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第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく。
幕間の物語23.ちびっこ神様ズは監視中
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ファマは号泣した。
あの異世界転移者が加護を使ってくれると信じて待っていた。
ファマにはエルフの考え方はよく分からなかった。人間なんてそれ以上に何を考えているのかよく分からなかった。
ファマはちょっぴり信仰されている程度のちびっこ神様だ。それでも、現状のままでは自分の加護は使われないと理解していた。信仰されるなんて夢のまた夢だと悟った。
だから号泣していた。
その周りでおろおろとしているプロスとエント。ファマと同じくちびっこ神様だ。最近ちょっと神力が増えてきたかな? 程度の駆け出し神様だ。
彼女らもファマと一緒に信じていた。
異世界転移者がたい肥を作っていたのだ。屋敷に庭もあったのだ。人もどこからでも補充なんてできるはずだ。
だから彼女らは信じていた。
だが、結果は水晶に映る様子が全てである。
水晶には黒髪の少年が雑草を使って作られたたい肥を見て話を続けている。
どうやらもう売り払うのは決定事項で、後は値段をつけるだけらしい。
ファマは彼らの秘密基地から飛び出した。
号泣しながら、大音量で泣き声を発しながら、懸命に駆けた。
目指すは彼らのまとめ役の所。最高神がのんびり過ごしている場所である。
最高神は外でのんびりと日向ぼっこをしているようだったが、流石に大声泣きながら走ってくる子どもが近づいてきていたら無下にもできなかった。
ファマは最高神を目視で捉えるとより加速し、最後はタックルするかのようにその腹へめがけて一直線に飛び込んだ。
「これこれ、飛びついてきたら危ないじゃろう」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「最高神様~、シズトが酷いんだよー。ファマの加護、まだ一度も使ってあげてないの。たい肥を作ってたのに売っちゃったんだよ! ねー?」
「ア゛ア゛~~~~~~~~」
「ファマくん、夢の中に入ろうとしたんだけど夢を見なかったんだよ、ね……?」
「そうそう、エントの加護で作った魔道具で、ぐっすり~すやすや~だもん」
「それでわしの所に来たと。確かに、神託で呼び寄せる事はできるじゃろうな。じゃが、それをするとなると……分かっておるな?」
「わ゛か゛って゛る゛ん゛た゛な゛~~~」
「よろしい。では早速、とは思ったんじゃが、シズトに加護を使ってほしい、というだけでは難しいじゃろうな。今の所不要だから使ってないんじゃろうし」
「や゛く゛に゛た゛つ゛ん゛た゛な゛~~~」
「分かっておる。じゃが、有用性を示すなり、試練を与えて追い込むなりする必要があるじゃろう」
「でもでも最高神様! シズトよわよわだよ? 試練を与えたら死んじゃうと思う!」
「加護の使い方次第じゃな。実際一度ゴブリンの群れをまとめて捉えて援護していたじゃろう。まあそれでも、生産系の加護で戦闘の際に有用性を示すのは難しいじゃろう。それをするくらいであれば、本来の力で必要性を伝えるのがいいじゃろうな。ファマ、お主の加護にしかできぬ事があるじゃろう?」
そう言われてファマはぐずりつつも首を傾げて考えた。
自分だけの加護にできる事。それは植物を育てる事。
最高神に抱き付いたままだった彼は、すぐに最高神の服を離し、来た道を戻っていった。
それから最高神の神託により、呼ばれたシズトが礼拝堂で祈った事によって神力を使う事無く干渉ができたファマたちは予定通りシズトに加護を使うように伝えつつ、苗木を渡した。
