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第7章 世界樹を育てつつ生きていこう
105.事なかれ主義者は帰りたかった
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世界樹ファマリーに【生育】を使い終わる頃には、フェンリルが聖域の外のゾンビたちを一掃し終えていた。魔法を使って広範囲のゾンビを切り刻み、短時間で終わらせたのは流石フェンリルだなー、って思う。……フェンリルについて良く知らないけどね。
ただ、切り刻まれたゾンビたちの残骸が散らばっていて、いつもよりも臭いがきつい。
そろそろドランに向かいたいので、片づけは兵士たちにお願いした。
落ちている魔石は兵士の中で山分けする事になり、彼らは半数を見張りに残し、残りの半数は残骸の処理と魔石拾いをし始めた。
「レヴィさん、近衛兵の準備はもう終わってる?」
「もう準備ばっちりなのですわ!」
「じゃあ手荷物だけ持ってさっさとドランに行こうか」
と、言っても皆アイテムバッグを持ってるから手荷物はほとんどないんだけど。
サクッと帰る準備を終えて、近衛兵に見守られながら馬車に乗り込む。レヴィさんが当然のようにすぐ隣に座ってきた。距離が近い。良い匂いがする。
ドキドキしている僕の心境を気にせず馬車は進み始めた。
ゆっくりと聖域の外に向けて進んでいたが、何やらユグドラシルの方面からたくさんの馬車がやってきている、という事で状況の確認のため聖域に戻されてしまった。
周囲を近衛兵が固め、すぐ近くにラオさんルウさんが控え、皆でユグドラシルに続く道の先を見据えていると、僕でもたくさんの馬車が近づいてきているのが見えた。
向こうは敵意がない事を伝えるためか、長い木の棒に白い布を縛り付けた旗を振っている。
さて、これはどうするべきかなぁ。
「とりあえず、今日帰るのは無理そうですわね」
「やっぱりそうかな」
「一番前を進んでる馬車の御者に見覚えがあるのですわ。一声くらいかけておかないと面倒ですし、貴重な情報源ですわ」
レヴィさんが先に馬車を下りて、僕もその後に続く。
近衛兵たちに指示を出しているレヴィさんを横目に、僕は腕を組んでこっちにやってくる馬車の群れを見ているラオさんに話しかける。
「あれってやっぱりユグドラシルから来たの? エルフたちが乗ってるとか?」
「いや、ありゃ人間の商人たちだな。見覚えのあるやつが何人かいる」
「シズトくんの事どうしようかしら?」
「レヴィに任せておけばいいだろ。下手に隠しても、あいつらがドランに戻ったらどうせばれるだろうから、隠すって事はねぇと思うけどな。魔道具を買い叩かれねぇように気を付けとけよ」
「ホムラに交渉任せてるから大丈夫!」
「お任せください、マスター」
「ハニートラップも気をつけなきゃだめよー。シズトくんを手に入れるためだったら、そういう事もする輩が出てもおかしくないんだから」
「引っかかったら最後、良いように利用されちまいそうだな」
パシリっすか。
「ご安心ください、マスター。私が常に側にいます。ちょっとでも怪しい素振りを見せる者がいたら排除します」
「待て待て待て。お前がやったらシャレにならねぇだろうがよ」
「王女様と仲が良い人をわざわざ狙うか微妙な所だけど、王族ともつながりが持てるって考える馬鹿が出てきそうだし、私たちも気を付けましょう」
ハニートラップ引っかかる前提でどう止めるか話してません?
確かに未経験だからホイホイ引っかかっちゃうかもしれないかもしれないけど……何とも言えない気持ちで、こちらに向かってくる馬車をしばらく待った。
じっとやってくるのを眺めていたんだけど、レヴィさんに何か指示をされた近衛兵がこっちにやってくる。
え、レヴィさんが家に戻っててって?
いや、自分で戻れるんですけど……。
近衛兵の大柄なお兄さんたちに引っ張られる形で聖域の中にある家の中に押し込まれた。
とりあえず、聖域の外でレヴィさんが向こうの代表者と話をするという事で、それが終わるまではここで待機。ホムラとドーラさんはレヴィさんと一緒に外に残り、ラオさんとルウさんだけが室内にいた。
僕よりも頭一つ分以上大きな二人にとって、この建物は小さいかな、とは思ったけど特に文句を言わずに過ごしている。
「シズトくん、魔力を使ってちょっとだるいんじゃない?」
「え、まあ……そうですけど」
「それならお姉ちゃんが膝枕してあげるわ! ほら、おねんねしましょ?」
「いやいやいや。レヴィさんがいつ話し終わって戻ってくるか分かんないんだから、流石にそれ使って昼寝しませんよ!?」
「大丈夫よ。寝てる途中で安眠カバーを取っちゃえば起きるでしょ?」
「まあ、そうですけど……」
「いいから寝とけ。どうせ起きててもやる事ねぇんだからよ。……ああ、今日はアタシが当番だから膝枕もアタシがするか」
「ラオちゃんずるいわ! 私も膝枕したい!」
「僕は別に膝枕じゃなくて普通にベットで寝るから、そういうの良いかなぁって……二人ともどうしたの、突然立って!? 二人がかりは流石にずる――」
……気が付いたら夕暮れ時でした。
レヴィさんは話が長引いているのかまだ戻ってきていないけど、セシリアさんはいつの間にか戻ってきていて、夕食の準備をしていた。
