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第10章 婚約(仮)をして生きていこう
幕間の物語78.幼女は待ち人が来るまで日向ぼっこをする
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ダンジョン都市ドランで、シズトたちが住んでいる屋敷のすぐ近くに、かつて使用人たちが使っていた別館がちょこんと立っていた。
二階建てのその建物は、最近まで誰も使っていなかったが、ドワーフ親子やボルドが来た事によって状況が変わった。
どうせ住むなら多い方が何かと都合がいいんじゃねぇか? とラオに言われたシズトが、アンジェラとその両親もその別館に住んでもらう事にしたからだ。
六人が一部屋ずつ使ってもまだ部屋が余るので、幼いアンジェラも自分専用の部屋を手に入れる事ができてとても喜んだ。
シズトと一緒の家で住みたい気持ちもあったが、両親の近くにいたい気持ちが勝ったため、こちらで生活をしている。
「アンジェラ、ご飯をボルドさんの所に運んでもらえるかしら?」
「はーい」
浮遊台車の魔法陣をそのまま流用して作られた浮遊ワゴンを、小さな体で押して廊下をテクテクと歩くアンジェラは、何かを思いついたようで途中で立ち止まった。
それから抜き足差し足忍び足で廊下を歩いて行き、目的の角部屋に着くと、いきなり扉を開いた。
だが、中には誰もいない。
窓が開け放たれており、そこから風が室内に吹いていて、カーテンがゆらゆら揺れている。
魔道具を作る道具が机の上に散乱していて、そこで先程まで誰かが作業をしていたのが分かる。
隠れられそうなスペースを一通り見た彼女はぽつりと一言呟く。
「きょうもいない」
残念、遊んであげようと思ったのに、なんて事を思う彼女が部屋の主不在の主な原因だった。
最初の頃は隠れるだけのボルドだったが、アンジェラが来るとかくれんぼをしていると思った彼女が部屋を探し回り、見つけられて大変な事になったので、仕方なく窓から脱出をするようになったのだ。
そんな理由は知らないアンジェラは、ワゴンに載せられていたサンドイッチを部屋の中の机の上に置いておく。
今朝頑張って収穫した野菜が使われているそのサンドイッチを見て、何やら彼女は首を傾げながら考えている。
窓から身を乗り出して外に誰かいないかを見たり、廊下に誰もいないかを見たりしてから、彼女はサンドイッチの一つをつまみ食いした。
「おいしい!」
「アンジェラー、ご飯よー」
「!? はーい!」
遠くから聞こえる母の声に驚いて、慌てて戻るアンジェラ。
そんな彼女は、口についたソースを拭い忘れていたので、母に怒られてしまうのだった。
アンジェラの部屋には、シズトにおねだりして作ってもらった物がたくさんあった。
将来必要になるかもしれないから、と本棚を作ってもらった。今はまだ本館の書庫から借りてきた絵本が数冊しか入っていない。
アンジェラの背丈に合わせて作られた机の上には文字の練習のために筆記具と、速達箱が置かれていた。
誰かとお手紙を交換した方がやる気が出るかも、と思ってシズトが作った物だ。彼女は毎日、せっせと時間をかけて書いた手紙をシズトに送っている。
最近忙しくてなかなか構って貰えない日々が続いているが、手紙は毎日返ってくるので、アンジェラは今日もせっせと手紙を書く。
「パメラちゃんがとったキュウリをたくさん、たべちゃいました。エミリーちゃんに、おこられてました。アンジェラのキュウリは、かみさまにあげました。シズトさまと、こんどいっしょに、しゅうかくしたいです」
ゆっくりと口に出しながら、早朝あった出来事を紙に書いていく。
シズトが寝ている間に行われたそれは、太陽が昇ってすぐの事だった。
アンジェラは書き終わると、小さな口を大きく開けて欠伸をすると、目を擦る。
「シズトさま、きょうもいそがしいのかな……」
少しうつらうつらとしていた彼女だったが、考えていてもしょうがない、と行動する事にした。
トテトテと歩いて部屋を出て廊下を歩き、別館から出る。本館まで少し距離があるが、眠たいのを我慢して歩く。
「人間さんどこに行くのー?」
「行くのー?」
「一緒に日向ぼっこしようよ」
「しよー」
「シズトさまにあいにいくの。またこんどね!」
家庭菜園の近くで日向ぼっこをしていたドライアドたちの誘いを断って、少し早足で進む。
本館の大きな扉を一生懸命開けて中に入ると、ダークエルフのダーリアがメイド服を着て窓掃除をしていた。
まだ昼前なので眠たそうに目を細めていたが、彼女の赤い目がアンジェラを捉えた。
「アンジェラ……どうした?」
「シズトさまにあいにきたの」
「そうか……シズトさま、いつもの日課。そろそろ戻るだろう」
「そうなんだ……」
しょんぼりとして肩を落とす。
気持ちが落ちてしまったからか余計に眠くなってきた。
大きな欠伸をすると、それが移ったのか、ダーリアも大きな口を開けて欠伸をした。
「……眠いな」
「うん……わっ!?」
「ジュリーン、人使い荒い……小休憩しよう。シズト様の許可、貰ってる」
ダーリアはバケツの中に窓を拭いていた布を放り捨てると、眠たそうに目を擦っていたアンジェラを抱き上げて歩き始めた。
