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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
211.事なかれ主義者は腰が心配
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都市国家トネリコから、世界樹の世話をしに来てほしいと言われて一カ月くらい経った。
準備やら観光やらのんびりしていたらそうなってしまったけど、特に苦情は来ていない。
そもそも、普通はウェルズブラを通過するためにもっと時間がかかるらしい。
だいぶ早く進んでいるから、もっとのんびりとウェルズブラの隅々まで観光してもいいんじゃないかと思ったけど、転移陣が設置出来たから、ぶっちゃけいつでも観光はできる。
それなら、馬車は先に進ませようと見送ってから数日が経った。
トンネルを通り抜けたらしいけど、集落まではもうしばらくかかるらしい。
雪は大丈夫か心配だったけど、トンネルの向こう側は夏真っ盛りだったらしい。
山を隔てた向こうは季節が真逆って……ほんとファンタジーって感じ。
「アクスファースには四季があるんですけど、国内をくるくると季節が巡ってるんです。季節が一定で温暖な土地もあるんですけど、そこには首都があります。それ以外の場所は基本的に一年で季節が一周します。ウェルズブラとの国境の境目は、今は夏の季節だったんでしょう」
「へー」
獣人の国であるアクスファース出身だった狐人族の奴隷エミリーの説明を聞きながら朝食を食べる。
彼女の首には、少し前に作った魔道具である酔い覚ましの首輪が嵌められている。
黒色の首輪とは対照的に真っ白な髪に、モフモフの狐耳と尻尾が特徴的な女の子だ。
赤い目は僕の方を真っすぐに見て真剣な表情で説明を続ける。
「春と秋の季節を追いかける遊牧民族と、冬を避けながら移動する狩猟民族とは別に、定住して農耕等をする農耕民族がいます。農耕民族は温厚ですが、畑に入ると激怒して追い掛け回してくるので注意してください」
「気持ちは分かるのですわー」
今朝採れた野菜で作られた野菜スープを美味しそうに食べていたレヴィさんがうんうんと頷いている。
今日はいつもの服装ではなく、青いドレスを着ていた。露出は少なく、手袋もしている。多分お茶会に行くのだろう。
ただ、露出は少ないがとても大きな二つの膨らみは隠しきれず、その部分に視線が行きそうになるのをグッとこらえる。
隠されているからこそ気になってしまうのだろうか。
「農耕民族以外は基本的に力がすべてです。民族の代表者であろうと、護衛されている者を嘲る事も普通にあります」
「力でねじ伏せればいい訳ですね」
「ダメだよ?」
無表情のホムラが口の周りをジャムで汚したまま物騒な事を言う。
喧嘩はダメだからと言い聞かせながら口の周りを拭いてやる。
最近は冒険者ギルドからの苦情がないから安心していたんだけど、時々危ない事を言うから気をつけないと。
作った者の責任とかあるだろうし。
「いえ、だいたい力でねじ伏せれば黙りますからありかと。村の人たちも時々バカにしてきた流れ者をボコボコにしてましたし」
「……農耕民族は温厚なんじゃないの?」
「比較的温厚ですが、売られた喧嘩は買いますよ? じゃないと他の民族が作物を勝手に持って行ってしまう事もありますし。ただ、そうなったら事が大きくなって集団戦に発展しますが」
もはや内紛っていうやつじゃないっすか、それ?
褐色の肌に白いひげを作りながらホットミルクを飲み終わったユキの口の周りも、ホムラのついでに拭きつつ思う。
ただ、アクスファースでは喧嘩やそういう集団戦はよくある事らしい。
……観光はそこそこにしてさっさと通り抜けてもらおうかな。
朝食を食べ終わり、ファマリーのお世話を済ませ、世界樹の近くにある祠でお祈りをする。
定期的にお祈りをするようにと神様たちから言われていたけど、最近はお祈りをしても特に呼び出されない。
その油断がいけなかったのだろうか。
背中に強い衝撃を受けて前のめりで倒れた。
「プロスもー!」
「ぐえっ」
「お、重いんだなー!」
「えっと……私もやった方が、いいかな……?」
倒れ込んでいる僕の眼前にしゃがみ込んで聞いてくるエント様。
丈の短いワンピースみたいな服を着ているから、下着が見えちゃいますよと注意しようと思ったけど、神の見えざる力によって下着は見えないようだ。
でも、あんまりじろじろ見たら失礼だと思うし視線を逸らす。
エント様が、上にのしかかったプロス様と腰にタックルしてきたファマ様を僕の上からどけてくれた。
「今回はタックルされる理由に心当たりがないんですけど……」
ウェルズブラの首都ウェルランドに建てた教会に何か問題があったのだろうか。
エント様の教会だけだるまみたいな見た目だった事か?
いや、でもちゃんと中は普通だったし、像も発注した通りだったはずだ。
それともファマ様の教会だけ穴倉の奥深くにあった畑の近くに建てられた事だろうか?
でも、ドワーフ的には正直ファマ様はあんまりって感じだろうし仕方ないと思うんですけど。
「べ、別にそこは気にしてないんだな」
「じゃあなんでですか?」
「き、気分なんだな」
「今度はプロスが飛びつくからね!」
「競争なんだな」
「おやつ賭ける……?」
ちょっとなんでエント様まで乗り気なんすか。
その内、腰がやられそうなんですけど!
「大丈夫だよ……?」
「シズトは今、精神だけの状態だから、下界に戻ったら腰も元通り!」
……プロス様、それ僕の腰に何かある前提で話してません?
どうして仲良く三柱とも目を逸らすんすか?
