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第7章 世界樹を育てつつ生きていこう
96.事なかれ主義者の農場
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魔力切れギリギリの状態だからかいつもの気だるさを感じつつ、テントの中で休んでいると外が騒がしい。主に騒がしいのはレヴィさん。
「もっと広い範囲を耕すのですわ!」
「レヴィア様、我々にもその魔道具を貸していただけると作業が捗ると思うのですが」
「これはシズトの魔道具だから勝手に使うのは良くないのですわ。あなたたちは剣の代わりに鍬を振ればいいと思うのですわ。ほらほら、手が止まっているのですわ! 口よりも手を動かすのですわ!!」
レヴィさんは今日も元気に農家をやっているようだ。
王女様ってイメージがどんどんなくなってきてるんだけど、そういう事してて大丈夫なんかなぁ。
ボケーッとそんな事を考えながらテントの外を眺めていると、ルウさんがテントの中に身を屈めながら入ってきた。そんな前屈みになっちゃだめだと思います。
「シズトくん、大丈夫? お姉ちゃんが膝枕してあげようか?」
「もう枕あるんで大丈夫ですー」
「それならお姉ちゃんが温めてあげようか?」
「掛布団もあるので大丈夫ですー」
「それなら子守歌でも歌ってあげるわ!」
「お昼寝用の安眠カバーあるので大丈夫ですー」
おやすみなさい。
僕の息子が起きる前にルウさんを視界から追い出して、テントの中に敷いた布団の上で安眠カバー付きの枕を使って昼寝をする。お昼ご飯の時には起こしてくれるかな、って思って意識を手放したんだけど……。
「あら、起こしちゃったかしら? お姉ちゃんが寝かしつけてあげるわ!」
ルウさんの太ももを枕にしたからだろう。魔道具の効果がなくなって起きてしまった。
ちょっとの間太ももの上で考えてみたけど、諦めた。
枕で寝直してもどうせルウさんの太ももに移動させられるんだろうし。
僕が諦めたのが伝わったのか、ルウさんが僕の体を規則的にトントンと叩きながら歌を歌い始める。その綺麗な歌声と、外から聞こえてくるレヴィさんの元気な声を聞きながら微睡む。
どのくらいそうしていたか分からないけど、ラオさんの声と共に意識が覚醒した。
「ほら、いつまでも寝てねぇで飯食うぞ」
「あ~……ちょっと寝すぎちゃったか」
「シズトくんの寝顔見てたから気が付かなかったわ」
え、どんだけ長い事僕の顔見てたのルウさん。
テントの外に出るともう夕日が空を染め上げていた。
周囲の兵士たちが生活している天幕の方からも煙が立ち上っている。
僕が寝ている間に随分と頑張って耕したみたい。今日はもう遅いから明日魔動散水機を取り付けて、二~三日様子見て問題なかったらドランに戻ろう。
「向こうにはどのくらいいるつもりなんだ?」
「んー、お風呂とかも入りたいし、数日はいたいけど散水機で本当に大丈夫か心配だしあんまり長くはいないかな」
「お風呂は作ればいい」
「まあ、そうなんだけどね。ほら、兵士さんたちがお風呂入ってなさそうなのに僕たちだけが入るのはちょっと気が引けるというか……」
「その心配は不要です、マスター。アルヴィン様が大量の入浴魔石を購入されましたので、その内大規模な公衆浴場を作り上げると思います。また、それよりも先に聖域の中にマスター用の仮設住居を建てるために大工を連れて来たみたいです」
「僕のためにわざわざ連れてきたの!?」
「元々兵舎を築く予定だった。シズトはおまけ。気にしなくていい」
「作ってもらえるんだったらわざわざ魔力使わなくて済むからいいんじゃねぇか?」
「そうねー。いつまでもテント暮らしってのも不便だし、ご飯も作るのも大変でしょうしね」
「セシリアならどこでも料理を問題なく作れるのですわ!」
「レヴィア様、専用の設備がある所の物と同じクオリティを野営でご用意するのは私には無理です」
「次に来るときには完成するそうです、マスター」
建物ってそんなすぐに作れたっけ?
……まあ、魔法とか加護とかあるからやろうと思えばできるのかな。
次に来る時の楽しみができた事だし、ちょっと冷ましたスープを飲み干して食事を終える。
寝すぎたから眠れるか心配だったけど、そもそも魔力切れで気絶すれば眠れたわ。
テントの布団の上で横になりながら、テントの入り口から見える世界樹の幹を見て【生育】を使いつつ祈った。
どんな格好でも【生育】を使いながら祈れば問題なく世界樹を育てる事ができるみたい。
距離が遠いとその分魔力が無駄になっちゃうけど、ただ魔力を空っぽにして魔力総量を増やすためだったら遠くから祈るのもありかもしれない。
気だるい思いをしつつ、朝食をのんびり食べながら、周りの様子を見る。
ホムラとドーラさんは既にアルヴィンさんの所へ行ってしまったようで、聖域の中には見当たらない。
ラオさんとルウさんは僕の近くでのんびりと仲良く魔力マシマシ飴を舐めていた。
レヴィさんは相変わらず近衛兵に指示を出しながら魔動耕耘機を押して駆け回っていて、セシリアさんがその後を慌てて追っている。
「なんか平和だねぇ」
「あんまり何もなさすぎると体が鈍っちまって困るな」
「兵士の訓練に混ぜてもらってきたらいいんじゃない? 私がしっかりシズトくんを見守ってるわ」
「いや、お前だと甘やかして止めなきゃいけないとこ止めずに後押ししそうじゃねぇか」
「危ない事は止めるわよ?」
「それ以外は止めねぇって事だろ、それ」
まあ、そうだろうね。
朝食を食べ終え、アイテムバッグから魔動散水機を出していく。
「ここにも設置するのですわ!」
「これ全部配置したら聖域みたいに繋げんのか?」
「んー、いちいち一個ずつ魔石入れていくの面倒だからそうするかも?」
「それじゃあ鉄も準備しておくわね」
ルウさんが準備してくれた鉄のインゴットを【加工】で細長く伸ばしていき、近衛兵たちとレヴィさんが頑張って配置していく魔道具につなげていく。
碁盤の様に規則的な線を描いて、作った魔動散水機をすべて繋げたら農場と呼んでもいいくらいの広さの畑が目の前に広がっていた。
「……収穫とか大変そうだなぁ」
「近衛兵にやらせればいいのですわ!」
レヴィさんって近衛兵を便利屋かなんかかと思ってない? え、そんな事ない? ほんとかなぁ。
「もっと広い範囲を耕すのですわ!」
「レヴィア様、我々にもその魔道具を貸していただけると作業が捗ると思うのですが」
「これはシズトの魔道具だから勝手に使うのは良くないのですわ。あなたたちは剣の代わりに鍬を振ればいいと思うのですわ。ほらほら、手が止まっているのですわ! 口よりも手を動かすのですわ!!」
レヴィさんは今日も元気に農家をやっているようだ。
王女様ってイメージがどんどんなくなってきてるんだけど、そういう事してて大丈夫なんかなぁ。
ボケーッとそんな事を考えながらテントの外を眺めていると、ルウさんがテントの中に身を屈めながら入ってきた。そんな前屈みになっちゃだめだと思います。
「シズトくん、大丈夫? お姉ちゃんが膝枕してあげようか?」
「もう枕あるんで大丈夫ですー」
「それならお姉ちゃんが温めてあげようか?」
「掛布団もあるので大丈夫ですー」
「それなら子守歌でも歌ってあげるわ!」
「お昼寝用の安眠カバーあるので大丈夫ですー」
おやすみなさい。
僕の息子が起きる前にルウさんを視界から追い出して、テントの中に敷いた布団の上で安眠カバー付きの枕を使って昼寝をする。お昼ご飯の時には起こしてくれるかな、って思って意識を手放したんだけど……。
「あら、起こしちゃったかしら? お姉ちゃんが寝かしつけてあげるわ!」
ルウさんの太ももを枕にしたからだろう。魔道具の効果がなくなって起きてしまった。
ちょっとの間太ももの上で考えてみたけど、諦めた。
枕で寝直してもどうせルウさんの太ももに移動させられるんだろうし。
僕が諦めたのが伝わったのか、ルウさんが僕の体を規則的にトントンと叩きながら歌を歌い始める。その綺麗な歌声と、外から聞こえてくるレヴィさんの元気な声を聞きながら微睡む。
どのくらいそうしていたか分からないけど、ラオさんの声と共に意識が覚醒した。
「ほら、いつまでも寝てねぇで飯食うぞ」
「あ~……ちょっと寝すぎちゃったか」
「シズトくんの寝顔見てたから気が付かなかったわ」
え、どんだけ長い事僕の顔見てたのルウさん。
テントの外に出るともう夕日が空を染め上げていた。
周囲の兵士たちが生活している天幕の方からも煙が立ち上っている。
僕が寝ている間に随分と頑張って耕したみたい。今日はもう遅いから明日魔動散水機を取り付けて、二~三日様子見て問題なかったらドランに戻ろう。
「向こうにはどのくらいいるつもりなんだ?」
「んー、お風呂とかも入りたいし、数日はいたいけど散水機で本当に大丈夫か心配だしあんまり長くはいないかな」
「お風呂は作ればいい」
「まあ、そうなんだけどね。ほら、兵士さんたちがお風呂入ってなさそうなのに僕たちだけが入るのはちょっと気が引けるというか……」
「その心配は不要です、マスター。アルヴィン様が大量の入浴魔石を購入されましたので、その内大規模な公衆浴場を作り上げると思います。また、それよりも先に聖域の中にマスター用の仮設住居を建てるために大工を連れて来たみたいです」
「僕のためにわざわざ連れてきたの!?」
「元々兵舎を築く予定だった。シズトはおまけ。気にしなくていい」
「作ってもらえるんだったらわざわざ魔力使わなくて済むからいいんじゃねぇか?」
「そうねー。いつまでもテント暮らしってのも不便だし、ご飯も作るのも大変でしょうしね」
「セシリアならどこでも料理を問題なく作れるのですわ!」
「レヴィア様、専用の設備がある所の物と同じクオリティを野営でご用意するのは私には無理です」
「次に来るときには完成するそうです、マスター」
建物ってそんなすぐに作れたっけ?
……まあ、魔法とか加護とかあるからやろうと思えばできるのかな。
次に来る時の楽しみができた事だし、ちょっと冷ましたスープを飲み干して食事を終える。
寝すぎたから眠れるか心配だったけど、そもそも魔力切れで気絶すれば眠れたわ。
テントの布団の上で横になりながら、テントの入り口から見える世界樹の幹を見て【生育】を使いつつ祈った。
どんな格好でも【生育】を使いながら祈れば問題なく世界樹を育てる事ができるみたい。
距離が遠いとその分魔力が無駄になっちゃうけど、ただ魔力を空っぽにして魔力総量を増やすためだったら遠くから祈るのもありかもしれない。
気だるい思いをしつつ、朝食をのんびり食べながら、周りの様子を見る。
ホムラとドーラさんは既にアルヴィンさんの所へ行ってしまったようで、聖域の中には見当たらない。
ラオさんとルウさんは僕の近くでのんびりと仲良く魔力マシマシ飴を舐めていた。
レヴィさんは相変わらず近衛兵に指示を出しながら魔動耕耘機を押して駆け回っていて、セシリアさんがその後を慌てて追っている。
「なんか平和だねぇ」
「あんまり何もなさすぎると体が鈍っちまって困るな」
「兵士の訓練に混ぜてもらってきたらいいんじゃない? 私がしっかりシズトくんを見守ってるわ」
「いや、お前だと甘やかして止めなきゃいけないとこ止めずに後押ししそうじゃねぇか」
「危ない事は止めるわよ?」
「それ以外は止めねぇって事だろ、それ」
まあ、そうだろうね。
朝食を食べ終え、アイテムバッグから魔動散水機を出していく。
「ここにも設置するのですわ!」
「これ全部配置したら聖域みたいに繋げんのか?」
「んー、いちいち一個ずつ魔石入れていくの面倒だからそうするかも?」
「それじゃあ鉄も準備しておくわね」
ルウさんが準備してくれた鉄のインゴットを【加工】で細長く伸ばしていき、近衛兵たちとレヴィさんが頑張って配置していく魔道具につなげていく。
碁盤の様に規則的な線を描いて、作った魔動散水機をすべて繋げたら農場と呼んでもいいくらいの広さの畑が目の前に広がっていた。
「……収穫とか大変そうだなぁ」
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