242 / 1,094
第10章 婚約(仮)をして生きていこう
163.事なかれ主義者は少し心配
しおりを挟む
レヴィさんに婚約をしようと言ってから一週間が経った。
ただ、レヴィさんとの関係は特に変わっていない。というか、元通りになった感じだ。
龍の巣の件以降、自由に過ごさせてもらっていたけど、お世話当番がついに復活してしまったのだ。
朝は当番の人が起こしに来て、食事をしてからファマリーやユグドラシルのお世話をして過ごす。
ファマリーはまだまだ成長中、という感じで少しずつ伸びて行っている。
ユグドラシルは一週間に一回加護を使えば十分なんだそうだ。
青いバラのドライアドが通訳してくれて知った事だ。通訳ついでに、お世話が必要な時は呼びに来るようにお願いしている。
世界樹のお世話が終われば特にやる事はない。
意図的に残した魔力で、その時に思いついた魔道具を適当に作ったり、家庭菜園のお世話を小さい方のドライアドやアンジェラと一緒にしたり、お昼寝をしたり、のんびり過ごした。
龍の巣以降、一人で入っていたお風呂は、当番が復活した事によって混浴に戻ってしまった。
目のやり場に困るけど、ラオさんに頭を洗ってもらうのは捨てがたい……。
「なんかコツみたいなのあるの?」
「あ? んなもんねぇよ」
「またまたぁ」
「髪洗ってるだけだっつぅの」
ファマリーの根元で、ドライアドたちと日向ぼっこしている僕を、ラオさんが見下ろしてきた。地面に寝転がるのはアレなので、魔法を付与した絨毯の上でゴロゴロしている。
ちょっと。そこ立ってると、そっちのドライアドのいる場所が影になっちゃうんすよ。
ほら、ドライアドが日向を求めてこっちにコロコロ転がってきちゃうじゃん。
一人が集まると面白がってみんな集まっちゃうんですけど。
「ん? 髪をうまく洗える手袋を作れば、自分でもいい感じに洗えるのでは?」
「アタシが洗ってやるから下らんもん作るんじゃねぇよ……」
「いや、一人で入る時に使おうと思いましてね?」
「一人で入る事ができたらいいな」
一人が良いってしっかりと言えばそうしてくれるでしょ。……そうだよね?
ラオさんどうしてそっぽ向いてるんですか?
ってか、僕の上に積み重なってるドライアドたちをそろそろ退けてもらえません?
いい加減ちょっと苦しくなってきたんですけど。
護衛の方ー!
ラオさんに救出された後、ドランの屋敷に戻った。
アンジェラと一緒に勉強をして過ごしているとモニカが呼びに来た。
「シズト様、お食事の準備が整いました」
「あ、もうそんな時間? それじゃあ、今日はこのくらいにしとこうか」
「はーい」
アンジェラは毎日一人でも手紙をせっせと書いている事もあって、簡単な読み書きだったらできるようになりつつあった。
学ぶ意欲が高いからか、どんどん知識を吸い込んでいくのが面白い。
面白いけど、字を読めない人もいるからそういう人向けの魔道具を作るのもありかな?
読み上げ機能付きのペンみたいなやつとか?