シズトを下界へ返してすぐにファマは水晶で下界を覗く。
それに便乗する形でファマの両隣で、プロスとエントは様子を見守る。
最高神はそんな彼らを優しく見守っていた。
「騒いでたと思ったら屋敷に戻っちゃうね」
「だ、大丈夫か心配なんだな!」
「大丈夫だよ、今日は遅いからおうちに帰るんだと思うよ……?」
「は、早く育てて欲しいんだな」
「魔道具作るみたいだねー」
「や、やっぱり他の種もたくさん渡すべきだったんだな!」
「あんまり渡し過ぎると最高神様へのお礼が大変な事になっちゃうよ……?」
「そうだよ。今回のでもしばらくはずっと遊んでられないし。……そうだ、プロスも手伝ってあげるよ! そしたらまたすぐ遊べるようになるじゃん!」
「私も手伝うよ……?」
「ほ、ほんとなんだな? う、嬉しいんだなー」
面倒な事はさっさと終わらせよう、とちびっこ神様ズは最高神のお手伝いを早速始めた。
下界を覗き見て、気になった事があれば最高神に伝える仕事だ。
世界を創造した神様と言えど、常にすべてを見る事は難しい。神様にだって息抜きは必要だし、娯楽は必要だ。というのが最高神の言い分だった。
今日も明日も明後日も――しばらくは最高神への報告をし続けるのがファマたちの仕事だった。
最高神の力を借りた他の大小様々な神々と一緒に交代で下界を監視する中で、エントは加護を剥奪されてしまったエルフたちの国々の様子を見てファマに声をかける。
「この人、ファマくんが加護を渡してた人だったよね……?」
「どれどれー? あ、本当だ! ファマ、なんか一生懸命一人で祈ってるけど、どうするの?」
「も、もう関係ない人なんだな。い、今もオイラに対して祈っているわけじゃないんだな。ま、また加護をあげてもきっと同じ事の繰り返しなんだな~」
何百年と加護を与えられていたエルフよりも、次は人間に任せてみよう、とファマは決意した。
休憩の時はしっかりシズトを監視するんだな! と鼻息を荒くしていたが、今は最高神の代わりに監視をしなければ、と用意された水晶でじっと見つめ続けたのだった。
あの異世界転移者が加護を使ってくれると信じて待っていた。
ファマにはエルフの考え方はよく分からなかった。人間なんてそれ以上に何を考えているのかよく分からなかった。
ファマはちょっぴり信仰されている程度のちびっこ神様だ。それでも、現状のままでは自分の加護は使われないと理解していた。信仰されるなんて夢のまた夢だと悟った。
だから号泣していた。
その周りでおろおろとしているプロスとエント。ファマと同じくちびっこ神様だ。最近ちょっと神力が増えてきたかな? 程度の駆け出し神様だ。
彼女らもファマと一緒に信じていた。
異世界転移者がたい肥を作っていたのだ。屋敷に庭もあったのだ。人もどこからでも補充なんてできるはずだ。
だから彼女らは信じていた。
だが、結果は水晶に映る様子が全てである。
水晶には黒髪の少年が雑草を使って作られたたい肥を見て話を続けている。
どうやらもう売り払うのは決定事項で、後は値段をつけるだけらしい。
ファマは彼らの秘密基地から飛び出した。
号泣しながら、大音量で泣き声を発しながら、懸命に駆けた。
目指すは彼らのまとめ役の所。最高神がのんびり過ごしている場所である。
最高神は外でのんびりと日向ぼっこをしているようだったが、流石に大声泣きながら走ってくる子どもが近づいてきていたら無下にもできなかった。
ファマは最高神を目視で捉えるとより加速し、最後はタックルするかのようにその腹へめがけて一直線に飛び込んだ。
「これこれ、飛びついてきたら危ないじゃろう」
「ワ゛ア゛ア゛~~~~~~~~」
「最高神様~、シズトが酷いんだよー。ファマの加護、まだ一度も使ってあげてないの。たい肥を作ってたのに売っちゃったんだよ! ねー?」
