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第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく。
55.事なかれ主義者は聖域を作った
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転移陣で日帰りになるとはいえ、戻ってきた瞬間に周りがゾンビだらけでした、とか笑えないのでちょっとアンデッド対策をしようと思う。
朝ごはんを適当に済ませてアイテムバッグから事前に作っておいたものを取り出す。
鉄で作られたそれは円錐状で、高さはだいたい一メートル。
それをやる気満々のレヴィさんと、レヴィさんに命じられたセシリアさんがとりあえず木を囲うように地面に線を引いた四角形の四つ角に突き刺していく。どのくらい大きくなるのか謎だったのでとりあえずめちゃくちゃ広めにしてみた。家は余裕で建つくらい。
刺されたそれは上から見ると半球状に窪みができているので、そこに対して【付与】をそれぞれに二重で行う。
その後にそれぞれの円錐を結ぶように、下書きした線の上に鉄の板を薄く長く飛ばして繋げていく。
「さて、どれくらい魔力持ってかれるかなぁ」
「お休みの準備は万全です、マスター」
「倒れる前提で動かれているのなんか嫌だなぁ」
「シズト! 次は何をすればいいのですわ?」
「とりあえずアンデッドが来ないか見張っててくれると嬉しいなぁ」
「シズト様ー、早く魔道具作って欲しいっすー」
ほんとにあの奴隷良いご身分じゃないっすか?
ちょっと今大変な僕と立場変わってくれないかな、とか思いつつ一つとなった物に【付与】を行った。
普通の魔道具の何倍も魔力を使った感覚があるんだけど、神聖魔法に分類される『セイクリッド・サンクチュアリ』のせいなのか、単純に馬鹿みたいに大きく作りすぎたからなのか判断に迷う。それでもだるさだけで済んでいるから良しとしよう。今日はお布団で寝たい。
まだまだ太陽は出たばかりだったけど、あんまり無理をしてはいけないと、転移陣で帰る事にした。
なんか周りがすごく静かになったのは気になったけど、とにかくベッドに寝るんだ! と、転移をした瞬間に意識が遠のいて――起きたらベッドの上でした。
転移陣、魔力使わない方向にした方がいいかなぁ。
ちょっと転移陣で戻って電池切れになるハプニングがあったけど無事だった翌日、転移陣で木の近くまで転移してきたら多数の魔石と一緒に目の下のくまが酷いどこかの奴隷が転がっていた。
アンデッドがわらわらと寄ってくる中でよく作業できるなぁ、尊敬するわ。ってか普通に良く死ななかったな。
「シズト……これ、なんて名前の魔法を付与したんですわ?」
「確かセイクリッド・サンクチュアリってやつだった気がする」
「「………」」
「流石はマスターです」
なんかお互いに顔を見合わせたかと思ったらひそひそとお話をし始めた二人をとりあえず置いておいて、結界内で力尽きているノエルを叩き起こそう。
「ちょっとノエル、こんな所で寝てると風邪ひくよ」
「うるっさいっすよぉシズト様ぁ……もうちょっと寝てたいっす、ほっといてほしいっすー……」
「マスターに対する態度、許し難いですね。ちょっと教育してきますね、マスター」
「起きた! めっちゃ起きたっす! もうお目目ぱっちり全開っす! おはようございます、シズト様あああああぁぁぁぁ~~~~~……」
飛び起きたノエルは、時すでに遅し、って感じだったようでホムラに引きずられて転移陣で戻って行ってしまった。
さて、どうしたものかな、とちょっと考え込んでいると、ドーラさんが僕の服の裾をくいくいっと引っ張っていた。
「どうかした?」
「元気ない」
「え? あ、ほんとだ」
ドーラさんの指差す先には、木がこれでもか! ってくらい元気がなさそうにぽつんと生えていた。葉っぱがしおれているし、これはもうだめかもしれない。やっぱりここじゃ駄目だったんだな~、なんて事を考えて済まそうと思っていたけど、そんな事許さない方がいらっしゃった。もうこの世の終わりかのような悲鳴をあげたかと思ったら僕の肩を持ってがくがくと揺さぶってくる。
「神様から頂いた苗木が大変な事になっているのですわ!! シズト、早く祈るのですわ!!!!」
「まあ、そうなりますよねー。えーっと……元気になりますように」
そう祈りを捧げると以前よりは少ない量の魔力を消費されたのが分かる。
一日祈らなかっただけでこれだと先が思いやられそうだ。毎日毎日ここにきてお祈りするのはちょっと面倒だから、ここで生活できるスペースをとりあえず作るべきなのかな。
前回の失敗は、【加工】と【付与】を同じ日にやってしまった事だろう。とりあえず【加工】でだいたいの物を作っていって、後から必要なものに【付与】をしていこう。魔物に壊されても直せばいいし。
とりあえず今日は鉄の節約のために有刺鉄線を作っていこう。いや、ボロボロの武器を買い漁った結果だいぶあるんだけどね。その代わりにボロボロの武器が市場に出回らなくなってるみたいだけど、買っていた人はほとんどいないんじゃないか、ってくらい有り余っていたし、そんなもので冒険に出るくらいなら街で安全にお金を溜めとけばいいと思う。
結界のぎりぎりいっぱいをぐるっと囲うように高さ三メートルくらいのフェンスを作っていく。
内緒話が終わった二人も素材の準備を手伝ってくれて割とサクサクと作る事ができた。
今日の【加工】はここまでにして、木の近くまで近づいて祈りを捧げよう。
「どんなふうに祈ったらいいんだろうね」
「とりあえず、健やかに成長しますように、とかそういう感じでいいと思うのですわ」
そういう感じに祈った。雑だったけどニョキニョキ伸びたから良し!