ドランに早く戻って大きなお風呂入りたかったんだけどなぁ。
「それなら女湯の方に入ればいいのではないでしょうか」
「一人で入れるならそうしようかな」
「……一人で入れるとお思いで?」
「うん、無理ですよね」
ただ、切り刻まれたゾンビたちの残骸が散らばっていて、いつもよりも臭いがきつい。
そろそろドランに向かいたいので、片づけは兵士たちにお願いした。
落ちている魔石は兵士の中で山分けする事になり、彼らは半数を見張りに残し、残りの半数は残骸の処理と魔石拾いをし始めた。
「レヴィさん、近衛兵の準備はもう終わってる?」
「もう準備ばっちりなのですわ!」
「じゃあ手荷物だけ持ってさっさとドランに行こうか」
と、言っても皆アイテムバッグを持ってるから手荷物はほとんどないんだけど。
サクッと帰る準備を終えて、近衛兵に見守られながら馬車に乗り込む。レヴィさんが当然のようにすぐ隣に座ってきた。距離が近い。良い匂いがする。
ドキドキしている僕の心境を気にせず馬車は進み始めた。
ゆっくりと聖域の外に向けて進んでいたが、何やらユグドラシルの方面からたくさんの馬車がやってきている、という事で状況の確認のため聖域に戻されてしまった。
周囲を近衛兵が固め、すぐ近くにラオさんルウさんが控え、皆でユグドラシルに続く道の先を見据えていると、僕でもたくさんの馬車が近づいてきているのが見えた。
向こうは敵意がない事を伝えるためか、長い木の棒に白い布を縛り付けた旗を振っている。
さて、これはどうするべきかなぁ。
「とりあえず、今日帰るのは無理そうですわね」
「やっぱりそうかな」
「一番前を進んでる馬車の御者に見覚えがあるのですわ。一声くらいかけておかないと面倒ですし、貴重な情報源ですわ」
レヴィさんが先に馬車を下りて、僕もその後に続く。
近衛兵たちに指示を出しているレヴィさんを横目に、僕は腕を組んでこっちにやってくる馬車の群れを見ているラオさんに話しかける。
「あれってやっぱりユグドラシルから来たの? エルフたちが乗ってるとか?」
「いや、ありゃ人間の商人たちだな。見覚えのあるやつが何人かいる」
「シズトくんの事どうしようかしら?」
「レヴィに任せておけばいいだろ。下手に隠しても、あいつらがドランに戻ったらどうせばれるだろうから、隠すって事はねぇと思うけどな。魔道具を買い叩かれねぇように気を付けとけよ」
「ホムラに交渉任せてるから大丈夫!」
「お任せください、マスター」
「ハニートラップも気をつけなきゃだめよー。シズトくんを手に入れるためだったら、そういう事もする輩が出てもおかしくないんだから」
「引っかかったら最後、良いように利用されちまいそうだな」
パシリっすか。
「ご安心ください、マスター。私が常に側にいます。ちょっとでも怪しい素振りを見せる者がいたら排除します」
「待て待て待て。お前がやったらシャレにならねぇだろうがよ」
「王女様と仲が良い人をわざわざ狙うか微妙な所だけど、王族ともつながりが持てるって考える馬鹿が出てきそうだし、私たちも気を付けましょう」
ハニートラップ引っかかる前提でどう止めるか話してません?
確かに未経験だからホイホイ引っかかっちゃうかもしれないかもしれないけど……何とも言えない気持ちで、こちらに向かってくる馬車をしばらく待った。
じっとやってくるのを眺めていたんだけど、レヴィさんに何か指示をされた近衛兵がこっちにやってくる。
え、レヴィさんが家に戻っててって?
いや、自分で戻れるんですけど……。
近衛兵の大柄なお兄さんたちに引っ張られる形で聖域の中にある家の中に押し込まれた。
とりあえず、聖域の外でレヴィさんが向こうの代表者と話をするという事で、それが終わるまではここで待機。ホムラとドーラさんはレヴィさんと一緒に外に残り、ラオさんとルウさんだけが室内にいた。
僕よりも頭一つ分以上大きな二人にとって、この建物は小さいかな、とは思ったけど特に文句を言わずに過ごしている。
「シズトくん、魔力を使ってちょっとだるいんじゃない?」
「え、まあ……そうですけど」
「それならお姉ちゃんが膝枕してあげるわ! ほら、おねんねしましょ?」
「いやいやいや。レヴィさんがいつ話し終わって戻ってくるか分かんないんだから、流石にそれ使って昼寝しませんよ!?」
「大丈夫よ。寝てる途中で安眠カバーを取っちゃえば起きるでしょ?」
「まあ、そうですけど……」
「いいから寝とけ。どうせ起きててもやる事ねぇんだからよ。……ああ、今日はアタシが当番だから膝枕もアタシがするか」
「ラオちゃんずるいわ! 私も膝枕したい!」
「僕は別に膝枕じゃなくて普通にベットで寝るから、そういうの良いかなぁって……二人ともどうしたの、突然立って!? 二人がかりは流石にずる――」
……気が付いたら夕暮れ時でした。
レヴィさんは話が長引いているのかまだ戻ってきていないけど、セシリアさんはいつの間にか戻ってきていて、夕食の準備をしていた。
ドランに早く戻って大きなお風呂入りたかったんだけどなぁ。
「それなら女湯の方に入ればいいのではないでしょうか」
「一人で入れるならそうしようかな」
「……一人で入れるとお思いで?」
「うん、無理ですよね」
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