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第8章 二つの世界樹を世話しながら生きていこう

125.事なかれ主義者は呼び出したい

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 昼食を食べ終え、アンジェラと一緒に出掛ける。
 白いワンピースに着替えたクーを背負い、アンジェラと手を繋いで街中を歩いていると、周囲の人の視線を集めている事に気づく。
 クーもユキも見た目がいいから、ある程度は仕方ないと思うんだけど、僕に視線が集まってるのは嫉妬ですかね?
 テンプレ的な展開はごめんなんだけど。

「それで、どちらに行くか決まっているのかしら、ご主人様?」
「アンジェラの欲しい物がまだ決まってないから、特にここって場所はないかな。アンジェラはどこか行きたいお店ある?」
「ドランでおそとにでるのはじめて!」

 そう言えばこの子、奴隷の子どもだったわ。
 家族でお出かけとかできるように昼の警備も交代制にしようかな?
 色々隠さなきゃいけない事あるから、人手を増やすなら奴隷がお手軽なんだろうけど……。

「とりあえず、いろいろ見て回ろっか」
「うん!」

 きょろきょろと興味の赴くままにあちこちを見るアンジェラの手をしっかりと握ってゆっくり歩く。
 中央通りを進んでいると、マーケットのエリアに入った。
 元気に呼び込みをしている店員の声と、楽しそうに話しながら歩く住民たち。
 冒険者等はダンジョンが近い街の入り口付近のマーケットに行くけど、街の中心に近くなればなるほど住人向けの店が増えてくる。
 他の街や国の品物を販売している露天商を見て回る。

「アクセサリーは良さげだけど、ちょっと高いかなぁ」
「ご主人様が望むなら値切るけど、普段扱ってる金額を考えると安い方だと思うわ」
「おにいちゃん、はやくつぎにいこ?」

 素敵な髪飾りを見つけて、悩んだけどアンジェラがあんまり興味を示さなかったので結局買わなかった。小さい子があんまり高い物を身に付けているとトラブルの元だし。
 ……普段魔道具で大金扱ってるユキ基準で考えたら、ほとんどの物が安くなっちゃうから自分の感覚で買い物をしないと散財しちゃいそうだ。
 木彫りの置物や、周辺の街の名産品を見てもアンジェラの反応は変わらなかった。
 ただ、楽しそうに僕を見上げて、握られた手をギュッと握りしめたり、ぶんぶんと意味もなく振ったりしているので機嫌は良いようだ。

「美味しい物とかにする?」
「んー……?」

 あんまりぴんと来ないらしい。
 けど、ちょっと小腹が空いたので、皆で羊の魔物の肉を食べる。
 見た事がないけど、もこもことしている毛を飛ばして攻撃してくる魔物の肉らしい。……それって攻撃なのかな、って疑問に思ったけど結構厄介なんだとか。
 その魔物の肉は、元が羊だからかちょっと癖があるけど何度も食べる内に気にならなくなった。
 アンジェラも特に気にした様子もなく食べている。というよりも、アンジェラって嫌いな食べ物がないらしい。何でも食べないとやっていけない時があったのかもしれない。
 魔物の肉は美味しい物が多い。個人的にはオークの肉が好きだ。そんな事を言ったらルウさんが大量に狩ってきそうだから言わないけど。
 食べ終わると串をお店の人に返して、またぶらぶらと散策を再開する。
 皆へのお土産とかも良いのがあったら買おうかな。
 そんな事を思いつつ、アンジェラが欲しがる物を探してひたすら歩き続けた。



 疲れてしまったアンジェラをユキが抱っこして運び、夕暮れ時に帰宅した。
 アンディーとシルヴェラが出迎えてくれて、いつの間にか眠ってしまっていたアンジェラを引き渡すと二人はとても恐縮していた。

「僕が外に出たかっただけだから気にしないで」

 自分の部屋に戻ると、クーが脱ぎ散らかした寝間着が僕のベッドの上にぐちゃっと置かれていた。

「クー?」
「なぁに、お兄ちゃん」
「脱いだらちゃんと畳まないとダメでしょ? っていうか、自分の部屋があるのに、なんでわざわざ僕の部屋で着替えてるのさ」
「着替えはあーしの部屋でしたよ。戻ってきたらお兄ちゃんの部屋に運んでもらうと思ったから寝間着だけここに転移させたの」

 クーは僕の背中からベッドの上に転移した。着ていたはずの白いワンピースが消えている。
 突然下着姿になった彼女から急いで顔を背けた。

「これでよし。お兄ちゃん、着替えないの?」
「お風呂入った後に着替えるよ。それより、僕の部屋でいきなり服脱ぐの禁止ね。ちゃんと自分の部屋に戻って着替えなさい」
「えぇ~~~」

 文句は受け付けません。
 アイテムバッグから露天商で押し売りされた物を取り出して自作した引き出しの中に入れていく。
 押し売りされた服だけど、結構肌触りとかよくて割と気に入っている。暑くなってきたし、外に遊びに行く時のために持っていてもいいかもしれない。
 室内用の服はユキが止めてくれたので買ってない。魔道具のおかげで室温は快適だし、別に今までの物で十分だから買い替える必要がない。
 食堂に向かうと、既に準備が終わっていて、狐人族のエミリーを中心に料理を並べている最中だった。
 ただ、いつもこの時間になるとみんな揃っているのに、空席が目立つ。
 近くで控えていたモニカなら知ってるだろう。

「ラオさんたちはまだ帰ってきてないの?」
「はい、もう少し時間がかかるようです。ホムラ様も、領主様と打ち合わせがあるらしく、帰るのが遅れると連絡がありました」
「先に食べてしまうのですわ」
「そうだね」

 人数が少なくてちょっと寂しい食事だけど、今日は忙しいからあまり気にならない。
 自分の食事を出来るだけ早く食べ終えると、じっと待っていたクーが小さな口を頑張って開けた。
 クーの食事のお手伝いもだいぶ慣れてしまった。

「そう言えば、シズトに聞かなきゃいけない事があったのですわ」
「何?」
「私も先程お父様からの手紙で知ったから詳しい事は知らないのですけれど、勇者たちがシズトに会いたいって言ってるらしいのですわ」

 僕は会いたくないですー。面倒事な予感しかしないので。

「シズトが嫌がるのもよく分かるですわ。ただ、後々手の付けられないレベルになってしまった勇者たちと会うより、今の経験が浅い勇者たちと会って話を付けておいた方が楽だと思うのですわ。お父様も全力で支援するって言ってくださってるので、ちょっと考えてみて欲しいのですわ」
「……どこで会おうって言ってるの?」
「神聖エンジェリア帝国なのですわ」
「せめてそっちが来いよ……」

 話になんないわー。
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