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第10章 婚約(仮)をして生きていこう

173.事なかれ主義者はロリコンではない

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 連れて来られたエルフの女性は三人だった。
 タイプが違う美人さんだが、三人共世界樹の使徒とは血縁関係ではないらしい。
 また、他者とあまり関わらないタイプだったとの事で余計な紐はついていないんだとか。
 一人目は新しく世界樹の番人になる予定の人らしい。
 ショートヘアーで、キリッとした目つきな事もあって、男装とか似合いそうだ。
 僕と同じくらいの背丈で、女性の中では長身……なのか?
 ラオさんやルウさんといつも過ごしていると分からなくなってくる。

「ジュリエッタと申します。戦う事しか学んで来なかったので、シズト様の護衛としてお役に立てればと思います」
「若いエルフの中でも指折りの戦闘力です。数百年後が楽しみな娘ですね」
「エルフの時間感覚やばい。っていうか、商人との交渉とか大丈夫なの?」
「交渉事に慣れている方が良いでしょうが、以前までも世界樹の素材を唯一卸せるからその日の気分や対価によって対応を変えていたので、ジュリエッタでも大差ないかと」

 ……なるほど、好き勝手やってたんだなぁ、元使徒たち。
 そうならないように極力気をつけよっと。
 二人目に視線を映すと、その女性はビクッと反応した。
 いや、なんか小動物って感じで小刻みに震えてない?
 背丈は僕よりも頭一つ分以上低くて、よりそう思えてしまうのかもしれない。
 それとも女性らしい起伏がないからか?
 なんかランドセルが似合いそうな……ロリ。これはアウトなのでは?

「ジュ、ジューロです……。あ、あの……えっと……よろしくお願いします!」
「候補に挙がっていた娘たちの中で、最年少でしたが、シズト様のお作りになった魔道具に興味を示し、研究をしようとしていた娘です。商人の娘で、以前から魔道具と関わる機会があった事もあり、何かしら新しい魔道具作りのお役に立てるかもしれませんし、手が足りていないという事でしたので、魔道具製作チームに組み込んでもよいかと」
「ジュリウスさんジュリウスさん、ちょっと耳貸して」
「はい、なんでしょう?」

 エルフの長い耳に耳打ちするのってどうやればいいんだろう……。とかどうでもいい感想が浮かんだけど、ちょっと確認しなきゃいけない事を彼に尋ねる。

「ジューロさんは今後成長するんですか?」
「しないかと。彼女も百年は生きているので」

 ……はい、見た目的にアウト!
 いや、だって婚約する候補なんでしょ?
 ノエルと一緒に魔道具を作ってくれるのは助かるんだけど、ちょっと僕には無理です。
 これからこっちの世界に馴染んだとしても、可愛いなぁ、とは思うけど欲情できる自信ないっす。
 そういった意味だとドーラさんも? ……うん、考えるのやめよ。
 三人目は、エルフなのかな? って疑いたいくらい女性らしい凸凹がはっきりしている人だった。
 癖っ毛なのか、ゆるく波打っている金色の髪に、優しい眼差しの緑色の瞳。
 雰囲気がなんか優しいお母さんっぽい。あらあらまあまあ、とか言いそう。

「ジューンですぅ。よろしくお願いしますぅ」
「シズト様のお屋敷に度々王家の方々がお越しになっているのに、厨房はずっと一人で対応している様でしたので、そのお手伝い要員としていかがかと。普段は孤児院で働いておりますが、周辺諸国の料理も研究しており、シズト様をご満足させる事ができるかと」
「料理だけは自信があるのでぇ、頑張りますぅ」

 ちょっと自信なさげに眉が下がっているジューンさん。
 ジュリウスさんがこそっと耳打ちするために顔を寄せてきた。

「エルフの価値観では好まれない容姿のため、いろいろ言われてきたようです。選別する前の候補者の中で最年長だったのも気にしているのかと」

 なるほど?
 ドワーフの時にも思ったけど、エルフにはエルフの価値観があるんですね。むしろ魅力的すぎて視線があからさまにならないように気を付けるのに必死なんですけどね? レヴィさんほどではないけど、ラオさんやルウさんと同じくらいな立派なものをお持ちで……。
 ……とりあえずジューロさんは除外して、残りの二人から選ぶべきか。
 僕がうんうん悩んでいると、ジュリウスさんが口を開いた。

「あくまで案の一つです。シズト様が仰っていたように対応しても大丈夫ですよ」
「うーん……ちょっと時間貰える?」
「はい、もちろんです」

 とりあえず、今すぐには決められないので保留って事で。……後でジュリウスにジューロさんは候補から外してもらおう。



 とりあえず顔合わせはしたので解散してもらって、ファマリアに戻ってきた。
 ちょっと神様に確認したい事ができたんだけど、どうやってコンタクト取ればいんだろう?
 今まではお祈りしていたら突撃してきていたから、とりあえずお祈りするか。
 レヴィさんとドライアドたちがせっせと農作業をしている中、ファマリアの近くにある祠の前に立つ。
 何かお供え物をした方が良いのかな?
 まあ、いつも農作物奉納してるし良いか。
 膝をついて手を合わせ、目を瞑るが、何も変化はない。レヴィさんの元気な声が聞こえてくる。
 ……とりあえず口に出してお願いしてみよう。

「ファマ様、お聞きしたい事があります……って、そんな簡単に神様と話せるわけ――」
「オ、オイラになんか用なんだな?」
「って、すぐに応えてくれるんかい!」
「こ、今回は特別なんだな」

 ボーっとした表情のファマ様が、僕の前にいつの間にか立っていた。
 その後ろには何やら胸を張って誇らしげなプロス様と、僕と視線が合ってひらひらと手を振ってくるエント様がいた。
 とりあえず、エント様には手を振り返しておこう。
 いつもお世話になっておりますーってね。
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