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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
216.事なかれ主義者は元通りにした
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「あれ? フェンリルがいない」
朝ご飯を食べ終え、ジューンさんに手を繋がれながら屋敷から外に出ると、いつも世界樹ファマリーの根元で丸まって眠っている毛玉が見当たらなかった。
不思議に思いながら辺りを見渡していると、レヴィさんが屋敷から出てきた。
急遽、人と会う予定ができてしまったとの事で、スカート丈が長く露出が少ない紺色のドレスを着ていた。
指輪を嵌めずに首飾りにしていた彼女は、僕の疑問を感じ取ったようだ。
「外でアンデッド狩りをしているはずですわ」
「いつもならサクッと終わらせて戻ってきてなかったっけ」
「ちょっと遠くまでアンデッドを狩りに行ってると思うのですわ」
「そうなんだ。何か町の外で異変とかあったの?」
「そういう訳じゃないのですわ。ただ、行商人たちがここにやってくるのが楽になるように、周囲一帯のアンデッドを狩りに行ってもらったのですわ」
「ご褒美のお肉とかお酒をしっかり用意しないと怒りそうだね」
「シズトは気にする必要ない事ですわ~」
まあ、僕がお酒やご飯を上げているわけじゃないから確かにそうなんだけどね。
レヴィさんは話が終わったと判断したのか、セシリアさんと一緒にドラゴニア王家の家紋が付いた馬車に乗り込むと、近衛兵に囲まれながらファマリアの方に行ってしまった。
……あんな馬車、ウチに置いてあったっけ?
首を傾げながら見送っていると、右手がギュッギュッと軽く握られる。
「シズトちゃん、ユグドラシルに行かないのですかぁ?」
「ごめん、行くよ。すぐ戻ってくるからラオさんたちは転移陣の近くで待っててね」
「わーったよ」
「お姉ちゃん、シズトくんが帰ってくるまで待ってるから早く帰ってきてね?」
「言われなくても、特に向こうでやる事ないし、町の様子を見る時間減っちゃうからすぐ戻ってくるつもりだよ」
今日はユグドラシルのお世話をサクッとする終わらせて、ファマリアの西側の区域の見学に行くつもりだ。主にエント様の教会の様子の確認と、教会の魔道具化をさらに進めようと思う。
そのために、今日はユグドラシルのお世話をする日に変えたわけだし。魔力は温存しとかないと。
そう思っていたんだけど、ファマリーまで続く小道を歩いていると、畑で作業をしていたドライアドが僕に気付いて集まってきた。
「人間さんやっと来たー」
「おそいー」
「はやくー。こっちだよ~」
「え、何の用?」
「レモーン!」
「レモンちゃん、レモンは要らないんだけど……って、何も持ってないね」
わらわらと集まってくるドライアドたちの中に、レモン好きのドライアドがいた。
僕が気づくと他のドライアドたちの間を縫って、足元にしがみ付いてきた。
「レモン、折れた~!」
ぶわっと目が潤み、涙をぽろぽろと零すレモンちゃん。
いや、普通にあそこにレモンの木あるんだけど。え、それじゃないの? 世界樹の近くに植えていた木?
どうやら野菜泥棒か何かが侵入したらしい。レモン以外の作物にも被害があったらしく、その作物を育てていたドライアドたちがしょんぼりしている。
ドライアドたちも【生育】の加護のように植物を急成長させる魔法を使えるから、それで治せばいいのにと思っていたけど、あれは精霊魔法で草の壁を作っただけでちょっと違うらしい。
んー、よく分からんけど、確かに作物を急成長させて収穫時期を早めたりした所は見てない……かも?
「人間さん、治して~」
「治して~」
「治してと言われても……治るものなのかな。むしろ種から一気に育てた方が元通りになるんじゃないかな」
「じゃあそうしてー」
「するの~」
「元通り!」
「分かった分かった、分かったからよじ登らないで! っていうか髪の毛巻きつけないで!」
ほんとその髪の毛どういう仕組みになってんの?
