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第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく
68.事なかれ主義者は祠を作ってお祈りする
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「ちょっとダーリア、遅れてるわよ。早くしなさい」
「朝……きつい……」
「競争デース!!!」
奴隷たち皆に平等に同じ広さの畑を与えて耕してもらっている。好きな作物を育ててもらって売るなり食べるなり好きにしてもらう予定。
それぞれの畑予定地に木の端材を【加工】して作った立て看板を設置していく。
「モニカの畑はここね」
「本当に好きなものを育てて自由に扱ってよろしいのですか? 普通、こんな待遇良くないと思いますが……」
「普通の待遇が分からないからなぁ」
「奴隷は基本的に個室を与えられる事はありません」
「部屋が無駄に余ってるからね。使わないのはもったいないじゃん? 個室として与えたら部屋の掃除は各自でしてくれるだろうし空き室の掃除をしなくてよくなるし」
「掃除と言っても魔道具で勝手にしてるじゃないですか……。あと、待遇面で言うのであれば食事はもっと質素なものです」
「しっかり食べないと体調崩しちゃうじゃん」
「生かさず殺さず使い潰すのが普通です。まあ、私たちの場合だと夜の相手をさせられる事もあるので食事や部屋はもう少しよくなる事もあり得ますが、まだそういう事もさせて頂いておりませんし……それでも良すぎると思います」
「損はしてないからいいでしょ。ほらほら、モニカも自分の畑耕して」
「終わりました」
「あ、はい。……じゃあ何を植えるか決めておいて」
「決めております」
「あ、はい。……種とかは後でまとめてホムラに買ってきてもらうから、僕の手伝いをして」
「分かりました」
「お姉ちゃんも手伝うわ! 何をするのかしら?」
「とりあえず祠を作ろうかなぁ、って」
昔、時代劇かなんかで祠を見た事がある。それっぽい感じの物を作ってついでに神様たちを祀ってしまおう。加護も使ってほしいけど信仰も広まってほしいだろうからね!
ルウさんとモニカの知識も合わせればそれっぽい見た目になるんじゃないかなぁ、って。イメージ的には小さな祠。農地とかの近くにあるやつ。
「……私たちは何をすればいいのでしょう?」
「やる事がないような気がするわ」
「とりあえず祠作るまでちょっと待って」
二人が見守る前で木の端材を【加工】で形を変えていき、小さな祠を作っていく。
……風とか雨とか虫とか心配だけど、まあ毎日お祈りのついでに加工をすればいいか。
ちっちゃい高床式の小屋みたいな感じの見た目になったけど、こんな感じでいいんだろうか?
格子状で中が見える観音開きの扉を開けて、少し離れた距離から見てみる。新品の木材を使ったような見た目だけど、それっぽい気がしなくもない。まあ、いいか。
「神様たちの像って作るのは不敬とかある?」
「特にないと思うわ。どこの教会に行っても礼拝堂にはその教会が祀っている神様の像があるし」
「一緒に祀るのはまずいかな?」
「どうでしょう……私は見た事がありませんが、禁止されているとは聞いた事がありません」
「そっか。まあ、仲良さそうな三人組だったしいいか」
作ると決めたらサクッと作ってしまおう。もうそろそろジュリーンとパメラがダーリアの畑を耕し終わりそうだし。
アイテムバッグから取り出してもらった木の端材を【加工】で像にしていく。
……ファマ様が大号泣している像が出来上がった。イメージに影響されるのに、泣いてる姿しか覚えてないしなぁ。まあ、こんな感じだったから良しとしよう。
プロス様はちょっと怒った顔で両手を腰に当ててこちらを見ている姿になった。うん、流石に最高神様にぶら下がっている姿はダメだと思うんだ。
次はエント様……と思ったけど印象がとても薄い。上目遣いでこっちを恐る恐る見てたおかっぱ頭の幼女だったような気がするんだけど、顔があんまり……。朧げな記憶を頼りに作ってみたけど、こんな感じだったかなぁ?
ルウさんとモニカも微妙な表情をしているけど、しょうがないじゃん。顔覚えるの苦手なんだから! え、そこじゃない?
