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第9章 加工をして生きていこう
幕間の物語65.借金奴隷は確認した
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ドラゴニア王国の最南端にある不毛の大地は、どんな植物も生えない事で有名な土地だった。
原因は未だに分からず、アンデッドが闊歩している事から大昔に大きな戦があり、その影響じゃないか? という者もいれば、神罰だという者もいた。
そんな不毛の大地のど真ん中に、ドンと聳え立つ世界樹を、ノエルが緑色の目で見つめていた。金色の波打つ髪が、風に揺られている。
その隣でラオも一緒にファマリーを見上げていた。ノエルと並ぶとより身長差が際立つ、燃えるような赤い髪の大柄な女性だ。
最近は暑さからタンクトップにホットパンツ姿が多かったが、今日は魔物の素材を使って作られた防具一式を身に着けていた。
二人は世界樹ファマリーの様子を一通り確認した後、ノエルがボソッと呟く。
「神様の木だから生えたんすかね」
「アタシが知るかよ、んな事」
「世界樹の周辺は他の植物も生えてるのも謎っすよね」
「世界樹の成分が影響与えてるとかじゃねぇか?」
「もしかしたら聖域の魔道具の影響かもしれないっすね。シズト様はそういう事言ってなかったから、副次的な物だとは思うっすけど」
「それなら居住区に緑がないのはなんでだよ」
「時間経過とかじゃないっすか? ボクは魔道具をせっせと作らされてたから知らないっすけど、世界樹の周りに雑草が生え始めたのは少し経ってからだったんすよね?」
「まぁな」
結局、ノエルとラオは考えても分からない物はひとまず置いておこう、と本来の目的に取り掛かる事にした。
彼女たちが今回、世界樹ファマリー周辺の聖域の外にわざわざ出ていたのは、シズトが作り出した魔剣の効果を確認するためだった。
本人曰く「一番危ない物から確認したから、後は普通のだよ」との事だったが、前回の魔剣の事があるから念には念を入れよう、と話し合いで決まった。
ラオがシズトに書かせた『魔剣の取説』を取り出している間に、ノエルが魔剣を地面の上に置いて並べる。
「身体強化する魔剣は、確認しなくていいっすか?」
「そうだな。とりあえず、アレ以外は自傷しない限り使用者が即死する可能性がある物はねぇみてぇだが……一応、書かれてる内容確認しながら使うぞ」
「そうっすねー。シズト様っすし」
ダンジョン産の紙に書かれたその内容を二人は読む。
簡易的な絵と共に、説明が書かれていた。
一枚目は、鉄剣の中で、唯一魔石を嵌めるスペースがある魔剣だった。
『トークソード。いつもお喋り相手になってくれる剣。うるさかったら鞘にしっかりいれて、紐でぐるぐる巻きにして、抜けなくすれば黙る』
「黙るって言うか、黙らせるの間違いだろ」
「そっすね」
『使用者が魔力を流すと、使用者の体を動かして代わりに戦ってくれる。僕が使う予定なので売らないで』
「………」
「………」
呪いの装備という物が時々ダンジョンから出土する。
使用者の精神を蝕んでいき、最終的にはその体を乗っ取るものだ。
これはそれに分類される魔剣じゃないだろうか?
