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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
幕間の物語110.青バラちゃんのアルバイト②
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ドワーフの国ウェルズブラの首都ウェルランドは、山の上に王城がある。
そのすぐ近くに最近建設された真新しい三階建ての建物があり、朝早くからずんぐりむっくりとした男ドワーフたちが集まっていたのだが、今はほとんどの者が道路に倒れ込んでいた。
その建物の二階部分には『魔道具店サイレンス』と看板が掲げられていた。
道路に面している部分は大きなガラス張りで店内が丸見えの状態だったが、店内にいる者は気にした様子もない。
店内で開店準備をしているのは、シズトに『青バラちゃん』と名付けられたドライアドだ。
元々は世界樹ユグドラシルの根元で生活していた彼女だったが、現在は主に世界樹ファマリーの根元で生活していた。
そんな彼女だったが、『精霊の道』を通る事ができる事に着目されて、レヴィアからある仕事を頼まれた。
その場に一緒にいたシズトからは「アルバイトみたいだね」と言われたため、よく分からないが「あるばいと頑張る!」と意気込んでいる。
壁に掛けられた時計が時刻を告げる。
ポッポー、ポッポーと鳥の鳴き声と共に時計の上部の小さな窓から白い鳥が顔を出す。魔力によって正確な時間を刻む壁掛け時計だ。その音に反応して青バラちゃんは時計を見る。
「開店の時間だ!」
青バラちゃんはカウンターから出ると、トテトテと出入口に駆け寄る。
誰かに殴られたかのような見た目のドワーフが一人、張り付いていた窓から離れて嬉しそうに出入口に慌てて近づく。
出入口が開けられると、カランカランと音を立てながら扉が開いた。
「ドワーフさん、おはよー」
「おう! 今日もいい天気だなー」
「んー……? 雲が多いよ?」
「雪が降ってねぇだろ? こんな日は夕方以降も雪が降らねぇんだ。良かったら、仕事終わりにどこかに行かねぇか? 飯でもなんでも奢るぜ?」
「お家帰らなきゃだからごめんなさーい」
ニカッと笑うドワーフの提案をバッサリと切り捨てて、青バラちゃんは髪を巻き付けて持ち上げた立て看板を「んっしょ、んっしょ」と掛け声と共に運ぶ。
ドワーフが言い募ろうとしたが、そのドワーフを押しのけて、着膨れした女ドワーフたちが店内に入って行く。
「お邪魔するよ!」
「あー、寒い寒い!」
「まったく、最近の若い子は人様の事を考えずに喧嘩するんだから、困ったもんだね」
「あら、あそこで寝転がってる子、アンタのとこの子じゃないかい?」
「こんな所で寝るような子は知りません」
「ドワーフさんたちいらっしゃーい! 朝からお仕事一杯だ~」
女ドワーフに押しのけられた若いドワーフの事を気にした様子もなく、青バラちゃんは店内へと戻っていく。
青バラちゃんが店内に戻ると、数人の女ドワーフたちは一カ所に集まっていた。
ハンガーにかけられて壁際にずらりと並べられているのはノエルたちが作った『ぬくぬくコート』だ。適温コートの廉価版で、暑さには対応していないが、この国ではそれで十分だった。
「店主さん! ここに並んでいるのが全部『ぬくぬくコート』ってやつかい?」
「そうだよー。魔力をエイッて流すとポカポカするんだよー」
「私、魔力に自信がないんだけど、どうしようかしら?」
「ちょっと出歩くくらいなら問題ないんじゃないかい?」
「あら、魔石をポケットに入れるタイプもあるみたいよ。こっちのと比べるとちょっと高いわね」
「んー、それなら少しずつ魔力を増やすために毎日使った方がお得よね」
小柄な女性たちが集まってあーでもないこーでもないと話をしているのをカウンターの定位置に座って見守る青バラちゃん。
その彼女に近づくのは、先程押しのけられた若い男のドワーフだ。
「これからどんどん客が押し寄せるだろうから手伝ってやるよ」
「私のあるばいとだから取っちゃだめ!」
「いやいや、手伝うだけだって! 金も何も要らねぇから!」
言い募る彼に、離れた場所で『ぬくぬくコート』を見ていた女ドワーフたちが冷ややかな視線を向ける。
その集団の中から一人の女ドワーフが歩み出た。
「アンタ、仕事はどうするんだい!」
「うっせーな! 今忙しい所なんだよ」
「母ちゃんにうっせーとは何事だい!」
「母ちゃん!?」
それまで青バラちゃんの方しか見ていなかったドワーフが驚いた様子で振り向く。
可愛らしい顔を険しくさせて、ずんずんとカウンターに近寄ってくる女性を見る彼は、先程までのキリッとした表情がどこへやら。あからさまに慌てた様子で周囲をきょろきょろしている。
「アンタがどこの子の尻を追いかけてもいいけどね! それはしっかりと仕事をしている事が前提なんだよ! もうすぐ仕事の時間だろ! 外で寝ている者たちを起こしてさっさと仕事に行きな!」
ずんぐりむっくりした男ドワーフの尻を、女ドワーフは細い足で何度も蹴り上げて店外へと追い出す。