荒らされてしまった作物や折れてしまった果物の木は全て根っこから引っこ抜いてもらって、たい肥を作る魔道具の中に突っ込んでもらう。
それからドライアドたちは、持っていた種を地面に植えて僕の方を見る。
「魔力はできるだけ温存しときたかったんだけどなぁ。あ、はい。やります、やらせていただきますから巻きつかないで、歩き辛いから!」
生育の加護は遠くからでも十分使えるようになったんだけど、魔力効率的にはできるだけ近い方が良い。
植えられた部分に意識を集中する。
「……【生育】……【生育】、【生育】………【生育】」
加護を使うたびにニョキッと芽が出てわさわさと伸びて、花を咲かせる植物たち。
キュウリにトマトに……なんかよく分からない野菜。これは、スイカ? にしては模様が変だけど何だこれ。
「スイカ!」
「ああ、やっぱりスイカなのか。……まあ、切っちゃえば模様とかどうでもいいか」
ドライアドたちが「そこまで!」というまで植物を成長させて回る。
レモンちゃんは大人しく順番待ちをしていた。一番時間がかかりそうだもんね、木だし。
一番最後に、レモンちゃんの植えた種に【生育】を使うと、つぼみができる所で満足したようだ。
……嬉しいのは分かったから、全員で巻きつくのやめてくれると嬉しいなぁ。
朝ご飯を食べ終え、ジューンさんに手を繋がれながら屋敷から外に出ると、いつも世界樹ファマリーの根元で丸まって眠っている毛玉が見当たらなかった。
不思議に思いながら辺りを見渡していると、レヴィさんが屋敷から出てきた。
急遽、人と会う予定ができてしまったとの事で、スカート丈が長く露出が少ない紺色のドレスを着ていた。
指輪を嵌めずに首飾りにしていた彼女は、僕の疑問を感じ取ったようだ。
「外でアンデッド狩りをしているはずですわ」
「いつもならサクッと終わらせて戻ってきてなかったっけ」
「ちょっと遠くまでアンデッドを狩りに行ってると思うのですわ」
「そうなんだ。何か町の外で異変とかあったの?」
「そういう訳じゃないのですわ。ただ、行商人たちがここにやってくるのが楽になるように、周囲一帯のアンデッドを狩りに行ってもらったのですわ」
「ご褒美のお肉とかお酒をしっかり用意しないと怒りそうだね」
「シズトは気にする必要ない事ですわ~」
まあ、僕がお酒やご飯を上げているわけじゃないから確かにそうなんだけどね。
レヴィさんは話が終わったと判断したのか、セシリアさんと一緒にドラゴニア王家の家紋が付いた馬車に乗り込むと、近衛兵に囲まれながらファマリアの方に行ってしまった。
……あんな馬車、ウチに置いてあったっけ?
首を傾げながら見送っていると、右手がギュッギュッと軽く握られる。
「シズトちゃん、ユグドラシルに行かないのですかぁ?」
「ごめん、行くよ。すぐ戻ってくるからラオさんたちは転移陣の近くで待っててね」
「わーったよ」
「お姉ちゃん、シズトくんが帰ってくるまで待ってるから早く帰ってきてね?」
「言われなくても、特に向こうでやる事ないし、町の様子を見る時間減っちゃうからすぐ戻ってくるつもりだよ」
今日はユグドラシルのお世話をサクッとする終わらせて、ファマリアの西側の区域の見学に行くつもりだ。主にエント様の教会の様子の確認と、教会の魔道具化をさらに進めようと思う。
そのために、今日はユグドラシルのお世話をする日に変えたわけだし。魔力は温存しとかないと。
そう思っていたんだけど、ファマリーまで続く小道を歩いていると、畑で作業をしていたドライアドが僕に気付いて集まってきた。
「人間さんやっと来たー」
「おそいー」
「はやくー。こっちだよ~」
「え、何の用?」
「レモーン!」
「レモンちゃん、レモンは要らないんだけど……って、何も持ってないね」
わらわらと集まってくるドライアドたちの中に、レモン好きのドライアドがいた。
僕が気づくと他のドライアドたちの間を縫って、足元にしがみ付いてきた。
「レモン、折れた~!」
ぶわっと目が潤み、涙をぽろぽろと零すレモンちゃん。
いや、普通にあそこにレモンの木あるんだけど。え、それじゃないの? 世界樹の近くに植えていた木?
どうやら野菜泥棒か何かが侵入したらしい。レモン以外の作物にも被害があったらしく、その作物を育てていたドライアドたちがしょんぼりしている。
ドライアドたちも【生育】の加護のように植物を急成長させる魔法を使えるから、それで治せばいいのにと思っていたけど、あれは精霊魔法で草の壁を作っただけでちょっと違うらしい。
んー、よく分からんけど、確かに作物を急成長させて収穫時期を早めたりした所は見てない……かも?
「人間さん、治して~」
「治して~」
「治してと言われても……治るものなのかな。むしろ種から一気に育てた方が元通りになるんじゃないかな」
「じゃあそうしてー」
「するの~」
「元通り!」
「分かった分かった、分かったからよじ登らないで! っていうか髪の毛巻きつけないで!」
ほんとその髪の毛どういう仕組みになってんの?
荒らされてしまった作物や折れてしまった果物の木は全て根っこから引っこ抜いてもらって、たい肥を作る魔道具の中に突っ込んでもらう。
それからドライアドたちは、持っていた種を地面に植えて僕の方を見る。
「魔力はできるだけ温存しときたかったんだけどなぁ。あ、はい。やります、やらせていただきますから巻きつかないで、歩き辛いから!」
生育の加護は遠くからでも十分使えるようになったんだけど、魔力効率的にはできるだけ近い方が良い。
植えられた部分に意識を集中する。
「……【生育】……【生育】、【生育】………【生育】」
加護を使うたびにニョキッと芽が出てわさわさと伸びて、花を咲かせる植物たち。
キュウリにトマトに……なんかよく分からない野菜。これは、スイカ? にしては模様が変だけど何だこれ。
「スイカ!」
「ああ、やっぱりスイカなのか。……まあ、切っちゃえば模様とかどうでもいいか」
ドライアドたちが「そこまで!」というまで植物を成長させて回る。
レモンちゃんは大人しく順番待ちをしていた。一番時間がかかりそうだもんね、木だし。
一番最後に、レモンちゃんの植えた種に【生育】を使うと、つぼみができる所で満足したようだ。
……嬉しいのは分かったから、全員で巻きつくのやめてくれると嬉しいなぁ。
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