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第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく。
57.事なかれ主義者は何もしていない
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結果から言うと、ラオさんは無事だった。
僕は何もしてないけど、ちょっと危ない状況だったみたい。
ホムラに抱きかかえられた状態で、ラオさんが寝かされていた寝室に突撃すると、血まみれのラオさんが最初に視界に入った。
それだけで僕はもう無理で、くらっと来たけれど、ホムラに抱きかかえられている状態だったので、倒れ込んでけが人が増えました! とかそんな事にはならなかった。
ラオさんは静かにベッドで横になっていて、側で二人の人物がラオさんの様子を見ていた。
一人は治癒師として呼ばれたお爺さん。もう一人は没落貴族で今は僕の奴隷であるモニカだった。
モニカは黒い髪に黒い瞳で先祖に日本人がいるらしい。調度品の扱いを彼女に任せていて、普段は細々としたものの手入れをしている。
お爺さんが加護の力を使って暖かな光がラオさんを包み込む。
何度かそれを繰り返し、治療が終わったのか部屋にいる全員を見回しながら話し始めた。
「外見上は治っているように見えますが、毒の影響がしばらく続くでしょう。三日ほどは様子を見て何かあればまたお呼びください。代金についてはどなたから頂けばよろしいですかな?」
「マスターはここでお休みください。支払いをしてきます」
ホムラは僕をそっとソファーに座らせて、治癒師のお爺さんの相手をしに行った。
ラオさんの様子をそっと見ると、血が付いた服のまま、静かに横になっていた。ちょっと誰かに着替えをお願いしなくちゃ。
彼女に何があったのか、いろいろ気になる事はあったけれど、その日はラオさんが起きる事はなく、翌日のお昼になってようやく状況が分かった。
どうやら、隣国の都市国家で面倒事に巻き込まれてしまったらしい。
「アタシらが着いたぐらいから外からの来訪者を軟禁し始めてたみてぇでよ。タイミング悪かったな」
そう言って力なく笑う彼女は、まだベッドの上で横になっている。
何かしらの魔道具で回復させる事ができるような気がしたけど、すでに怪我も毒の治療も終わってるから大丈夫だ、と言われたので特に何もしていない。何か作られると疲れるんだとか。……失敬な。
「街から出してもらえなかった原因はまあ、間違いなく世界樹の異変が原因だろうなぁ。なんでか知らねぇけど、葉っぱの色が茶色になっていて、日を追うごとに落ちちまって……枯れているようにしか見えんかったな。妹の事もあったし、さっさと帰るつもりだったから街を抜け出して帰ろうとしたんだけど、その時にちょっとやりあってな。流石に森の中じゃアタシよりも向こうの方が有利だったし、多勢に無勢……手足をやられ、毒が回ってるって気づいた時に魔道具を使うしかねぇな、って思ったんだ」
消耗品だって分かっていたから使うつもりがなかったらしいが、帰還の指輪を最後に使って戻ってきたんだとか。
「世界樹の異変があったのは分かったけど、どうして外国の人を閉じ込めようとしたのかな」
「そりゃお前、昔から世界樹があるからって結構な無理難題をいろんなところに吹っ掛けていたから、世界樹がないとやばいって分かってるからだろうよ。世界樹の周りだと珍しい草木が育ちやすいからって特産品もあるが、世界樹に異変があった時点でそれもどうなるか分からねぇしな。ただ、街の様子を見てると、一部のエルフがやらかしているって感じはあったけどな。街の奴らは結構親切だったし。一緒に行った商人たちも街の中に閉じ込められてはいたけど、だいたいのエルフが同情的でいろいろと世話をしてもらっていたし、アタシも妹の事を話したら街の外には出してもらえたしな」
「この国の者が囚われていると聞いて黙っていられないのですわ!」
「……誰だこいつ」
「私はレヴィア。レヴィア・フォン・ドラゴニア。ドラゴニア王国の第一王女なのですわ!」
ラオさんの視線から避けるように僕は外の景色を眺めつつ、モニカが入れてくれた紅茶を飲む。
元貴族令嬢、という事もあって紅茶には結構詳しいらしい彼女だったが、紅茶に対するこだわりとかはないらしく魔道具で簡単においしい紅茶が作れる事に感激していた。
今日も美味しいなぁ。
「恐縮です。おかわりはいかがなさいますか?」
「ちょうだい」
「早速報告用の手紙を書くのですわ! セシリア、手伝うのですわ!」
「緊急性の高い事だと思われます。ドラン公爵にも一報を入れておきましょう」
「私がやる」
ドーラさんとセシリアさん、レヴィアさんがバタバタとそれぞれのすべき事をするために外に出ていく。
同じ部屋で話を聞き流していたノエルは魔法のじょうろに夢中でうんうん唸っていて、ホムラは僕の側でそっと控えている。
先程まで紅茶を入れていたモニカは綺麗なお辞儀をしてから部屋を出て行った。調度品の掃除とか諸々があるんだろう。
取り残された僕はとりあえずラオさんの視線を感じつつ紅茶をのんびり飲み続けた。
部屋がとても静かだった事もあって、ラオさんのため息が良く聞こえた。
「お前、他にやらかしてる事ねぇだろうな?」
「………ない、といいなぁ、って思います」
何か言われる心当たりしかない。
とりあえず、ラオさんにも異世界転移者である事は伝えた方がいいのかなぁ。
