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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
220.事なかれ主義者は大量に土を手に入れる
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「村長と話を付けてきました」
「ありがと、ジュリウス。村長さん、どうだった?」
「作物を荒らさなければ、という感じですね」
「じゃあ作物に直接影響を与える系のものはやめといた方が良いかな」
「そうですね。困りごとを聞いた感じだと、日照りが続いているせいで十分な水がないそうです」
「ふーん……じゃあ魔法のじょうろを作ればいいか」
「できれば魔石を使うタイプと、使用者の魔力を使うタイプがあるといいですね」
「それを使ってみてもらって、村長の信頼を得てから畑とかに手を出す感じになるかなぁ」
「……この村にそこまで手をかける必要はないのでは?」
「んー……まあ、そうなんだけどね?」
チラッと畑の方を見ると、小休憩をしているのか、小さなウサミミの子どもたちが女性と一緒に地べたに座っていた。ケモミミ癒される、という感想よりも先に子どもたちの姿に眉を顰めてしまう。
「ほら、ここで恩を売っておけばエント様やファマ様の像を設置しても怒らないかもだし、次の村の代表さん宛に手紙を書いてもらえるかもしれないじゃん。急ぐ旅でもないんでしょ? だったら数日くらい滞在しても問題ないんじゃないかなぁと思う訳ですよ」
もちろん他の村もすべて同じように対応できるわけではないので平等ではないし、偽善だとも自分では分かってるけど、目の前であんな姿のちっちゃな子を見るとやっぱりね……。
「出過ぎた事を申しました。どのような問題が起ころうと、私が迅速に対応します。どうぞ、シズト様はご自由に力をお使いください」
綺麗にお辞儀をするジュリウスに申し訳ないと思うけど、どうしても前世での常識というか……人権意識のような物が見過ごすなと良心を責め立てる。
きっとここで何も見なかった事にして次の村に行っても、心のどこかにしこりが残ってしまって、観光とか美味しいご飯とか楽しめないと思う。
今後、思う存分楽しむためにも、今できる事をしっかりしよう。
「じょうろってある?」
「数に限りは御座います。おいくつご所望でしょうか」
「とりあえず四つで」
「かしこまりました」
無ければ作ればいいやと思ったけど、四つもあれば十分でしょ。
他にも作りたい物が出てくるかもしれないから魔力は温存しておきたいし。
ジュリウスがアイテムバッグから取り出した鉄製のじょうろの底に【付与】を使って魔法陣を刻む。
ジュリウスが確認のためにじょうろに魔力を流すと、魔法陣から水が湧き出て、じょうろいっぱいに水がたまった。
「ん、問題ないみたいだね。魔石の方は魔石をセットする場所もいるのが面倒だけど……作った方が良いの?」
「魔石で代用できるのであれば、魔力を上手く扱えない者も魔道具を使用できるので、あって損はないかと」
んー、ここら辺に魔物がどのくらいいるのか分からないけど、魔石が手に入らないと意味がない気がするんだけどなぁ。
ただ、ジュリウスが言うんだから何か僕の知らない事も知っているのだろう。
言われたとおりにじょうろに【付与】をして魔石が必要なタイプの魔法のじょうろも作った。
「あとは堆肥を作る箱も作っときたいけど……アレも屋敷の物は魔石で自動で動く様にしているんだよなぁ。一日に一回魔力を流すようにすればできなくはない……? 堆肥になるまでの時間を短縮するとはいえ、結構な時間が必要だし負担になるかな……」
まあ、使われなかったら使われなかったでいいか。
ジュリウスに木の板に加工済みの物を取り出してもらって、それを【加工】で一塊の囲いにする。屋敷にあるような人が何人も入るレベルの大きさではなく、こぢんまりとした囲いだ。
底の木の板に【加工】して、かき混ぜる用の可動式の棒をくっつけて、ついでに【付与】を行う。木の囲いの外側にも【付与】で魔法陣を刻んでからそれに触れて魔力を流すと、無事にでっぱりの付いた棒がぐるぐると回転する。最後に蓋を【加工】で作って蝶番でくっつけて終わりだ。使われるか分からないから一個だけでいいや。
「ジュリウス、むしり取って要らない雑草を貰ってきてくれる?」
「私の役目として離れる訳にはいかないのですが……」
「あ、そっか。じゃあ、一緒に貰いに行こうか」
「仰せのままに」
獣人のおばさんには怪訝そうに見られたし、子どもたちは胡乱気に僕を見ていたけど、雑草はたくさんくれた。まとめて燃やすつもりだったらしく、今まで抜いた雑草も一塊に集められていたので、それも少し貰って箱の中に突っ込む。
ある程度の層ができたら近くの土を掘り返して中に入れたいんだけど……。
「村の中でも土を勝手に掘ったら怒るよね」
「……縄張りを荒らすという点に置いてグレーですね。念のため確認をしてきましょう」
……結論、事前に聞いておいてよかった!
村長だと名乗る胸の大きな女性が宿屋から出てきて、僕をギロッと睨んだけど理由を説明したら穴を掘って土を入れるのを協力してくれた。
作ってよかったタブー帳!
