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第11章 旅の準備をしながら生きていこう
184.事なかれ主義者は目で追った
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ノエルとの街の散策をしていると、浮遊台車に乗ってスイスイ移動していく子どもたちとよくすれ違う。
ただ、以前と違ってレンガは運んでおらず、何やら荷物を積んで運んでいた。
何を運んでいるのかノエルに聞いてもただ首を傾げて「知らないっす」と言われたけど、お昼ご飯を食べるために行った屋台のおじさんに聞いたら快く教えてくれた。
「外壁工事が終われば需要は無くなると思ったけど、荷運びに使われるとはねぇ」
「やってる事はレンガも荷物も変わらないっすから、今後も使われ続けるんじゃないっすか?」
「浮遊台車は作れないの? 納品依頼が来たら僕が作らなきゃいけないんだけど」
「完全再現は無理っす。上の物の重量に関係なく一定高度浮き上がって、その高さを維持してるんすよ? どんな魔法がどれだけ含まれてるか分かんないっす」
「なるほど。もっと普及するなら別の物を考えなきゃいけないのか」
「別に普及させなくてもいいんじゃないっすか? あったら便利だけどなくて困る物じゃないっすし」
「そうだけどさぁ。生活を豊かにできる便利な道具はやっぱりあった方が良いと思うんだよ」
便利な道具が溢れている世界で生きていたからか分かんないけど、ちょっとでも面倒な事はなくして楽したい! っていう気持ちが強い。
加護持ちが増えれば協力して増産するのもありだけど、今の所その気配もないしなぁ。
エント様たちが現地人に加護を与えるのを気長に待つしかないか。
ノエルとジュリウスの三人でフラフラと屋台を食べ歩きして満足したので帰宅する。
……何しに外に出たんだっけ。
「何か旅の参考になる物はありましたか?」
「そう言えばそれが目的だったね」
「途中から完全に食事に興味が移ったっすもんね」
「んー、露天商エリアに行ったのが失敗だったなぁ。あの香りは卑怯だよ」
屋敷の玄関から中に入るとモニカが出迎えてくれた。
特に何もなかったという事だったので、そのままノエルの部屋にお邪魔しようと思ってジュリウスと一緒にぞろぞろと歩く。
ノエルの部屋の前に着くと、彼女が部屋に入って行く。
「鍵してないの?」
「面倒っすもん。取られて困る物は……大量にあるっすけど、この屋敷に泥棒が入る事ができるのか疑問っす」
「私が留守の間は何とも言えないですね」
ジュリウスは拠点の防衛に専念してもらった方が良いのかなぁ。
そんな事を考えながらノエルの部屋に入ると、ジューロさんがちょこんと座って、アダマンタイト製のちゃぶ台の上に乗っている何かにガリガリと魔法陣を刻んでいた。
すぐ近くを歩いているノエルを見る事もなく、真剣に手元に集中しているその横顔は、やっぱり幼く見える。
ジューロさんの手元を覗き込むと、手のひらサイズの円錐形の底面に魔法陣を刻んでいるようだった。
「これ何作ってるの?」
「良く知らないっすけど、魔動耕耘機の魔法陣を見て見様見真似で作ってるみたいっすよ。ほら、机の端っこに転がってるのが出来上がったやつっす」
ノエルはそれだけ言うと、作業台に座って引き出しから道具を取り出すと、作業を始めてしまった。
ノエルに教えてもらった完成品を手に取って見る。
なんだろう……木製だからか、積み木のようにも思える。尖っている部分は丸みを帯びていて安全に遊べそうだ。
とりあえず魔力を流してみると、魔法陣が輝いた。
けど、それだけで特に何も起きない。
「……なんだろうこれ?」
「本人に聞いてみましょう。ジューロ」
「ひゃい!?」
ジューロさんの真後ろに立っていたジュリウスが彼女の肩を叩くと、彼女は驚いた様子で跳び上がった。
そして対面に座る僕に気づいてアワアワしている。
「落ち着いて」
「ひゃい!」
ダメだこりゃ。
僕が声をかけるとさらに緊張した様子だし、とりあえず目の前の見た目幼女のエルフはジュリウスに任せて、彼女が落ち着くまで魔力を流し続けてみよっと。
しばらくして、落ち着いた彼女は、俯きながらチラチラと僕の方を見てくる。
「尖っている部分を机につけて手を離すと回るんです……ただそれだけで……ごめんなさい」
