248 / 1,023
第10章 婚約(仮)をして生きていこう
167.事なかれ主義者は机に突っ伏した
しおりを挟む
王妃様が王様を連れて帰ってから一週間が経った。
王様たちが帰って、やっといつもの日常が戻ってきた。
朝ご飯を食べたらファマリーやユグドラシルのお世話をして、魔力の回復を待つためにのんびりと過ごす日々だ。
ドライアドたちがボウリングの球をころころと押して遊んでいるのを眺めたり、放置気味だった屋敷にある自分の畑のお世話をしたり、アンジェラと遊んだりと平和だった。
いつまでもこんな感じでのんびりと過ごせたらいいなぁ、と思っていた。
ただ、それも終わりの様だ。
ファマリアに留まっていたエルフとドワーフから嘆願書が届いた。
朝食を食べて少し休憩をしている時に届けられたそれを開いて中を確認すると、神様に関する事だった。
「教会建設の協力要請……?」
「……そうみたいですわ」
レヴィさんが横からのぞき込んできた。
さっきまで食事をしていたが内容が気になった様で席を立って僕のすぐ近くまで来ていた。
今日もこの後、誰かと会うらしく、露出の少ないドレスを着ているが、女性特有のふくらみは隠しきれていない。
前屈みになると大きな二つのアレがアレしてアレなんですけど……。
レヴィさんは気にした様子もなく僕の手元を覗き込んでいる。
以前、エルフとドワーフたちから、ファマ様とプロス様の教会を建設するための許可を求められて承諾したんだけど、どうやら神様の加護を持っている僕にしかできない事を、どちらもお願いしたいらしい。
「ドワーフの方は教会が出来上がったら、薄く伸ばしたアダマンタイトで壁を覆ったら目立つんじゃないか、って事らしいですわ」
「そんなに目立たせなくていいと思うんだけど」
金ぴかの建物ってなんか嫌だ。しかも教会だし。
あ、でも金色の建物が日本にあったような……?
じゃあアリか? 金じゃなくてアダマンタイトだけどアリなのか?
「重さでつぶれない?」
「そこら辺はドワーフがしっかり計算してると思うのですわ」
それはそうか。
建築に関してはまったく分かんないし、そこら辺は分かる人に任せよう。
神様の宣伝はできるだけたくさんしておきたいし、どうせ建物を覆うだけだったらそんなに魔力使わないだろう。ユグドラシルのお世話をする日にでもやるか。
ファマリーの世話が終わったら話を聞きに行こうかな。
「エルフの方は、教会を建てる際に、世界樹の素材を使って建設したいそうですわ。シズトの加護で加工して板や柱にしてほしいそうですわ」
「世界樹の素材……木造建築にするのかな?」
「そうみたいですわ。世界樹の素材をどうやって集めるかが問題ですわね」
「そういう事であれば、私にお任せください」
壁際に静かに控えていたジュリウスさんが前に進み出た。そして流れるように跪く。
発言する時にわざわざ跪かなくていいから。
手で合図を送ると、察したジュリウスさんはすぐに立ち上がった。
「ファマリーはまだ成長途中ですので、あまり多くの素材は集められないでしょう。ユグドラシルで素材を集め、それを使えば問題ないかと」
「そんな事したらユグドラシルのエルフたち怒らない?」
「特に問題はございません」
目を伏せて発言をするジュリウスさん。
ほんとかなぁ。
ジーッと見るが視線を合わせようとしない。
しばしの間続けていると、朝食を食べ終えてのんびりと飴を舐めていたラオさんが口を開いた。
「ユグドラシルの方から集まってきたエルフたちが作りたいって言ってんだったら文句言わねぇんじゃねぇか? それに、なんかあってもジュリウスが黙らせるだろ」
「そうね。それに、世界樹の使徒と思われているシズトくんが自由に使っても問題ないんじゃないかしら?」
ルウさんルウさん、使徒の事は考えないようにしていた事なんですけど。
僕が何とも言えない気持ちでルウさんの座っている方を見る。
ジュリウスさんもルウさんの方を見てゆっくりと頷いた。
「その通りでございます」
「……やること知らないけどさ、世界樹の使徒とか面倒そうだからしたくないんですけどぉ」
「その話はまた後日、改めてさせていただければと思います。まだ準備が整っておりませんので」
ぺこりと頭を下げるジュリウスさん。
今はまだその時ではない、という事であればわざわざ突っつくのは止めとこう。
なんか嫌な予感がするし。
気を取り直してスープを飲んでいると、食堂にセシリアさんが入ってきた。手には手紙を持っている。
それをレヴィさんに渡すと、セシリアさんはレヴィさんの近くで静かに立って控えている。
「お父様からですわ。……転移陣の設置が完了したみたいですわ。早く設置してドランに遊びに来るために、急いで王都に帰ったそうですわ。これでいつでも遊びに来れる、と書かれているのですわ」
そのために渡したけど、リヴァイさんが気軽にここに来ると皆が大変だからほどほどにしてほしいなぁ。
「あ、お母様からの追伸もあったのですわ。お父様はしばらくドランに行かせないから、という事だそうですわ」
「なるほど。じゃあもうしばらくはのんびり過ごせるかなぁ。世界樹の素材を加工するにしても原材料が手元に届かないと意味ないし」
今日は何して過ごそうかなぁ。
そんな事を考え始めたけど、手紙の内容はまだ続いていたようだ。
「ただその代わり、転移陣の確認をするついでにお兄様がシズトに会いに来るそうですわ」
……ついでにやって来ないでください、ロイヤルファミリー。
