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第12章 ドワーフの国を観光しながら生きていこう
197.事なかれ主義者は丁寧にお断りした
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町の中央に辿り着くと、地下へと続く階段があった。
馬と馬車は穴倉の近くにあった建物で預かってもらい、階段を皆で下りていく。
ドワーフ基準で作られているから天井が低い。
護衛のエルフたちや僕は屈まなくても頭をぶつける事はなかったけど、ラオさんとルウさんは屈んで後をついてきていた。
階段は途中で踊り場があり、時々休憩を挟みながら下りていく。
明かりがなくとも壁や天井が光を放っていた。
ドワーフが作った物かと思っていたけど、違うようだ。
目の前で階段をゆっくり下りているジュリウスさんが振り返って説明してくれる。
「これは発光苔と言います。洞窟やダンジョンでよく見かけるありふれた苔ですが、この苔のおかげで暗い洞窟の中でも安全に移動できますし、洞窟の奥深くでも呼吸が問題なくできます」
酸素をこの苔が賄ってるのか。
……光合成に必要な光なくね?
まあ、異世界だからそういう事もあるんだろうけど、不思議な苔だなぁ。
「坑道など人為的な物にこの苔が生える事はほとんどないのです。ですが、この国のドワーフたちは、その育て方を知っているようですね」
「鉱山とかで使えそうだね」
「そうですね。実際、ドワーフが管理している鉱山では使われているようです。ただ、他種族に育て方を教えるつもりはないようですね」
読心の魔道具がアイテムバッグの中に入ってるから知る事はできると思うけど、絶対面倒な事が起きるからやらない。魔道具で栽培を簡略化する方法もあるだろうけど、同じ理由で黙っとこう。
敵を作りに来たわけじゃなくて、観光をしに来たんだし。
だいぶ長い階段を下りきり、ちょっと休憩をする。
……絶対エレベーターか転移陣作ってやる。
クーをアイテムバッグから取り出した絨毯の上に下ろして、自分も座り込んで休憩する。エルフたちのほとんどは、このまま宿を探すという事で先に行ってしまった。
ドライアドたちと会うといつも果物を貰っているので、アイテムバッグの中は割と食べ物で困る事はない。
果物ナイフと、リンゴのような見た目の真っ赤な果実を取り出す。水分が多くて割と気に入ってる物だ。
瑞々しさも味も食感も梨なんだけど、見た目は普通にリンゴみたいに赤い。梨なのかリンゴなのかどっちかよく分からない物を果物ナイフで切り分ける。
「ほら、クー。あーん」
「あーーんっ!」
「ラオさんとルウさんも食べる?」
「じゃあ貰っとくわ」
「私も一切れ貰おうかしら」
大食いの二人にとっては物足りない量だろうからごめんね、と思いつつ二人がゆっくり咀嚼する様子を見る。
二人は広げた絨毯に座る事なく、周囲に気を配っている様子だった。
自分も食べつつ、クーが時々パカっと開ける口の中に果物を入れる。
ずんぐりむっくりした男ドワーフや、ちっちゃくて華奢な女の子のような見た目の女ドワーフが休憩している僕たちを見ながら通り過ぎて行った。
そろそろ進むか、とクーを背負って絨毯をしまう。
先行したエルフたちは無事に宿見つかったのかなぁ、と気になるけど、僕は宿に泊まらないので観光を楽しませてもらおう。
