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第10章 婚約(仮)をして生きていこう

167.事なかれ主義者は机に突っ伏した

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 王妃様が王様を連れて帰ってから一週間が経った。
 王様たちが帰って、やっといつもの日常が戻ってきた。
 朝ご飯を食べたらファマリーやユグドラシルのお世話をして、魔力の回復を待つためにのんびりと過ごす日々だ。
 ドライアドたちがボウリングの球をころころと押して遊んでいるのを眺めたり、放置気味だった屋敷にある自分の畑のお世話をしたり、アンジェラと遊んだりと平和だった。
 いつまでもこんな感じでのんびりと過ごせたらいいなぁ、と思っていた。
 ただ、それも終わりの様だ。
 ファマリアに留まっていたエルフとドワーフから嘆願書が届いた。
 朝食を食べて少し休憩をしている時に届けられたそれを開いて中を確認すると、神様に関する事だった。

「教会建設の協力要請……?」
「……そうみたいですわ」

 レヴィさんが横からのぞき込んできた。
 さっきまで食事をしていたが内容が気になった様で席を立って僕のすぐ近くまで来ていた。
 今日もこの後、誰かと会うらしく、露出の少ないドレスを着ているが、女性特有のふくらみは隠しきれていない。
 前屈みになると大きな二つのアレがアレしてアレなんですけど……。
 レヴィさんは気にした様子もなく僕の手元を覗き込んでいる。
 以前、エルフとドワーフたちから、ファマ様とプロス様の教会を建設するための許可を求められて承諾したんだけど、どうやら神様の加護を持っている僕にしかできない事を、どちらもお願いしたいらしい。

「ドワーフの方は教会が出来上がったら、薄く伸ばしたアダマンタイトで壁を覆ったら目立つんじゃないか、って事らしいですわ」
「そんなに目立たせなくていいと思うんだけど」

 金ぴかの建物ってなんか嫌だ。しかも教会だし。
 あ、でも金色の建物が日本にあったような……?
 じゃあアリか? 金じゃなくてアダマンタイトだけどアリなのか?

「重さでつぶれない?」
「そこら辺はドワーフがしっかり計算してると思うのですわ」

 それはそうか。
 建築に関してはまったく分かんないし、そこら辺は分かる人に任せよう。
 神様の宣伝はできるだけたくさんしておきたいし、どうせ建物を覆うだけだったらそんなに魔力使わないだろう。ユグドラシルのお世話をする日にでもやるか。
 ファマリーの世話が終わったら話を聞きに行こうかな。

「エルフの方は、教会を建てる際に、世界樹の素材を使って建設したいそうですわ。シズトの加護で加工して板や柱にしてほしいそうですわ」
「世界樹の素材……木造建築にするのかな?」
「そうみたいですわ。世界樹の素材をどうやって集めるかが問題ですわね」
「そういう事であれば、私にお任せください」

 壁際に静かに控えていたジュリウスさんが前に進み出た。そして流れるように跪く。
 発言する時にわざわざ跪かなくていいから。
 手で合図を送ると、察したジュリウスさんはすぐに立ち上がった。

「ファマリーはまだ成長途中ですので、あまり多くの素材は集められないでしょう。ユグドラシルで素材を集め、それを使えば問題ないかと」
「そんな事したらユグドラシルのエルフたち怒らない?」
「特に問題はございません」

 目を伏せて発言をするジュリウスさん。
 ほんとかなぁ。
 ジーッと見るが視線を合わせようとしない。
 しばしの間続けていると、朝食を食べ終えてのんびりと飴を舐めていたラオさんが口を開いた。

「ユグドラシルの方から集まってきたエルフたちが作りたいって言ってんだったら文句言わねぇんじゃねぇか? それに、なんかあってもジュリウスが黙らせるだろ」
「そうね。それに、世界樹の使徒と思われているシズトくんが自由に使っても問題ないんじゃないかしら?」

 ルウさんルウさん、使徒の事は考えないようにしていた事なんですけど。
 僕が何とも言えない気持ちでルウさんの座っている方を見る。
 ジュリウスさんもルウさんの方を見てゆっくりと頷いた。

「その通りでございます」
「……やること知らないけどさ、世界樹の使徒とか面倒そうだからしたくないんですけどぉ」
「その話はまた後日、改めてさせていただければと思います。まだ準備が整っておりませんので」

 ぺこりと頭を下げるジュリウスさん。
 今はまだその時ではない、という事であればわざわざ突っつくのは止めとこう。
 なんか嫌な予感がするし。
 気を取り直してスープを飲んでいると、食堂にセシリアさんが入ってきた。手には手紙を持っている。
 それをレヴィさんに渡すと、セシリアさんはレヴィさんの近くで静かに立って控えている。

「お父様からですわ。……転移陣の設置が完了したみたいですわ。早く設置してドランに遊びに来るために、急いで王都に帰ったそうですわ。これでいつでも遊びに来れる、と書かれているのですわ」

 そのために渡したけど、リヴァイさんが気軽にここに来ると皆が大変だからほどほどにしてほしいなぁ。

「あ、お母様からの追伸もあったのですわ。お父様はしばらくドランに行かせないから、という事だそうですわ」
「なるほど。じゃあもうしばらくはのんびり過ごせるかなぁ。世界樹の素材を加工するにしても原材料が手元に届かないと意味ないし」

 今日は何して過ごそうかなぁ。
 そんな事を考え始めたけど、手紙の内容はまだ続いていたようだ。

「ただその代わり、転移陣の確認をするついでにお兄様がシズトに会いに来るそうですわ」

 ……ついでにやって来ないでください、ロイヤルファミリー。
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