王様たちが帰って、やっといつもの日常が戻ってきた。
朝ご飯を食べたらファマリーやユグドラシルのお世話をして、魔力の回復を待つためにのんびりと過ごす日々だ。
ドライアドたちがボウリングの球をころころと押して遊んでいるのを眺めたり、放置気味だった屋敷にある自分の畑のお世話をしたり、アンジェラと遊んだりと平和だった。
いつまでもこんな感じでのんびりと過ごせたらいいなぁ、と思っていた。
ただ、それも終わりの様だ。
ファマリアに留まっていたエルフとドワーフから嘆願書が届いた。
朝食を食べて少し休憩をしている時に届けられたそれを開いて中を確認すると、神様に関する事だった。
「教会建設の協力要請……?」
「……そうみたいですわ」
レヴィさんが横からのぞき込んできた。
さっきまで食事をしていたが内容が気になった様で席を立って僕のすぐ近くまで来ていた。
今日もこの後、誰かと会うらしく、露出の少ないドレスを着ているが、女性特有のふくらみは隠しきれていない。
前屈みになると大きな二つのアレがアレしてアレなんですけど……。
レヴィさんは気にした様子もなく僕の手元を覗き込んでいる。
以前、エルフとドワーフたちから、ファマ様とプロス様の教会を建設するための許可を求められて承諾したんだけど、どうやら神様の加護を持っている僕にしかできない事を、どちらもお願いしたいらしい。
「ドワーフの方は教会が出来上がったら、薄く伸ばしたアダマンタイトで壁を覆ったら目立つんじゃないか、って事らしいですわ」
「そんなに目立たせなくていいと思うんだけど」
金ぴかの建物ってなんか嫌だ。しかも教会だし。
あ、でも金色の建物が日本にあったような……?
じゃあアリか? 金じゃなくてアダマンタイトだけどアリなのか?
「重さでつぶれない?」
「そこら辺はドワーフがしっかり計算してると思うのですわ」
それはそうか。
建築に関してはまったく分かんないし、そこら辺は分かる人に任せよう。
神様の宣伝はできるだけたくさんしておきたいし、どうせ建物を覆うだけだったらそんなに魔力使わないだろう。ユグドラシルのお世話をする日にでもやるか。
ファマリーの世話が終わったら話を聞きに行こうかな。
「エルフの方は、教会を建てる際に、世界樹の素材を使って建設したいそうですわ。シズトの加護で加工して板や柱にしてほしいそうですわ」
「世界樹の素材……木造建築にするのかな?」
「そうみたいですわ。世界樹の素材をどうやって集めるかが問題ですわね」
「そういう事であれば、私にお任せください」
壁際に静かに控えていたジュリウスさんが前に進み出た。そして流れるように跪く。
発言する時にわざわざ跪かなくていいから。
手で合図を送ると、察したジュリウスさんはすぐに立ち上がった。
「ファマリーはまだ成長途中ですので、あまり多くの素材は集められないでしょう。ユグドラシルで素材を集め、それを使えば問題ないかと」
「そんな事したらユグドラシルのエルフたち怒らない?」
「特に問題はございません」
目を伏せて発言をするジュリウスさん。
ほんとかなぁ。
ジーッと見るが視線を合わせようとしない。
しばしの間続けていると、朝食を食べ終えてのんびりと飴を舐めていたラオさんが口を開いた。
「ユグドラシルの方から集まってきたエルフたちが作りたいって言ってんだったら文句言わねぇんじゃねぇか? それに、なんかあってもジュリウスが黙らせるだろ」
「そうね。それに、世界樹の使徒と思われているシズトくんが自由に使っても問題ないんじゃないかしら?」
ルウさんルウさん、使徒の事は考えないようにしていた事なんですけど。
僕が何とも言えない気持ちでルウさんの座っている方を見る。
ジュリウスさんもルウさんの方を見てゆっくりと頷いた。
「その通りでございます」
「……やること知らないけどさ、世界樹の使徒とか面倒そうだからしたくないんですけどぉ」
「その話はまた後日、改めてさせていただければと思います。まだ準備が整っておりませんので」
ぺこりと頭を下げるジュリウスさん。
今はまだその時ではない、という事であればわざわざ突っつくのは止めとこう。
なんか嫌な予感がするし。
気を取り直してスープを飲んでいると、食堂にセシリアさんが入ってきた。手には手紙を持っている。
それをレヴィさんに渡すと、セシリアさんはレヴィさんの近くで静かに立って控えている。
「お父様からですわ。……転移陣の設置が完了したみたいですわ。早く設置してドランに遊びに来るために、急いで王都に帰ったそうですわ。これでいつでも遊びに来れる、と書かれているのですわ」
そのために渡したけど、リヴァイさんが気軽にここに来ると皆が大変だからほどほどにしてほしいなぁ。
「あ、お母様からの追伸もあったのですわ。お父様はしばらくドランに行かせないから、という事だそうですわ」
「なるほど。じゃあもうしばらくはのんびり過ごせるかなぁ。世界樹の素材を加工するにしても原材料が手元に届かないと意味ないし」
今日は何して過ごそうかなぁ。
そんな事を考え始めたけど、手紙の内容はまだ続いていたようだ。
「ただその代わり、転移陣の確認をするついでにお兄様がシズトに会いに来るそうですわ」
……ついでにやって来ないでください、ロイヤルファミリー。
71
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる