【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

219.事なかれ主義者は村に訪れた

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 畑のお世話をしたり、ファマリアの教会を見学したりして過ごした翌日。
 僕は転移陣を使ってアクスファースに来ていた。
 昨日の夜ご飯の時に、クーを乗せた馬車が町に着いたと連絡がきたから観光気分でやってきたんだけど……特に見るものがない。
 木を使って作られた簡易的な柵の内側に畑が広がっていて、畑の中心に建物が集まっている感じだ。

「……小さな村って感じなんだね」

 目の前に広がる景色を見てぽつりと感想をもらしたらジュリウスが頷いた。

「例外はありますが、そのほとんどが種族ごとに別れて暮らしている事が多いです。大昔にあった領地争いで敗れた者たちは国の端の方に追いやられたそうですよ。獣人の国の首都は魔力の影響で気候が安定しているのですが、そこから離れれば離れるほど季節の変化が大きいのです。それがこのアクスファースの特徴ですね」
「へー、そうなんだねぇ」

 前世の経験から四季があった方がしっくりくるけど、夏が来る度に太陽にこんがりと焼かれるような感じがしたり、冬になった時に寒すぎて死ぬわ! と思ったりしなくていいのは確かに楽だよなと、ドラゴニア王国で生活するようになって思った。
 アクスファースの首都の方では、季節を気にする事もなく通年で農業がされているけど、ここら辺はそうでもないようだ。
 今は夏真っ盛りらしく、気温が高い……らしい。周囲を一定の温度に保つ魔道具のおかげでそう感じないけど。

「それにしても、人がほとんどいないね」
「仕事をしているのでしょう。ジュリーニの話によれば、この町に限らず外縁部の村々はここ最近、不作が続いているようです。男たちは出稼ぎのために首都に向かい、女子どもだけで何とか農作物や家畜の世話をしているそうですよ」

 遠くに見える畑では小さな体を懸命に使って大きな農具を扱う獣人の子どもが見える。
 手足は細く、折れてしまうんじゃないかと思うほどだ。やっぱり暑いのか、ズボンしかはいておらず、上半身裸だった。
 兎のような耳がへにょっとしているけど大丈夫なんだろうか。

「そのおかげで、この村では価値観の違いから起こる余計な騒動は避けられそうですが、獣人の夜盗がこのあたりにも出没しているようです。万が一の事があるといけませんから、くれぐれもお一人で行動しないようにしてください」
「分かってるよー」

 寝息を立てているクーを背負いながら、ジュリウスと村の中を歩く。
 アクスファースでは、護衛を連れて移動をしていると『強さ至上主義』である獣人からのウケが良くないらしいので、面倒事は嫌だし最小限の人数で移動をする事にしたんだけど、この状況だったら別に気にしなくてもよかったのかな。
 ……まあ、どこで誰が見ているかなんて分からないから引き続き冒険者に扮して行動するだけなんですけどね。
 だから今日はいつもと着ている物が異なり、僕も武装をしている。
 何かよく分からない魔物の鱗がふんだんに使われている鎧を身に纏い、世界樹の素材で作った木製のラウンドシールドを左手に装備している。
 村の中でも普通に喧嘩を売られる事もあり得るらしいから、ジュリウスに持つように言われた。
 ラウンドシールドには攻撃を反射する魔法陣を【付与】してみたけど、ぶっちゃけ何かあった時は指に嵌めている帰還の指輪で即逃げるつもりだ。上手く盾でガードできる気がしないし。
 アダマンタイトをメッキ加工した鎧や盾で身を固めようかと思ったけど、重くて動き辛かったのでやめた。
 左手にラウンドシールドを装備している関係で、クーを背負って移動する事は無理だなと思っていたけど、「お兄ちゃん、これで縛っておんぶして」と長い布を差し出していうクーと「お手伝いします」というジュリウスによってクーを背負う事になってしまった。
 万が一襲われたらどうするの! と抗議したが「その場合はクー様が転移でシズト様を安全な場所までお連れするかと思いますが」とジュリウスにまじめな顔で返された。
 ……まあ、動きは多少制限されるけど、安全面を考えたらクーが引っ付いていた方がジュリウスも安心っすよね。でもこれって、冒険者としてみて貰えるんですかね??



 背中に固定されているクーがずり落ちてしまわないか気にしつつ歩いていると、あっという間に村を一周してしまった。
 数軒小さな家が建つ中で、目立つのはジュリーニたちが泊まっている宿屋だ。
 一つだけ二階建ての木造建築で、他の建物よりは新しいように見える。
 一応村長の家でもあるから他の村の者に舐められないようにしっかり作っているんだとか。

「それで、どうしますか?」
「んー、どうしようねぇ。雪もないしご飯を食べようと思っても宿屋くらいしか飲食店はないし……」

 視線をもう一度村の外で働く子どもたちに向けてしばし考える。
 子どもたちは地面に生えている雑草を抜いているようだ。
 ピコピコと動く耳を揺らしながら、畑の中を動き回っている。

「…………布教活動でもしてみますか」
「シズト様の御心のままに」
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