朝ごはんを適当に済ませてアイテムバッグから事前に作っておいたものを取り出す。
鉄で作られたそれは円錐状で、高さはだいたい一メートル。
それをやる気満々のレヴィさんと、レヴィさんに命じられたセシリアさんがとりあえず木を囲うように地面に線を引いた四角形の四つ角に突き刺していく。どのくらい大きくなるのか謎だったのでとりあえずめちゃくちゃ広めにしてみた。家は余裕で建つくらい。
刺されたそれは上から見ると半球状に窪みができているので、そこに対して【付与】をそれぞれに二重で行う。
その後にそれぞれの円錐を結ぶように、下書きした線の上に鉄の板を薄く長く飛ばして繋げていく。
「さて、どれくらい魔力持ってかれるかなぁ」
「お休みの準備は万全です、マスター」
「倒れる前提で動かれているのなんか嫌だなぁ」
「シズト! 次は何をすればいいのですわ?」
「とりあえずアンデッドが来ないか見張っててくれると嬉しいなぁ」
「シズト様ー、早く魔道具作って欲しいっすー」
ほんとにあの奴隷良いご身分じゃないっすか?
ちょっと今大変な僕と立場変わってくれないかな、とか思いつつ一つとなった物に【付与】を行った。
普通の魔道具の何倍も魔力を使った感覚があるんだけど、神聖魔法に分類される『セイクリッド・サンクチュアリ』のせいなのか、単純に馬鹿みたいに大きく作りすぎたからなのか判断に迷う。それでもだるさだけで済んでいるから良しとしよう。今日はお布団で寝たい。
まだまだ太陽は出たばかりだったけど、あんまり無理をしてはいけないと、転移陣で帰る事にした。
なんか周りがすごく静かになったのは気になったけど、とにかくベッドに寝るんだ! と、転移をした瞬間に意識が遠のいて――起きたらベッドの上でした。
転移陣、魔力使わない方向にした方がいいかなぁ。
ちょっと転移陣で戻って電池切れになるハプニングがあったけど無事だった翌日、転移陣で木の近くまで転移してきたら多数の魔石と一緒に目の下のくまが酷いどこかの奴隷が転がっていた。
アンデッドがわらわらと寄ってくる中でよく作業できるなぁ、尊敬するわ。ってか普通に良く死ななかったな。
「シズト……これ、なんて名前の魔法を付与したんですわ?」
「確かセイクリッド・サンクチュアリってやつだった気がする」
「「………」」
「流石はマスターです」
なんかお互いに顔を見合わせたかと思ったらひそひそとお話をし始めた二人をとりあえず置いておいて、結界内で力尽きているノエルを叩き起こそう。
「ちょっとノエル、こんな所で寝てると風邪ひくよ」
「うるっさいっすよぉシズト様ぁ……もうちょっと寝てたいっす、ほっといてほしいっすー……」
「マスターに対する態度、許し難いですね。ちょっと教育してきますね、マスター」
「起きた! めっちゃ起きたっす! もうお目目ぱっちり全開っす! おはようございます、シズト様あああああぁぁぁぁ~~~~~……」
飛び起きたノエルは、時すでに遅し、って感じだったようでホムラに引きずられて転移陣で戻って行ってしまった。
さて、どうしたものかな、とちょっと考え込んでいると、ドーラさんが僕の服の裾をくいくいっと引っ張っていた。
「どうかした?」
「元気ない」
「え? あ、ほんとだ」
ドーラさんの指差す先には、木がこれでもか! ってくらい元気がなさそうにぽつんと生えていた。葉っぱがしおれているし、これはもうだめかもしれない。やっぱりここじゃ駄目だったんだな~、なんて事を考えて済まそうと思っていたけど、そんな事許さない方がいらっしゃった。もうこの世の終わりかのような悲鳴をあげたかと思ったら僕の肩を持ってがくがくと揺さぶってくる。
「神様から頂いた苗木が大変な事になっているのですわ!! シズト、早く祈るのですわ!!!!」
「まあ、そうなりますよねー。えーっと……元気になりますように」
そう祈りを捧げると以前よりは少ない量の魔力を消費されたのが分かる。
一日祈らなかっただけでこれだと先が思いやられそうだ。毎日毎日ここにきてお祈りするのはちょっと面倒だから、ここで生活できるスペースをとりあえず作るべきなのかな。
前回の失敗は、【加工】と【付与】を同じ日にやってしまった事だろう。とりあえず【加工】でだいたいの物を作っていって、後から必要なものに【付与】をしていこう。魔物に壊されても直せばいいし。
とりあえず今日は鉄の節約のために有刺鉄線を作っていこう。いや、ボロボロの武器を買い漁った結果だいぶあるんだけどね。その代わりにボロボロの武器が市場に出回らなくなってるみたいだけど、買っていた人はほとんどいないんじゃないか、ってくらい有り余っていたし、そんなもので冒険に出るくらいなら街で安全にお金を溜めとけばいいと思う。
結界のぎりぎりいっぱいをぐるっと囲うように高さ三メートルくらいのフェンスを作っていく。
内緒話が終わった二人も素材の準備を手伝ってくれて割とサクサクと作る事ができた。
今日の【加工】はここまでにして、木の近くまで近づいて祈りを捧げよう。
「どんなふうに祈ったらいいんだろうね」
「とりあえず、健やかに成長しますように、とかそういう感じでいいと思うのですわ」
そういう感じに祈った。雑だったけどニョキニョキ伸びたから良し!
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