その様子を青バラちゃんはきょとんとした様子で見ていたが、やる事リストに書かれていたとおりに、店から人が出て行くタイミングで「ありがとーございましたー」とニッコリ笑顔で見送った。
そのすぐ近くに最近建設された真新しい三階建ての建物があり、朝早くからずんぐりむっくりとした男ドワーフたちが集まっていたのだが、今はほとんどの者が道路に倒れ込んでいた。
その建物の二階部分には『魔道具店サイレンス』と看板が掲げられていた。
道路に面している部分は大きなガラス張りで店内が丸見えの状態だったが、店内にいる者は気にした様子もない。
店内で開店準備をしているのは、シズトに『青バラちゃん』と名付けられたドライアドだ。
元々は世界樹ユグドラシルの根元で生活していた彼女だったが、現在は主に世界樹ファマリーの根元で生活していた。
そんな彼女だったが、『精霊の道』を通る事ができる事に着目されて、レヴィアからある仕事を頼まれた。
その場に一緒にいたシズトからは「アルバイトみたいだね」と言われたため、よく分からないが「あるばいと頑張る!」と意気込んでいる。
壁に掛けられた時計が時刻を告げる。
ポッポー、ポッポーと鳥の鳴き声と共に時計の上部の小さな窓から白い鳥が顔を出す。魔力によって正確な時間を刻む壁掛け時計だ。その音に反応して青バラちゃんは時計を見る。
「開店の時間だ!」
青バラちゃんはカウンターから出ると、トテトテと出入口に駆け寄る。
誰かに殴られたかのような見た目のドワーフが一人、張り付いていた窓から離れて嬉しそうに出入口に慌てて近づく。
出入口が開けられると、カランカランと音を立てながら扉が開いた。
「ドワーフさん、おはよー」
「おう! 今日もいい天気だなー」
「んー……? 雲が多いよ?」
「雪が降ってねぇだろ? こんな日は夕方以降も雪が降らねぇんだ。良かったら、仕事終わりにどこかに行かねぇか? 飯でもなんでも奢るぜ?」
「お家帰らなきゃだからごめんなさーい」
ニカッと笑うドワーフの提案をバッサリと切り捨てて、青バラちゃんは髪を巻き付けて持ち上げた立て看板を「んっしょ、んっしょ」と掛け声と共に運ぶ。
ドワーフが言い募ろうとしたが、そのドワーフを押しのけて、着膨れした女ドワーフたちが店内に入って行く。
「お邪魔するよ!」
「あー、寒い寒い!」
「まったく、最近の若い子は人様の事を考えずに喧嘩するんだから、困ったもんだね」
「あら、あそこで寝転がってる子、アンタのとこの子じゃないかい?」
「こんな所で寝るような子は知りません」
「ドワーフさんたちいらっしゃーい! 朝からお仕事一杯だ~」
女ドワーフに押しのけられた若いドワーフの事を気にした様子もなく、青バラちゃんは店内へと戻っていく。
青バラちゃんが店内に戻ると、数人の女ドワーフたちは一カ所に集まっていた。
ハンガーにかけられて壁際にずらりと並べられているのはノエルたちが作った『ぬくぬくコート』だ。適温コートの廉価版で、暑さには対応していないが、この国ではそれで十分だった。
「店主さん! ここに並んでいるのが全部『ぬくぬくコート』ってやつかい?」
「そうだよー。魔力をエイッて流すとポカポカするんだよー」
「私、魔力に自信がないんだけど、どうしようかしら?」
「ちょっと出歩くくらいなら問題ないんじゃないかい?」
「あら、魔石をポケットに入れるタイプもあるみたいよ。こっちのと比べるとちょっと高いわね」
「んー、それなら少しずつ魔力を増やすために毎日使った方がお得よね」
小柄な女性たちが集まってあーでもないこーでもないと話をしているのをカウンターの定位置に座って見守る青バラちゃん。
その彼女に近づくのは、先程押しのけられた若い男のドワーフだ。
「これからどんどん客が押し寄せるだろうから手伝ってやるよ」
「私のあるばいとだから取っちゃだめ!」
「いやいや、手伝うだけだって! 金も何も要らねぇから!」
言い募る彼に、離れた場所で『ぬくぬくコート』を見ていた女ドワーフたちが冷ややかな視線を向ける。
その集団の中から一人の女ドワーフが歩み出た。
「アンタ、仕事はどうするんだい!」
「うっせーな! 今忙しい所なんだよ」
「母ちゃんにうっせーとは何事だい!」
「母ちゃん!?」
それまで青バラちゃんの方しか見ていなかったドワーフが驚いた様子で振り向く。
可愛らしい顔を険しくさせて、ずんずんとカウンターに近寄ってくる女性を見る彼は、先程までのキリッとした表情がどこへやら。あからさまに慌てた様子で周囲をきょろきょろしている。
「アンタがどこの子の尻を追いかけてもいいけどね! それはしっかりと仕事をしている事が前提なんだよ! もうすぐ仕事の時間だろ! 外で寝ている者たちを起こしてさっさと仕事に行きな!」
ずんぐりむっくりした男ドワーフの尻を、女ドワーフは細い足で何度も蹴り上げて店外へと追い出す。
その様子を青バラちゃんはきょとんとした様子で見ていたが、やる事リストに書かれていたとおりに、店から人が出て行くタイミングで「ありがとーございましたー」とニッコリ笑顔で見送った。
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