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第8章 二つの世界樹を世話しながら生きていこう
119.事なかれ主義者は帰国する
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都市国家ユグドラシルで一週間ほど過ごした。
なんか色々ありすぎた一日目以降はのんびり過ごしたけど、クーの服を買いに行くのが一番大変だった。
ラオさんたちは顔がバレてるから、外に出ると騒ぎになる。
でもクーの下着や衣服をどうするかが問題になったんだけど、顔が割れていないクーが買い物を面倒くさがった。
「お兄ちゃんと一緒だったら行く」
と、クーが言った事と、宿でのんびりしすぎて暇になってきたので、観光がてら買い物に出かけた。変装用魔道具を使えばバレないだろう、という思いもあった。
途中、姫花とばったり出くわす事があったけど、気づかれなかったので良かった。
ただ、残りの二人に会うのは嫌だったから帰ったけどね。
「世界樹ユグドラシルはもういいのか?」
「ドライアドたちが言うには、まだ葉っぱは出てないけど、二週間くらいほっといても大丈夫だって。むしろ、ファマリーをそろそろお世話しないといけないみたい」
「それじゃ、予定通り昼頃に出発するか」
「外のエルフたち、お昼までにはいなくなるのかな?」
「大丈夫なのですわ! 世界樹の番人たちが責任もって対応するそうなのですわー」
それなら大丈夫か。
ってか、レヴィさんは世界樹の番人たちに会えるのか。
何でか知らないけど、僕とは会ってくれないんだよね。
レヴィさんには「心の準備が整うまで待ってあげるのですわ」と言われたから、向こうから来てくれるまで待つけどさ。足止めしてくれたお礼を直接言えてないし、早めに会えるといいな。
「それでは、準備が整うまで今しばらくお待ちください」
セシリアさんもいろいろ準備をする事があるようだ。
部屋に残された僕たちは、着替えを済ませてのんびりと過ごした。
「お兄ちゃん、おんぶして」
「はいはい」
ちっちゃなクーを背負って部屋を出る。
クーは動くのも面倒臭がるほどの面倒臭がりだった。
絶対何か作る時に変な事考えてたと思う。
何か忘れたけど、ホムラが真面目に働くから、だらだらした子とか、怠惰のイメージかも。
ただ、見た目が小学校の高学年くらいの女の子なので、異性として意識するより子どもとして捉えちゃって、おぶっていようが何してようがあんまり意識する事はない。
……お風呂はさすがに意識するけどね。
「……クーも同じ馬車に乗っちゃって大丈夫なの?」
「まあ問題ないのですわ。いざという時の逃げる手段として側にいてもらう、って考え方であればとやかく言われないと思うのですわ」
「何か言ってくるバカはどこか遠い場所に飛んで行ってもらっても面白いですね」
「それはそれで何か別の問題が起きそうだから、やっぱり乗せないでおこうか」
「お兄ちゃん、一緒の馬車がいいなー。ルウお姉ちゃんはちょっと鬱陶しいし~」
あー、ルウさん世話焼きすぎるもんね。
お願いしてない事もあれもこれもとされて、とても変な顔をしていたクーを思い出す。
仕方ない、とレヴィさんと一緒に馬車に乗り込んで、クーを下ろしてからその隣に腰かける。
レヴィさんがすぐに僕の左隣に座って口を開く。
「まあ、今のシズトに文句言う人はそうそういないと思うのですわ。機嫌を損ねるより、取り入った方が世界樹の素材や魔道具を手に入れる事ができる可能性が高いですわ。やる事に文句を言ってくるのはよっぽどのバカか、私たちと同じくらいの立場の者だと思うのですわ」
「まあ、そこまで上の立場だとあれこれ考えて結局言わないでしょう」
正面に座ったセシリアさんが肩をすくめる。
馬車が走り出して外の風景が流れ始めた。
街の通りを歩いている人は誰一人見当たらない。
どうやら要望通り見送りとか面倒事はなさそうだ。
胸を撫で下ろしているとポスッと太ももの上に小さな頭が乗っかった。寝息を立てているクーだ。
レヴィさんが横から手を伸ばして、白くてきれいな手でそっとクーの頭を撫でる。
「よく眠る子なのですわ」
優しくクーの寝顔を見守るレヴィさんの顔を見て、ドキッとしつつ、他愛もない話をしてその日の馬車移動は過ぎていった。
馬車での移動で特に何か問題が起きる事もなく、順調に進んで世界樹ファマリーに着いた。
ファマリー周辺は特に変化はなく、白い毛玉が世界樹の根元で丸まっているし、小さな子どもの様な見た目のドライアドたちがわらわらと畑付近で何かしている。
僕たちを出迎えてくれたドラン兵たちに軽く挨拶を済ませて、聖域の中に入る。
他のドライアドよりも少し大きく、青いバラが特徴的な子が出迎えてくれた。
「会わなかった間に何か変わった事なかった?」
「特になかったよ。……向こう側も問題ないみたい」
「それならよかった」
「人間さん、人間さん! 私たち頑張った! ご褒美頂戴!」
わらわらと集まってくるドライアドたちの頭をポンポンと叩いて落ち着かせていく。
ホムラに目配せすると、こくりと頷いて「こちらでお渡しします。ついてきてください」と離れていく。
ちっちゃなドライアドたちは、ホムラの後に続いてシズトから離れていく。
「……とりあえず、クーを部屋で寝かせるか」
