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第6章 亡者の巣窟を探索して生きていこう
82.事なかれ主義者は打たせ湯を作った
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リッチは無事討伐できた。途中からリッチに生み出され続けるアンデッドの相手をいちいちするのが面倒になってゴブリンの時のように普通のゾンビは足を鉄で固めて動けなくした。足が速いだけの人型のゾンビや、動物型のゾンビも問題なく【加工】を使う事で行動不能にできたし、実体のないレイス系は神聖ライトで倒した。
リッチまでの道ができるように有刺鉄線を両側に作ってゾンビたちの動きを阻害すると、ルウさんが目にも止まらぬ速さで動き、リッチを倒してしまった。
これ以上進んでも、という事でフロアボスの部屋の先にあった転移陣の隣に自作の転移陣を置いて、元々あった転移陣を使って外に出る事が出来た。
まだ日中だったが、お風呂の準備はいつでも万端なので後はかえってお風呂入って臭いを落とすだけ、なんだけど……。
「結局またみんなで入る事になるんだ」
いや、眼福ではあるんだよ? あるんだけど、がっつり見るわけにはいかないし、もしかしたら僕の息子が起きちゃうかもしれないじゃん。
と、いう事で先に自分の体を洗っているラオさんの方を見ないようにしつつ、浴槽に入って奥の壁を見上げているわけです。
「効率的」
「いや、確かにそうかもしれないけどさ。男と一緒に入るのって何とも思わないわけ?」
「シズトだから問題ない」
僕が手を出しても簡単にひねり上げる事できますもんね。
ため息をついて気を取り直し、壁をもう一度見上げる。打たせ湯ってあんまり使った事ないから詳しくないけど、上の方からお湯が落ちてくればいいんだよね、きっと。
そのまま真下に落ちてくるタイプにするか、放物線を描いて落ちるタイプにするか悩むけど、正直それっぽければどっちでもいいし、放物線を描く感じでいいか。その方が魔法陣を壁に付与するだけでいいから楽だし。
立ち上がってから腰に装備したタオルがしっかりと固定されている事をもう一度確認する。作業をしている間にタオルが落ちたら大変だし。
「それじゃ、やりますか」
「……何してるの?」
「何って、浴槽の縁に立って少しでも高い所に魔法陣を刻むんだよ」
「危ない」
「まあ、そうだけどさ。打たせ湯なんだし、高い所から落ちてきた方がそれっぽいし……」
「土台になる」
「……ドーラさんが?」
「任せて」
「ちょ、ちょっとドーラさん!? なんで後ろから股の下くぐろうとしてるんすか!」
「肩車する」
いやそれタオルがあるから無理じゃない???
あ、タオルあるの気づきましたね……って、なんでタオルに手を伸ばすんすか?
「邪魔」
「ちょ、その手離してもらえません!?」
「大丈夫、他の人見てない。すぐ終わる。そうでしょ?」
ドーラさんめっちゃぐいぐい来るな!
流石になんも装備してない状態で肩車されるのは嫌なのでさっさと手の届く場所に魔法陣を刻んだ。その魔法陣から下に指で線を描き、浴槽の魔法陣と繋げて魔力の供給ラインを作ると、壁の魔法陣の中心からお湯が流れ落ち始めた。
「終わったか? 今度はシズトの番だからこっち来い」
「あ、はい」
体を洗い終わったラオさんがこちらを呆れた様子で見ていたし、ドーラさんも何か言いたそうなジト目でこちらを見ていたけど、どちらにも触れずにそそくさとシャワーの方へと移動する。
今日はラオさんの日か。他の人と違って普通に体を洗ってくれるので安心できる。
「まずは頭から行くぞ」
頭をごしごしと程よい力加減で洗われる。
女性に洗われるのもう慣れてきた自分が怖いけど、ラオさんは頭を洗うのがとても上手なので今後もお願いしてもいいかなぁ、なんて思う自分がいる。
まあ、お願いしなくてもローテーションで勝手に洗われるんですけどね。
「痒いとこはねぇか?」
「ないですー」
「耳の近く洗うぞ」
「いい感じですー」
「流すから目つぶっとけよ」
「はいー」
なんだろうね、全部任せられる安心感がラオさんにあるね。
そのまま背中もちょうどいい力加減で擦られてそれでおしまい、とラオさんは水風呂に入りに行った。
これがルウさんとかだと前を洗おうとするからちょっと色々な意味で大変だから、ずっとラオさんに洗ってもらうのもありかもなぁ、なんて思いつつさっさと体を洗った。
お風呂から上がると夕暮れ時で、ユキが帰ってきていた。
今日もお店は問題なかったようだが、浮遊台車が結構危ない使われ方をしていると報告された。
「使う人の自己責任とはいえ、流石に子どもたちが怪我するかもしれないのはなぁ」
「そうね、ご主人様。それで逆恨みするようなおバカさんはいないと思うけれど」
「いても排除するので心配は不要です、マスター」
「下手に遅くなるように調整すると、それこそ逆恨みするバカがいそうだな」
「今すごく儲ける事が出来るらしいものね~。ギルドが黙認しているなら放っておいていいとお姉ちゃん思うんだけど」
「んー……とりあえず、保留で」
もう何台納入しているのか分からないくらいギルドに浮遊台車を渡しているのでそれを一台ずつ改良していくのは正直面倒くさいし、制限をかけてそれで恨まれるくらいだったら今のままでもいいかな。けが人が出ないように対策は取ってるみたいだし。
