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第11章 旅の準備をしながら生きていこう
180.事なかれ主義者は狭い部屋が好き
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食事が終わると、転移陣を使ってファマリーを通り過ぎ、ユグドラシルに向かう。
今日の同行者は護衛のジュリウスさんと代理人のジューンさん。
禁足地は世界樹の使徒と番人以外の立ち入りが基本的に禁止されていたが、ジューンさんは代理人だからオッケーになったんだとか。
「お世話終わったよ」
「お疲れ様です。それでは、参りましょう」
世界樹ユグドラシルのお世話は数秒で終わってしまったが、街の方でまだ用事がある、らしい。
トネリコからの手紙を持ってきた使者が会いたいと言っているんだとか。
トネリコまでの案内役として今後も関わるらしいので、僕も挨拶くらいはしておきたいと思って、ジュリウスに会ってもいいと伝えたらユグドラシルで会う事になった。
「ファマリアやドランで会って頂くのも考えたのですが、ドラゴニアを刺激するかもしれないと思い、やめました。現在もエルフ関係ではご迷惑をおかけしておりますので……」
迷惑をかけた元実行犯がいうと確かにそうだなぁ、と思う。
まあ、僕も迷惑をかけたんですけどね。仲間仲間。
いつものようにちっちゃなドライアドたちが周囲をわらわらとついてくる中、森の中を突き進む。気分はお散歩。
何でか知らないけど果物を押し付けてくるドライアドと、その果物を精霊魔法で食べやすい大きさにカットするジューンさん。歩きながらやるのすごいけど、使い道間違ってません?
「シズトちゃんもぉ、魔道具を日常で使っていると聞きましたぁ」
「まあ、似たような物なのか……?」
シャクシャクと梨の様な食感で甘みが強い果物を食べながら歩く。
あ、レモンは要らないです。
ちっちゃなドライアドにレモンを返していると、ジューンさんが遠くを見ながら話を続ける。
「それにぃ、私は器用貧乏でこういう事しかできませんでしたからぁ。戦いでは全然お役に立てないですぅ」
「そこら辺はジュリウスがいるから間に合ってるし、気にしないでいいよ」
「死力を尽くしてお守りいたします」
「ほんとに死ぬのは止めてね」
「善処します」
「その言い方なんか信用できないの何でだろう。……ジュリウスもジューンさんみたいに魔法を料理で使ったり、寝癖を直すために使ったりするの?」
「練習すればできるかと思いますが、繊細で複雑な制御が必要ですので、ジューン様のように少量の魔力で行う事ができるようになるには時間がかかるかと。偏に彼女の努力の賜物ですね」
「そんな事ないですよぉ」
両手を頬に当てて恥ずかしがるジューンさん。
エルフの時間感覚で『時間がかかる』って、どのくらいなんだろうね。
ジュリウスさんに連れて来られたのはいつもの旅館の様な雰囲気が漂う高級宿だった。
案内された部屋の前で一度待つように言われると、宿の人が扉をノックした。
それから少しして、中から扉が開かれる。
畳張りの大広間で、中央にはエルフがいるが土下座の姿勢のまま動かない。
ジュリウスの後をついて歩くようにして近づいてもピクリとも動かない。
用意された座布団の上に座って、ジューンさんが隣に座っても顔を上げない。向きはこっちに変わったけど。
チラッとジュリウスさんを見ると、ジュリウスさんがこくりと頷いた。
「シズト様が名を知りたがっている。名乗れ」
「違うよ!? いや、名前は知りたいけど、まずは土下座をやめさせて?」
「ああ、そちらでしたか。シズト様がこの様に仰せだ。顔をあげよ」
顔をあげたエルフはやっぱり美形だった。
雪のように白い肌に決意を秘めてそうな勝気な緑色の目が僕を真っすぐに見ている。
果たしてこの人は男なのか女なのか。
金色の髪はボブぐらいの長さで切り揃えられていて、どちらにも見えるから悩みどころだ。
体型もジューンさんと違って一般的なエルフで、スレンダーだから分からん。この都市のエルフと違ってダボッとした感じの服を着てるから余計に女性らしいふくらみとかも分からないし……。
うーん、と考えているとジュリウスさんが再び目の前のエルフに名乗るように促した。
「都市国家トネリコから遣わされた使節団の代表、キャサリーです。この度は私共のためにお時間を取っていただきありがとうございます」
「気にしないでください。だいたい遊んでるだけなので。それで、会いたいって事でしたけど、何か御用でしょうか?」
「都市国家トネリコに住むエルフを代表して、シズト様にご迷惑をおかけする謝罪を直接会ってしたかったのです。知らなかったとはいえ、都市国家に住むエルフたちのこれまでの所業は許されざる事です。これからはファマ様を信奉するのは当然の事ですが、加護を唯一授かっていらっしゃるシズト様のお手伝いをお傍でさせていただければと存じます」
「あ、そういうの間に合ってますー」
護衛も婚約者もいますのでー。
どうしても何かしたいっていうなら、しっかりトネリコまで案内してくれればそれでいいんで。あ、観光案内とかもしてくれたらうれしいっす。
まだ出発する時期は決まってないし、どうやって行くかも決まってないから、その仕事をいつしてもらうのかは分からないけど。
用件はそれだけみたいだし、お暇させてもらおっと。
あんまり長居して食い下がってきても面倒だし、なによりこの部屋広すぎて落ち着かないや。
修学旅行の時のように団体での宿泊だったら楽しめそうなんだけどさ、やっぱり部屋は狭い方が良いなぁ。
今日の同行者は護衛のジュリウスさんと代理人のジューンさん。
禁足地は世界樹の使徒と番人以外の立ち入りが基本的に禁止されていたが、ジューンさんは代理人だからオッケーになったんだとか。
「お世話終わったよ」
「お疲れ様です。それでは、参りましょう」
世界樹ユグドラシルのお世話は数秒で終わってしまったが、街の方でまだ用事がある、らしい。
トネリコからの手紙を持ってきた使者が会いたいと言っているんだとか。
トネリコまでの案内役として今後も関わるらしいので、僕も挨拶くらいはしておきたいと思って、ジュリウスに会ってもいいと伝えたらユグドラシルで会う事になった。
「ファマリアやドランで会って頂くのも考えたのですが、ドラゴニアを刺激するかもしれないと思い、やめました。現在もエルフ関係ではご迷惑をおかけしておりますので……」
迷惑をかけた元実行犯がいうと確かにそうだなぁ、と思う。
まあ、僕も迷惑をかけたんですけどね。仲間仲間。
いつものようにちっちゃなドライアドたちが周囲をわらわらとついてくる中、森の中を突き進む。気分はお散歩。
何でか知らないけど果物を押し付けてくるドライアドと、その果物を精霊魔法で食べやすい大きさにカットするジューンさん。歩きながらやるのすごいけど、使い道間違ってません?