背中ですやすやと寝ているクーを背負い直して、歩き出す。
世界樹への祈りは落ち着いてからでいいや。
なんか色々ありすぎた一日目以降はのんびり過ごしたけど、クーの服を買いに行くのが一番大変だった。
ラオさんたちは顔がバレてるから、外に出ると騒ぎになる。
でもクーの下着や衣服をどうするかが問題になったんだけど、顔が割れていないクーが買い物を面倒くさがった。
「お兄ちゃんと一緒だったら行く」
と、クーが言った事と、宿でのんびりしすぎて暇になってきたので、観光がてら買い物に出かけた。変装用魔道具を使えばバレないだろう、という思いもあった。
途中、姫花とばったり出くわす事があったけど、気づかれなかったので良かった。
ただ、残りの二人に会うのは嫌だったから帰ったけどね。
「世界樹ユグドラシルはもういいのか?」
「ドライアドたちが言うには、まだ葉っぱは出てないけど、二週間くらいほっといても大丈夫だって。むしろ、ファマリーをそろそろお世話しないといけないみたい」
「それじゃ、予定通り昼頃に出発するか」
「外のエルフたち、お昼までにはいなくなるのかな?」
「大丈夫なのですわ! 世界樹の番人たちが責任もって対応するそうなのですわー」
それなら大丈夫か。
ってか、レヴィさんは世界樹の番人たちに会えるのか。
何でか知らないけど、僕とは会ってくれないんだよね。
レヴィさんには「心の準備が整うまで待ってあげるのですわ」と言われたから、向こうから来てくれるまで待つけどさ。足止めしてくれたお礼を直接言えてないし、早めに会えるといいな。
「それでは、準備が整うまで今しばらくお待ちください」
セシリアさんもいろいろ準備をする事があるようだ。
部屋に残された僕たちは、着替えを済ませてのんびりと過ごした。
「お兄ちゃん、おんぶして」
「はいはい」
ちっちゃなクーを背負って部屋を出る。
クーは動くのも面倒臭がるほどの面倒臭がりだった。
絶対何か作る時に変な事考えてたと思う。
何か忘れたけど、ホムラが真面目に働くから、だらだらした子とか、怠惰のイメージかも。
ただ、見た目が小学校の高学年くらいの女の子なので、異性として意識するより子どもとして捉えちゃって、おぶっていようが何してようがあんまり意識する事はない。
……お風呂はさすがに意識するけどね。
「……クーも同じ馬車に乗っちゃって大丈夫なの?」
「まあ問題ないのですわ。いざという時の逃げる手段として側にいてもらう、って考え方であればとやかく言われないと思うのですわ」
「何か言ってくるバカはどこか遠い場所に飛んで行ってもらっても面白いですね」
「それはそれで何か別の問題が起きそうだから、やっぱり乗せないでおこうか」
「お兄ちゃん、一緒の馬車がいいなー。ルウお姉ちゃんはちょっと鬱陶しいし~」
あー、ルウさん世話焼きすぎるもんね。
お願いしてない事もあれもこれもとされて、とても変な顔をしていたクーを思い出す。
仕方ない、とレヴィさんと一緒に馬車に乗り込んで、クーを下ろしてからその隣に腰かける。
レヴィさんがすぐに僕の左隣に座って口を開く。
「まあ、今のシズトに文句言う人はそうそういないと思うのですわ。機嫌を損ねるより、取り入った方が世界樹の素材や魔道具を手に入れる事ができる可能性が高いですわ。やる事に文句を言ってくるのはよっぽどのバカか、私たちと同じくらいの立場の者だと思うのですわ」
「まあ、そこまで上の立場だとあれこれ考えて結局言わないでしょう」
正面に座ったセシリアさんが肩をすくめる。
馬車が走り出して外の風景が流れ始めた。
街の通りを歩いている人は誰一人見当たらない。
どうやら要望通り見送りとか面倒事はなさそうだ。
胸を撫で下ろしているとポスッと太ももの上に小さな頭が乗っかった。寝息を立てているクーだ。
レヴィさんが横から手を伸ばして、白くてきれいな手でそっとクーの頭を撫でる。
「よく眠る子なのですわ」
優しくクーの寝顔を見守るレヴィさんの顔を見て、ドキッとしつつ、他愛もない話をしてその日の馬車移動は過ぎていった。
馬車での移動で特に何か問題が起きる事もなく、順調に進んで世界樹ファマリーに着いた。
ファマリー周辺は特に変化はなく、白い毛玉が世界樹の根元で丸まっているし、小さな子どもの様な見た目のドライアドたちがわらわらと畑付近で何かしている。
僕たちを出迎えてくれたドラン兵たちに軽く挨拶を済ませて、聖域の中に入る。
他のドライアドよりも少し大きく、青いバラが特徴的な子が出迎えてくれた。
「会わなかった間に何か変わった事なかった?」
「特になかったよ。……向こう側も問題ないみたい」
「それならよかった」
「人間さん、人間さん! 私たち頑張った! ご褒美頂戴!」
わらわらと集まってくるドライアドたちの頭をポンポンと叩いて落ち着かせていく。
ホムラに目配せすると、こくりと頷いて「こちらでお渡しします。ついてきてください」と離れていく。
ちっちゃなドライアドたちは、ホムラの後に続いてシズトから離れていく。
「……とりあえず、クーを部屋で寝かせるか」
背中ですやすやと寝ているクーを背負い直して、歩き出す。
世界樹への祈りは落ち着いてからでいいや。
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