【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第7章 世界樹を育てつつ生きていこう

幕間の物語47.わんちゃんたちは欲しい物のために頑張る

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 シズトが【生育】を使い、魔力切れによって倒れた後、特に慌てる様子もなくラオとルウがシズトを木造の建物に運んでいった。
 レヴィアはそれを見送ると、フェンリルと向かい合う。
 フェンリルがその雰囲気を察したのか、伏せの姿勢になった。そして、その青い瞳でレヴィアたちを見下ろす。
 自分よりもはるかに大きな魔物を目の前にしても、恐れずにまっすぐに視線を合わせるレヴィア。
 普段は薬指に付けている指輪を今日は付けておらず、それ故にフェンリルの心すらも読み解く事が出来ていたから恐れていなかった。何かあっても魔道具で逃げられる、という安心感も多少あったのかもしれないが。
 そんな彼女をフェンリルはどうでもよさそうに見ていた。

『……我を見て恐れないとは、人間では珍しいな』
「だって、あなたは私の事興味ないですわ。敵意も何もないのに、どうして恐れる必要があるのですわ? それよりも、今後の事を話し合うのですわ」
『話し合う事などない』
「本当ですわ? シズトがあなたの事を警戒しているのはもう感じていると思うのですわ。それなのに何もせず、良好な関係を築いていくのは難しいと思うのですわ~。シズトは世界樹がどうなろうと気にしないですし、あなたが居座っている間は世界樹へ祈りを捧げる事もしないと思うのですわー。シズトが来る度にあなたが遠くへ行く必要が出てくると思いますし、ここは一つ、約束を交わしてほしいのですわ」
『約束?』
「そう、約束。人間には危害を加えないっていう約束が欲しいのですわ」
『ああ、エルフ共と交わした誓文のようなものか』

 フェンリルが思い出したかのように呟いたのが聞こえた面々は、誓文が魔物にも有効である事に驚いた。
 ただ、人語を理解する程知能の高い魔物だ。そういう事もあるだろう、とレヴィアは気にも留めてなかった。
 レヴィアの後ろに控えていたセシリアは一瞬硬直したが、気を取り直してアイテムバッグから誓文書とペンを取り出す。

「エルフとはどのような約束を交わしていたのですわ?」
『エルフ共を襲わない事だったはずだ。ああ、あと禁足地とやらに入ってきたものは世界樹を育む者以外は食っていいと言われておったな。ただ、人間どもに危害を与えない、というのは難しい。エルフよりもはるかに多くの人数がおるからな。意図せずに危害を加えてしまう事だってある』
「そうですわね、仕方ないのですわ。それなら、シズトとシズトの仲間は襲わない、というのはどうですわ?」
『……そうだな、それならありだ』

 セシリアが準備を終えていた誓文書をレヴィアに渡す。それを確認したレヴィアはフェンリルに「字は読めるのですわ?」と誓文書を見せながら尋ねる。
 問題ない事を確認したフェンリルが、レヴィアと共に血を一滴垂らし、血の契約が交わされた。



 その後、どうせここで寝て過ごすのだからと提案された内容をフェンリルが承諾し、その代わりに食料等をレヴィアたちが用意する事となった。
 ドーラはイザベラたちと一緒に、アルヴィンにフェンリルのやり取りを伝えに行き、ラオとルウはシズトを建物に運んで行ったっきり戻ってこない。
 そのため、レヴィアとホムラがフェンリルに何が欲しいのか聞き取りをしていた。

『肉は当然だが、酒もあるといい。はるか昔飲んだ人間が作った酒は旨かったが……どこの酒だったか』
「とりあえず近場の有名どころのお酒を用意するのですわ」
『後は魔石だな。ここら辺に出てくるアンデッドどもの魔石は臭くて食欲が失せる』
「ランクはどのくらいがいいのですわ?」
『高ければ高いほどいい。後はそうだな……』

 フェンリルが後何が必要か考えている時だった。
 突然レヴィアが振り向く。その先には頭に花を咲かせた人間の幼児の様な見た目の小さな者たちが、どこからともなく現れていた。
 その者たちは、一回り大きな青い花を咲かせた者を先頭に、レヴィアたちの方に駆けてくる。

「わんちゃんだけずるいぞ~」
「ずるいぞ~」
「……知り合いなのですわ?」
『ドライアドたちだ。お前たちは我と違って何もせずそこら辺に生えているだけではないか』

 これがドライアド、とレヴィアが物珍しそうに見るのを気にした様子もなく、ドライアドたちがフェンリルに抗議する。

「私たち草育てるの得意だも~ん。人間さん、私たちそこら辺に生えてる草育てるよ~」
「育てるんだよ~」
「だから私たちも人間さんの物欲しいな!」
「欲しいなー」

 わちゃわちゃとレヴィアとホムラの周りを囲んで話すドライアドたち。
 そんなドライアドたちをどう扱ったものか、と考えるレヴィア。
 今、育てている作物はレヴィアたちが不在の時は放置している状況だった事もあり、ドライアドの能力次第ではありだろう。
 ただ、如何せん彼女はドライアドたちが何ができるのか、詳しい事は知らなかった。
 ドライアドは、書物にほんの二、三行だけ載っているマイナーな精霊だったからだ。
 過去の勇者によってその姿だけは知らされていたが、それ以外あまり知られていない。

「とりあえず、シズトが起きるまでに畑の手入れをお願いするのですわ。それの出来次第で、どれだけあなたたちの要望を聞くのか決めるのですわ」
「それでいいよ~。みんなー、頑張るよ!」
「頑張る~~~」
「それじゃ、魔動散水機の手入れの仕方を教えるのですわ。ついてくるといいのですわ!」

 レヴィアは意気揚々と先頭を歩き、その後ろをたくさんのドライアドたちがついて歩いて行く。
 残されたホムラは、レヴィアの代わりに淡々とフェンリルの欲しい物を聞き取っていき、どれだけお金が必要か見積もりをしていった。
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