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第5章 新しいお姉ちゃんと一緒に生きていく
59.事なかれ主義者は自称お姉ちゃんと会った
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さて、育てていた木が世界樹と確定した今、僕の生活が何か変化があるかと言われたら特に何も変わらなかった。いや、神様から渡された木が普通の木とは思ってなかったからある程度予想してたし、そこまで驚く事でもないな、って。
ただ、僕以外はそうでもないレヴィさん。
レヴィさんは世界樹に触れた事がなかったから今まで気づかなかったらしいが、大興奮で昼夜問わずお世話をしようとしたからセシリアさんに眠らされていたくらいだろうか。
……主に対してその対応どうなんだろう? とか思ったけどうちにもそんな感じの魔法生物いたな、と思ったので口を噤んだ。
ノエルは平常運転だった。魔道具の方に興味が全振りされているからか知らないけど「そうなんすねー、すごいっすねー」としか言わなかった。
ラオさんが言うには、世界樹の放つ魔力は独特なので、一度見たら忘れないだろう、という事だったがノエルは村八分にされていたとかエルフの中にもいろいろあるとかで、知らなかったらしい。
ドーラさんもドランから出た事がなく、高級品の世界樹の素材を見る機会がなかったらしい。ただいつもの眠たそうな目で大きな木を見上げながら近くにいた鳥に話しかけていたけど、時々鳥とお喋りしているから気にしない。
「だから誰も世界樹の事を知らなかったので、ラオさんに隠していたとかじゃないです」
「いや、別に隠されてたとか思ってねぇから。第一、アタシも万能薬を作るとは言ってねぇからな。向かう先で察する事はできるだろうけど、異世界転移者のお前にはそこら辺は察する事できなくても仕方ねぇし、そもそも感謝しかしてねぇよ。借りがでかすぎてどう返したもんか悩むほどだ」
「そうよ~。借りという意味ではラオちゃんより私の方が感じてるのよ? できる範囲で、恩返しさせてほしいの。何でもお姉ちゃんがしてあげる~」
ぎゅっと僕の頭を抱え込むように抱きしめてくるラオさんの妹さんのルウさん。
髪を伸ばしたラオさん、って感じだったけど目つきが鋭いラオさんと異なり、たれ目でのんびりした印象を与える人だ。スタイルもラオさんと同様、大柄でダイナマイトなボディ。つまり、柔らかいものがとても当てられている。
「ん? なんでもって言った?」
「なんでもしてあげる~」
「なんでもって言いましたね?」
つまりそういう事ですね?
と、ちょっと思考が健全な男性だったら考えがちな事に流れかけたのはこの頭に押し付けられている柔らかい感触のせいだと思うんです。鼻の下が伸びても仕方ない事だと思うんです。
とりあえず、離れてもらって応接室として使っている部屋のソファーに腰かける。
今、ラオさんから「会ってほしい人がいる」と言われて顔合わせをしている段階だ。
世界樹だと分かったラオさんが土下座をした時にはとても驚いたけど、妹さんのためだと知れば、素材をあげるという選択肢しかなかった。
「と、冗談は置いといて」
「冗談じゃないのよ?」
「え、そうなんすか!?」
つまり何でもしていいって事っすか?
と、煩悩退散させなきゃ。最近全く反応しない僕の息子が反応する前に浮いた腰を下ろす。
ラオさんも自分の胸をなんで触ってるんですかね?
「いや、ルウがそういう事するならアタシもした方がいいんじゃねぇかな、てな。ルウよりたくさんの借りを作ってるし」
「いや、こっちに来てから一番お世話してくれてるんだからそういう事で払わなくていいからね!?」
そういう事は好きな人同士ですべきだと思うんだよ。
「話戻すけど、別に世界樹の葉っぱとか枝とか、恩返しのつもりであげたんだから気にしなくていいよ」
「高価すぎるんだよその恩返しの品物が」
「そうね~。冒険者を頑張ったとしても払えるか分からないのよね。無理して死んでしまいそう」
「この話は結局平行線になると思うのですわ。別にシズトが望もうと望まなかろうと、これからラオたちがする事は変わらないのでしょう?」
「まあ、それはな」
「恩返し頑張ろうと思うの」
「シズトにとっても、護衛として側にいてもらう事にデメリットは少ないと思うのですわ。今から事情を知らない人を引き入れるより、事情を知ってる二人を味方に引き込んでおいてしまうといいのですわ。冒険者ギルドからの護衛依頼は今後受けず、専属の護衛として」
「まあ、護衛と言いつつも監視のようなものだしな」
「ラオちゃんが受けていた依頼ね?」
なんかどんどん依頼を受けずに護衛をする、って話がまとまっていくのでちょっとラオさんたちに確認を込めて問う。
「ラオさんたちはそれでいいの?」
「良いも悪いも、アタシが冒険者を続けてたのはルウを治す方法を探すためだったんだ。もう治しちまったんだから後は気楽にお前の側で見守るだけでいいさ」
「私も加護持ちの相手でもうやめとこうかしら、って思っていたくらいだもの。意識を失って起きたらいろいろ変わっていたから、情報収集もしつつシズトくんのために生きる事にしたわ~。命の恩人らしいから」
思いが重いよ、ルウさん。
そんな事を思っていたら、ルウさんが隣に座って片手で僕の頭を優しくなで始めた。
近いからとてもいい匂いがする。
「何より私、妹か弟が欲しかったのよ~。シズトくん、私の事お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?」
ラオさんは姐さんって感じだけど、ルウさんは人をダメにするタイプのお姉さんな気がするんだけど気のせいっすかね?