横穴には時々、扉がついている。どうやら住人がいるらしい。
僕たちがいる所はまだ浅い階層で、ほとんど家か居住者に向けたお店しかないそうだ。
どんどん奥に進んでいくと、下に向かう階段がまた現れた。
「……絶対エスカレーターかエレベーター作ってやる」
絶対その方が楽だし、とか文句を言いながら進んでいく。
……ただ、ここはファマリアではないので勝手に作る訳には行かないだろう。
作るためには町長さんとかに直談判する必要があるけど、どっちの方が面倒かなぁ……悩む。
その後も歩いていると大型デパートもビックリなくらいたくさん階段があり、その度にエレベーターやエスカレーターがあればいいのに、と思いつつ進んでいると大きな広い空間に出た。
天井は高く、発光苔が光輝いていて、周囲を照らしている。
大広間と呼んでも差し支えなさそうな場所は、余所者向けの店がたくさんあるらしい。
宿屋や、食事処も何軒かあるんだとか。
ただ、冒険者たちにとっては、この町は通過点だからほとんど使われる事はないらしいけど。内職をしながらのんびり過ごしているらしい。
塩辛い料理を食べながら見た目がロリなドワーフが教えてくれた。
「こんなちっちゃな町じゃ、この程度だけどね。王都の穴倉はびっくりするだろうね! 観光で来たって言うんだったら一度は行ってみるべきだよ」
ええ、行きますとも。一応この国の王様にご挨拶をしといた方が良さそうなのでね。
僕も同席した方が良いだろうし、その時くらいは頑張ろうと思うけど、基本的にはジューンさんとレヴィさんが話す予定だ。
ドラゴニアとしては引き抜きさせないようにレヴィさんが前面に立つように、って事なんだろうけどやらかさなくて済みそうだから静かに立っていようと思います。
女店主とその後もいろいろ話をしていると食べ終わってしまった。
お勘定をお願いしようとしたら、女店主がきょとんとした表情で僕を見る。
「アンタたち、いつ酒を飲むんだい?」
「いや、飲まないよ?」
未成年だし。
「アタシらはこいつの護衛中だから飲むわけにはいかねぇな」
「そうよねー。ドワーフが好んで飲んでいるお酒、ちょっと気になってるから後で買ってもいいかしら?」
「別の所で買わなくてもいいんじゃないかい? 今飲んじまいなよ。酒飲んだところで仕事はできるじゃないか」
ああ、だからドフリックさんもいつも酒を飲みながら鍛冶をしているのか。
なんか納得した。
けど、お酒はいいです。あと一年ほどは飲むつもりないんで、ええ。
馬と馬車は穴倉の近くにあった建物で預かってもらい、階段を皆で下りていく。
ドワーフ基準で作られているから天井が低い。
護衛のエルフたちや僕は屈まなくても頭をぶつける事はなかったけど、ラオさんとルウさんは屈んで後をついてきていた。
階段は途中で踊り場があり、時々休憩を挟みながら下りていく。
明かりがなくとも壁や天井が光を放っていた。
ドワーフが作った物かと思っていたけど、違うようだ。
目の前で階段をゆっくり下りているジュリウスさんが振り返って説明してくれる。
「これは発光苔と言います。洞窟やダンジョンでよく見かけるありふれた苔ですが、この苔のおかげで暗い洞窟の中でも安全に移動できますし、洞窟の奥深くでも呼吸が問題なくできます」
酸素をこの苔が賄ってるのか。
……光合成に必要な光なくね?