よく分かんないけど、これ以外なかなかイメージし辛いから次の作業に移ろう。
「どう並べよう? やっぱり場所とかって大事だと思う?」
「最高神様と他の神々が描かれた絵画などでは最高神様が中心だったり大きく描かれていたりしますね」
「序列とかどうなのか知らないんだよね。一応畑の近くだし、ファマ様が真ん中でいいか」
「ファマ様というのね。何を司っているのかしら?」
「司っている、って言うのかは分からないけど生育じゃないかな? 加護もそういう名前だったし」
「聞いた事がない神様なので、一つだけを司っているのでしょう。そちらの神様は何でしょう……怒りとかですか?」
「いや、プロス様からは加工の加護を貰ったからたぶん加工だと思う」
「鍛冶の神とはまた別なんですね」
「最後の神様が付与の加護を与えてくれた神様なのね」
「そうそう。一番お世話になってるし、やっぱりエント様を真ん中にするべきなのかなぁ? いや、でも農地だからファマ様でいいか」
ファマ様を真ん中に、プロス様とエント様を置いてみたけど……微妙。後ろから後光が差すようにしよう。名前的に神秘的なホーリーライトでいいか。魔石は見え辛い床下に設置する場所をつけて、とそんな細々とした事をしていたらダーリアの畑も耕し終わったようだ。
「それじゃ、とりあえずお祈りしてから屋敷に戻ろっか」
「どの礼拝方法をすればよろしいですか?」
「やっぱり礼拝方法って違うの?」
「そうですね。神様によっては全く違う礼拝方法の時もありますし、種族や国によって異なる時もあります」
「んー、じゃあ手を合わせて目を瞑って日々の感謝とかを心の中で唱える、とか?」
「分かりました」
モニカの後ろでこちらを見ていた三人も頷いたのを確認してから祠の前でしゃがみ、手を合わせる。
ルウさんが隣で僕と同じように手を合わせたのを見て、他の子たちは後ろで膝をついて手を合わせた。
「じゃあ、目を瞑ってそれぞれファマ様に感謝を」
皆はこれから畑で作物を育てるだけだからファマ様だけでいいけど、僕は日頃お世話になっている加護をくれた神様たちにも感謝を捧げなきゃね。
そう思いながら目を閉じ、さあ、感謝を捧げるぞ! と祈り始めた瞬間、とても強い衝撃を背中から感じて前のめりで地面に突っ伏した。
「なんかこれ前にもあったな」
目を開けて前を見ると真っ白な空間が広がっていた。
「朝……きつい……」
「競争デース!!!」
奴隷たち皆に平等に同じ広さの畑を与えて耕してもらっている。好きな作物を育ててもらって売るなり食べるなり好きにしてもらう予定。
それぞれの畑予定地に木の端材を【加工】して作った立て看板を設置していく。
「モニカの畑はここね」
「本当に好きなものを育てて自由に扱ってよろしいのですか? 普通、こんな待遇良くないと思いますが……」
「普通の待遇が分からないからなぁ」
「奴隷は基本的に個室を与えられる事はありません」
「部屋が無駄に余ってるからね。使わないのはもったいないじゃん? 個室として与えたら部屋の掃除は各自でしてくれるだろうし空き室の掃除をしなくてよくなるし」
「掃除と言っても魔道具で勝手にしてるじゃないですか……。あと、待遇面で言うのであれば食事はもっと質素なものです」
「しっかり食べないと体調崩しちゃうじゃん」
「生かさず殺さず使い潰すのが普通です。まあ、私たちの場合だと夜の相手をさせられる事もあるので食事や部屋はもう少しよくなる事もあり得ますが、まだそういう事もさせて頂いておりませんし……それでも良すぎると思います」
「損はしてないからいいでしょ。ほらほら、モニカも自分の畑耕して」
「終わりました」
「あ、はい。……じゃあ何を植えるか決めておいて」
「決めております」
「あ、はい。……種とかは後でまとめてホムラに買ってきてもらうから、僕の手伝いをして」
「分かりました」
「お姉ちゃんも手伝うわ! 何をするのかしら?」
「とりあえず祠を作ろうかなぁ、って」
昔、時代劇かなんかで祠を見た事がある。それっぽい感じの物を作ってついでに神様たちを祀ってしまおう。加護も使ってほしいけど信仰も広まってほしいだろうからね!
