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第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく
66.事なかれ主義者は犯罪者?
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めっちゃお家に帰りたい。
あいつらと関わったってろくな事なんてないと思うし、本当に帰りたい。
まだゆっくりとこちらに向かってきているのを全員で眺めながら待ってるけど、正直今すぐにでも帰りたい。
恐らく姿を隠す魔法か何かで姿を隠しつつ包囲の輪を狭めつつある不審者ときっと何かつながりがあるだろう彼らと関わりたくない。
「お前の魔道具、ほんと便利だよな。あんな遠いのに顔まで分かるわ」
「便利」
「それで、シズトくんはどうしてそんなに帰りたいのかしら?」
「扱き使われる未来しか見えないからですかねー」
いや、今現時点での僕の装備とか、王家とのつながりとか、諸々考えたらそういう事になる可能性は低いのかもしれない。でも油断して結局そうなっちゃいました、ってなるのは本当に嫌だ。この人生は好きに生きて死ぬ時に楽しかったって思いたいんだ。扱き使われてたらそんな風に思えないだろうから本当に嫌だ。
特に茶髪の女子と関わるのは嫌だ。
姫花、〇〇欲しいから今すぐ買ってきてね、じゃないんだよ自分で買ってこい!! なんて言ったら面倒事になるから言えないんですけどねぇ~。
「とりあえず、話だけはするんだろ?」
「追って来られる方が厄介でしょう? 向こうが何を求めてるかによってお付き合いするのもいいかな、って思うし。魔道具たくさん買ってくれるならそれならそれでいいですし?」
お金をくれる人は良いお客さん。都合のいいように使ってくるなら客じゃない。
本当に関わりたくはないんだけど、一回は話しておかないと追いかけっこになるだろうしね。逃亡生活も楽しそうだけど窮屈そうだし遠慮しときたい。
「で? そのヒメカってやつはあの茶髪の女か?」
「そうそう。見た目は良いのに立場の弱い男を奴隷のように扱き使う女王様みたいな嫌な奴なんだよ」
「そうなの~。他の二人も知り合いなの?」
「まあね。とりあえず、ドランに向かってるだけかもしれないし、ちょっと様子見しようか」
「陽太、どうして頭プリンになってないの?」
「開口一番それかよ。見た目を変える魔道具で好きな色に染めてんだよ」
あ、お客さんでした。
金色の前髪を気障にかきあげたおバカは金田陽太。学校ではお調子者でクラスのリーダー的存在だった。姫花と同じくらい僕をパシらせてきた嫌な奴。今は剣の神から【剣聖】の加護を貰っているんですね。へー、パッシブスキルでめっちゃ便利そうだ。
「やっぱり生きてましたね。シズト、単刀直入に言います。エルフの国から貴方は指名手配をされています。大人しくついてきてもらえると助かるのですが」
「指名手配って、……あ!……僕何かやっちゃいました?」
言ってみたかったセリフがまた言えたから感謝しといた方がいい?
ごめんなさい、ちょっとふざけました。まともな事考えるからレヴィさん突かないで。
この眼鏡をクイクイさせてるのが黒川明。頭脳担当、とか言ってた痛い奴。いろいろやらされる時にいちいち何か言ってきたのがうるさかった奴。見た目女っぽいけど男だからね? 女みたい、って言うと怒るから言わないでね。知識の神から【全魔法】の加護を貰ってるんだ。便利で良さそう。
「何かやっちゃいました? じゃないわよ! 世界樹の種を盗むとか何やってくれてんのよ! とにかく一緒について行ってあげるからさっさと謝りに行くわよ!」
「ちょっと待て。こっちの言い分も何も聞かずに一方的に責められて、どうぞ連れてってください、って差し出せるわけねぇだろ」
いいぞ、ラオさん。もっとやれ。でも、丁度そこに立っててくれたら僕が背中に隠れられるから動かないでね。
キャンキャンわめいているのが茶木姫花。見た目が良くてファンクラブとかあるらしい。
茶色の髪をポニーテールにしているけど、姫花も髪の見た目変えてる魔道具使ってないんかな? あ、地毛とか先生に言ってたような気もする。どうでもいいですね、はい。
光の神から【聖女】の加護を貰ってるとかマジ受けるんですけどー。聖女って柄じゃないと思うんですけどー。
それにしても、この即席魔道具便利だわ。加護の詳細見れるって手の内が見えていいよね。
「それで? 僕が犯罪とか大それた事やれないチキンだってみんな知ってるでしょ?」
「まあ、そうですけどね。ユグドラシルの使徒がここで世界樹を育ててる黒髪の男が種を盗んだからエルフの国々の世界樹が枯れてしまったんだ、という話をされましてね。状況は分かりませんでしたが、タイミング的に貴方がいいように使われているのかもしれない、って思ってやってきたわけです」
「まあ、パシリだもんね、僕」
「王様とかに命令されてやってねぇだろうな?」
「万引きしてこいって陽太に言われてもしなかったのに、そんな事する訳ないでしょ?」
「あれは冗談って分かんだろ? ジョークが通じねぇつまんねぇ奴だな」
「とにかく、真偽がどうあれエルフしか育てられない世界樹がここにいつの間にか生えてる状況証拠から疑われて仕方ないでしょう」
エルフしか育てられない、ねぇ。
向こうからしてみたら、枯れてしまったタイミングで僕が育て始めたらそりゃなんかあるだろうな、って思うのかもしれないけど……疑われる方としてはいい気分じゃないなぁ。
「世界樹もエルフがしっかり管理してくれるそうです」
「ここはドラゴニア王国の領土ですわ! そんな勝手な事、許されるわけがないのですわ!」
「誰よアンタ」
「私はレヴィア・フォン・ドラゴニア。この国の第一王女なのですわ! お父様が世界樹の種を盗めと命じたという濡れ衣は聞かなかった事にするのですわ」
「「「………」」」
うん、陽太たちの言いたい事はものすごくわかるよ。
王女様がなんで麦わら帽子を被り、長靴を履いて、農家みたいな恰好をしているのかって思ってるんでしょ?