今度作ってパメラにでも渡してみるか。
アンジェラが別館の方へと帰っていくのを見送って、食堂へと向かうと既に皆が座って待っていた。
「それじゃ、いただきます」
「いただきますなのですわー!」
ユキの隣に座って、美味しそうにローストビーフを食べているレヴィさんは今日も元気だ。
結婚の申し込みの対応とか諸々貴族の相手をお願いしているが、疲れた様子もない。
「レヴィさん、今日も特に問題なかった?」
「問題はなかったのですわー。ああ、でも魔道具の依頼はいくつか入ったのですわ。暇な時にでも作ればいいと思うのですわ」
「この前の依頼の後でいい?」
「んー……判断が難しい所ですけれど、順番を繰り上げても特に恩恵はなさそうですし、順番通りでいいのですわ」
レヴィさんがそう言うならそうなんだろう。
特に気にする事無くのんびり作って行こう。
レヴィさんに婚約を申し込んだ翌日には、国王陛下にレヴィさん経由で伝えてもらったんだけど、とんとん拍子に進んでしまって正式に婚約者になっている。
国王陛下は忙しいし、まだ心の準備ができてない事もレヴィさんは察しているんだろう。別に今の所会わなくてもいいとレヴィさんに言われたので直接会ってはいないが、婚約をしている事もあって結婚の申し込みはだいぶ減っているらしい。
ただ、減っていてもレヴィさんに話が来た時点で断っているので、レヴィさんが悪く言われないといいんだけど……。
スープを飲みながらチラッとレヴィさんの方を見るが、分からなかった。
ジッと見ていると、視線に気づいたレヴィさんがこちらを見た。
「シズト、まだお風呂に入っていないのですわ?」
「え、うん」
「間に合って良かったのですわ! 今日は私の当番の日なのですわ!」
「急いだ甲斐がありましたね」
レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんの口元が綻ぶ。
ああ、だからレヴィさんめちゃくちゃ元気というか明るかったのか。
ただレヴィさんや。そんなに急いで食べても僕が食べ終わらないと一緒には入れないっすよ。
早く食べ終わったレヴィさんに見守られながらのんびりと食事を済ませると、レヴィさんお待ちかねのお風呂タイムだ。
背中が隠れたワンピースタイプの湯浴み着に着替えたレヴィさんに、背中をごしごしと洗われながら雑談をしていたのだが、何かを思い出したかのようにレヴィさんが声をあげた。
「そう言えば、お母様がドランにやってきてるらしいのですわ~」
「へぇ~…………それって、僕が原因だったりしますかね?」
「十中八九そうでしょうね」
ですよねぇ。
レヴィさんの手伝いをしていたセシリアさんが頑張ってください、と言ってきたけど何を頑張ればいいんすか。
ってか、国王陛下にもろくに挨拶もしてないのに大丈夫なのか余計に心配になってきた。
まだ心の準備ができていないからいきなり会えって言われても困るんですけど、ほんとに挨拶しなくて大丈夫なんすか、レヴィさん!
「大丈夫なのですわー」
ニコニコと楽しそうにごしごしと僕の背中を擦りながら、レヴィさんは暢気にそう答えた。
ただ、レヴィさんとの関係は特に変わっていない。というか、元通りになった感じだ。
龍の巣の件以降、自由に過ごさせてもらっていたけど、お世話当番がついに復活してしまったのだ。
朝は当番の人が起こしに来て、食事をしてからファマリーやユグドラシルのお世話をして過ごす。
ファマリーはまだまだ成長中、という感じで少しずつ伸びて行っている。
ユグドラシルは一週間に一回加護を使えば十分なんだそうだ。
青いバラのドライアドが通訳してくれて知った事だ。通訳ついでに、お世話が必要な時は呼びに来るようにお願いしている。
世界樹のお世話が終われば特にやる事はない。
意図的に残した魔力で、その時に思いついた魔道具を適当に作ったり、家庭菜園のお世話を小さい方のドライアドやアンジェラと一緒にしたり、お昼寝をしたり、のんびり過ごした。
龍の巣以降、一人で入っていたお風呂は、当番が復活した事によって混浴に戻ってしまった。
目のやり場に困るけど、ラオさんに頭を洗ってもらうのは捨てがたい……。
「なんかコツみたいなのあるの?」
「あ? んなもんねぇよ」
「またまたぁ」
「髪洗ってるだけだっつぅの」
ファマリーの根元で、ドライアドたちと日向ぼっこしている僕を、ラオさんが見下ろしてきた。地面に寝転がるのはアレなので、魔法を付与した絨毯の上でゴロゴロしている。
ちょっと。そこ立ってると、そっちのドライアドのいる場所が影になっちゃうんすよ。
ほら、ドライアドが日向を求めてこっちにコロコロ転がってきちゃうじゃん。
一人が集まると面白がってみんな集まっちゃうんですけど。
「ん? 髪をうまく洗える手袋を作れば、自分でもいい感じに洗えるのでは?」
「アタシが洗ってやるから下らんもん作るんじゃねぇよ……」
「いや、一人で入る時に使おうと思いましてね?」
「一人で入る事ができたらいいな」
一人が良いってしっかりと言えばそうしてくれるでしょ。……そうだよね?
ラオさんどうしてそっぽ向いてるんですか?
ってか、僕の上に積み重なってるドライアドたちをそろそろ退けてもらえません?
いい加減ちょっと苦しくなってきたんですけど。
護衛の方ー!
