上 下
236 / 1,023
第10章 婚約(仮)をして生きていこう

159.事なかれ主義者は男の子ですので

しおりを挟む
 レヴィさんから結婚の申し込みがたくさん舞い込んでいると聞いた翌日。
 レヴィさんとドーラさんは、今日も朝早くから出かけて貴族や有力者の相手をしているらしい。
 朝食を食べ終えて、ラオさんと一緒にファマリーに転移した。ルウさんは、今日は冒険者ギルドで話す事があるとの事で不在だ。
 特にフェンリルやドライアドに絡まれる事もなく、ファマリーのお世話が済んだ。
 すぐにドランの屋敷に戻り、書斎として利用している部屋に入る。
 書斎の机の上には、紙が高く積み上げられている。

「……これ全部?」
「じゃねぇのか?」
「ひとまず今日はこれだけ、と言った方が正しいですね。噂は広がるでしょうし、これからどんどん増えていくと思います」

 資料の準備をしていてくれたモニカが椅子を引いてくれたのでそこに座る。
 目の前に差し出される紙にはその人の情報について書かれていた。肖像画も渡される。

「エンジェリア帝国の姫君です」
「……幼すぎません?」
「十歳か。まあ、ありなんじゃねぇか? お前いくつだったっけ」
「十六……いや、十七になってる、のかな? こっちの世界に来て半年は過ぎてるだろうし」
「七歳差ですか。まあ、そのくらいはよく聞きますね」
「だな。過去の勇者は十以上歳の離れた娘も嫁にしたって言うしな」

 それ事案なのでは?
 いや、三十歳が二十歳を妻にするなら犯罪ではないけどさ。

「あと、その結婚相手の後ろ盾によっては後からこの人も、と上の権力の者から言われて婚約する事もあったようです。まあ、勇者色を好むって言いますし、だいたいの勇者は来るもの拒まずって感じでしたが」
「英雄じゃなくて勇者なんだ……」
「女の勇者が複数の男性を囲い込んだ時は、誰の子なのか問題になった時もあったらしいな」
「ああ、似た見た目の人を集めていたあの勇者ですね。髪の色や目の色、肌の色が違えばよかったんでしょうけど……結局、実家が一番力の強い者の所に連れて行かれたんでしたっけ」

 なるほど……姫花、大丈夫かなぁ。
 もう会う事がないかもしれない我儘女の事を思い返していると、そういえば彼女たちがいたのもこの国だったな、と思い出す。

「そういえば、あの三人大丈夫なんかな?」
「どの三人だ」
「ほら、エンジェリア帝国の勇者たち」
「ああ、それでしたら国を旅だったと発表があったそうです。行き先はどこだ、と明言はされてないのでどこで何をしているのかは分かりませんが」
「案外近くにいるかもな」
「やめてよラオさん。ほんとにそうなっちゃったらどうすんのさ」

 でもそっか。
 問題なくエンジェリア帝国から旅立つことができたならよかった。
 扱き使われているとか噂が聞こえてきたら何とも言えない気持ちになるし。
 こっちに迷惑かけないでどこかで好き勝手生きててください。僕もそうするので。

「とりあえず、この子はパスで~。年が離れすぎてますので~」
「わざわざ一つ一つ見るんだな。シズトが見なくてもいいと思うけど」
「見なかったら見なかったでなんか言われたら嫌だし、見たよって嘘を言ってもいきなり会いに来た時に嘘がばれたら面倒じゃん」

 アイテムバッグから取り出した木の板を加工して即席でトレーを作ると、その中に紙を入れる。
 それから次の紙を手に取ろうとしたら、そっとその手をモニカに止められた。

「シズト様は年齢を気にされているようですが、具体的に何歳から何歳までの間、等のご希望はあるのでしょうか」
「え、改めて聞かれると悩む……」

 高校生が中学生と付き合うのはありなのか? 小学生はやばいかな。うん、たぶん、やばい……?
 そうなると十三歳以上か。
 …………やっぱり十五歳以上。
 上はどうなんだろう?
 年上のお姉さん……ありだけどどこまでをお姉さんと捉えるかだよな。
 見た目? 見た目で判断すればいいのか? ただ流石に十以上離れているのはちょっとなぁ。

「と、とりあえず十五歳以上で二十八歳以下?」
「かしこまりました。では、少々お待ちいただけますか? 条件に当てはまらない方を除外しますので。他に見た目などの好みはございますか?」
「ん~~~……特にはぁ、無いかなぁ」

 男同士だったらそういう話を平気でできるけど、女性にするってなんかハードル高くないっすか?
 モニカはそうですか、とだけ答えてラオさんを見た。なんでラオさん?

「まあ、強いてあげればよく胸は見てくるな。後は足も見てるぞ」
「健全な男の子だったら仕方ないと思うんですけど! ってか、レヴィさんもラオさんもルウさんも恰好が過激だから仕方ないと思うんすけど!」
「最初にレヴィアにあった時は髪に視線がいってたな。痩せてからはいろんなとこに行ってるが」
「なるほど……ふくよかな方は除外しておきますか」

 ……そうっすね。
 僕が反論しないのを見て一つ頷くと、モニカは仕分け作業を始めた。
 僕とラオさんは、それが終わるのを魔力マシマシ飴を舐めながら待った。
 すごい速さで仕分けをしていき、紙の山が半分くらいに減ったんだけど、どれに引っかかったんだろうね。
 年齢でも体型でも何とも言えない気持ちになるから僕は考えるのをやめた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

処理中です...