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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

228.事なかれ主義者は身に覚えがない

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 朝食を食べた後は、僕の護衛のジュリウスとレヴィさんの専属メイドのセシリアさんを後ろに引き連れ、レヴィさんとジューンさんに手を繋がれながらファマリーのお世話をしに行った。
 近くの畑でお世話をしていたドライアドたちからのおすそ分けを貰いながら歩いていると、レヴィさんが小さくため息をついた。

「やっぱりお店は開くのですわ?」
「うん……まあ、いろいろ考えたけどアクスファースだけ作らないと、後からなんか言われるかもしれないし、アクスファースが悪く言われるかもじゃん?」
「そうですねぇ。ユグドラシルの人が何か言うかもしれませんねぇ」
「それに、エミリーの故郷らしいし、困っている事があるなら助けてあげたいじゃん。キャロロット村の人とか優しかったから、すべての獣人が好戦的とは限らないって分かったから、お店を開いてもいいかなって」

 まあ、その分防衛面をしっかりするけどね。

「シズトがそうすると決めたのであれば、それでいいのですわ。店員は現地の人を雇うのですわ?」
「んー、襲われたら大変だし、店主はこっちで作っちゃおうかなって。丁度ガントさんが来るみたいだし、できるだけランクの高い魔石を手に入れるの手伝ってもらうのもありかなぁ」
「魔法生物を作るのですわね」
「そういう事」

 見た目からしてめちゃくちゃ強そうな人の方が良いよね。
 体は大きければ大きいほど威圧感を与えるだろうし、ゴリマッチョ系を作るべきだろうか。
 体育会系みたいなイメージが頭に浮かぶ。
 ああ、でも店内だから無手で強い方が良いか。お相撲さんのイメージに変わる。
 獣人は魔法が苦手だけど、身体強化がすごいって聞くし、建物ごと強化しておかないといけないよな。
 いくら魔法生物が強くても、多勢に無勢だと建物を守る事は出来ないだろうし。

「店主以外はぁ、どうするんですかぁ?」
「シズト様がお望みとあらば、裏切る可能性が低い者たちを調達してきますが」
「まあ、そこら辺はその内決めようかなぁ」

 出来るだけ他の人に迷惑をかけたくないし、隠すような事はないけど裏切られるのも困るから、警備は全部ゴーレムにしてしまってもいいかもしれない。
 現地人を採用してお金を回すのはある程度安全を確保できるようになってからでも遅くはないよね、たぶん。



 ファマリーのお世話をサクッと終わらせて、屋敷に戻ると出迎えたモニカが来訪者を告げる。

「ドランの屋敷にガント様とパール様がいらっしゃっています。現在、応接間でお待ちいただいておりますが、いかがいたしましょうか」
「お母様も来ているのですわ? お兄様だけなら待たせておくのも良いと思うのですけれど……」
「いや、お兄様もすぐに迎えに行ってあげようよ。とりあえず、ドランに会いに行こうか。……着替えた方が良いかな?」

 レヴィさんもジューンさんも僕も普段着でだいぶラフな格好だ。
 王族をお出迎えするのであればもっとしっかりした服装をするべきなのだろうか。
 レヴィさんを見ていると気にしなくていいような気がしてくるけど……。

「ガント様はシズト様と遊びたいようですし、服装もだいぶカジュアルな物でした。そのままでも問題ないとは思いますが……」

 言い淀むモニカを補足するように、静かに控えていたセシリアさんも首肯した。

「そうですね。向こうの落ち度もありますし、王族としてではなく身内として来訪されているでしょうから、ガント様もパール様も特に気にされないでしょう」
「そう?」
「そうですわー」

 関りが深い人たちがそう言うならまあいいか。
 あまり待たせすぎても良くないし。
 ファマリーの根元にある転移陣を使うため、モニカに先導してもらって先程通った道を戻る。

「それにしても、リヴァイさんの息抜きって何だろうね? 全く心当たりがないんだけど……」
「私も知らないのですわ。どうせ城から抜け出してラグナおじ様と遊んでいたとかそんな感じだと思うのですわ~」
「こっちには来てないんだし、巻き込まないでほしいなぁ」

 ドランの屋敷の地下に転移し、応接間として使っていた部屋に向かうために階段を上る。
 こっちの屋敷は誰かが訪れた時の待機所として使うようにするため、まだ手入れはしっかりとされている。最近は奴隷に王侯貴族の相手をさせるのは酷だという事になって、公爵様からメイドが派遣され、屋敷の手入れをしたり応対をしたりする事になっている。
 ……こっちの屋敷の管理も任せているし、モニカだけでも奴隷から解放するべきだよね。
 ただ、本人がそれを望んでいないんだよなぁ……謎だ。
 考え込んでいる間に応接間に到着した。
 モニカがノックした後、扉を開ける。
 室内ではのんびり紅茶を飲んでいる王妃様と、ボウリングを投げる練習をしていたガントさんがいた。
 ガントさんは投げた後の姿勢のまま僕を見て、パッと顔を綻ばせた。
 ずんずんと近づいてきて、ガシッと僕の両肩を掴んだ彼は、顔を近づけてよく分からない事を言った。

「シズト! トロッコに乗せてくれ!」
「……トロッコ?」

 うちにそんな物あったっけ?
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