「本当にこんなので肥料を作れるのかい?」
「少なくとも美味しい野菜はできたので、害になるような物じゃないですよー」
ニコニコしながら伝えたけど、理解はしてもらえなかった。
まあ、これに関しては追々活用してもらえればいいや。
とりあえず土の協力のお礼という事で魔法のじょうろを四つあげたら、村長は跳び上がるほど喜んで、それからギュッと抱きしめられた。……柔らかいし甘い匂いがしました。
それだけなら良かったけど、翌日訪れた時に大量の土を渡されたのはちょっと困った。
……もうちょっと箱作るか。
「ありがと、ジュリウス。村長さん、どうだった?」
「作物を荒らさなければ、という感じですね」
「じゃあ作物に直接影響を与える系のものはやめといた方が良いかな」
「そうですね。困りごとを聞いた感じだと、日照りが続いているせいで十分な水がないそうです」
「ふーん……じゃあ魔法のじょうろを作ればいいか」
「できれば魔石を使うタイプと、使用者の魔力を使うタイプがあるといいですね」
「それを使ってみてもらって、村長の信頼を得てから畑とかに手を出す感じになるかなぁ」
「……この村にそこまで手をかける必要はないのでは?」
「んー……まあ、そうなんだけどね?」
チラッと畑の方を見ると、小休憩をしているのか、小さなウサミミの子どもたちが女性と一緒に地べたに座っていた。ケモミミ癒される、という感想よりも先に子どもたちの姿に眉を顰めてしまう。
「ほら、ここで恩を売っておけばエント様やファマ様の像を設置しても怒らないかもだし、次の村の代表さん宛に手紙を書いてもらえるかもしれないじゃん。急ぐ旅でもないんでしょ? だったら数日くらい滞在しても問題ないんじゃないかなぁと思う訳ですよ」
もちろん他の村もすべて同じように対応できるわけではないので平等ではないし、偽善だとも自分では分かってるけど、目の前であんな姿のちっちゃな子を見るとやっぱりね……。
「出過ぎた事を申しました。どのような問題が起ころうと、私が迅速に対応します。どうぞ、シズト様はご自由に力をお使いください」
綺麗にお辞儀をするジュリウスに申し訳ないと思うけど、どうしても前世での常識というか……人権意識のような物が見過ごすなと良心を責め立てる。
きっとここで何も見なかった事にして次の村に行っても、心のどこかにしこりが残ってしまって、観光とか美味しいご飯とか楽しめないと思う。
今後、思う存分楽しむためにも、今できる事をしっかりしよう。
「じょうろってある?」
「数に限りは御座います。おいくつご所望でしょうか」
「とりあえず四つで」
「かしこまりました」
無ければ作ればいいやと思ったけど、四つもあれば十分でしょ。
他にも作りたい物が出てくるかもしれないから魔力は温存しておきたいし。
ジュリウスがアイテムバッグから取り出した鉄製のじょうろの底に【付与】を使って魔法陣を刻む。
ジュリウスが確認のためにじょうろに魔力を流すと、魔法陣から水が湧き出て、じょうろいっぱいに水がたまった。
「ん、問題ないみたいだね。魔石の方は魔石をセットする場所もいるのが面倒だけど……作った方が良いの?」
「魔石で代用できるのであれば、魔力を上手く扱えない者も魔道具を使用できるので、あって損はないかと」
んー、ここら辺に魔物がどのくらいいるのか分からないけど、魔石が手に入らないと意味がない気がするんだけどなぁ。
ただ、ジュリウスが言うんだから何か僕の知らない事も知っているのだろう。
言われたとおりにじょうろに【付与】をして魔石が必要なタイプの魔法のじょうろも作った。
「あとは堆肥を作る箱も作っときたいけど……アレも屋敷の物は魔石で自動で動く様にしているんだよなぁ。一日に一回魔力を流すようにすればできなくはない……? 堆肥になるまでの時間を短縮するとはいえ、結構な時間が必要だし負担になるかな……」
まあ、使われなかったら使われなかったでいいか。
ジュリウスに木の板に加工済みの物を取り出してもらって、それを【加工】で一塊の囲いにする。屋敷にあるような人が何人も入るレベルの大きさではなく、こぢんまりとした囲いだ。
底の木の板に【加工】して、かき混ぜる用の可動式の棒をくっつけて、ついでに【付与】を行う。木の囲いの外側にも【付与】で魔法陣を刻んでからそれに触れて魔力を流すと、無事にでっぱりの付いた棒がぐるぐると回転する。最後に蓋を【加工】で作って蝶番でくっつけて終わりだ。使われるか分からないから一個だけでいいや。
「ジュリウス、むしり取って要らない雑草を貰ってきてくれる?」
「私の役目として離れる訳にはいかないのですが……」
「あ、そっか。じゃあ、一緒に貰いに行こうか」
「仰せのままに」
獣人のおばさんには怪訝そうに見られたし、子どもたちは胡乱気に僕を見ていたけど、雑草はたくさんくれた。まとめて燃やすつもりだったらしく、今まで抜いた雑草も一塊に集められていたので、それも少し貰って箱の中に突っ込む。
ある程度の層ができたら近くの土を掘り返して中に入れたいんだけど……。
「村の中でも土を勝手に掘ったら怒るよね」
「……縄張りを荒らすという点に置いてグレーですね。念のため確認をしてきましょう」
……結論、事前に聞いておいてよかった!
村長だと名乗る胸の大きな女性が宿屋から出てきて、僕をギロッと睨んだけど理由を説明したら穴を掘って土を入れるのを協力してくれた。
作ってよかったタブー帳!
「本当にこんなので肥料を作れるのかい?」
「少なくとも美味しい野菜はできたので、害になるような物じゃないですよー」
ニコニコしながら伝えたけど、理解はしてもらえなかった。
まあ、これに関しては追々活用してもらえればいいや。
とりあえず土の協力のお礼という事で魔法のじょうろを四つあげたら、村長は跳び上がるほど喜んで、それからギュッと抱きしめられた。……柔らかいし甘い匂いがしました。
それだけなら良かったけど、翌日訪れた時に大量の土を渡されたのはちょっと困った。
……もうちょっと箱作るか。
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