二人は黙ってお互いに視線を合わせた。
「………試さないっすからね?」
「念のため安全か確認しときたかったんだが、しゃーねぇな」
間違っても魔力を流してしまわないように気を付けながら、アイテムバッグにしまうノエル。
ノエルは気を取り直して次の魔剣は何だろう、とラオが見ている紙を背伸びしてのぞき込む。
『ホーリーソード。魔力を流すと光る。夜に振り回すと綺麗だったけど、虫が寄ってくるので注意。物理無効のレイスもスパッと切れる。魔力を大量に流すと失明しかけたので注意』
「叱ったやつだな」
「結局作ったんすね」
「いや、あれはたしか普通の光魔法『ライト』で作ってたはずだ」
「アンデッド対策でちょっと実用的にしてるんすね」
「まあ、神聖ライトで十分だけどな」
「そっすね」
なんで作ったんだろう? と、首を傾げる二人。
映画の影響で光る剣を作ったが、実用性がなかったからアンデッドに効くようにしただけだった。ただ、理由までは取説には書かれていないので彼女らが知る由もない。
その他にも、手のひらサイズの鉄の棒を光らせてオタ芸をしている姿を不思議そうに奴隷たちが目撃していたが、共有されていなかった。
「確かに魔力を流すと光るっすね。いきなり強い光を発さないように制限を付けるとかすればいいと思うんすけど」
「対人用だったらそういう制限は付けない方が、とっさに使えていいけどな。浮遊ランプもそんな感じの使い方をしてるって冒険者仲間から聞いたし」
「ただの明かりとしてだけで使ってるわけじゃないんすね」
ノエルは一通り魔力を流して、どのくらいの量であれば安全かを確認した。特に問題がなかったので、アイテムバッグに戻すと、ラオと一緒に取説を見る。
『メルトソード。超高熱で焼き切る剣』
「お、やっと魔剣っぽい魔剣がきたっすね!」
ノエルが試してみても、特段変な所はない。魔剣らしい魔剣だった。ただ暑い季節に実験する物ではない、とノエルは汗をかきながら思う。
『ブレードでお肉も焼けるよ!』
「どうでもいいっす!!」
『お湯も沸かせるよ!』
「沸騰魔石で充分っす!!」
『寒い時は、調節すればこれで暖も取れるよ! おわり』
「防具に付与すればいいんじゃねぇか?」
「そうっすよねぇ。まあ、でも普通だから問題ないっすね」
「ダンジョン産の魔剣と同じような物を作った事自体が問題だけどな」
「まあ、そうなんすけどね。最初の剣がアレだったから、ちょっと確認するの不安だったっす」
ノエルの発言にラオも同意を示したが、まだ魔剣はあった。
残りわずかだからサクサク確認していく二人だったが、その後も取説に書かれている通りの物ばかり。
トークソード以外はしっかり確認できたので、彼女らは屋敷へと帰って行った。
原因は未だに分からず、アンデッドが闊歩している事から大昔に大きな戦があり、その影響じゃないか? という者もいれば、神罰だという者もいた。
そんな不毛の大地のど真ん中に、ドンと聳え立つ世界樹を、ノエルが緑色の目で見つめていた。金色の波打つ髪が、風に揺られている。
その隣でラオも一緒にファマリーを見上げていた。ノエルと並ぶとより身長差が際立つ、燃えるような赤い髪の大柄な女性だ。
最近は暑さからタンクトップにホットパンツ姿が多かったが、今日は魔物の素材を使って作られた防具一式を身に着けていた。
二人は世界樹ファマリーの様子を一通り確認した後、ノエルがボソッと呟く。
「神様の木だから生えたんすかね」
「アタシが知るかよ、んな事」
「世界樹の周辺は他の植物も生えてるのも謎っすよね」
「世界樹の成分が影響与えてるとかじゃねぇか?」
「もしかしたら聖域の魔道具の影響かもしれないっすね。シズト様はそういう事言ってなかったから、副次的な物だとは思うっすけど」
「それなら居住区に緑がないのはなんでだよ」
「時間経過とかじゃないっすか? ボクは魔道具をせっせと作らされてたから知らないっすけど、世界樹の周りに雑草が生え始めたのは少し経ってからだったんすよね?」
「まぁな」
結局、ノエルとラオは考えても分からない物はひとまず置いておこう、と本来の目的に取り掛かる事にした。
彼女たちが今回、世界樹ファマリー周辺の聖域の外にわざわざ出ていたのは、シズトが作り出した魔剣の効果を確認するためだった。
本人曰く「一番危ない物から確認したから、後は普通のだよ」との事だったが、前回の魔剣の事があるから念には念を入れよう、と話し合いで決まった。
ラオがシズトに書かせた『魔剣の取説』を取り出している間に、ノエルが魔剣を地面の上に置いて並べる。
「身体強化する魔剣は、確認しなくていいっすか?」
「そうだな。とりあえず、アレ以外は自傷しない限り使用者が即死する可能性がある物はねぇみてぇだが……一応、書かれてる内容確認しながら使うぞ」
「そうっすねー。シズト様っすし」
ダンジョン産の紙に書かれたその内容を二人は読む。
簡易的な絵と共に、説明が書かれていた。
一枚目は、鉄剣の中で、唯一魔石を嵌めるスペースがある魔剣だった。
『トークソード。いつもお喋り相手になってくれる剣。うるさかったら鞘にしっかりいれて、紐でぐるぐる巻きにして、抜けなくすれば黙る』
「黙るって言うか、黙らせるの間違いだろ」
「そっすね」
『使用者が魔力を流すと、使用者の体を動かして代わりに戦ってくれる。僕が使う予定なので売らないで』
「………」
「………」
呪いの装備という物が時々ダンジョンから出土する。
使用者の精神を蝕んでいき、最終的にはその体を乗っ取るものだ。
これはそれに分類される魔剣じゃないだろうか?