他の人が知ってるのにラオさんにだけ伝えないのはあれだしなぁ……ラオさんが治ってから考えよ。
うん、ミルクティーにしてもおいしい。
僕は何もしてないけど、ちょっと危ない状況だったみたい。
ホムラに抱きかかえられた状態で、ラオさんが寝かされていた寝室に突撃すると、血まみれのラオさんが最初に視界に入った。
それだけで僕はもう無理で、くらっと来たけれど、ホムラに抱きかかえられている状態だったので、倒れ込んでけが人が増えました! とかそんな事にはならなかった。
ラオさんは静かにベッドで横になっていて、側で二人の人物がラオさんの様子を見ていた。
一人は治癒師として呼ばれたお爺さん。もう一人は没落貴族で今は僕の奴隷であるモニカだった。
モニカは黒い髪に黒い瞳で先祖に日本人がいるらしい。調度品の扱いを彼女に任せていて、普段は細々としたものの手入れをしている。
お爺さんが加護の力を使って暖かな光がラオさんを包み込む。
何度かそれを繰り返し、治療が終わったのか部屋にいる全員を見回しながら話し始めた。
「外見上は治っているように見えますが、毒の影響がしばらく続くでしょう。三日ほどは様子を見て何かあればまたお呼びください。代金についてはどなたから頂けばよろしいですかな?」
「マスターはここでお休みください。支払いをしてきます」
ホムラは僕をそっとソファーに座らせて、治癒師のお爺さんの相手をしに行った。
ラオさんの様子をそっと見ると、血が付いた服のまま、静かに横になっていた。ちょっと誰かに着替えをお願いしなくちゃ。
彼女に何があったのか、いろいろ気になる事はあったけれど、その日はラオさんが起きる事はなく、翌日のお昼になってようやく状況が分かった。
どうやら、隣国の都市国家で面倒事に巻き込まれてしまったらしい。
「アタシらが着いたぐらいから外からの来訪者を軟禁し始めてたみてぇでよ。タイミング悪かったな」
そう言って力なく笑う彼女は、まだベッドの上で横になっている。
何かしらの魔道具で回復させる事ができるような気がしたけど、すでに怪我も毒の治療も終わってるから大丈夫だ、と言われたので特に何もしていない。何か作られると疲れるんだとか。……失敬な。
「街から出してもらえなかった原因はまあ、間違いなく世界樹の異変が原因だろうなぁ。なんでか知らねぇけど、葉っぱの色が茶色になっていて、日を追うごとに落ちちまって……枯れているようにしか見えんかったな。妹の事もあったし、さっさと帰るつもりだったから街を抜け出して帰ろうとしたんだけど、その時にちょっとやりあってな。流石に森の中じゃアタシよりも向こうの方が有利だったし、多勢に無勢……手足をやられ、毒が回ってるって気づいた時に魔道具を使うしかねぇな、って思ったんだ」
消耗品だって分かっていたから使うつもりがなかったらしいが、帰還の指輪を最後に使って戻ってきたんだとか。
「世界樹の異変があったのは分かったけど、どうして外国の人を閉じ込めようとしたのかな」
「そりゃお前、昔から世界樹があるからって結構な無理難題をいろんなところに吹っ掛けていたから、世界樹がないとやばいって分かってるからだろうよ。世界樹の周りだと珍しい草木が育ちやすいからって特産品もあるが、世界樹に異変があった時点でそれもどうなるか分からねぇしな。ただ、街の様子を見てると、一部のエルフがやらかしているって感じはあったけどな。街の奴らは結構親切だったし。一緒に行った商人たちも街の中に閉じ込められてはいたけど、だいたいのエルフが同情的でいろいろと世話をしてもらっていたし、アタシも妹の事を話したら街の外には出してもらえたしな」
「この国の者が囚われていると聞いて黙っていられないのですわ!」
「……誰だこいつ」
「私はレヴィア。レヴィア・フォン・ドラゴニア。ドラゴニア王国の第一王女なのですわ!」
ラオさんの視線から避けるように僕は外の景色を眺めつつ、モニカが入れてくれた紅茶を飲む。
元貴族令嬢、という事もあって紅茶には結構詳しいらしい彼女だったが、紅茶に対するこだわりとかはないらしく魔道具で簡単においしい紅茶が作れる事に感激していた。
今日も美味しいなぁ。
「恐縮です。おかわりはいかがなさいますか?」
「ちょうだい」
「早速報告用の手紙を書くのですわ! セシリア、手伝うのですわ!」
「緊急性の高い事だと思われます。ドラン公爵にも一報を入れておきましょう」
「私がやる」
ドーラさんとセシリアさん、レヴィアさんがバタバタとそれぞれのすべき事をするために外に出ていく。
同じ部屋で話を聞き流していたノエルは魔法のじょうろに夢中でうんうん唸っていて、ホムラは僕の側でそっと控えている。
先程まで紅茶を入れていたモニカは綺麗なお辞儀をしてから部屋を出て行った。調度品の掃除とか諸々があるんだろう。
取り残された僕はとりあえずラオさんの視線を感じつつ紅茶をのんびり飲み続けた。
部屋がとても静かだった事もあって、ラオさんのため息が良く聞こえた。
「お前、他にやらかしてる事ねぇだろうな?」
「………ない、といいなぁ、って思います」
何か言われる心当たりしかない。
とりあえず、ラオさんにも異世界転移者である事は伝えた方がいいのかなぁ。
他の人が知ってるのにラオさんにだけ伝えないのはあれだしなぁ……ラオさんが治ってから考えよ。
うん、ミルクティーにしてもおいしい。
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