ルウさんとモニカの知識も合わせればそれっぽい見た目になるんじゃないかなぁ、って。イメージ的には小さな祠。農地とかの近くにあるやつ。
「……私たちは何をすればいいのでしょう?」
「やる事がないような気がするわ」
「とりあえず祠作るまでちょっと待って」
二人が見守る前で木の端材を【加工】で形を変えていき、小さな祠を作っていく。
……風とか雨とか虫とか心配だけど、まあ毎日お祈りのついでに加工をすればいいか。
ちっちゃい高床式の小屋みたいな感じの見た目になったけど、こんな感じでいいんだろうか?
格子状で中が見える観音開きの扉を開けて、少し離れた距離から見てみる。新品の木材を使ったような見た目だけど、それっぽい気がしなくもない。まあ、いいか。
「神様たちの像って作るのは不敬とかある?」
「特にないと思うわ。どこの教会に行っても礼拝堂にはその教会が祀っている神様の像があるし」
「一緒に祀るのはまずいかな?」
「どうでしょう……私は見た事がありませんが、禁止されているとは聞いた事がありません」
「そっか。まあ、仲良さそうな三人組だったしいいか」
作ると決めたらサクッと作ってしまおう。もうそろそろジュリーンとパメラがダーリアの畑を耕し終わりそうだし。
アイテムバッグから取り出してもらった木の端材を【加工】で像にしていく。
……ファマ様が大号泣している像が出来上がった。イメージに影響されるのに、泣いてる姿しか覚えてないしなぁ。まあ、こんな感じだったから良しとしよう。
プロス様はちょっと怒った顔で両手を腰に当ててこちらを見ている姿になった。うん、流石に最高神様にぶら下がっている姿はダメだと思うんだ。
次はエント様……と思ったけど印象がとても薄い。上目遣いでこっちを恐る恐る見てたおかっぱ頭の幼女だったような気がするんだけど、顔があんまり……。朧げな記憶を頼りに作ってみたけど、こんな感じだったかなぁ?
ルウさんとモニカも微妙な表情をしているけど、しょうがないじゃん。顔覚えるの苦手なんだから! え、そこじゃない?
よく分かんないけど、これ以外なかなかイメージし辛いから次の作業に移ろう。
「どう並べよう? やっぱり場所とかって大事だと思う?」
「最高神様と他の神々が描かれた絵画などでは最高神様が中心だったり大きく描かれていたりしますね」
「序列とかどうなのか知らないんだよね。一応畑の近くだし、ファマ様が真ん中でいいか」
「ファマ様というのね。何を司っているのかしら?」
「司っている、って言うのかは分からないけど生育じゃないかな? 加護もそういう名前だったし」
「聞いた事がない神様なので、一つだけを司っているのでしょう。そちらの神様は何でしょう……怒りとかですか?」
「いや、プロス様からは加工の加護を貰ったからたぶん加工だと思う」
「鍛冶の神とはまた別なんですね」
「最後の神様が付与の加護を与えてくれた神様なのね」
「そうそう。一番お世話になってるし、やっぱりエント様を真ん中にするべきなのかなぁ? いや、でも農地だからファマ様でいいか」
ファマ様を真ん中に、プロス様とエント様を置いてみたけど……微妙。後ろから後光が差すようにしよう。名前的に神秘的なホーリーライトでいいか。魔石は見え辛い床下に設置する場所をつけて、とそんな細々とした事をしていたらダーリアの畑も耕し終わったようだ。
「それじゃ、とりあえずお祈りしてから屋敷に戻ろっか」
「どの礼拝方法をすればよろしいですか?」
「やっぱり礼拝方法って違うの?」
「そうですね。神様によっては全く違う礼拝方法の時もありますし、種族や国によって異なる時もあります」
「んー、じゃあ手を合わせて目を瞑って日々の感謝とかを心の中で唱える、とか?」
「分かりました」
モニカの後ろでこちらを見ていた三人も頷いたのを確認してから祠の前でしゃがみ、手を合わせる。
ルウさんが隣で僕と同じように手を合わせたのを見て、他の子たちは後ろで膝をついて手を合わせた。
「じゃあ、目を瞑ってそれぞれファマ様に感謝を」
皆はこれから畑で作物を育てるだけだからファマ様だけでいいけど、僕は日頃お世話になっている加護をくれた神様たちにも感謝を捧げなきゃね。
そう思いながら目を閉じ、さあ、感謝を捧げるぞ! と祈り始めた瞬間、とても強い衝撃を背中から感じて前のめりで地面に突っ伏した。
「なんかこれ前にもあったな」
目を開けて前を見ると真っ白な空間が広がっていた。
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