王女様だって言われても信じられないよね、この見た目じゃ。
「そのドラゴニア王にはユグドラシルから声明が届いてるはずだ。ドラゴニア以外の周辺国への根回しを先にしてたから俺たちが先に知っていたわけだけど、大人しくこの地とシズトを引き渡さないと厄介な事になるかもしれねぇぞ?」
「周辺国が協力したら世界樹の素材を優先的に渡す、とか言ってそうだな」
「確かにそれは言ってそうね~。シズトくんの事を知らない人たちにとっては、エルフが世界樹を管理するのは常識よね。世界樹を無事に育てられたら優先的に素材を回す、とか言ったら動き出す国があってもおかしくないかもしれないわね」
「動かなくても、様子を見るために何もしない国は出そうだな」
「ドラゴニア王国にいても、いいように使われてトカゲの尻尾みたいに切られちゃうわよ。シズト、いいからこっちに来なさい」
「護送中の身の安全は保障しましょう」
んー、考えるまでもない事だけど、どうするべきかな。
ドラゴニア王国に迷惑をかける事になるよね、このままだと。
…………やっぱり、逃げちゃおうか。
ラオさんの背に隠れるのをやめてみんなよりも前に出る。
ゆっくりと三人の方へと近寄っていくと、三人は当然そうするって思っていたみたいで大人しく待ってくれている。
「もう、好きに生きるって決めたんだよね。だから、ごめんね?」
そう謝りつつ僕は結界の外に一歩だけ足を踏み出した。
あいつらと関わったってろくな事なんてないと思うし、本当に帰りたい。
まだゆっくりとこちらに向かってきているのを全員で眺めながら待ってるけど、正直今すぐにでも帰りたい。
恐らく姿を隠す魔法か何かで姿を隠しつつ包囲の輪を狭めつつある不審者ときっと何かつながりがあるだろう彼らと関わりたくない。
「お前の魔道具、ほんと便利だよな。あんな遠いのに顔まで分かるわ」
「便利」
「それで、シズトくんはどうしてそんなに帰りたいのかしら?」
「扱き使われる未来しか見えないからですかねー」
いや、今現時点での僕の装備とか、王家とのつながりとか、諸々考えたらそういう事になる可能性は低いのかもしれない。でも油断して結局そうなっちゃいました、ってなるのは本当に嫌だ。この人生は好きに生きて死ぬ時に楽しかったって思いたいんだ。扱き使われてたらそんな風に思えないだろうから本当に嫌だ。
特に茶髪の女子と関わるのは嫌だ。
姫花、〇〇欲しいから今すぐ買ってきてね、じゃないんだよ自分で買ってこい!! なんて言ったら面倒事になるから言えないんですけどねぇ~。
「とりあえず、話だけはするんだろ?」
「追って来られる方が厄介でしょう? 向こうが何を求めてるかによってお付き合いするのもいいかな、って思うし。魔道具たくさん買ってくれるならそれならそれでいいですし?」
お金をくれる人は良いお客さん。都合のいいように使ってくるなら客じゃない。
本当に関わりたくはないんだけど、一回は話しておかないと追いかけっこになるだろうしね。逃亡生活も楽しそうだけど窮屈そうだし遠慮しときたい。
「で? そのヒメカってやつはあの茶髪の女か?」
「そうそう。見た目は良いのに立場の弱い男を奴隷のように扱き使う女王様みたいな嫌な奴なんだよ」
「そうなの~。他の二人も知り合いなの?」
「まあね。とりあえず、ドランに向かってるだけかもしれないし、ちょっと様子見しようか」
「陽太、どうして頭プリンになってないの?」
「開口一番それかよ。見た目を変える魔道具で好きな色に染めてんだよ」
あ、お客さんでした。
金色の前髪を気障にかきあげたおバカは金田陽太。学校ではお調子者でクラスのリーダー的存在だった。姫花と同じくらい僕をパシらせてきた嫌な奴。今は剣の神から【剣聖】の加護を貰っているんですね。へー、パッシブスキルでめっちゃ便利そうだ。
「やっぱり生きてましたね。シズト、単刀直入に言います。エルフの国から貴方は指名手配をされています。大人しくついてきてもらえると助かるのですが」
「指名手配って、……あ!……僕何かやっちゃいました?」
言ってみたかったセリフがまた言えたから感謝しといた方がいい?