ドライアドたちと一緒に日向ぼっこをしていれば、シズトたちが戻ってきた時にドライアドたちが騒がしくなるから分かる。
そう考えたダーリアは、アンジェラを連れてドライアドたちの元へと向かったのだった。
二階建てのその建物は、最近まで誰も使っていなかったが、ドワーフ親子やボルドが来た事によって状況が変わった。
どうせ住むなら多い方が何かと都合がいいんじゃねぇか? とラオに言われたシズトが、アンジェラとその両親もその別館に住んでもらう事にしたからだ。
六人が一部屋ずつ使ってもまだ部屋が余るので、幼いアンジェラも自分専用の部屋を手に入れる事ができてとても喜んだ。
シズトと一緒の家で住みたい気持ちもあったが、両親の近くにいたい気持ちが勝ったため、こちらで生活をしている。
「アンジェラ、ご飯をボルドさんの所に運んでもらえるかしら?」
「はーい」
浮遊台車の魔法陣をそのまま流用して作られた浮遊ワゴンを、小さな体で押して廊下をテクテクと歩くアンジェラは、何かを思いついたようで途中で立ち止まった。
それから抜き足差し足忍び足で廊下を歩いて行き、目的の角部屋に着くと、いきなり扉を開いた。
だが、中には誰もいない。
窓が開け放たれており、そこから風が室内に吹いていて、カーテンがゆらゆら揺れている。
魔道具を作る道具が机の上に散乱していて、そこで先程まで誰かが作業をしていたのが分かる。
隠れられそうなスペースを一通り見た彼女はぽつりと一言呟く。
「きょうもいない」
残念、遊んであげようと思ったのに、なんて事を思う彼女が部屋の主不在の主な原因だった。
最初の頃は隠れるだけのボルドだったが、アンジェラが来るとかくれんぼをしていると思った彼女が部屋を探し回り、見つけられて大変な事になったので、仕方なく窓から脱出をするようになったのだ。
そんな理由は知らないアンジェラは、ワゴンに載せられていたサンドイッチを部屋の中の机の上に置いておく。
今朝頑張って収穫した野菜が使われているそのサンドイッチを見て、何やら彼女は首を傾げながら考えている。
窓から身を乗り出して外に誰かいないかを見たり、廊下に誰もいないかを見たりしてから、彼女はサンドイッチの一つをつまみ食いした。
「おいしい!」
「アンジェラー、ご飯よー」
「!? はーい!」
遠くから聞こえる母の声に驚いて、慌てて戻るアンジェラ。
そんな彼女は、口についたソースを拭い忘れていたので、母に怒られてしまうのだった。
アンジェラの部屋には、シズトにおねだりして作ってもらった物がたくさんあった。
将来必要になるかもしれないから、と本棚を作ってもらった。今はまだ本館の書庫から借りてきた絵本が数冊しか入っていない。
アンジェラの背丈に合わせて作られた机の上には文字の練習のために筆記具と、速達箱が置かれていた。
誰かとお手紙を交換した方がやる気が出るかも、と思ってシズトが作った物だ。彼女は毎日、せっせと時間をかけて書いた手紙をシズトに送っている。
最近忙しくてなかなか構って貰えない日々が続いているが、手紙は毎日返ってくるので、アンジェラは今日もせっせと手紙を書く。
「パメラちゃんがとったキュウリをたくさん、たべちゃいました。エミリーちゃんに、おこられてました。アンジェラのキュウリは、かみさまにあげました。シズトさまと、こんどいっしょに、しゅうかくしたいです」
ゆっくりと口に出しながら、早朝あった出来事を紙に書いていく。
シズトが寝ている間に行われたそれは、太陽が昇ってすぐの事だった。
アンジェラは書き終わると、小さな口を大きく開けて欠伸をすると、目を擦る。
「シズトさま、きょうもいそがしいのかな……」
少しうつらうつらとしていた彼女だったが、考えていてもしょうがない、と行動する事にした。
トテトテと歩いて部屋を出て廊下を歩き、別館から出る。本館まで少し距離があるが、眠たいのを我慢して歩く。
「人間さんどこに行くのー?」
「行くのー?」
「一緒に日向ぼっこしようよ」
「しよー」
「シズトさまにあいにいくの。またこんどね!」
家庭菜園の近くで日向ぼっこをしていたドライアドたちの誘いを断って、少し早足で進む。
本館の大きな扉を一生懸命開けて中に入ると、ダークエルフのダーリアがメイド服を着て窓掃除をしていた。
まだ昼前なので眠たそうに目を細めていたが、彼女の赤い目がアンジェラを捉えた。
「アンジェラ……どうした?」
「シズトさまにあいにきたの」
「そうか……シズトさま、いつもの日課。そろそろ戻るだろう」
「そうなんだ……」
しょんぼりとして肩を落とす。
気持ちが落ちてしまったからか余計に眠くなってきた。
大きな欠伸をすると、それが移ったのか、ダーリアも大きな口を開けて欠伸をした。
「……眠いな」
「うん……わっ!?」
「ジュリーン、人使い荒い……小休憩しよう。シズト様の許可、貰ってる」
ダーリアはバケツの中に窓を拭いていた布を放り捨てると、眠たそうに目を擦っていたアンジェラを抱き上げて歩き始めた。
ドライアドたちと一緒に日向ぼっこをしていれば、シズトたちが戻ってきた時にドライアドたちが騒がしくなるから分かる。
そう考えたダーリアは、アンジェラを連れてドライアドたちの元へと向かったのだった。
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