の魔物の魔石はないわ。世界樹騒動の際には、バカな事をしでかした国々からしっかりと迷惑料を取ったけれど、その中にもSランク以上の魔石はなかったわ」
「そうですか……」

 ため息をついて肩を落とすと、静かに話のやり取りを見守っていたジューンさんが手を伸ばして僕の頭を優しく撫でる。
 その様子を見ていたパールさんがふと思い出したかのように口を開いた。

「それこそ、ユグドラシルに言えばいいじゃない。貴方がいえばSランクの魔物を狩ってでも手に入れようとするでしょう?」
「その結果が恐ろしいので言えないんすよ……」

 間違ってもSランク以上の魔物を怒らせて街に被害が出ないようにしたい。
 ジュリウスもそうだけど、ユグドラシルのエルフたちに対する発言を気を付けないとなぁ……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...