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第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく

67.事なかれ主義者は家庭菜園始めました

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 魔力切れの気だるさを目覚めと共に味わいつつ、ベッドから身を起こすとルウさんが僕が起きた事に気づいた。

「シズトくん、おはよう。昨日お風呂に入れなかったでしょう? 今日は朝から入るかな、って思って準備しておいたけれど、お姉ちゃんと一緒にお風呂入る?」
「んー、作業してからお風呂入るかも」
「分かったわ。作業は何をするのかしら? 手伝える事だったらお姉ちゃんも頑張るわ!」

 いつも以上にお世話係を張り切っているルウさん。
 昨日ちょっと無理したから心配しているのかな。早く着替えを自分でしないと脱がされそうな勢いだったので、とりあえずルウさんを部屋から追い出してから着替えを済ませて食堂に向かう。
 食堂では狐人族のエミリーがすでに朝食の準備を済ませていた。
 昨日は夜ご飯を食べずに寝てしまったのでお腹がペコペコだわ。

「いつもよりも多めに用意しております。間食のクッキーも用意しておりますので、ご希望であればお申し付けください」

 ペコリ、とメイド服を着たエミリーが礼をして壁際に控える。
 料理ができるという事だったので厨房を任せていたが、料理に関する事はすべて彼女の仕事に落ち着いたようだ。お世話係をしているルウさんも席に座って並べられている食事を静かに食べている。
 僕も食事をしつつ、エミリーの隣で静かに控えていたモニカに視線を向ける。
 ショートヘアーの黒髪に黒い瞳を見ていると日本人の血が流れているんだな、と思うが彼女には加護がないらしい。
 両親は事故で亡くなっており、それも貴族ではなくなってしまった理由の一つらしいけれど、あまり深い事は聞いてない。彼女が言いたいって思ったら聞こう、と思っているんだけどそういう話は全くでない。
 モニカはぺこりと一礼してからみんなの予定を教えてくれた。

「ホムラ様は昨日と同じく、サイレンスの店主として夕刻まで接客をされるそうです。ラオ様は冒険者ギルドに話があるという事で昨日出かけた後戻ってきておりません。ドーラ様とレヴィア様は領主様の所へお出かけになりました。昼頃に戻ってきた後にシズト様へ話したい事があるそうです。ですので、できれば敷地内で過ごしておいてほしいそうです」
「まあ、十中八九領主様についての話だよね。不毛の大地ってドラゴニア王国の直轄地らしい
し」
「不毛の大地は一応ドラゴニア王国の領土という事になっているもの。交易路の確保をするために、アンデッドの間引き等を今までドラゴニア王国が受け持っていたけれど、今後はどうなるか分からないわね」
「侵略された、って事になるんだったら取り返すために戦争になるんかな」
「そうかもしれないけど、シズトくんはそんな事気にしなくていいのよ? ほら、ご飯を早く食べちゃいなさい。それとも、お姉ちゃんが食べさせてあげようかしら?」

 流石にそれは他の人も見てるし恥ずかしいので勘弁してほしいです。
 モニカは僕とルウさんのやり取りがひと段落着いたのを見て報告を再開した。

「ノエルは変わらず魔道具作成をしております。他の奴隷たちも職務に励んでおります」
「教会から呼び出しとか来てない?」
「特に来ておりません。何かございましたか?」
「いや、来てないならいいんだ。ちょっと畑を作ってみようと思うんだけど、手の空いている人いる?」
「おそらくパメラが暇を持て余していると思いますので声をかけておきます。ダーリアとジュリーンも必要であれば集めておきます」
「それじゃあお願い。魔道具でパパッと耕すから魔石をある程度準備しておいて」
「かしこまりました」

 ぺこりとお辞儀をしたモニカは外に出ていく。
 ルウさんはモニカと話をしている間にたくさんあった朝食を綺麗に平らげて口元を拭いていた。ラオさんと同じくらい食べるのは早いけれど、ルウさんは胸に食べかすが乗っている事は一度もない。

「作業って畑を作る事だったのね」
「土いじりとかするからね。それからお風呂に入った方が効率的でしょう?」
「でもどうしていきなり畑を作ろうと思ったのかしら?」
「加護が使えるかの確認と、今日まで毎日使ってた加護をいきなり使わなくなったら神様も怒るかなぁ、って。前回は加護を使わなかったから呼び出されて怒られたんだから、これから毎日使えば呼び出されないかもしれない、てね。世界樹を育てるように、とは言われたけどそれはエルフたちが頑張ってくれるだろうし今できる事をやるしかないじゃん?」

 ルウさんは納得してなさそうだったけど、僕が食べ終わると一緒に屋敷の外に出て畑を作るのを手伝ってくれた。たい肥はたくさんあるし、耕すのは魔動耕耘機で楽々できる。とりあえず屋敷から裏門に行くときに邪魔にならない場所のほとんどを実験農場にしよう。
 【加工】と【付与】を使って魔動耕耘機を量産した後はモニカ達と一緒にとりあえず手当たり次第に耕しつつたい肥を撒いていった。
 農業はよく分かんないからそこら辺は適当でいいかな。【生育】さえ使えれば何でもいいし。
 育てる野菜とかの季節ってどうなんだろう?

「農業を任せられる人が必要かな。まあ、それはそのうちやるとして……とりあえず健やかに育ってください、【生育】」

 ニョキニョキニョキッと、埋めたばかりの芋たちが土の下から芽を出したからみんなびっくりしていたけど、加護全部使えたからとりあえず良し!
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