「へー」
独楽じゃん。
ジューロさんがお手本のように実演してくれた独楽みたいな謎の物体をじっと見る。
ゆっくりとだけどちゃんと回転しているのが魔法陣の動きで分かる。
「何かに使えないかなって思って……とりあえず回しやすそうな形にしようかなって……」
「なるほど。遊びで使えばいいんじゃない? ちょっとノエルー。引き出しから木材出してー」
「今忙しいっす」
「私が取りましょう」
「ありがと、ジュリウス」
ジュリウスに加工して板状にしてあった木材を大量に出してもらって座っている横に置いてもらう。
どのくらいの大きさだといいんだろう。
とりあえずちゃぶ台よりも少し小さいくらいの円柱状に【加工】してちゃぶ台の上に置く。
このまま回してもジューロさんが作った独楽はその場でくるくる回っているだけでぶつかり合わないので、とりあえず緩やかな傾斜をつけるように円柱の中心から窪ませた。
「こんな感じだったかなぁ。ベーゴマの……スタジアム? なんていうだっけアレ。まあいいか、スタジアムで。ジューロさん、この台の上で回して遊ぼ! 僕の真似して!」
「は、はい……?」
まだ今一つ僕のやりたい事が分かっていないようで、眉を八の字にした様子のまま、彼女は言われたとおりに僕の真似をして彼女の魔道具を右手で持ってスタジアムの上で構えた。
僕も魔力を流しながらその状態のまま待機して、ジュリウスに合図を出すようにお願いする。
「では、三つ数えます。それと同時に手を離すという方法でよかったでしょうか」
「それでいいよー」
「分かりました。では……3、2、1、0」
「行け!!」
と、威勢のいい掛け声と共に手を離しては見たけど、独楽の魔道具はゆっくりと回転しながらゆっくりと移動する。傾斜が少なすぎたかな?
ジューロさんが離した物もくるくるとゆっくり回りながら真ん中を目指す。
先に真ん中に着いたのは僕の独楽だったけど、そのすぐ後にジューロさんのも真ん中にやってきて僕のそれとぶつかる。
木のぶつかる音と共に弾かれるようにちょっと離れてはまたぶつかる独楽。
…………うん、地味だわ!
でもジューロさんがじっと自分の独楽を見つめているので、口には出さずに一緒に眺め続けた。
……淡く光る魔法陣のおかげで、ちょっと綺麗かも。装飾したら面白いかなぁ。
ただ、以前と違ってレンガは運んでおらず、何やら荷物を積んで運んでいた。
何を運んでいるのかノエルに聞いてもただ首を傾げて「知らないっす」と言われたけど、お昼ご飯を食べるために行った屋台のおじさんに聞いたら快く教えてくれた。
「外壁工事が終われば需要は無くなると思ったけど、荷運びに使われるとはねぇ」
「やってる事はレンガも荷物も変わらないっすから、今後も使われ続けるんじゃないっすか?」
「浮遊台車は作れないの? 納品依頼が来たら僕が作らなきゃいけないんだけど」
「完全再現は無理っす。上の物の重量に関係なく一定高度浮き上がって、その高さを維持してるんすよ? どんな魔法がどれだけ含まれてるか分かんないっす」
「なるほど。もっと普及するなら別の物を考えなきゃいけないのか」
「別に普及させなくてもいいんじゃないっすか? あったら便利だけどなくて困る物じゃないっすし」
「そうだけどさぁ。生活を豊かにできる便利な道具はやっぱりあった方が良いと思うんだよ」
便利な道具が溢れている世界で生きていたからか分かんないけど、ちょっとでも面倒な事はなくして楽したい! っていう気持ちが強い。
加護持ちが増えれば協力して増産するのもありだけど、今の所その気配もないしなぁ。
エント様たちが現地人に加護を与えるのを気長に待つしかないか。
ノエルとジュリウスの三人でフラフラと屋台を食べ歩きして満足したので帰宅する。
……何しに外に出たんだっけ。
「何か旅の参考になる物はありましたか?」
「そう言えばそれが目的だったね」
「途中から完全に食事に興味が移ったっすもんね」
「んー、露天商エリアに行ったのが失敗だったなぁ。あの香りは卑怯だよ」
屋敷の玄関から中に入るとモニカが出迎えてくれた。
特に何もなかったという事だったので、そのままノエルの部屋にお邪魔しようと思ってジュリウスと一緒にぞろぞろと歩く。
ノエルの部屋の前に着くと、彼女が部屋に入って行く。
「鍵してないの?」