「シズトちゃんもぉ、魔道具を日常で使っていると聞きましたぁ」
「まあ、似たような物なのか……?」
シャクシャクと梨の様な食感で甘みが強い果物を食べながら歩く。
あ、レモンは要らないです。
ちっちゃなドライアドにレモンを返していると、ジューンさんが遠くを見ながら話を続ける。
「それにぃ、私は器用貧乏でこういう事しかできませんでしたからぁ。戦いでは全然お役に立てないですぅ」
「そこら辺はジュリウスがいるから間に合ってるし、気にしないでいいよ」
「死力を尽くしてお守りいたします」
「ほんとに死ぬのは止めてね」
「善処します」
「その言い方なんか信用できないの何でだろう。……ジュリウスもジューンさんみたいに魔法を料理で使ったり、寝癖を直すために使ったりするの?」
「練習すればできるかと思いますが、繊細で複雑な制御が必要ですので、ジューン様のように少量の魔力で行う事ができるようになるには時間がかかるかと。偏に彼女の努力の賜物ですね」
「そんな事ないですよぉ」
両手を頬に当てて恥ずかしがるジューンさん。
エルフの時間感覚で『時間がかかる』って、どのくらいなんだろうね。
ジュリウスさんに連れて来られたのはいつもの旅館の様な雰囲気が漂う高級宿だった。
案内された部屋の前で一度待つように言われると、宿の人が扉をノックした。
それから少しして、中から扉が開かれる。
畳張りの大広間で、中央にはエルフがいるが土下座の姿勢のまま動かない。
ジュリウスの後をついて歩くようにして近づいてもピクリとも動かない。
用意された座布団の上に座って、ジューンさんが隣に座っても顔を上げない。向きはこっちに変わったけど。
チラッとジュリウスさんを見ると、ジュリウスさんがこくりと頷いた。
「シズト様が名を知りたがっている。名乗れ」
「違うよ!? いや、名前は知りたいけど、まずは土下座をやめさせて?」
「ああ、そちらでしたか。シズト様がこの様に仰せだ。顔をあげよ」
顔をあげたエルフはやっぱり美形だった。
雪のように白い肌に決意を秘めてそうな勝気な緑色の目が僕を真っすぐに見ている。
果たしてこの人は男なのか女なのか。
金色の髪はボブぐらいの長さで切り揃えられていて、どちらにも見えるから悩みどころだ。
体型もジューンさんと違って一般的なエルフで、スレンダーだから分からん。この都市のエルフと違ってダボッとした感じの服を着てるから余計に女性らしいふくらみとかも分からないし……。
うーん、と考えているとジュリウスさんが再び目の前のエルフに名乗るように促した。
「都市国家トネリコから遣わされた使節団の代表、キャサリーです。この度は私共のためにお時間を取っていただきありがとうございます」
「気にしないでください。だいたい遊んでるだけなので。それで、会いたいって事でしたけど、何か御用でしょうか?」
「都市国家トネリコに住むエルフを代表して、シズト様にご迷惑をおかけする謝罪を直接会ってしたかったのです。知らなかったとはいえ、都市国家に住むエルフたちのこれまでの所業は許されざる事です。これからはファマ様を信奉するのは当然の事ですが、加護を唯一授かっていらっしゃるシズト様のお手伝いをお傍でさせていただければと存じます」
「あ、そういうの間に合ってますー」
護衛も婚約者もいますのでー。
どうしても何かしたいっていうなら、しっかりトネリコまで案内してくれればそれでいいんで。あ、観光案内とかもしてくれたらうれしいっす。
まだ出発する時期は決まってないし、どうやって行くかも決まってないから、その仕事をいつしてもらうのかは分からないけど。
用件はそれだけみたいだし、お暇させてもらおっと。
あんまり長居して食い下がってきても面倒だし、なによりこの部屋広すぎて落ち着かないや。
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