ただ、僕以外はそうでもないレヴィさん。
レヴィさんは世界樹に触れた事がなかったから今まで気づかなかったらしいが、大興奮で昼夜問わずお世話をしようとしたからセシリアさんに眠らされていたくらいだろうか。
……主に対してその対応どうなんだろう? とか思ったけどうちにもそんな感じの魔法生物いたな、と思ったので口を噤んだ。
ノエルは平常運転だった。魔道具の方に興味が全振りされているからか知らないけど「そうなんすねー、すごいっすねー」としか言わなかった。
ラオさんが言うには、世界樹の放つ魔力は独特なので、一度見たら忘れないだろう、という事だったがノエルは村八分にされていたとかエルフの中にもいろいろあるとかで、知らなかったらしい。
ドーラさんもドランから出た事がなく、高級品の世界樹の素材を見る機会がなかったらしい。ただいつもの眠たそうな目で大きな木を見上げながら近くにいた鳥に話しかけていたけど、時々鳥とお喋りしているから気にしない。
「だから誰も世界樹の事を知らなかったので、ラオさんに隠していたとかじゃないです」
「いや、別に隠されてたとか思ってねぇから。第一、アタシも万能薬を作るとは言ってねぇからな。向かう先で察する事はできるだろうけど、異世界転移者のお前にはそこら辺は察する事できなくても仕方ねぇし、そもそも感謝しかしてねぇよ。借りがでかすぎてどう返したもんか悩むほどだ」
「そうよ~。借りという意味ではラオちゃんより私の方が感じてるのよ? できる範囲で、恩返しさせてほしいの。何でもお姉ちゃんがしてあげる~」
ぎゅっと僕の頭を抱え込むように抱きしめてくるラオさんの妹さんのルウさん。
髪を伸ばしたラオさん、って感じだったけど目つきが鋭いラオさんと異なり、たれ目でのんびりした印象を与える人だ。スタイルもラオさんと同様、大柄でダイナマイトなボディ。つまり、柔らかいものがとても当てられている。
「ん? なんでもって言った?」
「なんでもしてあげる~」
「なんでもって言いましたね?」
つまりそういう事ですね?
と、ちょっと思考が健全な男性だったら考えがちな事に流れかけたのはこの頭に押し付けられている柔らかい感触のせいだと思うんです。鼻の下が伸びても仕方ない事だと思うんです。
とりあえず、離れてもらって応接室として使っている部屋のソファーに腰かける。
今、ラオさんから「会ってほしい人がいる」と言われて顔合わせをしている段階だ。
世界樹だと分かったラオさんが土下座をした時にはとても驚いたけど、妹さんのためだと知れば、素材をあげるという選択肢しかなかった。
「と、冗談は置いといて」
「冗談じゃないのよ?」
「え、そうなんすか!?」
つまり何でもしていいって事っすか?
と、煩悩退散させなきゃ。最近全く反応しない僕の息子が反応する前に浮いた腰を下ろす。
ラオさんも自分の胸をなんで触ってるんですかね?
「いや、ルウがそういう事するならアタシもした方がいいんじゃねぇかな、てな。ルウよりたくさんの借りを作ってるし」
「いや、こっちに来てから一番お世話してくれてるんだからそういう事で払わなくていいからね!?」
そういう事は好きな人同士ですべきだと思うんだよ。
「話戻すけど、別に世界樹の葉っぱとか枝とか、恩返しのつもりであげたんだから気にしなくていいよ」
「高価すぎるんだよその恩返しの品物が」
「そうね~。冒険者を頑張ったとしても払えるか分からないのよね。無理して死んでしまいそう」
「この話は結局平行線になると思うのですわ。別にシズトが望もうと望まなかろうと、これからラオたちがする事は変わらないのでしょう?」
「まあ、それはな」
「恩返し頑張ろうと思うの」
「シズトにとっても、護衛として側にいてもらう事にデメリットは少ないと思うのですわ。今から事情を知らない人を引き入れるより、事情を知ってる二人を味方に引き込んでおいてしまうといいのですわ。冒険者ギルドからの護衛依頼は今後受けず、専属の護衛として」
「まあ、護衛と言いつつも監視のようなものだしな」
「ラオちゃんが受けていた依頼ね?」
なんかどんどん依頼を受けずに護衛をする、って話がまとまっていくのでちょっとラオさんたちに確認を込めて問う。
「ラオさんたちはそれでいいの?」
「良いも悪いも、アタシが冒険者を続けてたのはルウを治す方法を探すためだったんだ。もう治しちまったんだから後は気楽にお前の側で見守るだけでいいさ」
「私も加護持ちの相手でもうやめとこうかしら、って思っていたくらいだもの。意識を失って起きたらいろいろ変わっていたから、情報収集もしつつシズトくんのために生きる事にしたわ~。命の恩人らしいから」
思いが重いよ、ルウさん。
そんな事を思っていたら、ルウさんが隣に座って片手で僕の頭を優しくなで始めた。
近いからとてもいい匂いがする。
「何より私、妹か弟が欲しかったのよ~。シズトくん、私の事お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?」
ラオさんは姐さんって感じだけど、ルウさんは人をダメにするタイプのお姉さんな気がするんだけど気のせいっすかね?
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