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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
225.事なかれ主義者は視線が気になる
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キャロロット村の外に水が湧く魔道具を作ってから二週間が経った。
作った翌日にはクーを乗せた馬車がキャロロット村を発って、二週間の間にいくつかの村や町を通った。
どのくらいの広さまでは村で、どこからが町というかは分からないけど、村だろうが町だろうが水問題は大なり小なりあるようだった。
最初に訪れた牛人族の村カウコーンでは、キャロロット村のキャロラインさんから貰ったお手紙を見せたら少しは信用して貰えたようで、問題なく村の外に水が湧く魔道具を作ったり、ファマ様の加護を使って野菜を育てたりする事ができた。
のんびりした村長さんがとても喜んで、他の村に向けた紹介状を追加で書いてくれた。
「紹介状はあればあるだけ信用されますから、持っていて損はないですよ。農耕民族にしか効力がないですし、むしろ逆効果になる事もあるから間違っても違う民族の人に渡してはダメですからね」
「ジュリウス、ジュリーニさんに渡しておいて」
「かしこまりました。不要だとは思いますが、もう一度釘も差しておきます」
牛人族の村人たちからの熱い抱擁は流石にお断りしておいた。
だって、抱きしめられたら彼女たちのご立派な物が顔に当たりそうだったから。
そういうのはラオさんとルウさんで間に合ってますので。
その次に訪れた馬人族が集まっている所は町と言えるくらい大きかった。中央に近づくにつれて他の種族が混じるようになってくるらしいけど、馬人族の町アップホースは馬人族しかいないらしい。
ただ、馬人族の中でも体格の差があって、小柄な女性は大柄な女性にペコペコしていた。他の民族よりも少ないだけで、『弱い者を力で従えてもいい』という部分はあるらしい。国の中央に行けば行くほど、様々な種族が集まっているからそういう面が強くなってくるんだとか。
あまり長居せず、サクッと魔道具を作ってさっさと帰った。
帰った後にクーたちが丁重に扱われたらしい。
その後もいくつか複数の種族が一緒に生活している町を通ったけど、面倒事に巻き込まれたくないのでサクサクと魔道具作りとファマ様の加護のお披露目会をし続けて、紹介状が大量に集まった。
もう最近では、手紙を見せるだけで丁重に扱ってもらえるようになったらしい。
獣人の国アクスファースにある村や町に訪問しない日は、世界樹のお世話をしながら魔道具作りをせっせとした。
ドラゴニア貴族からの依頼されたダイエット系の魔道具や、ドワーフの国の王から発注された除雪雪だるまや快適コートを作ったり、個人的に思いついた物を何となく作ってみてノエルと一緒に実験してみたり、ドライアドやアンジェラと一緒に遊んだりして過ごしていたんだけど、とうとうアクスファースの首都についたらしい。
朝ご飯の席でジュリウスから報告を受けたけど、ちょっと気になる事がある。
「予定より早くない? 休まず進み続けているとかないよね?」
「魔道具化された馬車と魔物の血を引いている馬が特殊なのもありますし、なにより精霊魔法を使って進んでいる事が大きいです。お伝えした予定はあくまで普通の馬車と馬で、魔法を使わずに進んだ場合の目安ですので」
「ふーん……休みは?」
「ほどほどに取ってはいるのではないでしょうか。それよりも、農耕民族の首長である方がシズト様にお会いしたいと言っておりますが、いかがいたしましょうか」
「神様たちの教会の事もあるから会うけど……変な事にならないといいなぁ」
「私もついて行くのだから大丈夫なのですわ。シズトに危害を加えようとする意志を感じた瞬間に転移して逃げるのですわ!」
今日のお世話係であるレヴィさんは鼻息が荒く、やる気満々だ。
空のように青いドレスは、腕や肩の部分が透けている。レースというやつだろうか。
アクスファースの首都はドラゴニアよりも少し気温が高いらしい。だから少しでも涼しいものを、という事らしいんだけど目のやり場に困る。……ネグリジェよりかはましだけど。
僕は真っ白なスーツを着ている。ズボンの裾から金色の蔦が足に絡みつくかのような感じで刺繍されたユグドラシルの正装だ。
食事中に汚しても全く問題ないように魔道具化は済ませてある。魔力を流せば汚れも消えて新品同然になり、なおかつ周囲の気温を過ごしやすい温度に調節してくれる優れ物だ。
魔石を入れる場所をわざわざ後付けするのは申し訳ないので、魔石を使わないタイプにした。
暑いのは嫌だからずっと魔力は流しっぱなしにするつもりだけど、その状態でも国王に相当する人があってくれるのか、ちょっと不安だ。
結論、問題なかった!