ラオさんに救出された後、ドランの屋敷に戻った。
アンジェラと一緒に勉強をして過ごしているとモニカが呼びに来た。
「シズト様、お食事の準備が整いました」
「あ、もうそんな時間? それじゃあ、今日はこのくらいにしとこうか」
「はーい」
アンジェラは毎日一人でも手紙をせっせと書いている事もあって、簡単な読み書きだったらできるようになりつつあった。
学ぶ意欲が高いからか、どんどん知識を吸い込んでいくのが面白い。
面白いけど、字を読めない人もいるからそういう人向けの魔道具を作るのもありかな?
読み上げ機能付きのペンみたいなやつとか?
今度作ってパメラにでも渡してみるか。
アンジェラが別館の方へと帰っていくのを見送って、食堂へと向かうと既に皆が座って待っていた。
「それじゃ、いただきます」
「いただきますなのですわー!」
ユキの隣に座って、美味しそうにローストビーフを食べているレヴィさんは今日も元気だ。
結婚の申し込みの対応とか諸々貴族の相手をお願いしているが、疲れた様子もない。
「レヴィさん、今日も特に問題なかった?」
「問題はなかったのですわー。ああ、でも魔道具の依頼はいくつか入ったのですわ。暇な時にでも作ればいいと思うのですわ」
「この前の依頼の後でいい?」
「んー……判断が難しい所ですけれど、順番を繰り上げても特に恩恵はなさそうですし、順番通りでいいのですわ」
レヴィさんがそう言うならそうなんだろう。
特に気にする事無くのんびり作って行こう。
レヴィさんに婚約を申し込んだ翌日には、国王陛下にレヴィさん経由で伝えてもらったんだけど、とんとん拍子に進んでしまって正式に婚約者になっている。
国王陛下は忙しいし、まだ心の準備ができてない事もレヴィさんは察しているんだろう。別に今の所会わなくてもいいとレヴィさんに言われたので直接会ってはいないが、婚約をしている事もあって結婚の申し込みはだいぶ減っているらしい。
ただ、減っていてもレヴィさんに話が来た時点で断っているので、レヴィさんが悪く言われないといいんだけど……。
スープを飲みながらチラッとレヴィさんの方を見るが、分からなかった。
ジッと見ていると、視線に気づいたレヴィさんがこちらを見た。
「シズト、まだお風呂に入っていないのですわ?」
「え、うん」
「間に合って良かったのですわ! 今日は私の当番の日なのですわ!」
「急いだ甲斐がありましたね」
レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんの口元が綻ぶ。
ああ、だからレヴィさんめちゃくちゃ元気というか明るかったのか。
ただレヴィさんや。そんなに急いで食べても僕が食べ終わらないと一緒には入れないっすよ。
早く食べ終わったレヴィさんに見守られながらのんびりと食事を済ませると、レヴィさんお待ちかねのお風呂タイムだ。
背中が隠れたワンピースタイプの湯浴み着に着替えたレヴィさんに、背中をごしごしと洗われながら雑談をしていたのだが、何かを思い出したかのようにレヴィさんが声をあげた。
「そう言えば、お母様がドランにやってきてるらしいのですわ~」
「へぇ~…………それって、僕が原因だったりしますかね?」
「十中八九そうでしょうね」
ですよねぇ。
レヴィさんの手伝いをしていたセシリアさんが頑張ってください、と言ってきたけど何を頑張ればいいんすか。
ってか、国王陛下にもろくに挨拶もしてないのに大丈夫なのか余計に心配になってきた。
まだ心の準備ができていないからいきなり会えって言われても困るんですけど、ほんとに挨拶しなくて大丈夫なんすか、レヴィさん!
「大丈夫なのですわー」
ニコニコと楽しそうにごしごしと僕の背中を擦りながら、レヴィさんは暢気にそう答えた。
90
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界転生~目指せ!内乱を防いで、みんな幸せ♪
紅子
ファンタジー
いつの間にかこの国の王子に転生していた俺。物語の世界にいるなんて、想定外だ。このままでは、この国は近い未来に内乱の末、乗っ取られてしまう。俺、まだ4歳。誰がこんな途方もない話を信じてくれるだろうか?既に物語と差異が発生しちゃってるし。俺自身もバグり始めてる。
4歳から始まる俺の奮闘記?物語に逆らって、みんな幸せを目指してみよう♪
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!
林檎茶
ファンタジー
俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?
俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。
成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。
そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。
ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。
明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。
俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。
そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。
魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。
そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。
リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。
その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。
挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる