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第6章 亡者の巣窟を探索して生きていこう

86.事なかれ主義者愛用の魔道具

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「おう、起きたか」
「おはよう、シズトくん」
「おはよう。夜は大丈夫だった?」
「何度かグールが襲ってきたけど問題ねぇよ」
「神聖ライトでダメージを負わせられたのもあるのかしら? ヴァンパイアは来なかったわね」

 ラオさんとルウさんがお喋りをしている間にご飯を食べる。
 度々襲撃はされたみたいだけど、安眠カバーでぐっすり寝ていた夜が明けた。夜が明けたと言っても窓から見える外の景色に変わりはないので起きた事でしか朝が来た実感がわかない。
 安眠カバーは便利なもので、設定した時間になるまでぐっすり眠らされるので間違いがないと思う。これが昼寝用のものだったら分からないけど……。

「夜の遭遇は少ない」
「公爵様たちから貰っていた情報でもそうだったわね。やっぱり、神聖ライトの効果があったと決めつけない方がよさそうね」
「ヴァンパイアなのに夜は来ないの? っていうか、夜寝るの?」

 吸血鬼は夜行性のイメージがあったんだけど、この世界では違うんかな。棺桶の中で眠るのかな。

「魔物の中でも寝て体を休める奴が殆どだ。ゾンビやスケルトンは獲物が近づいてきたら活動状態になるから全部が全部ってわけじゃねぇけど、アンデッドでも夜に寝てる可能性はあるだろ」

 そっか。死んでるはずなのに寝るってなんか不思議だけど、そういう物なのか。

「じゃあ、寝床見つけて、寝てる間にやっつけちゃうとかもありっぽいよね」
「魔法使いがいればそうしてた」

 だいぶ前の人たちの攻略法としては、グールたちの襲撃を避けつつ、攻略の度に代わるヴァンパイアの寝床を見つけてそこに罠を張るか、範囲魔法攻撃で倒すかが主流だったらしい。
 ただ、魔法を使う知性のある魔物は魔力に敏感らしいから、魔道具で罠を作ってもバレて壊されちゃうだろうし、アイテムバッグの中に入るように分解して入れないといけないので今回は用意してない。
 食事を終えて、探索の準備をしつつ対策方法を考えるけど、特に思い浮かばなかった。

「イザベラさんに協力してもらうのはどうなの?」
「転移陣を作れるどこかの誰かがいるせいで、あんまりお勧めはしねぇな。ダンジョン内で使えて今まで双方向の転移ができなかったダンジョンの不便な点を解決できるのはすげぇけど、使い潰されるんじゃねぇか?」
「もちろん、ベラちゃんがデメリットを見落として押し進める事はしないとは思っているし、シズトくんの事を無理矢理利用しようとなんてしない事は知っているわ。でも、ギルドも一枚岩ではないの。どこかから転移陣の事が漏れたら、上層部の一部は利用しようとしてくるはずね」
「それで助かる冒険者が増えるなら、ちょっとなら頑張るけど……」
「ちょっとどころか、一生扱き使われる可能性があるから、ギルドに伝えるのは後ろ盾をしっかり作ってからをお勧めするわ」
「それに、制度もしっかりしてねぇからな。今でも双方向の転移が可能なダンジョンじゃ、実力とあってない階層に連れて行けと騒ぐバカもいるし、そういうのを連れて行っちまうバカもいる」
「犯罪もある」
「そうね~。無理矢理連れ込んで身ぐるみ剥いで、ポイッてする危ない人も時々捕まってるし……シズトくんも、知ってても知らなくても冒険者には気をつけなきゃだめよ?」

 それ、ルウさんが言います? あなた冒険者ですよね……。
 何とも言えない気持ちでルウさんを見ていたけど、ルウさんは気づいた様子もない。

「まあ、そういう訳でイザベラの協力は今回はなしだ。どうしても次の階層に行かなくちゃ行けないわけじゃねぇしな」
「でも行けたら結構稼げるのよね」
「金属が手に入るんだっけ?」
「ミスリル」

 ミスリルかー。ファンタジーの金属ですね、分かります。
 ただ、そんなすごい金属が出るのに、ここが放置されてたのはなんでだろ?

「忘れてるかも知んねぇけど、ここは臭いがひでぇし、沼地は普通あんな早く踏破できねぇからな? 洞窟も基本的に遠回りしていくのが普通だし、この霧に包まれた街も月毎に下の階層への階段の在りかが変わっちまうから建物の中を探すしかねぇけど、罠だらけだし、割に合わねぇんだよ」
「ここに来るくらいならドランの近くのもう片方のダンジョンに行った方が稼げるわよね。ドランからも近いし」
「でも転移陣がある。ミスリル欲しいならヴァンパイアを倒したい」
「まあ、設置しないとショートカットできないしね」
「ミスリルはとても高価ですが、お役に立つかと思います、マスター。可能であれば次の階層で素材の確保をしてはいかかでしょう? 鉄もあります」
「鉄はハズレ枠だけどな」

 鉄も最近集まりにくくなってるんだよね。買い占めすぎちゃったし。他の金属を買うお金がもったいないから屑武器とか、失敗作とか回収してたわけだけど……。

「でも、ヴァンパイアをどうするかが問題じゃん? 大規模な魔法を使うような魔道具は今思いつくのは設置が殆どだし、必ずしも有効とは限らないし……」
「それに関しては案があります、マスター。眠っている間に準備をしてしまえばいいのです」
「いや、寝床もわからないし、寝てる間でも魔力に反応しちゃうって言ってたでしょ?」
「はい、夜眠っている間に作業をするのは現実的ではないです、マスター。ただ、丁度いい魔道具があります。マスターのご愛用のアレが」

 ……アレ?
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