大きな宮殿のような建物に問題なく入る事ができたし、首長の所まですぐに案内もしてくれた。
「どうやら紹介状の影響みたいですわ」
「まあ、二桁は行かないけど、通った村や町は一通り布教活動したからなぁ」
案内の人の後をついてレヴィさんと一緒に歩く。ジュリウスは僕たちの後ろをついて来ていた。振り向くとにっこりと僕たちを見守っている。
けど、前を見るとなんか周囲の人たちの視線が気になるんだよね。僕を見て、隣のレヴィさんを見て、そこから急に後ろを見てから視線を逸らして仕事に戻っていく。
もう一度振り返るとニコニコしながら僕の方を見ているだけだった。
「……変な事はしてないよね?」
「はい。仰せの通りに、問題が起きないよう過ごしております」
「ならいいけど。……喧嘩を売られても?」
「買わずに逃げます」
……まあ、分かっているようだからいいか。
その後、首長さんの待っている所に着くまで特にトラブルなく進む事ができた。
作った翌日にはクーを乗せた馬車がキャロロット村を発って、二週間の間にいくつかの村や町を通った。
どのくらいの広さまでは村で、どこからが町というかは分からないけど、村だろうが町だろうが水問題は大なり小なりあるようだった。
最初に訪れた牛人族の村カウコーンでは、キャロロット村のキャロラインさんから貰ったお手紙を見せたら少しは信用して貰えたようで、問題なく村の外に水が湧く魔道具を作ったり、ファマ様の加護を使って野菜を育てたりする事ができた。
のんびりした村長さんがとても喜んで、他の村に向けた紹介状を追加で書いてくれた。
「紹介状はあればあるだけ信用されますから、持っていて損はないですよ。農耕民族にしか効力がないですし、むしろ逆効果になる事もあるから間違っても違う民族の人に渡してはダメですからね」
「ジュリウス、ジュリーニさんに渡しておいて」
「かしこまりました。不要だとは思いますが、もう一度釘も差しておきます」
牛人族の村人たちからの熱い抱擁は流石にお断りしておいた。
だって、抱きしめられたら彼女たちのご立派な物が顔に当たりそうだったから。
そういうのはラオさんとルウさんで間に合ってますので。
その次に訪れた馬人族が集まっている所は町と言えるくらい大きかった。中央に近づくにつれて他の種族が混じるようになってくるらしいけど、馬人族の町アップホースは馬人族しかいないらしい。
ただ、馬人族の中でも体格の差があって、小柄な女性は大柄な女性にペコペコしていた。他の民族よりも少ないだけで、『弱い者を力で従えてもいい』という部分はあるらしい。国の中央に行けば行くほど、様々な種族が集まっているからそういう面が強くなってくるんだとか。
あまり長居せず、サクッと魔道具を作ってさっさと帰った。
帰った後にクーたちが丁重に扱われたらしい。
その後もいくつか複数の種族が一緒に生活している町を通ったけど、面倒事に巻き込まれたくないのでサクサクと魔道具作りとファマ様の加護のお披露目会をし続けて、紹介状が大量に集まった。
もう最近では、手紙を見せるだけで丁重に扱ってもらえるようになったらしい。
獣人の国アクスファースにある村や町に訪問しない日は、世界樹のお世話をしながら魔道具作りをせっせとした。
ドラゴニア貴族からの依頼されたダイエット系の魔道具や、ドワーフの国の王から発注された除雪雪だるまや快適コートを作ったり、個人的に思いついた物を何となく作ってみてノエルと一緒に実験してみたり、ドライアドやアンジェラと一緒に遊んだりして過ごしていたんだけど、とうとうアクスファースの首都についたらしい。
朝ご飯の席でジュリウスから報告を受けたけど、ちょっと気になる事がある。
「予定より早くない? 休まず進み続けているとかないよね?」
「魔道具化された馬車と魔物の血を引いている馬が特殊なのもありますし、なにより精霊魔法を使って進んでいる事が大きいです。お伝えした予定はあくまで普通の馬車と馬で、魔法を使わずに進んだ場合の目安ですので」
「ふーん……休みは?」
「ほどほどに取ってはいるのではないでしょうか。それよりも、農耕民族の首長である方がシズト様にお会いしたいと言っておりますが、いかがいたしましょうか」
「神様たちの教会の事もあるから会うけど……変な事にならないといいなぁ」
「私もついて行くのだから大丈夫なのですわ。シズトに危害を加えようとする意志を感じた瞬間に転移して逃げるのですわ!」
今日のお世話係であるレヴィさんは鼻息が荒く、やる気満々だ。
空のように青いドレスは、腕や肩の部分が透けている。レースというやつだろうか。
アクスファースの首都はドラゴニアよりも少し気温が高いらしい。だから少しでも涼しいものを、という事らしいんだけど目のやり場に困る。……ネグリジェよりかはましだけど。
僕は真っ白なスーツを着ている。ズボンの裾から金色の蔦が足に絡みつくかのような感じで刺繍されたユグドラシルの正装だ。
食事中に汚しても全く問題ないように魔道具化は済ませてある。魔力を流せば汚れも消えて新品同然になり、なおかつ周囲の気温を過ごしやすい温度に調節してくれる優れ物だ。
魔石を入れる場所をわざわざ後付けするのは申し訳ないので、魔石を使わないタイプにした。
暑いのは嫌だからずっと魔力は流しっぱなしにするつもりだけど、その状態でも国王に相当する人があってくれるのか、ちょっと不安だ。
結論、問題なかった!
大きな宮殿のような建物に問題なく入る事ができたし、首長の所まですぐに案内もしてくれた。
「どうやら紹介状の影響みたいですわ」
「まあ、二桁は行かないけど、通った村や町は一通り布教活動したからなぁ」
案内の人の後をついてレヴィさんと一緒に歩く。ジュリウスは僕たちの後ろをついて来ていた。振り向くとにっこりと僕たちを見守っている。
けど、前を見るとなんか周囲の人たちの視線が気になるんだよね。僕を見て、隣のレヴィさんを見て、そこから急に後ろを見てから視線を逸らして仕事に戻っていく。
もう一度振り返るとニコニコしながら僕の方を見ているだけだった。
「……変な事はしてないよね?」
「はい。仰せの通りに、問題が起きないよう過ごしております」
「ならいいけど。……喧嘩を売られても?」
「買わずに逃げます」
……まあ、分かっているようだからいいか。
その後、首長さんの待っている所に着くまで特にトラブルなく進む事ができた。
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