「ア゛ア゛~~~~~~~~」
「ファマくん、夢の中に入ろうとしたんだけど夢を見なかったんだよ、ね……?」
「そうそう、エントの加護で作った魔道具で、ぐっすり~すやすや~だもん」
「それでわしの所に来たと。確かに、神託で呼び寄せる事はできるじゃろうな。じゃが、それをするとなると……分かっておるな?」
「わ゛か゛って゛る゛ん゛た゛な゛~~~」
「よろしい。では早速、とは思ったんじゃが、シズトに加護を使ってほしい、というだけでは難しいじゃろうな。今の所不要だから使ってないんじゃろうし」
「や゛く゛に゛た゛つ゛ん゛た゛な゛~~~」
「分かっておる。じゃが、有用性を示すなり、試練を与えて追い込むなりする必要があるじゃろう」
「でもでも最高神様! シズトよわよわだよ? 試練を与えたら死んじゃうと思う!」
「加護の使い方次第じゃな。実際一度ゴブリンの群れをまとめて捉えて援護していたじゃろう。まあそれでも、生産系の加護で戦闘の際に有用性を示すのは難しいじゃろう。それをするくらいであれば、本来の力で必要性を伝えるのがいいじゃろうな。ファマ、お主の加護にしかできぬ事があるじゃろう?」
そう言われてファマはぐずりつつも首を傾げて考えた。
自分だけの加護にできる事。それは植物を育てる事。
最高神に抱き付いたままだった彼は、すぐに最高神の服を離し、来た道を戻っていった。
それから最高神の神託により、呼ばれたシズトが礼拝堂で祈った事によって神力を使う事無く干渉ができたファマたちは予定通りシズトに加護を使うように伝えつつ、苗木を渡した。
シズトを下界へ返してすぐにファマは水晶で下界を覗く。
それに便乗する形でファマの両隣で、プロスとエントは様子を見守る。
最高神はそんな彼らを優しく見守っていた。
「騒いでたと思ったら屋敷に戻っちゃうね」
「だ、大丈夫か心配なんだな!」
「大丈夫だよ、今日は遅いからおうちに帰るんだと思うよ……?」
「は、早く育てて欲しいんだな」
「魔道具作るみたいだねー」
「や、やっぱり他の種もたくさん渡すべきだったんだな!」
「あんまり渡し過ぎると最高神様へのお礼が大変な事になっちゃうよ……?」
「そうだよ。今回のでもしばらくはずっと遊んでられないし。……そうだ、プロスも手伝ってあげるよ! そしたらまたすぐ遊べるようになるじゃん!」
「私も手伝うよ……?」
「ほ、ほんとなんだな? う、嬉しいんだなー」
面倒な事はさっさと終わらせよう、とちびっこ神様ズは最高神のお手伝いを早速始めた。
下界を覗き見て、気になった事があれば最高神に伝える仕事だ。
世界を創造した神様と言えど、常にすべてを見る事は難しい。神様にだって息抜きは必要だし、娯楽は必要だ。というのが最高神の言い分だった。
今日も明日も明後日も――しばらくは最高神への報告をし続けるのがファマたちの仕事だった。
最高神の力を借りた他の大小様々な神々と一緒に交代で下界を監視する中で、エントは加護を剥奪されてしまったエルフたちの国々の様子を見てファマに声をかける。
「この人、ファマくんが加護を渡してた人だったよね……?」
「どれどれー? あ、本当だ! ファマ、なんか一生懸命一人で祈ってるけど、どうするの?」
「も、もう関係ない人なんだな。い、今もオイラに対して祈っているわけじゃないんだな。ま、また加護をあげてもきっと同じ事の繰り返しなんだな~」
何百年と加護を与えられていたエルフよりも、次は人間に任せてみよう、とファマは決意した。
休憩の時はしっかりシズトを監視するんだな! と鼻息を荒くしていたが、今は最高神の代わりに監視をしなければ、と用意された水晶でじっと見つめ続けたのだった。
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