ごめんなさい、ちょっとふざけました。まともな事考えるからレヴィさん突かないで。
この眼鏡をクイクイさせてるのが黒川明。頭脳担当、とか言ってた痛い奴。いろいろやらされる時にいちいち何か言ってきたのがうるさかった奴。見た目女っぽいけど男だからね? 女みたい、って言うと怒るから言わないでね。知識の神から【全魔法】の加護を貰ってるんだ。便利で良さそう。
「何かやっちゃいました? じゃないわよ! 世界樹の種を盗むとか何やってくれてんのよ! とにかく一緒について行ってあげるからさっさと謝りに行くわよ!」
「ちょっと待て。こっちの言い分も何も聞かずに一方的に責められて、どうぞ連れてってください、って差し出せるわけねぇだろ」
いいぞ、ラオさん。もっとやれ。でも、丁度そこに立っててくれたら僕が背中に隠れられるから動かないでね。
キャンキャンわめいているのが茶木姫花。見た目が良くてファンクラブとかあるらしい。
茶色の髪をポニーテールにしているけど、姫花も髪の見た目変えてる魔道具使ってないんかな? あ、地毛とか先生に言ってたような気もする。どうでもいいですね、はい。
光の神から【聖女】の加護を貰ってるとかマジ受けるんですけどー。聖女って柄じゃないと思うんですけどー。
それにしても、この即席魔道具便利だわ。加護の詳細見れるって手の内が見えていいよね。
「それで? 僕が犯罪とか大それた事やれないチキンだってみんな知ってるでしょ?」
「まあ、そうですけどね。ユグドラシルの使徒がここで世界樹を育ててる黒髪の男が種を盗んだからエルフの国々の世界樹が枯れてしまったんだ、という話をされましてね。状況は分かりませんでしたが、タイミング的に貴方がいいように使われているのかもしれない、って思ってやってきたわけです」
「まあ、パシリだもんね、僕」
「王様とかに命令されてやってねぇだろうな?」
「万引きしてこいって陽太に言われてもしなかったのに、そんな事する訳ないでしょ?」
「あれは冗談って分かんだろ? ジョークが通じねぇつまんねぇ奴だな」
「とにかく、真偽がどうあれエルフしか育てられない世界樹がここにいつの間にか生えてる状況証拠から疑われて仕方ないでしょう」
エルフしか育てられない、ねぇ。
向こうからしてみたら、枯れてしまったタイミングで僕が育て始めたらそりゃなんかあるだろうな、って思うのかもしれないけど……疑われる方としてはいい気分じゃないなぁ。
「世界樹もエルフがしっかり管理してくれるそうです」
「ここはドラゴニア王国の領土ですわ! そんな勝手な事、許されるわけがないのですわ!」
「誰よアンタ」
「私はレヴィア・フォン・ドラゴニア。この国の第一王女なのですわ! お父様が世界樹の種を盗めと命じたという濡れ衣は聞かなかった事にするのですわ」
「「「………」」」
うん、陽太たちの言いたい事はものすごくわかるよ。
王女様がなんで麦わら帽子を被り、長靴を履いて、農家みたいな恰好をしているのかって思ってるんでしょ?
王女様だって言われても信じられないよね、この見た目じゃ。
「そのドラゴニア王にはユグドラシルから声明が届いてるはずだ。ドラゴニア以外の周辺国への根回しを先にしてたから俺たちが先に知っていたわけだけど、大人しくこの地とシズトを引き渡さないと厄介な事になるかもしれねぇぞ?」
「周辺国が協力したら世界樹の素材を優先的に渡す、とか言ってそうだな」
「確かにそれは言ってそうね~。シズトくんの事を知らない人たちにとっては、エルフが世界樹を管理するのは常識よね。世界樹を無事に育てられたら優先的に素材を回す、とか言ったら動き出す国があってもおかしくないかもしれないわね」
「動かなくても、様子を見るために何もしない国は出そうだな」
「ドラゴニア王国にいても、いいように使われてトカゲの尻尾みたいに切られちゃうわよ。シズト、いいからこっちに来なさい」
「護送中の身の安全は保障しましょう」
んー、考えるまでもない事だけど、どうするべきかな。
ドラゴニア王国に迷惑をかける事になるよね、このままだと。
…………やっぱり、逃げちゃおうか。
ラオさんの背に隠れるのをやめてみんなよりも前に出る。
ゆっくりと三人の方へと近寄っていくと、三人は当然そうするって思っていたみたいで大人しく待ってくれている。
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