隠れて悪さされるよりは目に見える範囲で何かしてもらった方がまだフォローもできるし、放置する事にしよう。
その他に気になる話はなかったし、日課の【生育】を使いに行こうかな。その後に打たせ湯試そっと。
リッチまでの道ができるように有刺鉄線を両側に作ってゾンビたちの動きを阻害すると、ルウさんが目にも止まらぬ速さで動き、リッチを倒してしまった。
これ以上進んでも、という事でフロアボスの部屋の先にあった転移陣の隣に自作の転移陣を置いて、元々あった転移陣を使って外に出る事が出来た。
まだ日中だったが、お風呂の準備はいつでも万端なので後はかえってお風呂入って臭いを落とすだけ、なんだけど……。
「結局またみんなで入る事になるんだ」
いや、眼福ではあるんだよ? あるんだけど、がっつり見るわけにはいかないし、もしかしたら僕の息子が起きちゃうかもしれないじゃん。
と、いう事で先に自分の体を洗っているラオさんの方を見ないようにしつつ、浴槽に入って奥の壁を見上げているわけです。
「効率的」
「いや、確かにそうかもしれないけどさ。男と一緒に入るのって何とも思わないわけ?」
「シズトだから問題ない」
僕が手を出しても簡単にひねり上げる事できますもんね。
ため息をついて気を取り直し、壁をもう一度見上げる。打たせ湯ってあんまり使った事ないから詳しくないけど、上の方からお湯が落ちてくればいいんだよね、きっと。
そのまま真下に落ちてくるタイプにするか、放物線を描いて落ちるタイプにするか悩むけど、正直それっぽければどっちでもいいし、放物線を描く感じでいいか。その方が魔法陣を壁に付与するだけでいいから楽だし。
立ち上がってから腰に装備したタオルがしっかりと固定されている事をもう一度確認する。作業をしている間にタオルが落ちたら大変だし。
「それじゃ、やりますか」
「……何してるの?」
「何って、浴槽の縁に立って少しでも高い所に魔法陣を刻むんだよ」
「危ない」
「まあ、そうだけどさ。打たせ湯なんだし、高い所から落ちてきた方がそれっぽいし……」
「土台になる」
「……ドーラさんが?」
「任せて」
「ちょ、ちょっとドーラさん!? なんで後ろから股の下くぐろうとしてるんすか!」
「肩車する」
いやそれタオルがあるから無理じゃない???
あ、タオルあるの気づきましたね……って、なんでタオルに手を伸ばすんすか?
「邪魔」
「ちょ、その手離してもらえません!?」
「大丈夫、他の人見てない。すぐ終わる。そうでしょ?」
ドーラさんめっちゃぐいぐい来るな!
流石になんも装備してない状態で肩車されるのは嫌なのでさっさと手の届く場所に魔法陣を刻んだ。その魔法陣から下に指で線を描き、浴槽の魔法陣と繋げて魔力の供給ラインを作ると、壁の魔法陣の中心からお湯が流れ落ち始めた。
「終わったか? 今度はシズトの番だからこっち来い」
「あ、はい」
体を洗い終わったラオさんがこちらを呆れた様子で見ていたし、ドーラさんも何か言いたそうなジト目でこちらを見ていたけど、どちらにも触れずにそそくさとシャワーの方へと移動する。
今日はラオさんの日か。他の人と違って普通に体を洗ってくれるので安心できる。
「まずは頭から行くぞ」
頭をごしごしと程よい力加減で洗われる。
女性に洗われるのもう慣れてきた自分が怖いけど、ラオさんは頭を洗うのがとても上手なので今後もお願いしてもいいかなぁ、なんて思う自分がいる。
まあ、お願いしなくてもローテーションで勝手に洗われるんですけどね。
「痒いとこはねぇか?」
「ないですー」
「耳の近く洗うぞ」
「いい感じですー」
「流すから目つぶっとけよ」
「はいー」
なんだろうね、全部任せられる安心感がラオさんにあるね。
そのまま背中もちょうどいい力加減で擦られてそれでおしまい、とラオさんは水風呂に入りに行った。
これがルウさんとかだと前を洗おうとするからちょっと色々な意味で大変だから、ずっとラオさんに洗ってもらうのもありかもなぁ、なんて思いつつさっさと体を洗った。
お風呂から上がると夕暮れ時で、ユキが帰ってきていた。
今日もお店は問題なかったようだが、浮遊台車が結構危ない使われ方をしていると報告された。
「使う人の自己責任とはいえ、流石に子どもたちが怪我するかもしれないのはなぁ」
「そうね、ご主人様。それで逆恨みするようなおバカさんはいないと思うけれど」
「いても排除するので心配は不要です、マスター」
「下手に遅くなるように調整すると、それこそ逆恨みするバカがいそうだな」
「今すごく儲ける事が出来るらしいものね~。ギルドが黙認しているなら放っておいていいとお姉ちゃん思うんだけど」
「んー……とりあえず、保留で」
もう何台納入しているのか分からないくらいギルドに浮遊台車を渡しているのでそれを一台ずつ改良していくのは正直面倒くさいし、制限をかけてそれで恨まれるくらいだったら今のままでもいいかな。けが人が出ないように対策は取ってるみたいだし。
隠れて悪さされるよりは目に見える範囲で何かしてもらった方がまだフォローもできるし、放置する事にしよう。
その他に気になる話はなかったし、日課の【生育】を使いに行こうかな。その後に打たせ湯試そっと。
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