もう帰っていいすか? って、思っても帰り方知らないんだけどさ。
ほんと、何の用なんだろう?
準備やら観光やらのんびりしていたらそうなってしまったけど、特に苦情は来ていない。
そもそも、普通はウェルズブラを通過するためにもっと時間がかかるらしい。
だいぶ早く進んでいるから、もっとのんびりとウェルズブラの隅々まで観光してもいいんじゃないかと思ったけど、転移陣が設置出来たから、ぶっちゃけいつでも観光はできる。
それなら、馬車は先に進ませようと見送ってから数日が経った。
トンネルを通り抜けたらしいけど、集落まではもうしばらくかかるらしい。
雪は大丈夫か心配だったけど、トンネルの向こう側は夏真っ盛りだったらしい。
山を隔てた向こうは季節が真逆って……ほんとファンタジーって感じ。
「アクスファースには四季があるんですけど、国内をくるくると季節が巡ってるんです。季節が一定で温暖な土地もあるんですけど、そこには首都があります。それ以外の場所は基本的に一年で季節が一周します。ウェルズブラとの国境の境目は、今は夏の季節だったんでしょう」
「へー」
獣人の国であるアクスファース出身だった狐人族の奴隷エミリーの説明を聞きながら朝食を食べる。
彼女の首には、少し前に作った魔道具である酔い覚ましの首輪が嵌められている。
黒色の首輪とは対照的に真っ白な髪に、モフモフの狐耳と尻尾が特徴的な女の子だ。
赤い目は僕の方を真っすぐに見て真剣な表情で説明を続ける。
「春と秋の季節を追いかける遊牧民族と、冬を避けながら移動する狩猟民族とは別に、定住して農耕等をする農耕民族がいます。農耕民族は温厚ですが、畑に入ると激怒して追い掛け回してくるので注意してください」
「気持ちは分かるのですわー」
今朝採れた野菜で作られた野菜スープを美味しそうに食べていたレヴィさんがうんうんと頷いている。
今日はいつもの服装ではなく、青いドレスを着ていた。露出は少なく、手袋もしている。多分お茶会に行くのだろう。
ただ、露出は少ないがとても大きな二つの膨らみは隠しきれず、その部分に視線が行きそうになるのをグッとこらえる。
隠されているからこそ気になってしまうのだろうか。
「農耕民族以外は基本的に力がすべてです。民族の代表者であろうと、護衛されている者を嘲る事も普通にあります」
「力でねじ伏せればいい訳ですね」
「ダメだよ?」
無表情のホムラが口の周りをジャムで汚したまま物騒な事を言う。
喧嘩はダメだからと言い聞かせながら口の周りを拭いてやる。
最近は冒険者ギルドからの苦情がないから安心していたんだけど、時々危ない事を言うから気をつけないと。
作った者の責任とかあるだろうし。
「いえ、だいたい力でねじ伏せれば黙りますからありかと。村の人たちも時々バカにしてきた流れ者をボコボコにしてましたし」
「……農耕民族は温厚なんじゃないの?」
「比較的温厚ですが、売られた喧嘩は買いますよ? じゃないと他の民族が作物を勝手に持って行ってしまう事もありますし。ただ、そうなったら事が大きくなって集団戦に発展しますが」
もはや内紛っていうやつじゃないっすか、それ?
褐色の肌に白いひげを作りながらホットミルクを飲み終わったユキの口の周りも、ホムラのついでに拭きつつ思う。
ただ、アクスファースでは喧嘩やそういう集団戦はよくある事らしい。
……観光はそこそこにしてさっさと通り抜けてもらおうかな。
朝食を食べ終わり、ファマリーのお世話を済ませ、世界樹の近くにある祠でお祈りをする。
定期的にお祈りをするようにと神様たちから言われていたけど、最近はお祈りをしても特に呼び出されない。
その油断がいけなかったのだろうか。
背中に強い衝撃を受けて前のめりで倒れた。
「プロスもー!」
「ぐえっ」
「お、重いんだなー!」
「えっと……私もやった方が、いいかな……?」
倒れ込んでいる僕の眼前にしゃがみ込んで聞いてくるエント様。
丈の短いワンピースみたいな服を着ているから、下着が見えちゃいますよと注意しようと思ったけど、神の見えざる力によって下着は見えないようだ。
でも、あんまりじろじろ見たら失礼だと思うし視線を逸らす。
エント様が、上にのしかかったプロス様と腰にタックルしてきたファマ様を僕の上からどけてくれた。
「今回はタックルされる理由に心当たりがないんですけど……」
ウェルズブラの首都ウェルランドに建てた教会に何か問題があったのだろうか。
エント様の教会だけだるまみたいな見た目だった事か?
いや、でもちゃんと中は普通だったし、像も発注した通りだったはずだ。
それともファマ様の教会だけ穴倉の奥深くにあった畑の近くに建てられた事だろうか?
でも、ドワーフ的には正直ファマ様はあんまりって感じだろうし仕方ないと思うんですけど。
「べ、別にそこは気にしてないんだな」
「じゃあなんでですか?」
「き、気分なんだな」
「今度はプロスが飛びつくからね!」
「競争なんだな」
「おやつ賭ける……?」
ちょっとなんでエント様まで乗り気なんすか。
その内、腰がやられそうなんですけど!
「大丈夫だよ……?」
「シズトは今、精神だけの状態だから、下界に戻ったら腰も元通り!」
……プロス様、それ僕の腰に何かある前提で話してません?
どうして仲良く三柱とも目を逸らすんすか?
もう帰っていいすか? って、思っても帰り方知らないんだけどさ。
ほんと、何の用なんだろう?
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