「面倒っすもん。取られて困る物は……大量にあるっすけど、この屋敷に泥棒が入る事ができるのか疑問っす」
「私が留守の間は何とも言えないですね」
ジュリウスは拠点の防衛に専念してもらった方が良いのかなぁ。
そんな事を考えながらノエルの部屋に入ると、ジューロさんがちょこんと座って、アダマンタイト製のちゃぶ台の上に乗っている何かにガリガリと魔法陣を刻んでいた。
すぐ近くを歩いているノエルを見る事もなく、真剣に手元に集中しているその横顔は、やっぱり幼く見える。
ジューロさんの手元を覗き込むと、手のひらサイズの円錐形の底面に魔法陣を刻んでいるようだった。
「これ何作ってるの?」
「良く知らないっすけど、魔動耕耘機の魔法陣を見て見様見真似で作ってるみたいっすよ。ほら、机の端っこに転がってるのが出来上がったやつっす」
ノエルはそれだけ言うと、作業台に座って引き出しから道具を取り出すと、作業を始めてしまった。
ノエルに教えてもらった完成品を手に取って見る。
なんだろう……木製だからか、積み木のようにも思える。尖っている部分は丸みを帯びていて安全に遊べそうだ。
とりあえず魔力を流してみると、魔法陣が輝いた。
けど、それだけで特に何も起きない。
「……なんだろうこれ?」
「本人に聞いてみましょう。ジューロ」
「ひゃい!?」
ジューロさんの真後ろに立っていたジュリウスが彼女の肩を叩くと、彼女は驚いた様子で跳び上がった。
そして対面に座る僕に気づいてアワアワしている。
「落ち着いて」
「ひゃい!」
ダメだこりゃ。
僕が声をかけるとさらに緊張した様子だし、とりあえず目の前の見た目幼女のエルフはジュリウスに任せて、彼女が落ち着くまで魔力を流し続けてみよっと。
しばらくして、落ち着いた彼女は、俯きながらチラチラと僕の方を見てくる。
「尖っている部分を机につけて手を離すと回るんです……ただそれだけで……ごめんなさい」
「へー」
独楽じゃん。
ジューロさんがお手本のように実演してくれた独楽みたいな謎の物体をじっと見る。
ゆっくりとだけどちゃんと回転しているのが魔法陣の動きで分かる。
「何かに使えないかなって思って……とりあえず回しやすそうな形にしようかなって……」
「なるほど。遊びで使えばいいんじゃない? ちょっとノエルー。引き出しから木材出してー」
「今忙しいっす」
「私が取りましょう」
「ありがと、ジュリウス」
ジュリウスに加工して板状にしてあった木材を大量に出してもらって座っている横に置いてもらう。
どのくらいの大きさだといいんだろう。
とりあえずちゃぶ台よりも少し小さいくらいの円柱状に【加工】してちゃぶ台の上に置く。
このまま回してもジューロさんが作った独楽はその場でくるくる回っているだけでぶつかり合わないので、とりあえず緩やかな傾斜をつけるように円柱の中心から窪ませた。
「こんな感じだったかなぁ。ベーゴマの……スタジアム? なんていうだっけアレ。まあいいか、スタジアムで。ジューロさん、この台の上で回して遊ぼ! 僕の真似して!」
「は、はい……?」
まだ今一つ僕のやりたい事が分かっていないようで、眉を八の字にした様子のまま、彼女は言われたとおりに僕の真似をして彼女の魔道具を右手で持ってスタジアムの上で構えた。
僕も魔力を流しながらその状態のまま待機して、ジュリウスに合図を出すようにお願いする。
「では、三つ数えます。それと同時に手を離すという方法でよかったでしょうか」
「それでいいよー」
「分かりました。では……3、2、1、0」
「行け!!」
と、威勢のいい掛け声と共に手を離しては見たけど、独楽の魔道具はゆっくりと回転しながらゆっくりと移動する。傾斜が少なすぎたかな?
ジューロさんが離した物もくるくるとゆっくり回りながら真ん中を目指す。
先に真ん中に着いたのは僕の独楽だったけど、そのすぐ後にジューロさんのも真ん中にやってきて僕のそれとぶつかる。
木のぶつかる音と共に弾かれるようにちょっと離れてはまたぶつかる独楽。
…………うん、地味だわ!
でもジューロさんがじっと自分の独楽を見つめているので、口には出さずに一緒に眺め続けた。
……淡く光る魔法陣のおかげで、ちょっと綺麗かも。装飾したら面白いかなぁ。
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