二人は黙ってお互いに視線を合わせた。
「………試さないっすからね?」
「念のため安全か確認しときたかったんだが、しゃーねぇな」
間違っても魔力を流してしまわないように気を付けながら、アイテムバッグにしまうノエル。
ノエルは気を取り直して次の魔剣は何だろう、とラオが見ている紙を背伸びしてのぞき込む。
『ホーリーソード。魔力を流すと光る。夜に振り回すと綺麗だったけど、虫が寄ってくるので注意。物理無効のレイスもスパッと切れる。魔力を大量に流すと失明しかけたので注意』
「叱ったやつだな」
「結局作ったんすね」
「いや、あれはたしか普通の光魔法『ライト』で作ってたはずだ」
「アンデッド対策でちょっと実用的にしてるんすね」
「まあ、神聖ライトで十分だけどな」
「そっすね」
なんで作ったんだろう? と、首を傾げる二人。
映画の影響で光る剣を作ったが、実用性がなかったからアンデッドに効くようにしただけだった。ただ、理由までは取説には書かれていないので彼女らが知る由もない。
その他にも、手のひらサイズの鉄の棒を光らせてオタ芸をしている姿を不思議そうに奴隷たちが目撃していたが、共有されていなかった。
「確かに魔力を流すと光るっすね。いきなり強い光を発さないように制限を付けるとかすればいいと思うんすけど」
「対人用だったらそういう制限は付けない方が、とっさに使えていいけどな。浮遊ランプもそんな感じの使い方をしてるって冒険者仲間から聞いたし」
「ただの明かりとしてだけで使ってるわけじゃないんすね」
ノエルは一通り魔力を流して、どのくらいの量であれば安全かを確認した。特に問題がなかったので、アイテムバッグに戻すと、ラオと一緒に取説を見る。
『メルトソード。超高熱で焼き切る剣』
「お、やっと魔剣っぽい魔剣がきたっすね!」
ノエルが試してみても、特段変な所はない。魔剣らしい魔剣だった。ただ暑い季節に実験する物ではない、とノエルは汗をかきながら思う。
『ブレードでお肉も焼けるよ!』
「どうでもいいっす!!」
『お湯も沸かせるよ!』
「沸騰魔石で充分っす!!」
『寒い時は、調節すればこれで暖も取れるよ! おわり』
「防具に付与すればいいんじゃねぇか?」
「そうっすよねぇ。まあ、でも普通だから問題ないっすね」
「ダンジョン産の魔剣と同じような物を作った事自体が問題だけどな」
「まあ、そうなんすけどね。最初の剣がアレだったから、ちょっと確認するの不安だったっす」
ノエルの発言にラオも同意を示したが、まだ魔剣はあった。
残りわずかだからサクサク確認していく二人だったが、その後も取説に書かれている通りの物ばかり。
トークソード以外はしっかり確認できたので、彼女らは屋敷へと帰って行った。
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