まあ、異世界だからそういう事もあるんだろうけど、不思議な苔だなぁ。
「坑道など人為的な物にこの苔が生える事はほとんどないのです。ですが、この国のドワーフたちは、その育て方を知っているようですね」
「鉱山とかで使えそうだね」
「そうですね。実際、ドワーフが管理している鉱山では使われているようです。ただ、他種族に育て方を教えるつもりはないようですね」
読心の魔道具がアイテムバッグの中に入ってるから知る事はできると思うけど、絶対面倒な事が起きるからやらない。魔道具で栽培を簡略化する方法もあるだろうけど、同じ理由で黙っとこう。
敵を作りに来たわけじゃなくて、観光をしに来たんだし。
だいぶ長い階段を下りきり、ちょっと休憩をする。
……絶対エレベーターか転移陣作ってやる。
クーをアイテムバッグから取り出した絨毯の上に下ろして、自分も座り込んで休憩する。エルフたちのほとんどは、このまま宿を探すという事で先に行ってしまった。
ドライアドたちと会うといつも果物を貰っているので、アイテムバッグの中は割と食べ物で困る事はない。
果物ナイフと、リンゴのような見た目の真っ赤な果実を取り出す。水分が多くて割と気に入ってる物だ。
瑞々しさも味も食感も梨なんだけど、見た目は普通にリンゴみたいに赤い。梨なのかリンゴなのかどっちかよく分からない物を果物ナイフで切り分ける。
「ほら、クー。あーん」
「あーーんっ!」
「ラオさんとルウさんも食べる?」
「じゃあ貰っとくわ」
「私も一切れ貰おうかしら」
大食いの二人にとっては物足りない量だろうからごめんね、と思いつつ二人がゆっくり咀嚼する様子を見る。
二人は広げた絨毯に座る事なく、周囲に気を配っている様子だった。
自分も食べつつ、クーが時々パカっと開ける口の中に果物を入れる。
ずんぐりむっくりした男ドワーフや、ちっちゃくて華奢な女の子のような見た目の女ドワーフが休憩している僕たちを見ながら通り過ぎて行った。
そろそろ進むか、とクーを背負って絨毯をしまう。
先行したエルフたちは無事に宿見つかったのかなぁ、と気になるけど、僕は宿に泊まらないので観光を楽しませてもらおう。
横穴には時々、扉がついている。どうやら住人がいるらしい。
僕たちがいる所はまだ浅い階層で、ほとんど家か居住者に向けたお店しかないそうだ。
どんどん奥に進んでいくと、下に向かう階段がまた現れた。
「……絶対エスカレーターかエレベーター作ってやる」
絶対その方が楽だし、とか文句を言いながら進んでいく。
……ただ、ここはファマリアではないので勝手に作る訳には行かないだろう。
作るためには町長さんとかに直談判する必要があるけど、どっちの方が面倒かなぁ……悩む。
その後も歩いていると大型デパートもビックリなくらいたくさん階段があり、その度にエレベーターやエスカレーターがあればいいのに、と思いつつ進んでいると大きな広い空間に出た。
天井は高く、発光苔が光輝いていて、周囲を照らしている。
大広間と呼んでも差し支えなさそうな場所は、余所者向けの店がたくさんあるらしい。
宿屋や、食事処も何軒かあるんだとか。
ただ、冒険者たちにとっては、この町は通過点だからほとんど使われる事はないらしいけど。内職をしながらのんびり過ごしているらしい。
塩辛い料理を食べながら見た目がロリなドワーフが教えてくれた。
「こんなちっちゃな町じゃ、この程度だけどね。王都の穴倉はびっくりするだろうね! 観光で来たって言うんだったら一度は行ってみるべきだよ」
ええ、行きますとも。一応この国の王様にご挨拶をしといた方が良さそうなのでね。
僕も同席した方が良いだろうし、その時くらいは頑張ろうと思うけど、基本的にはジューンさんとレヴィさんが話す予定だ。
ドラゴニアとしては引き抜きさせないようにレヴィさんが前面に立つように、って事なんだろうけどやらかさなくて済みそうだから静かに立っていようと思います。
女店主とその後もいろいろ話をしていると食べ終わってしまった。
お勘定をお願いしようとしたら、女店主がきょとんとした表情で僕を見る。
「アンタたち、いつ酒を飲むんだい?」
「いや、飲まないよ?」
未成年だし。
「アタシらはこいつの護衛中だから飲むわけにはいかねぇな」
「そうよねー。ドワーフが好んで飲んでいるお酒、ちょっと気になってるから後で買ってもいいかしら?」
「別の所で買わなくてもいいんじゃないかい? 今飲んじまいなよ。酒飲んだところで仕事はできるじゃないか」
ああ、だからドフリックさんもいつも酒を飲みながら鍛冶をしているのか。
なんか納得した。
けど、お酒はいいです。あと一年ほどは飲むつもりないんで、ええ。
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